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2018.11/03(Sat)

Op.464 ベートーヴェン:「弦楽四重奏曲全集」 by エンデリオン弦楽四重奏団

ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集でこの約2ヶ月来、大のお気に入り且つ
虜になっているのはエンデリオン弦楽四重奏団の演奏です。
今夏、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集、弦楽五重奏曲集他が収録されている
エンデリオン弦楽四重奏団の Box が目に留まり入手をしてみました。
当時、ハンガリー四重奏団で弦楽四重奏曲第15番を聴きつつ
他の演奏で聴きたいとの気持ちがエスカレート。
たまたま目に付いたのがエンデリオン弦楽四重奏団でした。
軽い気持ちで、取り敢えず聴いてみる・・・・の筈で聴き始めたのが8月下旬。
お気に入りの作品から聴き始め1週間ほどで全曲を聴き終えたのは
鑑賞の遅い私としては新記録かも知れません。
また、エンデリオンSQ の演奏ばかりを中心に聴いていたので
他のディスクの購入が月当たり、ゼロ、という近年では珍しい新記録も達成。

8月下旬以降、来る日も来る日もエンデリオンSQ の演奏の虜になっておりました。
今現在もベートーヴェン弦楽四重奏曲を聴きたくなるとエンデリオンSQ です。
ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集ではハンガリー四重奏団と
エンデリオン弦楽四重奏団が私の世界でトップ争いをしているようです。
強いて言えばエンデリオン弦楽四重奏団に軍配が上がりそうです。
(前置きの長さで記事が終わりそう)

ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集、
エンデリオン弦楽四重奏団ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集、弦楽五重奏集他より

弦楽四重奏曲全集、弦楽五重奏曲集、フラグメンツ エンデリオン弦楽四重奏団(10CD)

エンデリオン弦楽四重奏団
Andrew Watkinson(1st.Vn)
Ralph De Souza (2nd.Vn)
Garfield Jackson(Vla)
David Waterman(Vc)
(録音:2004年よりのデジタル録音のようです)


今回は通常のパターンを変え一曲に絞り込まずに全集としての簡単な感想になります。
エンデリオンSQ の演奏に出合い感銘を受け記事にしたかったのですが
どのように纏めれば良いのかも分からず(今も、ですが)、とうとう今日に至ってしまいました。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲をいろいろな演奏で聴き続けてきた昨今。
お気に入りの演奏にも変化が起きています。
多分に私自身のその時々の心情が鑑賞をする上で大きな要素になっているようです。
少なくとも、今現在はエンデリオSQ の演奏が私の心にスンナリと入り込んで来てくれます。

ショップ・サイトのこの演奏の紹介記事の一部を引用。

「イギリスの名門エンデリオン弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集。同時にこのアルバムは彼らがレジデンス・クァルテットを勤めるケンブリッジ大学の創立800年をも記念しています。
この録音は、現在ベ-レンライターから順次出版中のジョナサン・デル・マーによる校訂譜による初の全集となり、その校訂作業にはエンデリオン弦楽四重奏団も参加して共同でおこなっています。特に後期の作品には今までの版で見られなかった音の違いなども含まれているとのことです」

ジョナサン・デル・マーの校訂譜によるベーレンライター版、初の全集、とのことですが
今まで聴いてきた数ある演奏との違いを的確に把握、指摘をする力量の無い私です。

エンデリオンSQ の演奏では15番から聴き始め
次に「ラズモフスキー」の3曲、そして初期の作品の第5番。
いずれもお気に入りの作品ばかりから順に聴いてきました。

上記のお気に入りの作品だけに留まらず、全16曲から新たな印象を受ける演奏です。
全曲を聴き終えた時には、すべての曲が愛聴盤に。

エンデリオンSQ の演奏は整然と区画整備をされような造形美のように感じられます。
彼らの弦から生み出される調べ。
殊に美しい旋律の中には胸を打つ悲哀感が漂っているかのように感じられます。

抑制のある表現の中に見事に花開く楽想の豊かさも感じます。
音色は軽やか。響きの美しさ。
透明感のある美しさを湛えた音楽として甦るベートーヴェンの弦楽四重奏曲の一つ一つ。

この全集で最初めに聴いた第15番。
お気に入りの曲ながら、改めて「この曲はこんなに良かった?」と
いつものパターンで妙に惹き付けられる演奏。
この曲に関連をして、特別に記す事でもないかと思いますが
他の四重奏団の演奏では聴き取れるアンプのヴォリュームに設定をして聴き始めました。
ですが演奏の開始すら分からなく、録音レベルが低いのか、と思ったほどでした。
この曲に限らずフォルテとピアノの差異を強調しない演奏のように感じられます。
総体的に柔和で気品のある演奏を聴かせてくれる全集でしょうか。
何回も同じ事を書いてしまうようですが、作品によっては他の演奏者からは感じることができない美しい悲哀感に目の覚めるような想いを抱いてしまいます。

例えば、ラズモフスキー第1番の全楽章やラズモフスキー第2番の第2楽章。
今まで聴いてきた演奏から受ける印象が大いに違うように感じます。
ラズモフスキー第1番の第1楽章を聴きつつ、「これほどまでに美しい楽章だった?」と自問を。
第2楽章も力強さを控え気味に柔らかい印象。
第3楽章冒頭では、これ程しんみりした心情になる演奏には出合った記憶がないようにも。
軽快に転じる第4楽章では気品すら感じます。

一つ一つの作品から新たな目覚めを感じる全集です。
透明感があり、爽やかさが漂う、美しい気品に満ちた全集のように思います。
あくまでも今現在の独断ですが。

この Box で興味深いのが最後の10枚目のディスクに収録されている
ピアノ・ソナタ第9番作品14-1の編曲。
未だに飽くことなく弦楽四重奏曲を聴く日々で他の収録曲まで辿り着かずの状態です。
ピアノ・ソナタ第9番の編曲もこのBox の楽しみになっています。

                

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タグ : ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 エンデリオン弦楽四重奏団

21:08  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2018.10/20(Sat)

Op.462 ベートーヴェン:「交響曲第7番」 by クレンペラー&フィルハーモニアO.

「春眠暁を覚えず」とは言うものの、「秋眠暁を覚えず」という言葉はないのにも拘らず
「秋眠暁を覚えず」のこの頃。
あの酷暑の日々を何とか生き抜いた・・・大げさな表現ですが、実感でもあります。
秋らしさを感じるこの頃。
ホッとした気分になり陥ってしまう「秋眠暁を覚えず」。
ブログもお休みを、などと怠け心が芽生えてしまった今日。
ですが、この曲を聴くうちに今の処は怠け心が消えたようです。

ベートーヴェン交響曲第7番。
クレンペラー&フィルハーモニアO. の演奏で聴いてみました。
お気に入りのクレンペラーのBox。
手持ちのディスクと重複するものが多々ありながらも昨年、夏に予約注文をしたもの。
入手してからすでに一年以上が経ってしまいました。
ほとんど未聴のまま眠らせてしまっていた Box からです。

ベートーヴェン交響曲第7番
クレンペラー~オットー・クレンペラー・ザ・コレクションより

462 ベートーヴェン 交響曲第7番 オットー・クレンペラー・コレクションより
(収録曲)
ベートーヴェン

交響曲第1番ハ長調 op.21(録音:1960年6月7日)
交響曲第7番イ長調 op.92(録音:1960年6月2日)
「プロメテウスの創造物」序曲 Op.43(録音:1960年6月2日)

オットー・クレンペラー指揮
フィルハーモニア管弦楽団


第1楽章:Poco sostenuto 4/4拍子 – Vivace イ長調 6/8拍子
第2楽章:Allegretto イ短調 2/4拍子
第3楽章:Presto - Assai meno presto ヘ長調 3/4拍子
第4楽章:Allegro con brio イ長調 2/4拍子


曲の断片的なスケッチは1806年頃のノートに見られるそうです。
「ラズモフスキー四重奏曲」や「交響曲第4番」が書かれた時期とのこと。
本格的に作曲が始められたのは1811年秋。
完成は1813年5月13日だそうです。
前作の交響曲第6番の作曲以来、3年以上交響曲から離れていたとのことです。

以前、綴ったことと重複しますが。
この3年間にベートーヴェンは多々の苦労を味わったそうです。
1809年4月9日にオーストリアとフランスが交戦状態に入り
5月21日にナポレオン軍はウィーンに侵入。
ベートーヴェンのパトロン達はウィーンから逃れ、ベートーヴェンは財政的な保護を受けられなくなったとのこと。
また精神的には落ち着かず、健康状態も良好ではなく創作も思うようにはかどらなかったそうです。

1809年に戦争の終結。11月にはフランス軍は退去したそうです。
戦禍から逃れていた貴族たちは翌1810年1月にウィーンに戻ってきたとのこと。
この時期の心境を反映して書かれたのがピアノ・ソナタ第26番「告別」。
このソナタが作曲され、戦争の終結とともにベートーヴェンの創作力は次第に回復したそうです。
その創作は空白期間を取り戻すかのようであったとのこと。

1811年から12年にかけて作曲されたものは明るい長調のものばかりだそうです。
その中で誕生した交響曲第7番はディオニソス的な歓びを持ち、明快なリズムにより人々の心を浮き立たせるこの曲をワーグナーは「舞踏の聖化」と呼んだ、とのこと。

非公開初演は1813年4月20日にルドルフ大公の私邸にて行われ
公開初演は1813年12月8日に、ベートーヴェン自身の指揮により
ウィーン大学講堂に於ける戦争傷病兵のための慈善演奏会にて。
この公開初演では「ウェリントンの勝利」も取り上げられ、愛国的な雰囲気が高まっていた時期で、この2曲は大成功を収めたとのこと。
アンコールでは交響曲第7番の第2楽章だったそうです。

出版は1816年。

献呈はフリース伯爵に。
462:ベートーヴェン交響曲第7番Graf Moritz von Fries
(フリース伯爵夫妻 1801年)
Moritz Christian Johann Reichsgraf von Fries
(1777年5月6日-1826年12月26日)


クレンペラー&フィルハーモニアO.で聴くベートーヴェンの交響曲第7番

力強く重厚な響きで始まる第1楽章の序奏。
序奏を聴き即、クレンペラーの「音」と感じ入ってしまう。
ゆったりとしたテンポで堂々と。
トゥッティでの高揚するドラマティックさ。
轟くティンパニの、はち切れんばかり、とはこのこと?
躍動的なリズム。
堅固な足踏みで前進する音楽。
グイグイと押しまくる演奏ではなく、しかりと地に足の着いた演奏。
コーダの堅牢で覇気を持って閉じられる第1楽章。
改めてこの曲の素晴らしさ、クレンペラーのタクトに魅了を。

荘重に重々しく始まる第2楽章。
次第に増加する楽器たち。
分厚くなる響きに並行するかのような抒情性漂う調べ。
嘗ては退屈をしてしまったこの楽章。
いつの頃からかこの曲では最もお気に入りの楽章に。
自由な三部形式とのことで第2部での穏やかな明るさには寛ぎの気分に。
変奏風な第3部も印象的。
悠然とした雰囲気で終わる第2楽章。

第3楽章はスケルツォに相当するとのこと。
軽快に始まる第3楽章。
跳躍をするような明朗な趣。
トリオの長閑な雰囲気が漂う民謡風な旋律は低部オーストリア地方の巡礼の歌によるものと言われているとのこと。
管楽器が奏する正に長閑な調べ。
楽章の締め括りは凛として。

力強く奏される和音に続き現れる第1主題で始まる第4楽章。
明るい力強さを感じさせる主題。
第2主題のユーモアのある躍動感。トゥッティでの高揚感。
重厚な響きで力強い高揚感のうちに迎える曲の終わり。


クレンペラーの第7番はこちらのBoxには4種の録音が収録されています。
1)フィルハーモニアO.  1960年6月2日
2)フィラデルフィアO. に客演 1962年11月3日
3)コンセルトヘボウO. 1956年
4)コンセルトヘボウO. 1951年
この4種の録音から 1)の1960年、フィルハーモニアO. との演奏を聴いてみました。

因みにショップの解説記事によると
クレンペラーはウィーン芸術週間に出演のためにフィルハーモニアO.を率いてウィーンを訪れ、ムジークフェラインザールでベートーヴェンの連続演奏会を行い大成功だったとのことです。


演奏が終わりすぐに飛び交う「ブラボー」と拍手。
感激の渦でブラボーの言葉すら失う自分。
嘗てこの第7番はベートーヴェンの交響曲の中では
聴いていて疲労感を抱いてしまい、あまり好みではなかった曲。
最近になり遅まきながらやっと目覚めたところです。
個人的には第2楽章がやはり一番魅力的。

好みではないと言いつつも人気曲でもあり
かなり多くの演奏に出合ってきた云十年。
最近出合ったチェリビダッケの演奏を機に意識的に聴くようになった作品。
クレンペラーがお気に入りとの先入観もあるのでしょうか
クレンペラー&フィルハーモニアO. は今の処一番のお気に入りの演奏です。

クレンペラーは各楽器に十分歌わせつつ奏され、生み出される音楽。
旋律線の克明さ。
推進力、気迫を前面に打ち出した演奏とは一線を画するものを感じます。
悠然とした中にも見事に表現される高揚感。
一つ一つの楽器を大切に生かし扱うクレンペラーのタクト。
クレンペラーのタクトが生み出す重厚でガッチリとした音楽。
やはり私にとっては魅力的な第7番です。
まだ、この1960年の録音しかじっくりと耳を傾けていないのですが
他の3種の演奏も楽しみです。

                 

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2018.10/13(Sat)

Op461 ベートーヴェン:「ディアベリのワルツによる33の変奏曲」 by バックハウス

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」。
シリーズの締め括りとしてベートーヴェンの変奏技法が駆使された集大成の
「ディアベリのワルツによる33の変奏曲」を。

この「ディアベリ変奏曲」は数ある変奏曲のうちでも圧倒的にディスクが多いですね。
手持ちのディスクで探したところ次々と「ディアベリ変奏曲」が出てきます。
どのディスクにするか迷った末にバックハウスの演奏で聴くことに。
私の大好きな10枚組の廉価盤からです。

ベートーヴェン:ディアベリのワルツによる33の変奏曲
バックハウスベートーヴェン名演集より


461:べートーヴェン:ディアベリ変奏曲 バックハウス、ベートーヴェン名演集
(収録曲)

ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲 Op.120
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 より

ヴィルヘルム・バックハウス(P)
(録音:ベートーヴェン 1954年)


作曲されたのは1819年から23年にかけてだそうです。
「ミサ・ソレムニス」と並行して書かれ、1822年に交響曲第9番第1楽章とともにその大半を創作。
1823年3月から4月にかけて最終的にまとめられたとのことです。

この作品はベートーヴェンの変奏技法を集大成した作品であり
バッハの「ゴルドベルク変奏曲」と並び変奏曲の最高傑作として称えられているそうです。

ベートーヴェンは「ディアベリ変奏曲」に “ Variationen ” ではなく“Veränderungen” と記しているそうです。
後者の語が採られているのは様態を移し替えていく「変容」が意図されている、と考えられるようです。
因みにバッハの「ゴルドベルク変奏曲」にもバッハの自作の表題には “Clavier Ubung bestehend in einer ARIA mit verschiedenen Veränderungen vors Clavicimbal mit 2 Manualen” と記されているとのこと。


(wikiドイツ)462 ベートーヴェン ディアベリ変奏曲 アントン.ディアべリ
Anton Diabelli
(1781年9月5日-1858年4月8日)

作曲の動機となったのは、オーストリアの作曲家兼音楽出版業のアントン・ディアベリの依頼だったそうです。
彼は自作のワルツ主題による変奏曲の作曲を何人かの作曲家(ツェル二ー、シューベルト、リストも含まれていたとか)に依頼をし
それを取りまとめ「祖国芸術家同盟」として出版する予定であったそうです。
ベートーヴェンはその案を嫌い自分だけで33の変奏曲を書き作品120として出版したのがこの曲とのこと。
初版の翌年1824年6月には「祖国芸術家同盟」第1部として再刊されたそうです。

献呈はブレンターノ夫人アントーニエに。
自筆譜は個人蔵(ドイツ)。
自筆譜のフォトコピーはボンのベートーヴェン・ハウスに。


バックハウスで聴くベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲
いつもの自分のメモを兼ねつつ。

主題は単調だが構造的には豊かな可能性を内包したもので、外見の単調さと内実の複雑性がベートーヴェンの創作意欲を掻き立てたものと推測されるそうです。
この主題の以上の性格はベートーヴェン晩年の諸作の主題に共通する特徴でもあるとのこと。

ワルツのリズムに乗り弾みをもって主題を奏するピアノでの始まり。
明朗な主題。
バックハウスのピアノも軽やかに指が鍵盤上を飛び跳ねているかのよう。

続く変奏。
変奏は幾つかのグループに分かれるそうです。
ユルゲン・ウーデのグループ分けによると次のようになるとのこと。
1)発展群     第1変奏-第10変奏
2)コントラスト群 第11変奏-第20変奏
3)スケルツォ群   第21変奏-第28変奏(第24変奏はトリオ)
4)フィナーレ群  第29変奏-第33変奏

変奏は飛び飛びの感想等になります。

第1変奏(Alla marcia ,maestoso) は力強さを感じさせるタッチでの始まり。
行進曲風で力強い足踏みを感じさせるピアノ。
バックハウスの堅固なタッチが曲想にぴったりのよう。
第2変奏で趣は一転。

いつものように変奏の面白さ、楽しさを感じつつ耳を傾け・・・。
33の変奏を聴きつつ耳を奪われたのが第22変奏。
グループ分けによると 3)のスケルツォ群(21-28変奏)に属する変奏。
前変奏までとは一味、趣を異にするような雰囲気。
明朗な雰囲気の変奏。
この第22変奏はモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」冒頭のレポレロのアリア<夜も昼も休む間もなく>の旋律が採られているそうです。
このアリアの一部も和声構造的に「ディアベリ」主題と重なるもので、変容の一例であると言えるとのこと。

次の第23変奏では素早いアルペッジョを奏するバックハウスのタッチに、またもや耳が釘付けに。

第24変奏(Fugato:Andante )はお気に入りに。
嬉しい事に変奏の中では長い演奏時間で2分54秒。
穏やかな瞑想的な調べのフガート。
優しい雰囲気に満ちているよう。

グループ分けの 4 )フィナーレ群、第29変奏から最終変奏がこの曲のグループ分けではお気に入りで魅力を感じる変奏です。
第30変奏(Andante sempre cantabile)の悲歌のような趣の調べ。
しんみりする優しさを感じる変奏。

第32変奏(Fuga:Allegro) は二重フーガの形がとられ晩年のベートーヴェンの作品を特徴づけるフーガ様式への傾斜を示す一例になっているとのこと。

第33変奏(Tempo di Menuetto moderato grazioso e dolce)もまた印象に残ります。
この変奏ではワルツの主題がメヌエットに変容され、ピアノ・ソナタ第32番の第2楽章主題との関連性を明確に窺わせる形を採り顕れているとのこと。
愛らしい調べの変奏。
愛らしさの根底に感じる素朴さが何ともいえずに魅力的。
左手の厳かに響く低音と右手の愛らしい響きのうちに力強く閉じられる曲。


この曲のディスクを出し、眺めては迷い・・・バックハウスにして正解?
今までのように各変奏にじっくりと耳を傾けることができずに
一度、流し聴きをしてこの曲に対して抱いた印象は、優しさに溢れた曲。
改めて約50分近いこの長い変奏曲を部分的にじっくりと聴き直し
やはり曲の全体に流れる優しい雰囲気に魅力を感じます。

バックハウスの演奏ではキツイかとも想いつつ。
まったくの杞憂でした。
バックハウスの演奏から優しさが滲み出ているような。
感傷に陥ることなく整然とした演奏。
その優しさ。

以前は「ディアヴェリ変奏曲」の曲名を目にしても
余り関心を抱くことがなかったのですが
バックハウスのこの演奏を聴き俄然、この曲の虜になってしまったようです。

                

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タグ : ベートーヴェン 変奏曲 ディアベリ変奏曲 バックハウス

21:11  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2018.10/06(Sat)

Op.460 ベートーヴェン:「創作主題による6つの変奏曲」作品34 by アラウ

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」
今回もピアノ用変奏曲で「創作主題による6つの変奏曲」作品34 。
前回の作品76「創作主題(トルコ行進曲)による6つの変奏曲」として親しまれている作品と同時に出版された曲だそうです。
ベートーヴェンのピアノ用変奏曲は20曲を超えるとのことを知り驚きにも近い感情です。
このブログに登場するのは変奏曲のうちの一握りに過ぎないことが残念にも思えてきました。

さて、今回はアラウで聴いてみました。
今まで聴いてきた変奏曲の中では一番のお気に入りになった曲。

ベートーヴェン創作主題による6つの変奏曲
アラウ~フィリップス録音全集より


(HMV)445シューベルト ピアノソナタ第19番 アラウ フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

エロイカ変奏曲Op.35
創作主題による32の変奏曲
創作主題による6つの変奏曲Op.34
ロンド ト長調Op.51
(録音:1968年 ベルリン)


この「創作主題による6つの変奏曲」作品34 は
1802年、「エロイカ変奏曲」と同じ時期に作曲されたそうです。
また「エロイカ変奏曲」作品35 とともに、初めて作品番号を付け出版されたとのことです。

当時の変奏曲の多くは聴衆にとり馴染みのある既存の旋律を基にしていた作品が多かったそうです。
が、こちらの曲も前回同様にベートーヴェン自身のオリジナルの主題。
出版に際しベートーヴェンは「まったく新しい手法」を用いた作品である、と伝えたそうです。
この曲は初期から中期への移行期に書かれ、この頃に確立されたベートーヴェン的音楽語法を集約させ、音楽的表現のパターンを明らかにしているそうです。
ベートーヴェンの変奏技法を知る上で、また作品全般の音楽像の意味、在り方を考える上で貴重な示唆を与えてくれる作品とのこと。

ベートーヴェンのピアノ用変奏曲は WoO を含み20曲を数えるそうです。
変奏曲の皮切りになったのは1782年に書かれた「ドレスラーの行進曲による9つの変奏曲」とのこと。
ベートーヴェンの数多くのピアノ変奏曲のほとんどは初期に創作されているそうです。
20曲を数える変奏曲のうち17曲までが1803年以前に書かれているとのことです。
1780年が1曲。1790年が11曲。1800年から1803年にかけてが5曲。
この数字から次のようなことが推測されるそうです。
ベートーヴェンのボン時代からウィーン時代初期にかけ身に付けていった、ベートーヴェンの創作の基礎に置かれているものはバロックから前期古典派及び古典派の音楽。
ベートーヴェン的音楽語法は、これらの様式を基底に置き、それを吸収しながら自己の語法へと変容させることにより確立されていったとのこと。
1790年がその変容期で、この時期に変奏曲を集中的に作曲していることから
ベートーヴェンの音楽語法は特に変奏曲の分野において確立されていったといえるそうです。

献呈はオデスカルキ侯爵夫人バルバラ に。
出版は1803年4月にライプツィヒのブライトコプフ&ヘルテル社から初版の刊行。
自筆譜はボン、ベートーヴェン・ハウスに保存。


アラウで聴くベートーヴェンの「創作主題による6つの変奏曲
いつものメモを兼ねつつ。

主題:Adagio ヘ長調 2/4拍子(22小節)
アダージョ「カンタービレ」との指定。
この指定は単なる発想用語に留まらず、ベートーヴェン晩年の様式的特徴の一つで「歌に満たされて」「よく歌いながら奏すること」という意味を含んでいるとのこと。

ゆったりと美しい旋律の主題。
アラウは指定そのものの、優しく柔和なピアノの歌を聴かせてくれる。
心和む正にピアノの歌。

各変奏について
第1変奏から第6変奏まで3度転調を重ね最後に主調へ再帰しているそうです。
変奏曲では一般に調の移動がされず、長調曲の場合、途中で短調に一時的に移調をし色を添えるのが普通とのことです。
この作品のように調的連関形式による変奏曲は異色とのこと。
この曲の6つの変奏曲の特徴として調性が3度づつ下行しているそうです。
各変奏の調性の変化とともに、拍子や速度も変化し、異なる性格変奏であり
和声が安定した装飾変奏でもあるとのことです。

第1変奏:Adagio ニ長調
右手が優雅な旋律を。
しばしば使用されるトリルが美麗な趣を。
2部形式とのことで中間ではスキップを踏むような活動的な雰囲気。
再び優雅な旋律に。
冒頭の旋律よりも終始トリルで奏され華やか。
華麗だが味わいのある美麗さを紡ぎ出すアラウのピアズムに釘付けに。

第2変奏:Allegro ma non troppo 変ロ長調
前変奏とは趣が一転。
左手の低く力強い闊歩するような打鍵で始まり
右手が加わり活発な雰囲気に。
流麗さと活発さが交互に現れているよう。
主題とは完全に切り離されたような「音楽」のよう。

第3変奏:Allegretto ト長調
前変奏で姿を消していた主題が面影を現すこの第3変奏。
右手と左手の素直な対話のように。
簡潔な旋律。楷書のようにクッキリとした輪郭を感じさせる変奏。

第4変奏:Tempo di Menuetto 変ホ長調
この第4変奏と第5変奏は性格的対照による変奏になっているとのこと。

左手の低音の短い伴奏に始まり即、奏され始める右手。
左手の重厚に響く伴奏に乗り戯れるかのような趣を見せる右手。
愛らしい佇まいの変奏。
初期(?に限らず)のピアノ・ソナタのメヌエット楽章を彷彿とさせる風情に満ちているように感じられる。

第5変奏(8.00):Marcia: Allegretto ハ短調ーハ長調
ハ短調の「葬送行進曲」とのこと。

重々しく奏される左手の低音で始まる第5変奏。
すぐにテンポが速くなり、加わる右手。
左手からは「葬送行進曲」が奏され次第に活発な雰囲気に。
一貫して左手の葬送行進曲風の伴奏が印象的。
楽想は葬送行進曲だが受ける印象は華やかなもの。

第6変奏:Allegretto - Coda: Adagio molto(14.30)ヘ長調
第1変奏とこの第6変奏のコーダのアダージョは同一の変奏技法によるとのこと。
主題旋律の各構成音を保持しながら、構成音の各々を巡り動くように音楽の流れが進展。
この手法も晩年のソナタの変奏楽章でその真価を発揮。
この変奏曲で晩年の様式を特徴づける「浮遊する音楽」を響かせているとのこと。

軽やかに弾む雰囲気ではじまり
右手のトリルのみが奏された後に面影を現す主題。
右手のトリルを伴奏に左手が奏するゆったりと落ち着いた「歌」の調べ。
静かに旋律を奏する右手から左手に移り静かに和音を刻み閉じられる曲。



ベートーヴェンのピアノ用の変奏曲を聴いてきた日々。
この変奏曲は今まで聴いてきた変奏曲とはかなり趣を異にしているように感じられます。
今まで軽やかで耳に快い変奏曲に出合ってきたが
この変奏曲にはピアノ・ソナタの風情を感じさせられるようです。
また変奏曲の中でこの変奏曲の主題の美しい旋律に出合ったのは初めて。

タイトルと作品番号を見て惹かれる要素をまったく感じなかったこの変奏曲。
もしかしたら、単に聞き流していた曲かも・・・と言うより、内心ではスルーをするつもりも。
ところが、さすがベートーヴェン。
云十年前にベートーヴェンの三重協奏曲の虜になってしまった日以来
ベートーヴェンの音楽は決して期待を裏切らない、とまで想い込み今日に至り。
この変奏曲を聴き、その想いが今も健在であることの確認に。

今までベートーヴェンの変奏曲を聴いては「魅力」との言葉を使っていました。
この曲は魅力だけに留まらないものを感じます。
ベートーヴェンの変奏曲で一番のお気に入りは?と尋ねられたら即答。
この「創作主題による6つの変奏曲」作品34。

アラウの演奏で聴き・・・言うことなし、です。
但し、この曲の録音も少ないのでしょうか。
手元のディスクを探したのですが今の処、残念ながらアラウの演奏しか見当たらないようです。

                 

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン 変奏曲 アラウ 創作主題による6つの変奏曲

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2018.09/29(Sat)

Op.459 ベートーヴェン:「トルコ行進の主題による6つの変奏曲」 by ギレリス

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」。
前回までのチェロ用の変奏曲から、今回は再びピアノ用の変奏曲に戻ってきました。
今回は「トルコ行進曲の主題による6つの変奏曲」。
タイトル中の「トルコ行進曲」を目にした時にモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番第3楽章の「トルコ行進曲」かと早合点をして関心を抱いた変奏曲です。

過日、ギレリスの演奏で「創作主題による32の変奏曲」を聴き
その同じディスクからの収録曲です。

ベートーヴェン:トルコ行進曲の主題による6つの変奏曲
エミール・ギレリス EMI録音全集より


455:ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 エミール・ギレリスEMI録音全集(9CD)
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73「皇帝」
       (セル&クリーブランドO.)
創作主題による32の変奏曲 ハ短調  WoO.80
ヴラニツキーのバレエ「森のおとめ」のロシア舞曲の主題による12の変奏曲イ長調 WoO71
創作主題(トルコ行進曲)による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76
 (録音:1968年 クリ―ヴランド)


作曲されたのは1809年。
「創作主題(トルコ行進曲)の主題による6つの変奏曲」で主題はベートーヴェンのオリジナルだそうです。
1811年秋から1812年にかけ、アウグスト・フォン・コツェブーの戯曲「アテネの廃墟」にベートーヴェンは劇付随音楽として作曲したそうです。
「アテネの廃墟」の第4曲「トルコ行進曲」に転用されていることから
この作品に「トルコ行進曲の主題による6つの変奏曲」とタイトルが付けられたとのことです。
「アテネの廃墟」は現在では序曲と「トルコ行進曲」以外、ほとんど演奏されないそうです。
「トルコ行進曲」はピアノ用の編曲でも親しまれているとのこと。
日常、よく耳にするのはこのピアノ用編曲ですね。
変奏曲になると他の変奏曲同様に聴いていて主題の変化に興味津々となってしまいます。

初版は1810年10月にライプツィヒのブライトコプフ&ヘルテル社から刊行。
献呈はF.オリヴァーとのことですが、どのような人物であるのか知りたくて調べたのですが、まったく分からずでした。


ギレリスで聴くベートーヴェンの「トルコ行進曲の主題による6つの変奏曲」
いつものように自分のメモを兼ねつつ。

主題:Allegro risolto
「トルコ行進曲」の主題の明るくりズミックな旋律での開始。
8分音符を主としてのリズムに交わる16分音符。
昔々、クラシック音楽に親しむ以前から耳に馴染んでいる親しみやすく簡潔な主題。

主題を終えて変奏に。
各変奏は技巧を凝らしたものではないが、力強く、単調さを感じさせない巧みな構成をみせているとのこと。
第1変奏から第5変奏までは主題の22小節構造。
最終変奏の第6変奏では拡大され57小節構造の後に主題の再帰部が接合され、変奏全体では82小節構造になっているとのこと。

第1変奏は右手が奏し始める旋律の愛らしさ、素朴な美しさを感じる音色。
左手は右手を支える良き相棒でしょうか。
この変奏でのギレリスの優しく柔和なタッチに心が和むようです。

第2変奏に移り、前奏の愛らしさは主題のリズミカルさに。
主題の姿は第1変奏よりも忠実な面影を。
第2変奏とこの変奏での微妙な変化。
ギレリスのタッチからは繊細な心配りが感じられるよう。

第3変奏では優雅な変奏として変容をする主題。
右手が紡ぎ出す優しい調べにトリルの装飾が生きているよう。

第4変奏では左手で刻まれるリズムで始まり
すぐに右手がアルペッジョ風に愛らしく奏される右手と左手の対話。
主題の面影は左手のリズムに現れているよう。
この変奏の終わり頃から主題の姿に近付きつつ
左手のタッチに加わる力強さ。

第5変奏、左手の川の流れのような伴奏にのり
右手が奏する調べは抒情性を帯びた歌のよう。
主題の面影は完全消滅をしているような。
この変奏曲の中では最も印象に残る変奏として耳に伝わります。

迎える最終変奏の第6変奏はPresto。
この変奏で主題の22小節構造が拡大され57小節構造に。
その後、更に主題の再帰部の接合で変奏は82章節構造に。

大幅に変容をしている主題。
右手が活発に鍵盤上を跳びはねるかのように。
均一に刻まれる左手も闊達な意気込みを感じさせるよう。
低音域を雄大な風情を感じさせつつ奏する左手。
右手の闊達な推進力で変奏が進んだ後に主題の復活。
ユーモアを感じさせるような明朗な変容を見せる主題。
明るく、リズミカルに閉じられる曲。


「トルコ行進曲」というタイトルを目にすると、一番に思い浮かぶのがモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番。
モーツァルトとベートーヴェンの2曲とも巷で耳にする機会の多い曲である割りには
今まで、ほとんど意識をして聴いていなかったベートーヴェンの「トルコ行進曲」。
今回、じっくりと耳を傾ける機会になったようです。
個人的にはモーツァルトよりも好みに合っているのがベートーヴェンの「トルコ行進曲」。

ベートーヴェンの変奏曲はどの作品も明るく軽快な感じで耳に快いですね。
その快さは日頃、馴染んでいるベートーヴェンの音楽との隔たりのようにも感じられ
物足りなさのようなものも・・・・。
その物足りなさに似た感覚を払拭してくれるのが主題が変容する各変奏。
この変奏曲で印象に残るのは第1変奏と第5変奏。
第1変奏では右手が奏する素朴で愛らしい音色にも魅了され
第5変奏の抒情的なピアノの歌に惹かれてしまいます。

この曲でもギレリスの繊細で細やかな気配りを感じさせるピアニズムを感じます。
特に第1変奏では顕著にギレリスの魅力に触れるようです。

演奏時間は約6分とのこと。
ピアノ・ソナタへの道に繋がるピアノ用変奏曲は
ピアノ・ソナタのためのウォーミング・アップ?
短い演奏時間の中でキラリと光るベートーヴェンの魅力が
この変奏曲からも伝わってくるようです。

こちらのディスクに収録されている曲では
ヴラニツキーのバレエ「『森のおとめ』のロシア舞曲の主題による12の変奏曲」も軽やかでお気に入りです。

                

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