2018.02/17(Sat)

Op.427 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第31番」 by ソロモン

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
今回もまた、ソロモンです。
ソロモンのピアノでの連続3回目になるようです。
今回はソナタ第31番を。

ソロモンの演奏で是が非でも聴きたいと思っていたソナタ第30番がお目当てで求めたディスクからです。
いつの間にかソロモンのディスクで手持ちの曲とだいぶ重複してきてしまいました。


ベートーヴェンピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
ソロモンベートーヴェン ピアノ・ソナタ集5より

427: ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第31番 ソロモン~ベートーヴェン ピアノ・ソナタ集5
(収録曲)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第23番 ヘ長調 Op.57 「熱情」(1954年録音)
ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101(1954年録音)
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109(1951年録音)
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110(1956年録音)

ソロモン・カットナー(P)


第1楽章:Moderato cantabile, molto espressivo 変イ長調 3/4拍子
第2楽章:Allegro molto - Coda (Poco Piu mosso) へ短調 2/4拍子
第3楽章:Adagio, ma non troppo 変イ長調 4/4拍子
第4楽章: Fuga:Allegro, ma non troppo - L'Istesso tempo dell' arioso - L'Istesso tempo della fuga - Meno allegro
      変イ長調 6/8拍子


作曲されたのは1821年から22年だそうです。
1819年からは「ミサ・ソレムニス」の作曲にも取り掛かり豊かな創作活動が始まった時期とのことです。
「ミサ・ソレムニス」の作曲中に書かれたのは「デイアヴェリ変奏曲」や「交響曲題9番」の第1楽章のスケッチが現れるのもこの時期だそうです。
この間に1818年にピアノ・ソナタ第29番の「ハンマークラヴィーア」の完成に続き、後期の3曲のピアノ・ソナタ、第30,31,32番が作曲されたとのこと。

1821年に完成されたこのソナタの原稿には、1821年12月25日 との日付けが記されているとのことです。
キンスキーの記述によると、1822年にさらにベートーヴェンは終楽章に手を加えたことになっているそうです。

いつものように自分のメモ。このソナタが作曲された前後のベートーヴェンの履歴。以前に綴ったことと重複します。

1818年。48歳。甥カールの教育問題、養育問題でカールの実母との裁判闘争に神経を擦り減らす。
聴覚の衰えが激しくなる。
ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」完成。
1819年。49歳。この一年間も常に甥カールの後見問題が精神生活に暗い影を落とす。
会話も不自由になり筆談帳を多く使用するようになる。
初夏、「ミサ・ソレムニス」の着手に対する心の準備。翌年のルドルフ大公のオルミッツ大司教への就任、即位式3月9日に間に合わせるべくミサ曲の筆を進める。
1820年。50歳。この年も甥カールをめぐる訴訟問題で年が明ける。(4年半に及ぶ後見問題に決着が付くのはこの年の7月24日)
3月9日、ルドルフ大公、オルミッツの大司教に就任、即位式。「ミサ・ソレムニス」の作曲間に合わず。
4月末と5月31日付けベルリンのシュレジンガー宛ての手紙により新しいピアノ・ソナタ3つ(第30,31,32番)を作曲する計画。
年末、約10年間秘書役を務めたオリヴァーがペテルブルクに去る。
1821年、51歳。年頭から健康状態の悪化により2ケ月近く床に着いた生活。
夏、ウンターデブリンクで静養。
7月、強い黄疸症状により絶対安静。
9-10月、バーデンにて静養。
1822年。52歳。「ミサ・ソレムニス」売り込みのためにシュレジンガー、ジムロック、ペータース、シュタイナー、アルタリア等多くの出版社に手紙を出す。
10月3日、ヨーゼフシュタット劇場の杮落しで「献堂式」序曲、「献堂式」への合唱曲の初演。
この頃からA.シンドラーが秘書役を務める。
                  (以上)

このソナタは誰にも献呈されていないそうです。
出版は1822年7月、パリとベルリンのアドルフ・マーティン・シュレジンガーにより行われたとのこと。
自筆譜はベルリン国立図書館の保存されているそうです。


ソロモンで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番

柔和で優しさに溢れた調べの第1主題で始まる第1楽章。
主題の冒頭は静かに思索をするかのようにゆっくりと始まり
アルペッジョの後からは優しさに溢れた調べに。
主旋律を奏する右手は限りなく優しく素朴な雰囲気。
ソロモンの素晴らしさがこの旋律に現れているように感じます。
このような美しい抒情性に満ちた旋律がベートーヴェンの作品にあったのか、と思い巡らしてしまいます。
とにかく美しい。絶世の美しさとして響き染み入る調べ。
経過部にアルペッジョが現れ高揚感を伴う趣に。
第2主題では愛くるしさを感じる調べ。
展開部に入り、第1主題の冒頭が力強い趣で。
左手が奏する楽章冒頭の旋律には低音域に響きが加わり海原を連想するような動き。
数回繰り返し奏され再現部に。
コーダはアルペッジョに始まり美しく奏される第1主題の冒頭。
一時、高潮し再び戻る静けさ。
力強いアルペッジョが再び現れ多様な変化を見せつつ静かに閉じられる第1楽章。

フォルテとピアノが対照的に奏されるリズミカルな主題で始まる第2楽章。
活発、躍動的な雰囲気の主題。
この主題は嘗て聴いたことがある記憶が甦って来ました。
ソナタ番号は記憶にありませんでしたが独特な雰囲気で印象に残る主題です。
続いて新しい旋律が現れ軽快に。
力強く打ち込まれるような打鍵を経て軽快で簡潔な短いトリオ。
第3部を経てコーダは低音域が響き渡り
雪崩れるように奏され閉じられる第2楽章。

第3楽章は序奏部と主部を分けアダージョで始まる序奏を第3楽章、フーガで始まる主部を第4楽章として記載されている演奏が多いように思います。
因みに主として聴いたソロモン。及び部分的に聴いたバックハウス。
いずれも4楽章構成の記載になっていましたのでそれに準じて。

静かに暗鬱な雰囲気の調べで始まるアダージョの第3楽章。
続く、翳りを帯びた「嘆きの歌(Klagender Gesang)」の静かな旋律。
右手の高域の振り下ろすような和音の打鍵が不安感を抱かせ印象的に耳に届きます。
今にも音楽が止まりそうな遅い速度で歌われる「嘆きの歌」。
耳を傾けていると陰鬱な悲哀の歌の中にも美しさが漂っているように感じられます。
ソロモンの紡ぎ出す演奏では真に「美しい歌」。

フーガで始まる第4楽章。
3声のフーガが織りなす主題の旋律も美しさを感じます。
フーガのドラマティックな盛り上がりを経て現れる前楽章の「嘆きの歌」の旋律。
この旋律には「疲れ果て、嘆きつつ」と記されているそうです。
陰鬱さを感じることはなく前楽章同様に「美しい歌」として耳に響く調べです。
歌の後に和音が一音一音ゆっくりと打たれ
次第に音力を強めつつ重厚な響きでクレッシェンドを。
「嘆きの歌」が終わり再び戻る冒頭のフーガ。
このフーガの冒頭には「次第に元気を取り戻しながら」とイタリア語で記されているそうです。
「嘆きの歌」の心情を打ち消すかのように力強く明るい雰囲気で奏される主題。
この主題は冒頭のフーガの主題が転回され、テノールから始まり、ソプラノの応答、そしてバスの3声のフーガになっているそうです。
明朗で雄大な趣すら感じるフーガ。
溢れる歓び、明るさ。大きなスケール感のうちに迎える曲の終わり。


第30番も好きだけれど・・・31番も良いですね。
甲乙を付けがたく惹かれる2つのソナタ。
心に沁みる曲、というのが第31番を耳にしての印象。
曲の終始、これほど心に染み入るソナタは・・・感無量。

この第31番をソロモンの演奏で聴くことに躊躇をしました。
最近は先ず第1にソロモンの演奏で聴き、次に他のピアニストの演奏を聴くのが習慣のようになってきました。
増してやお気に入りになってきた第31番は是非とも最初にソロモンで聴きたいと募る想い。

余談で長くなりそうですが。
以前も綴りましたが、1951年からソロモンはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音を始めたそうです。
シュナーベルのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を企画・製作をしたウォルター・レッグは本格的にLPレコードの生産を開始したEMIのために、1952年に新たなベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音を企画したそうです。
シュナーベルの後継者として演奏者に選ばれたのがソロモンだったとのことです。
当時、ソロモンはピアニストとして既に英国で確固たる地位を築いていたそうです。
そのような経緯で全集の録音を開始したソロモン。
1956年の夏に脳梗塞により左手の第4、第5指の自由が利かない事に気付いたとのことです。
ソナタ第31番の終楽章で指が滑り、一部欠落し修正されないままだったそうです。
脳梗塞により引退を余儀なくされたソロモンのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は未完に終わったとのこと。
この第31番に耳を傾けていて私には終楽章のミスにはまったく気付くことはありませんでした。

ソロモンの演奏で聴き、大好きになったソナタ第31番。
このソナタでもソロモンの素朴な落ち着きを感じさせるピアニズムに好感を抱きます。
譜面と誠実に向き合い真摯な演奏。
ベートーヴェンと対話をしつつ一音一音、心を込め紡ぎ出される調べ。
当然のことながらベートーヴェン自身の演奏をきいたことはありませんが
恰も実際にベートーヴェンの心の語り掛けを聴いているような錯覚に陥ります。
ベートーヴェンの心の代弁者として最高のソロモン、と思うこの頃です。

                

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2018.02/10(Sat)

Op.426:ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第21番≪ワルトシュタイン≫」 by ソロモン

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
ベートーヴェンのソナタの初期、中期、後期を一貫して聴くことなく
行きつ戻りつをしています。
今日はベートーヴェンのピアノ・ソナタ中期に属する第21番「ワルトシュタイン」を聴いてみました。
ピアノは前回同様、ソロモンです。
最近、求めるディスクはソロモンばかりになっています。
ソロモンばかり、とは言え取り扱いされているディスクが少なく残念至極なのですが。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第21番ワルトシュタイン
ソロモン~EMIレコーディングスより

426 ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第21番「ワルトシュタイン」ソロモンEMIレコーディングス(7CD
(収録曲)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」(1951年録音)
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」1952年録音)
ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」(1952年録音)
ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a「告別」(1952年録音)


第1楽章:Allegro con brio ハ長調 4/4拍子 ハ長調
第2楽章:(導入部)Introduzione. Adagio molto ヘ長調 6/8拍子
    (主部)Rondo:Allegretto moderato – Prestissimoハ長調2/4拍子



作曲されたのは1803年から。翌1804年夏に完成されたそうです。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズが連続していますので
内容も重複する点が多くなりますが、いつもの自分の復習を兼ねて。

この時期のベートーヴェンには素晴らしい飛躍があり、作曲された作品にはヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」、交響曲題3番、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」、歌劇では「フィデリオ」などの大作品がひしめいているとのことです。

ベートーヴェンは独自の様式を築き上げ初期とは完全に決別をしたそうです。
この曲では今までの作品に見られなかった壮麗な演奏技巧を盛り大きな演奏効果を創り出したとのこと。

曲の構成は2楽章とのことですが、第2楽章の導入部を一つの楽章として扱い3楽章構成とされることもあるようです。
3楽章構成としているものが多いように感じますが。
ソロモンではブックレットの記載では2楽章構成になっていますので、その前提で綴っています。

楽章構成ですがベートーヴェンの初めの計画では3楽章構成になる予定だったそうです。
初めの計画では、第2楽章にロンド形式の「アンダンテ」 ヘ長調 を入れる筈だったとのことですが、全曲の傾向が冗長になるとの忠告を受けたそうです。
そのために現在、このソナタの第2楽章の初めに置かれている 「アダージョ・モルト」 の導入部が新たに付けられたとのことです。
省略された 「アンダンテ」 は1805年に独立した小曲として出版され、1807年にブライトコプフから出版された時には「アンダンテ・ファボリ」の名称が与えられたそうです。
尚、第2楽章の冒頭に置かれている「アダージョ・モルト」の導入部が他の部分とは異なった時期に書かれたことは、確実な資料によることがセイヤーらにより指摘されているとのことです。

初版は1805年にウィーンの美術工芸社から「大ソナタ」のタイトルを付けて出版されたそうです。
自筆譜はチューリッヒのボドマー・コレクションに保存。

献呈はワルトシュタイン伯爵に。
426 ベートーヴェン.ピアノ.ソナタ第21番 ワルトシュタイン伯爵 Graf Ferdinand Ernst Joseph Gabriel von Waldstein
Graf Ferdinand Ernst Joseph Gabriel von Waldstein und Wartenberg
(1762年3月24日-1823年5月26日)

自分のメモとして以下、長くなりますが。
ベートーヴェンは1788年1月にブロイニング家でウィーン出身のフェルディナント・ワルトシュタイン伯爵と知り合ったそうです。
当時、ベートーヴェンは18歳頃でしょうか。
尚、前年の夏、7月17日にベートーヴェンの母マリア・マグダレーナが死去したとのこと。
ワルトシュタイン伯爵は非常に音楽が好きでベートーヴェンの才能を深く愛し、ベートーヴェンの成長に大きな役割を果たしたそうです。
経済的援助も大きかったそうですが、それ以上に教養ある年長者として精神面に資するところが大きかった、ようです。

1792年にハイドンがボンを訪問し、ベートーヴェンの弟子入りを快諾したのが7月だったそうです。
そして11月2日にベートーヴェンはウィーンに向けボンを発ち、11月10日ウィーンに到着。
ベートーヴェンはハイドンに作曲を師事したとのこと。
尚、その翌12月18日に父ヨーハンの死去。
ベートーヴェンがウィーンへ発つ折りにワルトシュタイン伯爵は1792年10月、記念帳に書き込んだそうです。
「親愛なるベートーヴェンへ!」で始まり「あなたの親友ワルトシュタイン」で終わる伯爵の一筆。
「モーツァルトの精神をハイドンから受け取りなさい」との一文があるそうです。
当時、ベートーヴェン22歳。
ベートーヴェンの未来を祝福したのもワルトシュタイン伯爵だったそうです。

426ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第21番ワルトシュタイン 伯爵からベートーヴェンの記念帳に(1792年ベートーヴェン、ウィーンへ旅立ちに寄せて)
(1792年10月、記念帳に綴られたワルトシュタイン伯爵の言葉)

ドイツ語は解りませんが記念帳への伯爵の言葉、ベートーヴェンに寄せる伯爵の想いに感銘を受けつつ、このソナタに耳を傾けていました。


ソロモンで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」

左手で小刻み奏される和音で闊達な趣で始まる第1楽章。
第1主題が現れ高音域で光り輝くように。
フォルテッィシモで高揚する雰囲気、ドラマティックな第1主題。
次に現れる第2主題の穏やかさ。
漂う抒情的で味わい深い雰囲気。
この曲の中での安息を想わせるような調べでしょうか。
新しい楽想の出現で右手は早いパッセージを奏し続け
恰も降り注ぐ光のよう。
再び華麗な雰囲が戻り、劇的な力強さも。
展開部では右手で光り輝くように奏される第1主題の展開。
活気に溢れ、現れる第2主題の変容からは長閑な雰囲気が。
再び第1主題が力強く奏され再現部に。
固唾を呑むような展開部でもソロモンのピアニズムはあくまで爽やかに響くのが印象的。
コーダは長いようです。
現れる第1主題。次に第2主題。
再び現れる第1主題の左手の強く弾むような打鍵。
右手は第1主題の変容を劇的に醸し出しているようにも。
第2主題の穏やかな調べ静けさを挟み、闊達に力強く閉じられる第1楽章。

第2楽章の導入部は28小節の短いものだそうです。
寂しげな深い心情が込められた導入部に対してのエルターラインの言葉。
「天使の微笑みが俄かに雲に覆われたよう」

導入部の途切れ途切れに、たどたどしく奏される主題でで始まる第2楽章。
左手と右手のポツリポツリとした語り合い。
左手の伴奏に右手は歌うように。
静かで、寂しげな雰囲気。素朴な美しさとして心に染み入るようです。
導入部を経て主部に入り現れるロンド主題。
抒情的な趣のこのロンド主題の旋律はベートーヴェンの生地であるボン地方の民謡から取られたとの説もあるそうです。
平和な佇まいを見せる調べ。
親しみを感じる旋律。
この平穏な趣から経過部では激しく高揚するように現れるロンド主題の冒頭。
華々しく、力強い趣からは前進をする勇士の姿を連想してしまいます。
コーダではロンド主題の華麗な変容のように。
音力が次第に強くなりつつ長いトリルに。
華麗に燦然とした輝きを放しつつ迎える曲の終わり。


ソロモンのピアノの明るい軽やかさ。
混濁することのない清明さを感じる音色。
優しさと明るさ。そして滑るような軽妙さ。
第1楽章のドラマティックさを感じさせる第1主題でも、打鍵はあくまでも自然体に感じられます。
第2楽章の導入部では瞑想的な雰囲気すら感じます。
心の琴線に触れるソロモンのピアニズムで最も印象的なのが、この導入部です。

ソロモンの演奏でベートーヴェンのソナタ以外の作品を聴いても
五月晴れの空気の中をそっと通り過ぎて行くような、そよ風を連想してしまいます。
そのピアニズムもまた、そよ風のように清明に感じられます。

久し振りに聴いた「ワルトシュタイン・ソナタ」。
嘗て聴いた時には活発な曲、との印象しか残っていませんでした。
第2楽章は記憶から抜け落ちていました。
今回、聴いてみて第2楽章が心に残ります。
導入部とロンド主題に惹かれている自分がいました。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でお気に入りのソナタの仲間入りをしたようです。

                

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20:22  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

2018.02/03(Sat)

Op.425 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第7番」 by ソロモン

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
今回は初期のピアノ・ソナタ作品10の3曲から作品10-3、第7番を。
ピアノは前回、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」を聴き心に残ったソロモンです。

過日、いつもお邪魔をさせていただいているブログを訪問させていただきソロモンの名前を目にしました。
以来、聴いてみたいと思っていたピアニストの一人になりました。
初めて入手したソロモンのディスクからです。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第7番 作品10-3
ソロモンベートーヴェン ピアノ・ソナタ集より

425ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第7番 ソロモン:ソナタ集2  Sonatas 7, 8, 13, & 14
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3
ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 「悲愴」Op.13
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.21-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 「月光」Op.27-2

ソロモン・カットナー(P)
(録音:1950年代 第7番ステレオ、他はモノラル)

第1楽章:Presto ニ長調 2/2拍子
第2楽章:Largo e mesto ニ短調 6/8拍子
第3楽章:Menuetto/Trio: Allegro ニ長調 3/4拍子
第4楽章:Rondo: Allegro ニ長調 4/4拍子


作品10のソナタでは一昨年の秋頃に作品10-2、第5番が当拙ブログにシュナーベルのピアノで登場していました。
当時、書いたことと重複しますがいつもの自分の復習を兼ねて。

作品10の3曲については自筆譜が紛失し作曲時期は不明だそうです。
ノッテポームはベートーヴェンのソナタのスケッチから判断し
1796年から98年の夏までの間に3つのソナタが完成したと推定しているとのことです。
ベートーヴェン、26歳から28歳頃に書かれた作品でしょうか。

作品10が作曲された前後のベートーヴェンの年譜。メモとして。
●1795年、25歳。ブルク劇場の慈善音楽会(3月29日-31日)でピアノ協奏曲第2番で公開デヴュー。
8月30日頃、ハイドンの前で作品2の3つのピアノ・ソナタを演奏。
12月18日、ハイドン主催の音楽会でピアノ協奏曲第1番を演奏。
年末。ベートーヴェンはリヒノフスキー侯と共に第1回プラハ旅行。
●翌1796年、26歳。2月に第2回プラハ旅行。
プラハからはベートーヴェン単独でドレスデン、ライプツィヒ、ベルリンに足を延ばし約半年にわたる大旅行。
3つのピアノ・ソナタ作品2の出版。
●1798年、27歳。名ヴァイオリニスト、クロイツェルと知り合う。
第3回プラハ旅行。


さて、作品10の3曲のソナタのなかでこのソナタは一般的に最も優れた作品とされているそうです。
各ソナタの特徴は
作品10-1、第5番 と 作品10-2、第6番 の2曲はベートーヴェンとしては初めての3楽章構成で、この作品10-3、第7番は4楽章構成に戻り、音楽も拡大されたものになっているそうです。

作品10の3曲は1798年9月、ウィーンのエーダーにより出版。

作品10の3曲、献呈はブラウン伯爵夫人アンナ・マルガレーテに。
尚、伯爵夫人にはこの3つののソナタの他にベートーヴェンは数曲を贈ったそうです。
ヨハン・ゲオルグ伯爵と1796年に結婚をした夫人は夫とともに若いベートーヴェンの熱心な支持者だったそうです。
ベートーヴェンは伯爵に作品9の3曲の弦楽三重奏曲を「私の最も優秀な作品を、私の芸術の最高の愛護者に捧げる」と記し献呈をしているとのことです。
1803年5月13日にウィーンで他界をした夫人の死を悼み、同年ベートーヴェンは歌曲「ゲレルトによる6つの歌」作品48 を作曲して伯爵に贈ったとそうです。
歌曲「ゲレルトによる6つの歌」では第4曲の『自然における神の栄光』だけはLP時代にプライの歌で聴き馴染んでいましたが他5曲にはじっくり耳を傾けたことがありませんでした。
この機会に聴いてみたく思います。


ソロモンのピアノで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第7番

活発なユニゾンで奏される第1主題で始まる第1楽章。
この主題は第1楽章中の至るところに現れ重要な役割を果たしているとのこと。
続く経過句では華麗な雰囲気が漂い。
冒頭の第1主題のユニゾンの動機が高域で奏され可憐な雰囲気も漂っているようにも。
経過部を終え、新しく顔を見せる美しい調べ。
そして第2主題が現れ軽快な趣に。
展開部では第1主題が弱音から強音に力強さを伴っての展開。
ソロモンの打鍵が印象的。軽妙に弾むピアノ。
再現部を経てコーダでは力強くも華麗に閉じられる第1楽章。
終始、留まることなく闊歩をするように進む明朗で活発な楽章でしょうか。

第2楽章はベートーヴェンの作品の中では最も深刻な表情をもった音楽だそうです。
ベートーヴェンが Largo をピアノ・ソナタの独立した楽章に用いたのはこのソナタが最後とのこと。
ベッカーは次にように述べているそうです。
「ラルゴは最も良い精分を搾取されて、結局ベートーヴェンにより棄てられた」

前楽章の軽妙さとは打って変わり、物憂げに奏され始まる第2楽章。
一音一音にソロモンは深い想いを込めるかのようにゆっくりと奏される第1主題。
重く物悲しい雰囲気に包まれた主題。
哀愁、悲痛さも感じられる主題。です
第2主題になり美しい調べに覚醒するような。
ゆっくりと静かに奏されるこの美しい旋律。
美しく、哀愁も漂うような調べ。ソロモンの端正なピアニズム。
展開部になり重々しい主題。
ここでも美しさが漂う旋律。
再現部を経てコーダに。
第1主題が低音域に重々しく奏され、高音域は細やかに静かに。
左手は休止を。右手の動きが止まるかのように途切れ途切れに。
再び左手も現れ元の姿に。
右手がアルペッジョ風に速い動きを見せ、左手は重々しく。
弱々しい呟きのようにポツリポツリと呟くピアノ。
そっと静かに消え入るように閉じられる第2楽章。

柔らかく穏やかに奏され始まる第3楽章。
このメヌエット主題の柔和な優しさに前楽章の重々しさが解消され寛ぎを感じるようです。
中間で顔を見せるカノン風な旋律。
そしてトリルで奏される主題の愛らしさ。
ウットリ聴き入っているとトリオに。
強い印象を受けるトリオです。
右手の軽やかで愛らしい動きに、左手の深く打ち込むような打鍵。
右手と左手の応答がとても印象的。
メヌエットの穏やかで愛らしい調べのうちに閉じられる第3楽章。

第4楽章は作品10の他の2曲と異なり、以前の4楽章構成に戻り
またこの終楽章もソナタ形式ではなくロンド形式に戻っているとのこと。

ロンド主題で始まる第4楽章。
耳慣れたロンドとは異なり戸惑い、模索をしているような雰囲気のロンド主題。
第2主題は流麗で生き生きとした趣で。
この主題が力強く奏された後にロンド主題の展開に入るとのこと。
ロンド主題は変奏されつつ曲は進みコーダに。
流麗さを感じさせ明快に迎える曲の終わり。


この第7番のソナタは初めて聴くように思います。
ソロモンの演奏で特に印象に残るのは先ず第1楽章の展開部。
一音一音に力が込められ、強弱の明晰さ、右手と左手の動きの鮮明さ、音の切れの良さ。
明るく活発な楽章がより活き活きと感じられるようです。
お気に入りの第2楽章は第1主題、第2主題ともに聴き入ってしまうばかり。
第2主題の美しい調べを奏する端正なピアニズム。
このソナタの中で楽想とともに最も印象に残ったのは第3楽章のトリオでしょうか。
右手で奏される軽やかさ、愛らしさに対し、左手が深く打ち込む打鍵。
この対比、右手と左手の応答がとても新鮮なものとして心に残ります。

このソナタを聴きつつソロモンの演奏から
磨き上げられた透明ガラスを通し外の景色を眺めるかのように
音が明晰に響いてくるように感じます。
個性的な演奏というよりオーソドックスな演奏の類に入るかも知れません。
ですが、ソロモンが紡ぎ出す一音一音にキラリと輝くものを感じています。

ソロモンはベートーヴェンのソナタ全集を完成させることができなかったとのことですが
残されたソナタの一曲でも多くを聴いてみたく思っています。

ショップ・サイトの記載によると
ソロモンは1951年からベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音に取り組んだそうです。
1956年夏に脳梗塞により左手の第4、第5指が不自由になったことに気付いたとのこと。
ソナタ第31番の終楽章で指が滑り、一部が欠落し修正されないままだったそうです。
ソロモンはの脳梗塞により引退。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は未完に終わった、とのことです。
1988年2月2日に87歳で逝去されたそうですので昨日が命日だったのですね。

               

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2018.01/27(Sat)

Op.424 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第23番≪熱情≫」 by バックハウス;ポリーニ

執拗に続いている「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。
今回は第23番熱情」です。
バックハウスを主として、ポリーニ、他で聴いてみました。


ベトーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番熱情
バックハウスベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より

424:ベートーヴェン:ピアノ.ソナタ第23番 バックハウスピアノ・ソナタ全集(新盤)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情]
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79「かっこう」
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 Op..81a「告別」
(録音:1969年 ジェノヴァ ヴィクトリア・ホール)


ポリーニベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より
424:ベートーヴェン: ピアノ.ソナタ第23番 ポリーニ ピアノ・ソナタ全集(8CD)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79
(録音:2002年6月 ミュンヘン ヘラクレス・ザール)


第1楽章:Allegro assai へ短調 12/8拍子
第2楽章:Andante con moto 変ニ長調 2/4拍子
第3楽章:Allegro ma non troppo – Presto へ短調 2/4拍子


作曲されたのは1804年から1805年のようです。
ベートーヴェン、34~5歳頃でしょうか。
ベートーヴェン中期の大傑作の一つとのこと。
この同じ時期に交響曲第5番に着手していたそうです。
曲の完成については多々の説があり確定はできないそうですが
第1楽章、第2楽章及び第3楽章の冒頭の部分のスケッチは歌劇「フィデリオ」のスケッチ帳の中に現れていることから、曲の着想は1804年と考えられるそうです。
「フィデリオ」が1806年に完成した頃に、このソナタ第23番も完成されたと推測されるようです。
1805年4月18日にベートーヴェンは曲の完成を見越した書簡を出版元に送っているとのこと。

曲の出版は約2年後の1807年2月に ソナタ 第54番 としてウィーンの美術工芸社より。
この時、表紙に記された ピアノ・ソナタ第54番作品57 についての根拠は不明とのことです。

副題の「熱情」はハンブルクの出版元でピアノ連弾用の編曲版の出版時に名付け、通称として今日まで続いているそうです。
自筆譜はパリ音楽院に保存。

献呈はフランツ・フォン・ブルンスヴィック伯爵に。

424:ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番Graf Franz Brunsvik de Korompa
Graf Franz Brunsvik de Korompa
(1877年9月25日-1849年10月23日)

伯爵は音楽好きであり、特にチェロの演奏は優れていたそうです。
また、ベートーヴェンの音楽に心から傾倒をしていたとのことです。
伯爵とその令嬢でテレーゼ(1777-1861年)とヨゼフィーネ(1779-1821年)。
この伯爵一家は1799年以来、ベートーヴェンとの付き合いが深く、各人がベートーヴェンの生涯に大きな意味を持っていたとのこと。

このソナタのエピソードとして。
ラズモフスキー公の司書ビゴ―と1804年に結婚をしたの妻のマリーは優秀なピアニストだったそうです。
彼女はハイドン、サリエリ、ベートーヴェンと交流があり、後年メンデルスゾーンにピアノを教えたとのことです。
ベートーヴェンが1806年の秋、リヒノフスキー侯爵邸からウィーンに帰る途中で雨でずぶ濡れになり、所持していたこのソナタ第23番の草稿も濡れてしまったそうです。
帰宅したベートーヴェンが雨に濡れた楽譜をマリーに見せたところ、彼女はその音楽に引き込まれ、初見で完全に弾きベートーヴェンは大いに喜んだそうです。
その自筆譜は楽譜の出版後にマリーに贈られたとのことです。


バックハウスで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情

威厳のある旋律とトリルで奏される旋律で始まる第1楽章。
この第1主題に漂うの簡潔さと緊張感。
主題を経て渾身の力強さを込めた打鍵の和音。
第2主題になり激情の波も静まり漂う穏やかさ。
光明を感じさせるような第2主題。
展開部では滾る熾烈さ。
バックハウスの打鍵からは気迫を感じます。
右手及び左手にドラマティックに奏される主題。
荒々しい闘争感も漂っているかのよう。
現れる第2主題にホッとするような。
アルペッジョを経て再現部に。
コーダでが奏される2つの主題の後に激しい力を感じさせ
束の間の落ち着きを経て再び音力が強くなり増大する激情感。
音力を落として弱くなり閉じられる第1楽章。

第2楽章は主題と3つの変奏から構成されているそうです。
ゆっくりと静かに奏し始められる第2楽章。
簡素な主題。
この主題からは思索をするかのような印象を受けるます。
第1変奏では主題を奏する右手。シンコペーションで相槌を打つような左手が印象的。
第2変奏は旋律は細かく奏され右手の主題は小川の流れのようにも。
左手は素直な伴奏を。
美しさを感じさせる変奏です。
第3変奏では前変奏よりも更に細やかな動きに。
主題に漂う愛らしい趣。
変奏を終え元のテンポで主題を回想。
一瞬の短いアルペッジョを境にそのまま第3楽章に。

第2楽章から突入する第3楽章。
音力が上がり激しく強いキーの連打で始まる第3楽章。
続く第1主題に旋律は感じられず音が単に動き回るかのような雰囲気。
高揚する力強さ。
第2主題も第1主題同様に機械的な趣で。
展開部で現れる第1主題。
次に速度を速め音力を上げ激しく高揚し新しい楽想の出現。
第1主題の展開になり力が弱まり再現部に。
コーダでは展開部で現れた新しい楽想が力強く奏され
第1主題は迸るような展開で。
全エネルギ―を注ぎ込むように奏され渾身の力で迎える曲の終わり。


この曲の熾烈さ、壮絶さにただただ圧倒されています。
始めバックハウスで聴き、次にポリーニで聴いてみました。
2人の演奏を聴き、他の演奏にも興味が湧き手元にあるディスクをほぼ動員。
この数日来、取り敢えず10名のピアニストの演奏で第23番ばかりを聴いてました。
欲張り過ぎ・・・また肝心なシュナーベルを忘れてしまいましたが。

印象に残る演奏はやはりお気に入りのピアニストや好印象を受けたピアニストです。
今回のバックハウス、そして他にはアラウでありケンプ。
過日、ソナタ第14番で強い印象を受けたユストゥス・フランツ。
そしてソロモン。
上記とは対照的な演奏として感じられたポリーニ
中庸のピアニストの演奏は印象としてあまり残るものがないようです。

最初に聴いたバックハウスとポリーニ
バックハウスは嘗ても書きましたが個人的な想い出の深いピアニストです。
昔々のLP時代に初めてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(分売で毎月、求めたもの)を手にしたのがバックハウスでした。
全曲をじっくり聴くことなく・・・気が付けばCD時代に移行をしてしまっていました。
昨年、取り寄せ注文にてショップに依頼をしていたセットで、入荷を諦めかけていたところに入荷通知があり、届いたこともあり喜びも一塩の気分で聴き始めたバックハウスです。
一方のポリーニは特別に関心のあるピアニストではなかったのですが、ベートーヴェンのソナタ全集を約40年の年月をかけて録音した、とのことで関心を抱き聴きたくなった(単なる好奇心?)セットです。
このお二人の演奏、対照的、極端に対照的と感じています。

バックハウスはベートーヴェンからツェル二ー、リストの直系の弟子とのこと。
先ず、バックハウスのセットを手にして一番最初に聴いたのがこの第23番です。
一音一音は地をしっかり踏みしめるような打鍵。
剛健でもあり、言葉の悪い表現ですがゴツゴツとした無骨さ。
それが私にとってはバックハウスの魅力かも知れません。
第1、第3楽章の激しさを感情的ではなく、あくまで力強いキー・タッチが好印象として残ります。
第2楽章は、他の大方のピアニストが美しさを前面に表現する傾向を感じますが、バックハウスの演奏からは一つの音を吟味しつつ、力強い思索的な感じを受けます。
バックハウスのピアニズムは私にとっては魅力があります。

バックハウスとは対照的、極端に対照的に感じたポリーニ。
昨年末よりスティーブン・コワセヴィッチとリチャード・グードの全集と並行をして聴いていたのがポリーニです。
こちらの3人の全集もまだ聴き終えてはいないのですが。
コワセヴィッチ、グードも聴いていてハッとするものを感じる瞬間があります。
数曲を聴いてきてポリーニには、それが感じられないのです。
「どうして?」と湧き上がった疑問。
では、第23番はどうなのか?・・・と言う訳で聴いてみました。

流線的、淀みなく流れる川のようなポリーニのピアニズム。
スムーズなタッチで曲が流れ、旋律線が克明に浮かび上がらないようにも感じたりしています。
1曲、1曲を聴き進み、どの曲においても気が付くと曲が終了。
流れ去ってしまうような音楽。
偉ぶった酷評になってしまっているとしたら反省を。
この第23番の第2楽章ではポリーニが紡ぎ出す美しい楽想。
この楽章の主題を奏するポリーニには魅力を感じます。

それにしても対照的な二人のピア二スト。
バックハウスの演奏が楷書体であるなら
ポリーニは草書体のようにも感じています。

今回、第23番を通してソロモンにも目覚めたようです。


蛇足。いつものオバサンの井戸端会議。メモとして。

ベートーヴェンは1803年にエラール製のピアノを贈呈されたそうです
1803年から1816年頃に作曲されたベートーヴェンのピアノ作品は音域が拡大されたエラール製のピアノ(F₁~c⁴、68鍵)を使用していたとのこと。
ソナタ第21番「ワルトシュタイン」では音域の広さが反映されているそうです。
第23番「熱情」の終楽章において、このピアノの最高音である c⁴ が多用されているとのことです。                                 
                

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21:30  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

2018.01/20(Sat)

Op.423 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第12番」 by ケンプ;コワセヴィッチ

今日もまた「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。

聴きたい目的の作品を聴いていて同じディスクに収録されている他の曲に耳を奪われてしまうことがあります。
そして日数が経過しても、旋律を覚えている訳でもないのに気になってしまう。
今日はそのような曲の中からベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番です。
ケンプのピアノを主として。コワセヴィッチの2種で。


ベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番
ヴィルヘルム・ケンプベートーヴェンピアノ・ソナタ全集より

418:ベートーヴェン ピアノソナタ第13番 ケンプ~ピアノ・ソナタ全集
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調op.26
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調op.27-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調op.27-2 「月光」
ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調op.28 「田園」
(録音:第12番 1964年11月)

スティーヴン・コワセヴィッチ~ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集&パがテル集より
(HMV)423ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第12番 ピアノ・ソナタ全集、バガテル集 スティーヴン・コワセヴィチ(9CD)
収録曲はケンプと同曲、曲順も同じ。
こちらには第12番に副題「葬送」が付けられています。
(録音:1999年)

第1楽章:Andante con variazioni 変イ長調 3/8拍子
第2楽章:Scherzo/Trio: Allegro molto 変イ長調 3/4拍子
第3楽章:Marcia funebre sulla morte d’un eroe 変イ短調 4/4拍子
第4楽章:Allegro変イ長調 2/4拍子


作曲されたのは1800年から1801年と推定されているそうです。
ベートーヴェンのスケッチブックを検討したノッテポームによると
1800年から各楽章を別々に書き、1801年に完成されたとのことです。

第1楽章の着想はすでに1795年から96年頃、スケッチにロ短調の調性で現れているそうです。
ノッテポームによると第4楽章はこのソナタを考えて作曲したものとは言えない、とのこと。
ソナタ全曲の形を整えることは1801年になって思い付いた、と推し量ることができるようです。

曲は4楽章構成でソナタ形式の楽章は一つもないそうです。
第1楽章には変奏曲を置き、第2楽章にはスケルツォ、そして第3楽章に「葬送行進曲」が置かれているとのことです。
これはベートーヴェンがまとめてソナタに組み立てるつもりがなかったことの表れのようです。
敢えて、ひとまとめにして異例なソナタを書き上げたことは、ベートーヴェンの積極的な創意の現れになっているようです。

1800年を境としてベートーヴェンのあらゆる作品に大胆な発想が現れてくるそうです。
ピアノ・ソナタのジャンルでは先ずこの曲に大胆な発想を認めることができるとのこと。

曲の献呈はカール・フォン・リヒノフスキー侯爵に。
自筆譜はベルリンの国立図書館に保存されているとのことです。


ケンプの演奏で聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番
コワセヴィッチは後述のまとめの方に)

第1楽章は主題と5つの変奏の構成になっているそうです。
主題は最初の8小節。
5つの変奏では小節数24小節、拍子は3/8拍子、テンポもすべて同じで音型変奏になるそうです。

柔和で優しい趣を湛えた主題で始まる第1楽章。
嘗て聴いたことがある主題ですが、曲番号と旋律が一致しなかった曲です。
素朴さや親和感を抱くこの主題は印象的で記憶に刻まれます。
第1変奏では主題の音型をレガート風に奏され夢見るような趣も。
第2変奏、左手の低音域に移った主題からは重々しく、心持厳しさを感じるよう。
第3変奏、変奏主題を奏する右手からは今までの柔和な雰囲気が消え、暗い翳りが。
第4変奏、左手がシンコペーションで主題の変奏を奏し、右手は伴奏に。
陽気な雰囲気でもあり、忙しげにも感じられる変奏。
第5変奏、主題の調べは波が戯れるかのように細やかに刻まれ、左手が奏する主題に右手はさざ波のような伴奏を。
5つの変奏のなかではこの変奏が多様に変容するよう。
コーダでも主題の変奏がゆっくり奏され静かに閉じられる第1楽章。

一転して前楽章とは対照的に明るい雰囲気のスケルツォ主題で始まる第2楽章。
中間部では音力が大きくなり力を増し情熱的な趣に。
そしてトリオでは明るく伸びやか。
再びスケルツォに戻り、明るい活力の内に終わる第2楽章。

第3楽章、速度記号の代わりに「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」との記述。
「ある英雄」を誰を指すのかは不明で抽象的な意味で使われているようです。
当時、フェルディナント・パエールの歌劇『アキレス』の中の「葬送行進曲」が人気を博していたそうです。
それにベートーヴェンが刺激され、この葬送行進曲を書いたという説も一般化したことがあったとのことですが、ノッテポームは『アキレス』のウィーン初演がベートーヴェンのこのソナタの作曲より後とのことを根拠に否定しているそうです。
また、その反対を主張する人もいるとのこと。
尚、ベートーヴェンが交響曲第3番第2楽章で葬送行進曲を書いたのは、このソナタの3年後になるそうです。

重々しく厳かな調べの主題。
厳かな葬送の調べで始まる第3楽章。
トリオでは前半、後半は各4小節で反復する短いものだそうです。     
強い打鍵のトレモロとスタッカートの和音が交互に現れ
ドラマティックな雰囲気が生み出されているようです。
トレモロとトスタッカートで奏されるのは葬送の太鼓と金管の響きを表したもの、といわれているとのこと。
コーダでは音力を落としつつ奏され静かに閉じられる第3楽章。

前楽章と対照的なロンド主題で始まる第4楽章。
細やかな動きのロンド主題から第2主題に。
第2主題の明朗なスタッカート。
第3主題もロンド主題のように細やかな動きで。
流動的な旋律の動きで進められる曲。
コーダでは右手が煌めくような旋律を奏し、静かに迎える曲の終わり。


第1楽章の柔和で優しい雰囲気。
第2楽章のスケルツォでの明朗な活力。
第3楽章の厳かな「暗」
第4楽章の流動性のある調べ。
この曲の異例な構成に初めは寄木細工を思い浮かべてしまいましたが
さにあらずで、変化に富む曲でしょうか。
印象に残るのは第1楽章と第3楽章。

ケンプのベートーヴェン、ソナタ全集より過日、作品27の2曲を聴くために取り出したこの一枚。
目的の2曲を挟んで、第1曲目がこの第12番。第4曲目に収録されているのが第15番。
目的の作品27の2曲とともに第12番、第15番も印象に残っていました。
殊に第12番は気になる曲になり、ケンプの他に、今回は関心を抱いていているピアニストの一人コワセヴィッチの演奏も聴いてみました。
コワセヴィッチの方はせめて第1楽章だけでも・・・と聴き始めたのですが、最後まで聴き入ってしまいました。

ケンプとコワセヴィッチ
対照的な演奏でしょうか。
ケンプの教科書的と言いうと表現は悪いかも知れませんが、堅固しっかりとした演奏。
真摯に楽譜に対峙するような印象を受けます。
この曲でコワセヴィッチの演奏を聴き、ケンプのピア二ズムに朴訥さを感じるようになりました。
味わいのある、じっくりと聴かせてくれる朴訥さのようなものを。
お気に入りのケンプにまた一つの魅力が増えたようです。

コワセヴィッチ(と、リチャード・グード)の演奏は、いつもお邪魔をさせていただいているブログを拝読して聴きたくなり昨年求めた全集です。
まだ全集を聴き終えていないのですが、コワセヴィッチで聴くソナタ第12番は
感情を豊かに織り込んだ表現のように感じられます。
第1楽章の各変奏から特にその表現力に耳を奪われるものがありました。
第1楽章に漂う瞑想的な趣に聴き入り
曲を聴き進むうちにドラマティックな趣も。
ダイナミック、横溢するエネルギーを感じる演奏のように想われます。
まだ全集の途中までしか聴いていないのですが、第32番の演奏を想像し興味が駆り立てられるようです。

コワセヴィッチを聴き、ケンプの演奏に新たな魅力を見い出し
ケンプの演奏を聴き、コワセヴィッチの魅力にも気付かされたような気がしています。

                

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タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第12番 ケンプ リヒノフスキー侯爵 コワセヴィッチ

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