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2018.09/22(Sat)

Op.458 ベートーヴェン:「魔笛の主題による12の変奏曲」 by グルダ&フルニエ

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」。
今日はモーツァルトの歌劇「魔笛」よりチェロ用の変奏曲より
魔笛に主題による12の変奏曲」を聴いてみました。

前回と同じフルニエのDG、デッカ、フィリプス録音全集より
グルダフルニエの演奏。
前回「ユダス・マカベウスの主題による12の変奏曲」をケンプ&フルニエで聴いた際に、お寄せいただいたコメントを拝読しグルダフルニエの演奏も聴いてみました。
お気に入りのケンプ&フルニエの演奏ばかりを聴いていたのですがグルダも気に入りましたので、グルダの登場で。

ベートーヴェン:「魔笛」の主題による12の変奏曲
フルニエ~DG、デッカ、フィリップス録音全集より

(457)ベートーヴェン 「ユダス.マカベウスの主題による変奏曲 ピエール・フルニエ DG、デッカ、フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

チェロ・ソナタ第4番
チェロ・ソナタ第5番
「ユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲 WoO.45
魔笛」の主題による7つの変奏曲 WoO.46
魔笛」の主題による12の変奏曲 Op.66

フリードリヒ・グルダ(P)
ピエール・フルニエ(Vc)
 (録音:1959年)


作曲されたのは1798年、或いは1796年だそうです。
ベートーヴェンモーツァルトのオペラから主題を採った変奏曲を幾つか書いているとのこと。
ピアノとチェロ用の変奏曲としてはモーツァルトが1791年に作曲をし、生涯最後に完成をさせたオペラ「魔笛」からの2つの変奏曲。
この「『魔笛』の主題による12の変奏曲」と「『魔笛』の主題による7つの変奏曲」。
また同じ時期に「フィガロの結婚」からの主題でピアノとヴァイオリン用の変奏曲も書いているとのことです。

初版譜には「オペラ『魔笛』の<恋人か女房か>をテーマにしたオブリガートのチェロとピアノフォルテのための12の変奏」と記されているそうです。
主題は「魔笛」第2幕でパパゲーノが歌うあの有名なアリア<恋人か女房か>の冒頭を採ったものとのことです。
「魔笛」はモーツァルトの歌劇では一番のお気に入りですので
このパパゲーノのアリアも最も耳に馴染み深いアリア。

出版は1797年9月、ウィーンのトレ―クより。
献呈はなし、とのこと。


グルダ&フルニエで聴くベートーヴェンの「魔笛の主題による12の変奏曲」
自分のメモとして記しつつ。

主題:Allegretto 2/4拍子 ヘ長調
「魔笛」第2幕でパパゲーノが歌う有名なアリアの冒頭をとったもの。 

ピアノが弾むようなタッチの主題を呈示し曲の開始。
例の有名なパパゲーノのアリアの旋律を耳に、つい一緒に口ずさみたくなります。
ユーモラスな雰囲気。
軽やかに弾けるようなピアノ。
ベートーヴェンが初版譜に記したように、ピアノが主導でチェロはオブリガートとしての役目を。
やはりこの曲でも好みの楽器チェロに無意識のうちに神経が向いてしまうのを阻止するグルダのピアノ。
グルダのピアノは主役としての存在感強し。
0分36秒と記載された主題が終わり変奏に。

各変奏はテンポ、調性、小節数の変化による楽節構造など様々な変化が音楽の動揺をもたらし表出性を高めているとのこと。

第1変奏は主題の面影をほとんど残しピアノとチェロで奏され
第2変奏はチェロが主導し悠とした雰囲気で僅かに変化をした主題を歌い
この変奏ではピアノがオブリガート的?
第3変奏でピアノ主導になり流麗に奏される主題。
第4変奏ではチェロが呟くような趣で主題を奏し
チェロの合間を縫うように姿を表すピアノ。
第5変奏はピアノが弾むように奏し出され始まり
チェロもピアノとともに歓喜を感じさせる風情の変奏。
第6変奏ではピアノの素早い流麗な動きが変奏の間、一貫して続き
チェロは奏し続けるピアノの中を歩を刻むかのように。
第7変奏になり主題は原形の姿を消し、テンポが落ち、静かな雰囲気に。
ゆったりと歌うチェロ。
明朗な響きのピアノはチェロに歩を合わせるかのように。
前変奏までの雰囲気がだいぶ変わり印象に残る変奏です。
第8変奏で再びテンポが元に。
主導するチェロは駆け足を連想させるように奏され
ピアノも躍動的に。
姿を表す主題は軽快に奏され生気を取り戻すかのよう。
第9変奏、主題が次第に原形に近付くよう。
ピアノ、すぐ続くチェロ。
静かにこの変奏を終え次の第10変奏に。
第10変奏でAdagio に。今までの変奏の調性的安定を崩しへ短調に。この変奏までは主題の16小節構造を保持。音楽は新たな段階に入ったことを表明しているとのこと。
ピアノの暗く物憂い趣で始まる変奏。
沈黙をするチェロ。
ピアノの独り言が終わり加わるチェロ。
ピアノに代わりチェロが主導し重々しい雰囲気に。
時に感情を噴出させるようなピアノ。
暗鬱な表情の変奏で聴き応えを感じます。
第11変奏、Poco adagio quasi andante へ短調 。この変奏から楽節構造に変化、16小節から21小節に。 
前変奏と同じような暗鬱な表情。
前変奏同様にへ短調の調性に支配されたこの変奏も聴き応えを感じます。
最終変奏の第12変奏:Alegro 楽節構造は80小節に。
完全に原形を取り戻す主題。
ピアノとチェロが奏する明朗な軽快さ。
前の2つの変奏の調性から解放され晴天に戻ったような。
生気に溢れた明るい変奏。
生き生きとした雰囲気で閉じられる曲。


モーツァルトの「魔笛」の主題によるチェロ用の2つの変奏曲のうち
「魔笛の主題による7つの変奏曲」WoO.46 は既に6年程前にカザルス&コルトーの演奏でブログに登場をしていたようです。
どのような曲だったのか、すっかり忘れてしまいました。

今回、聴いた「魔笛の主題による12の変奏曲」も
聴いていて変奏曲の楽しみを存分に味わわせてくれるようです。

前回、コメントをお寄せいただくことがなければ聴くことがなかった筈のグルダ&フルニエの演奏。
聴いてみると、曲が鳴り始めた瞬間からグルダのピアノに耳は釘付けに。
生き生きとし、清々しい雰囲気のグルダ&フルニエの演奏。

過日も書いたかも知れませんが、嘗ては変奏曲は聴くとしても漠然と聞くだけでした。
ブログに綴ることもなく聴いていれば、今でも漠然と聴いていることでしょう。
変奏の一つ一つにじっくりと耳を傾けていると変奏曲の世界の楽しさの虜に。
じっくり、と言っても各変奏が数十秒の短さでウッカリしていると次の変奏に入っていることも。
各変奏の移り変わり、性格の変化、主題の変化に耳を奪われ通しに。

12の変奏の中で印象深いのは第7変奏。
第6変奏までの明朗さから一変をするような第7変奏の静かな雰囲気、歌うチェロは印象的。
ベートーヴェン節(?)の復活で聴き応えを感じる第10、第11変奏。
そして最後の第12変奏も主題の原形が生き生きと感じられる快さ。

グルダは苦手なピアニストだったのですが、コメントを拝読して「ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」から聴き直してみました。
グルダ&フルニエの演奏を聴きグルダのピアノに耳を傾けつつ、苦手な筈のグルダのピアノ、ピアニズムに即、惹かれてしまいました。
苦手意識はグルダに抱いていた先入観が原因だったのかも・・・と。
お寄せいただいたコメントに感謝を。

チェロ用の変奏曲は前回の「ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」
そして今回の「魔笛の主題による12の変奏曲」
6年程前に登場をしていた「魔笛の主題による7つの変奏曲」
以上の3つの作品でチェロ用の変奏曲は卒業でしょうか。
さて、次は?

                 

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20:54  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2018.09/15(Sat)

Op.457 ベートーヴェン:「ユダス・マカベウスの主題による12の変奏曲」 by ケンプ&フルニエ

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」。
今回はチェロとピアノのための変奏曲を聴いてみました。
ヘンデルオラトリオユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲

前回、「カカドゥ変奏曲」にお寄せ下さいましたコメントでフルニエの名前が眼に止まり聴いてみました。
この変奏曲を聴くシリーズを始めてから聴きたく思っていた「ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」も収録されていましたのでた聴いてみることに。

こちらのBoxにはベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲と「ユダス・マカベウス変奏曲」他、2種の録音で収録されていました。
ピアノがグルダ(1959年録音)とケンプ(1965年)の2種。
お気に入りのケンプフルニエの協演で聴いてみました。

ベートーヴェンヘンデルオラトリオユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲
フルニエ~DG、デッカ、フィリップス録音全集より

(457)ベートーヴェン 「ユダス.マカベウスの主題による変奏曲 ピエール・フルニエ DG、デッカ、フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

チェロ・ソナタ第1-5番(全曲)
ユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲 WoO.45
「魔笛」の主題による7つの変奏曲 WoO.46
「魔笛」の主題による12の変奏曲 Op.66

ヴィルヘルム・ケンプ(P)
ピエール・フルニエ(Vc)
(録音:1965年2月 パリ)


作曲されたのは1796年。ベートーヴェン26歳頃でしょうか。
前年、1795年にはリヒノフスキー侯爵(この作品はリヒノフスキー侯爵夫人に献呈)とともに
第1回のプラハ旅行に出かけ、1796年2月にも侯爵とともに第2回のプラハ旅行に。
プラハからはベートーヴェンは単独でドレスデン、ライプツィヒ、ベルリンに足を向け約半年に渡る大旅行だったそうです。

ベートーヴェンがチェロとピアノのために作曲した変奏曲は3曲だそうです。
こちらの「ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」、他にモーツァルトの「魔笛」の主題から2つの変奏曲。
いずれも1800年前後に書かれているとのこと。
ピアノ独奏用の変奏曲も1790年代の後半から1800年頃にかけ集中的に作曲されたとのことで
1800年前後はベートーヴェンの「変奏曲の時代」に相当するようです。
チェロとピアノ用に作曲された3つの変奏曲もベートーヴェンの「変奏曲の時代」の産物とのこと。

ピアノ曲の分野においてベートーヴェンは変奏曲からソナタへと移行し
チェロ作品でも同様に変奏曲からソナタへの移行が認められるそうです。

ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」の初版譜には
『オブリガートのチェロを伴うクラヴサンないしピアノフォルテのための12の変奏曲』と記されているそうです。
主題になっているのはベートーヴェンが尊敬をしていたヘンデルオラトリオ<ユダス・マカベウス>から採られているとのこと。
ヘンデルのこのオラトリオは1747年4月にコヴェント・ガーデンで初演されたそうです。
ヘンデルの合唱曲の中でも広く知られている≪見よ、勝利の英雄の来るを≫は
オラトリオの第3部で英雄ユダを讃えて歌う民衆の合唱だそうです。
この歌の部分は1747年の初演時にはなく、1750年の再演の時にオラトリオ「ヨシュア」のために書かれた曲を転用したとのことです。
余談ながらこの旋律は讃美歌第130番「よろこべや」にも用いられているとのこと。


初版は1797年夏、乃至秋にウィーンのアルタリアから刊行。
献呈はリヒノフスキー侯爵夫人マリア・クリスティーネに。
自筆譜はウィーンの楽友協会に保存されているとのこと。


フルニエケンプで聴くベートーヴェンの「ユダス・マカベウスの主題による変奏曲」

主題:アレグレット 2/2拍子 ト長調
第4、第8変奏でト短調に転じているほかは調性的には大きな変化はないとのこと。

ピアノが主旋律を奏しチェロが伴奏、耳に馴染み深い旋律で曲の開始。
チェロの勇壮さを感じさせる伴奏に主題の旋律を奏するピアノ。

続く12の変奏。メモを兼ねつつ。
各変奏はいずれもピアノに重点が置かれ、初版稿に「オブリガート・チェロを伴った」変奏曲のスタイルを採っているとのこと。
これは当時の弦楽ソナタの様式であったそうです。
12の変奏は主題と終曲を枠として考えると
第1-3変奏、第5-7変奏、第9-11変奏、各3つづつの変奏を一組にし
その区切りの部分である第4変奏、第8変奏にト短調の変奏が置かれ調的対照性を成しているとのこと。
12の変奏はそれぞれに性格を異にしながらも主題の旋律を巡りつつ変奏を行っている点で共通性を保っているそうです。
尚、終曲が3/8拍子で書かれているのは、晩年の<ディアベリ変奏曲>を予告するものとのこと。

第1変奏はピアノ独奏による装飾的に奏される主題旋律。
第2変奏になりチェロの主奏。
ピアノは小川の流れのように流麗な伴奏を。
伸び伸びと歌うチェロの旋律に主題の面影が。
第3変奏では主題の面影はほとんど姿を消し
チェロとピアノが同時に力強く奏し始め
装飾的で華麗なピアノの独奏の後にチェロはピアノの伴奏役に。

第4変奏でト短調に。
伸びやかにゆったりと歌い始めるチェロ。
伴奏のピアノは自由な雰囲気を感じさせるよう。
この変奏ではチェロの調べに漂う哀愁が心に残るようです。
第5変奏で調性は再び元のト長調に。
細やかに装飾的に奏されるピアノとは対照的に
悠とした趣で奏されるチェロとの対話。
ゆっくりと第5変奏が終わり第6変奏に。
第6変奏ではチェロとピアノの対話からピアノが主となり流麗な調べを。
第7変奏、疾走するような趣のチェロ。
ピアノも軽やかリズミカルに応答。

変奏の区切りとして第8変奏でト短調に。
勇壮な力強さを感じさせつつ始まるこの変奏。
ピアノが主導で旋律を奏し、チェロとピアノの華々しい応酬のよう。
第9変奏で再び調性はト長調に戻り主題の面影が現れ
歩を刻むかのように奏されるチェロとピアノ。
行進を連想させるような第9変奏。
10変奏になりアレグロで。主題が原形で復活。
チェロが主旋律を奏し、ピアノは活発な伴奏を。
第11変奏ではアダージョに。
チェロが沈黙をする中、ピアノが和音を愛おしむかのようにに奏し始まる変奏。
そして現れるチェロは抒情性が漂うような緩やかな調べを。
ピアノ独奏になりゆったりと瞑想的な雰囲気を漂わしつつ歌うピアノ。
現れるチェロは穏やかに静かな趣。
チェロが歌う調べには瞑想的な雰囲気も。
チェロに寄り添うピアノ。
最後の第12変奏はアレグロ 3/8拍子。
生き生きとした活発な雰囲気の変奏。
闊達なピアノとチェロ。
主奏するチェロをピアノはトリルを奏しつつ力強く閉じられる曲。


ヘンデルの「ユダス・マカベウス」の主題を聴くと
必ず想い出すのが運動会の終了時。
優勝チームに表彰状が手渡される時に流れていた曲。
昔々の当時には「かっこ良い曲」ぐらいにしか感じていませんでした。
ベートーヴェンの手に掛かるとこの主題が生まれ変わるようです。
ベートーヴェンが作曲したいずれの変奏曲からも感じることですが
豊かな楽想に裏打ちをされた新たな息吹の作品として生まれ変わるようです。

印象的だったのは
第2変奏での主題の面影を残して奏されるチェロの歌。
第4変奏での哀愁を帯びたチェロの調べ。
第10変奏で主題が原型で現れ奏される調べに感慨に近い想いも。
続く第11変奏が最も印象深く心に残るようです。

フルニエとケンプの演奏。
曲の冒頭から惹き込まれます。
主題を奏し始めるケンプのピアノの響きの美しさ。
フルニエのチェロの伸びやかさ。
じっくりと聴かせ、時には心を打たれつつ耳を傾けていました。

入手しておきながら未聴だったこのフルニエのBox。
昨年1月発売でしたが既にショップでの取り扱いがなく
発売をされてから姿を消してしまう速さに驚きも。
求めておいて良かった、と痛感しているところです。
Boxが目に付く度に早く聴きたいと思いつつも手にすることがなく過ぎてしまった月日。
やっと、このBoxのディスクたちに耳を傾けられそうです。

                

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タグ : ベートーヴェン 変奏曲 ユダス・マカベウスの主題 フルニエ ケンプ ヘンデル オラトリオ ユダス・マカベウス

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2018.09/08(Sat)

Op.456 ベートーヴェン:「カカドゥ変奏曲」 by ボザール・トリオ

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」。
今までピアノ独奏用の変奏曲が続きましたが
今回はピアノ三重奏の「カカドゥ変奏曲」を聴いてみました。

先日、お寄せくださいましたコメントに「カカドゥ変奏曲」のタイトルを目にして
聴いてみたくなった作品です。
嘗て聴き、親しみを感じるお気に入りの曲。

最初スターン・トリオで聴き、次にボザール・トリオで聴いてみました。
今回はボザール・トリオの演奏で。

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第11番「カカドゥ変奏曲
ボザール・トリオ~フィリップス録音全集より

(456)ベートーヴェン 「カカドゥ変奏曲」(ピアノ.トリオ第11番)ボザール・トリオ フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ三重奏曲第7 変ロ長調 Op.97「大公」
ピアノ三重奏曲第9番 変ホ長調 WoO.38
ピアノ三重奏曲第11番 ト長調 Op.121a
 (録音:1979年)

メヘナム・プレスラー(P)
イシドア・コーエン(Vn )
バーナード・グリーンハウス(Vc)
(録音:1979年)

序奏:Adagio assai ト短調 4/4拍子
主題:Allegrettto ト長調 2/4拍子

正確な作曲年代は判明していないそうですが、1823年頃に作曲されたと推定されるとのことです。
ベートーヴェンはピアノ三重奏曲第7番「大公」を作曲した後は
ピアノ三重奏曲を1曲しか手掛けることがなかったそうです。
ベートーヴェンが最後に作曲したのがこのピアノ三重奏曲第11番「カカドゥ変奏曲」とのことです。

456 ベートーヴェン:カカドゥ変奏曲 Wenzel Müller
Wenzel Müller
(1759年9月26日-1835年8月3日)

タイトルの「カカドゥ変奏曲」の由来は
オーストリアの作曲家兼劇場監督のミュラーが1794年に完成した歌劇「プラハに姉妹たち」の中の<私は仕立屋カカドゥです>という歌の旋律が主題として用いられていることによるそうです。
この歌劇は1806年にウィーンで初演され大変人気になったとのこと。
初演後もしばしば上演されたそうで、ベートーヴェンにも強く印象付けられていたと考えられるようです。

曲は序奏部の後に主題の呈示。そしてこの主題に基づく10の変奏とコーダで構成されているとのことです。
ベートーヴェンは晩年、特に対位法的書法と変奏曲の形式を好んだそうです。
「カカドゥ変奏曲」の娯楽性の高い性格とは裏腹に対位法も用いられ
ベートーヴェン晩年特有の透明で繊細な美しさを持っているとのこと。

出版は1824年5月にウィーンのシュタイナー社から。
献呈はなし、とのこと。
自筆譜はスイスのルイス・コッホ・コレクションに保存。


ボザール・トリオで聴くベートーヴェンの「カカドゥ変奏曲」

曲は暗鬱とした雰囲気が漂う序奏での開始。
ピアノと弦の短い強い響きで始まり
続いてユニゾンで奏される重々しい雰囲気。
静かに瞑想をするようなピアノと弦の調べ。
ピアノが下降をするような音階を奏し
弦は強い調子で応答をし覚醒をするかのよう。
瞑想と覚醒をさせるような旋律が繰り返され
ピアノの強い打鍵を経て現れる主題。

序奏の重苦しさとは一転し軽快で明朗な趣に満ちた主題。
主題を奏し始めるピアノ。
弦も加わりピアノを主導として明朗快活に奏される主題。
この主題は耳に馴染みのある親しみやすい旋律。

主題に続く10の変奏。
第1変奏はピアノだけによる簡潔、単純な音型で奏され。
第2変奏ではヴァイオリンが主役になり生き生きとした趣で。
伴奏のピアノも軽やかに。
チェロが主旋律を流れるように奏し歌う第3変奏。
ピアノはチェロに寄り添うかのように。
心惹かれる変奏です。
第4変奏で再びピアノが中心に。
ピアノ、ヴァイオリンそしてチェロの3つの楽器たちが奏する活気に満ちた変奏。
第5変奏ではカノン風に。
チェロから始まり、ヴァイオリン、ピアノと順番に登場。
活気を感じさせる3つの楽器たちの対話の第6変奏。
第7変奏では弦による弾むような雰囲気の対話は対位法的に。
ピアノと弦のスピード感のある対話のような第8変奏。
第9変奏になり今までの変奏の雰囲気が変わり
ピアノが奏する抒情的な歌での始まり。
加わる弦とピアノの静かな対話を経て
ピアノと弦が交互に現れ奏する内省的な調べ。
チェロが主となり弦が悠然と奏される中に現れるピアノ。
美しい調べの変奏でお気に入り。
最後の第10変奏になりプレストに。
前変奏の抒情性とは打って変わりピアノと弦の疾走するような動き。
活気のあるピアノからは力強さが伝わってくるよう。
変奏を終えコーダに。
ピアノと弦が一体となり華麗に奏され
主題の片鱗も感じさせつつ力を持って生き生きと迎える曲の終わり。


今までピアノ独奏用の変奏曲ばかりを聴いていましたので
「カカドゥ変奏曲」はとても新鮮に耳に響きます。

「暗」を感じる序奏に始まり、主題の「明」に生き返るようです。
何年経っても記憶に残っている耳に馴染みの深い主題旋律。
曲名を忘れてもこの主題だけは忘れそうもありません。

変奏での多彩な趣。
簡潔な第1変奏から次第に変奏が進むにつれて変容は豊かな姿を見せるようです。
印象に残り惹かれるのが第3変奏。
弦楽器、特にチェロは好みの楽器ですので第3変奏には耳を奪われてしまいます。
また第9変奏の抒情性、美しさはこの曲で最も印象的に感じられます。
演奏時間は約14分程だそうですが
長くはない演奏時間でありながら楽想の豊かさ、変容する楽想に耳を奪われ通しに。

ボザール・トリオが奏する端正で気品のある「カカドゥ変奏曲」でしょうか。
3者が奏し織り成す調べの豊かさ。
演奏姿勢は3者互いに一歩引くような感じで「和」を重視しているかのように想われます。
安堵感とともにじっくりと耳を傾けることのできる「カカドゥ変奏曲」。

お寄せいただきましたコメントのお陰で
久しく耳を傾けることのなかったこの作品を聴き魅了されています。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲は気に入っているジャンルですが
新たな魅力を感じ始めています。

                

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20:19  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2018.09/01(Sat)

Op.455 ベートーヴェン:「創作主題による32の変奏曲」 by ギレリス 

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」の2回目です。
今回は小型の「ディアベリ変奏曲」とも言われる「創作主題による32の変奏曲」を聴いてみました。
手持ちのディスクではアラウギレリスの2種のディスクがありました。
共にベートーヴェンのピアノ・ソナタではお気に入りのピアニストの3羽カラスのお二人。
先ずはギレリスで聴いてみました。
この作品もじっくり耳を傾けるのは初めてになります。

ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲
エミール・ギレリス~EMI録音全集より

455:ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 エミール・ギレリスEMI録音全集(9CD)
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73「皇帝」
  (セル&クリ―ヴランドO. 1968年録音)
創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO80
ヴラニツキーのバレエ「森のおとめ」のロシア舞曲の主題による
   12の変奏曲イ長調 WoO71
創作主題(トルコ行進曲)による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76
(録音:1968年)


作曲されたのは1806年、ベートーヴェン36歳の時だそうです。
ベートーヴェンの中期に属する作品。
曲としては演奏される機会が多いとのことです。
1806年から1808年はロマン・ローランが「傑作の森」と呼び多くの名作、大作が書き上げられた時期とのこと。

この「創作主題による32の変奏曲」には作品番号はなく
ベートーヴェンの死後、整理の際に WoO.80 の番号が付けられたそうです。

ベートーヴェンの創作姿勢に関してはピアノ用ソナタが最も実験的であると指摘されているそうです。
ピアニストであったベートーヴェンはピアノにより音楽思考を深め、ピアノ曲においてベートーヴェンの音楽思考が最も先鋭な形で現れているとのことです。
ピアノ曲の中で一層、その実験的性格が反映されているのが変奏曲とのこと。
ベートーヴェン的創作手法の変遷はピアノ用変奏曲の中に表れているそうです。
この作品は主題が内包する可能性を余すところなく汲み尽している点において、小型の「ディアベリ変奏曲」であると言えるそうです。

出版は翌、1807年4月にウィーンの美術工芸社より。
献呈はなし、とのことです。


ギレリスで聴くベートーヴェンの「創作主題による32の変奏曲

以下、自分の鑑賞メモ的に記しつつ感想を綴ってみました。
かなり雑然としてまとまりのないメモになってしまったようで。

曲の開始の主題は素早い動きで活気を感じます。
8小節の短いものだそうです。
ギレリスの演奏では0分18秒との記載。
この主題は簡潔ながら凝縮された音楽的可能性を内包しているとのこと。

続く変奏についてのメモ。
各変奏は続けて演奏されるように考えられているそうです。
各変奏は主題の形をだいたい保持しながら、そこに内在する音楽的可能性を引き出すベートーヴェン的性格変奏の形を採っているとのこと。
続けて演奏する意義として、次々と異なる音楽的気分を展開してゆくこと。
このような楽想の接合の手法は晩年の諸作に至るまで一貫して用いられた構成手法だそうです。

曲の演奏時間は約11分程。
32の変奏はいずれも短く、ブックレットに記載されている変奏で一番短いのは第7&8変奏、合わせて 0分11秒。
最も長い変奏では、第31&32変奏の 1分55秒。
ほとんどの変奏が秒単位のようですので、聴いていても次々と楽想が変わり演奏時間の約11分が実際よりも短く感じてしまいます。

32の変奏のうち最も印象的だったのは、第9から第11変奏。
第9変奏の内省的な美しさ、一転してドラマティックに。 
第10変奏でのゆったりとした調べ。
第11変奏での右手の小刻みな短い調べに乗り左手が奏する歌の調べ。

さてまた、ここでメモに。
続く変奏で第12変奏から第14変奏はハ長調とのこと。
他の変奏はすべてハ短調。

第31変奏についてのメモ。
第31変奏では主題旋律の再帰が図られているそうです。
ベートーヴェンが意図したのは主題の変容であり、異なる存在様態における主題の現象。
主題に内在する可能態としての本質の探究とのこと。
(独り言:苦手な哲学書を読んでいる気分になり頭が痛くなりそう)

最終の第32変奏についてのメモ。
32変奏のうち第31変奏までは主題の8小節構造が守られているそうです。
第32変奏のみが拡大され50小節になっているとのこと。

メモ書きばかりが多くなりました。
高揚感で迎える曲の終わり。


前回の「エロイカ変奏曲」と同じようにこの「創作主題による32の変奏曲」も
聴き始めると惹き込まれてしまいます。
感想を綴るために、変奏の変わり目に横に設置をしてあるCDプレーヤーのトラック番号を見つつですので、曲を聴いているのか、首の運動をしているのか・・・。
改めて各変奏を意識せずに通して聴いてみると、本当に変化に富んだ曲。
演奏時間も短い曲ですが、本当にアッと言う間に曲の終了。
この短時間の中に含まれる数多い楽想、各々の変奏の性格的な相違に耳を奪われます。

ギレリスのピアノタッチ・・・素直さを感じる、というのも変な表現かも知れませんが
その言葉が一番ピッタリのように感じます。
自然体で自ら愉しみながら演奏をしているような印象を受けるようです。
多々の要素が内包された変奏、各々の性格を誇張をすることなく
ピアノに語らせているギレリス。
好感を抱きつつギレリスの演奏に聴き入っておりました。
さて、これからアラウの演奏を聴いてみることに。


               

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タグ : ベートーヴェン 変奏曲 32の変奏曲 ディアベリ変奏曲 ギレリス アラウ

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2018.08/25(Sat)

Op.454 ベートーヴェン:「エロイカ変奏曲」 by アラウ;カツァリス

前々回の「ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」の終了後も
気になっていたベートーヴェン変奏曲を聴いてみることにしました。
ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」になるのでしょうか。
変奏曲のうち先ずはピアノ用変奏曲から聴いてみました。
大好きな交響曲題3番に因み「エロイカ変奏曲」からスタート。
と意気込みだけはあるのですが・・・果たしてどうなりますか。

今までベートーヴェン変奏曲を聴くにしても
何となく「聞く」ことはあっても、じっくりと耳を傾け「聴く」ことは殆どなく年月が過ぎました。
ブログを拝読させていただいているうちに次第に変奏曲に関心を抱き始めるようになった昨今。

ベートーヴェンの交響曲で最初に好きになったのが第3番「英雄」。
遥か昔々のLP時代のこと。
第3番は「ベートーヴェンの交響曲全曲を聴いてみよう」との気持ちを抱かせてくれた作品です。

アラウの演奏(1968年、2回目録音)です。

ベートーヴェン:エロイカ変奏曲
アラウ~フィリップス録音全集より

(HMV)445シューベルト ピアノソナタ第19番 アラウ フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

創作主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 Op.35 「エロイカ変奏曲
創作主題による32の変奏曲
創作主題による6つの変奏曲 Op.34
ロンド ト長調 Op.51

クラウディオ・アラウ(P)
(録音:「エロイカ変奏曲」1968年)


作曲されたのは1802年とのことです。
ベートーヴェン32歳頃でしょうか。
ベートーヴェンはピアノ・ソナタの他にも数多くの名作をピアノのために作曲したそうです。
その中でも変奏曲は注目されるものであり、ベートーヴェンはブラームスと並びこのジャンルに傑出した手腕を見せた作曲家に数えられるそうです。
ベートーヴェンはピアノのための独立した変奏曲を20曲ほど作曲したとのこと。
交響曲やソナタにおいても変奏曲の書法を巧みに採り入れたとのことです。

ベートーヴェンの創作の中期に移行する時期に書かれたこの作品の正式なタイトルは「創作主題による15の変奏曲とフーガ」。 
後に同じ主題が交響曲題3番の終楽章に用いられたことから「エロイカ変奏曲」として親しまれることになったそうです。
ベートーヴェンのピアノ用変奏曲の中では、晩年に書かれた「ディアベリ変奏曲」とともにベートーヴェンのピアノ変奏曲の双璧をなす力作とのこと。

この主題は1800-1801年頃に作曲された「12のコントルダンス」WoO14 の第7曲と
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」の終曲にも用いられているそうです。

ベートーヴェンの変奏曲には作品番号が付けられた曲は少ないそうですが
この「エロイカの主題による変奏曲」は作品番号が付された数少ない変奏曲の一つとのこと。

献呈はリヒノフスキー侯爵に。

初版出版は1803年にライプツィヒのブライトコプフ&ヘルテル社から刊行。
自筆譜はボンのベートーヴェン・ハウスに保存されているそうです。


アラウ(1968年録音)で聴くベートーヴェンの「エロイカ変奏曲

曲は「テーマの低音による序奏」に始まり、2声、3声、4声の3つの変奏をともなっているそうです。
このように序奏が置かれることは変奏曲としては珍しいとのこと。
主題はベートーヴェンが気に入っていた旋律とのことです。

低音域の力強い打鍵で始まる序奏。
交響曲題3番の終楽章で耳に馴染みのある主題が力強く奏され
後に続く変奏は2声、3声、4声の変奏になっているとのこと。
2声部では右手が奏する愛らしい響きに惹かれ
声部が追加され3声、4声の変奏になるにつれて
祝典的な明朗な旋律も漂う生き生きとした雰囲気に。

変奏に入り、繰り広げられる15の変奏。
聴いていて私には各変奏の正確な区切りが分かりませんので一括しての感想として。
第7変奏でのチャーミングな趣。
最後の第15変奏ではラルゴで静かに穏やかに奏され
次第に雰囲気に変化が出て即興的な趣も。
印象的な変奏でお気に入りになりました。
奏される主題が重々しく怒涛のような響きを経て変奏が終わりフィナーレに。
フィナーレは自由な形式による3声からなっているとのこと。
雅やかな雰囲気する感じるよう。
フーガは力強く。
主題が装飾的な趣で奏され生き生きとした姿を見せ
豪壮な趣で力強い打鍵で迎える曲の終わり。
    

私自身が好きな主題旋律ですので聴き入ってしまいました。
アラウはこの作品を1952年と1968年に録音しているようです。
こちらのボックスにはこの2種の演奏が収録されていました。
1952年の録音はやはり音質が少々落ちるようですが
大らかでゆったりしたテンポのタッチはいかにもアラウ。
1968年の演奏を主として聴きました。
こちらの録音の方はブックレットに、序奏、15の変奏そしてフィナーレとトラック番号が各々に付されており鑑賞上参考になりました。
因みに1952年の演奏時間は26分52秒
1968年、26分10秒と記載されておりました。

アラウとは別に昔、求めたシプリアン・カツァリスでも聴いてみました。
こちらは交響曲題3番とのカプリングになっています。
「エロイカ変奏曲」の演奏時間は23分07秒。
ディスクを入手し年月が経ちながらも「聞く」だけだった変奏曲。
交響曲第3番に続きこの作品を聴いているとかなりの緊張感に。
カツァリスのタッチの鋭さ、闊達さ。
気迫、推進力にグイグイと引かれ、アッと言う間にディスクの終了になっておりました。
聴き終え、かなりの緊張感。
心地よい緊張感であることが救い?

再びアラウに戻ります。
やはりホッとできる演奏。
テクニックについても無知ですが、緊張感を強いることなく
と言って弛緩したタッチではなく
どっしりとした重厚な雰囲気が漂う「エロイカ変奏曲」でしょうか。
自分が想い描いている「エロイカの主題による変奏曲」がアラウにより見事に再現をされたように感じています。
このアラウの演奏に出合うことができて幸い、と感じる程。
まだ、この作品を多々の演奏で聴いていませんが
手元にあるディスクからじっくりと聴いてみたく思います。

                

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タグ : ベートーヴェン 変奏曲 エロイカ変奏曲 ディアベリ変奏曲 アラウ カツァリス リヒノフスキー侯爵

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