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2018.08/18(Sat)

Op.453 シューベルト:「ピアノ・ソナタ第7番」D.568 by ケンプ

再び「シューベルトピアノ・ソナタを聴くシリーズ」に。
シリーズに登場をしていないソナタは思っていた以上にあるようですが
一応、今回でこの「シリーズ」に終止符を、と思います。
「シリーズ」の締め括りはソナタ第7番。
シューベルトピアノ・ソナタ全集ではお気に入りになっているケンプで聴いてみました。

前置きから、少々愚痴を。
シューベルトピアノ・ソナタは未完も多く煩雑な想いを抱いてしまいました。
ほとんどの全集に曲番が記載されることなくドイチェ番号と調性のみ。
初めの頃にはドイチェ番号を頼りに曲番を・・・手間取ってしまいました。
今でも、ドイチェ番号と曲番にはオタオタしています。
「アッ、また間違えた」というのが口癖になったシューベルトピアノ・ソナタ
最近ではドイチェ番号と曲番を併記しないと間違えてしまいそうで、メモ書きをする時でも併記をするようになってきました。
それでも「また間違えた!」・・・と、相変わらずなのですが。
曲を聴く前から疲れ、感じるストレス。
皆さまは曲番をどのように記憶するようにしているのでしょうか。
私にとっては、とにかく悩みの種になるシューベルトピアノ・ソナタ
特に初期、中期あたりのソナタではホトホト参ります。

愚痴を切り上げて、ソナタ第7番を。

シューベルトピアノ・ソナタ第7番 変ホ長調 D.568
ケンプ~シューベルト ピアノ・ソナタ全集より

446シューベルト ピアノソナタ第9番 ケンプ~シューベルト ピアノソナタ全集
(収録曲)

ピアノ・ソナタ第7番 変ホ長調 D.568
ピアノ・ソナタ第5番 変イ長調 D.557
ピアノ・ソナタ第6番 ホ短調 D.566

ヴィルヘルム・ケンプ(P)
(全集録音:1965-69年)


第1楽章:Allegro moderato 変ホ長調 3 /4拍子
第2楽章:Andante molto ト短調 2/4拍子
第3楽章:Menuett Allegretto 変ホ長調 3/4拍子
第4楽章:Allegro moderato 変ホ長調 3/8拍子


作曲さ年れたのは1817年6月とのことです。
この年、1817年3月から8月までの半年間にシューベルトは7曲のソナタに着手したそうです。
ドイチェのカタログによるとシューベルトはこの年の6月、1ヶ月で3曲のソナタを書いたとのことです。
以下の3曲。
第6番D.566ホ短調
D.567変ニ長調(未完)
そしてこの第7番D.568

第7番 D.568 は前作の D.567 変ニ長調の改作になるそうです。
D.567 は3楽章構成で未完とのことですが、ピアノ・ソナタとしてはD.568変ホ長調よりも優れているそうです。
この第7番 D.568 は4楽章構成の完成作になるとのこと。
改作の真の理由については不明だそうです。

出版は1829年にA.ペンナウアーから。


ケンプで聴くシューベルトのピアノ・ソナタ第7番 D.568
簡単なメモとして。

明朗な雰囲気の旋律で始まる第1楽章。
愛らしく美しい響きに冒頭から惹き込まれます。
麗しいピアノの歌の楽章でしょうか。

落ち着きを感じさせる主題旋律で始まる第2楽章。
内省的で思索をするような旋律。
静かな雰囲気の主題。
第2主題は第1主題に溶け込んでしまうような。
両主題間の性格の違いが私にはほとんど感じられないくらい。 
展開部を置かずに再現部になるとのこと。
ソナタ形式の前に変則的と記載がありますが
確かに形式に捕らわれることなく続く調べは夢想するかのよう。
幻想曲を聴いているようにも・・・。
前楽章と同じように落ち着いた雰囲気で静かに閉じられる第2楽章。

第3楽章も前楽章と似通っている楽章。
冒頭からファンタジックな趣。
楽章が変わっても前楽章の続編のようにも。

第4楽章もまたファンタジックな趣が支配。
前の3つの楽章より旋律が細やかになっているのが「変化」のようにも。
次々と織り込まれる軽やかで清明な旋律。
コーダも自然な流れのまま迎える曲の終わり。


曲を聴き終えて一つの幻想曲を聴き終えたような気分です。
各楽章に殊更、性格的な違いを感じることなく
一遍の幻想の詩、という印象を受けます。
ソナタ形式を採りながらも形式に捕らわれることなくファンタジー溢れる曲。
シューベルトの心の微笑みを感じさせるような楽想。
シューベルトの自由な羽ばたきを感じるようです。

ケンプの演奏で聴くこの曲は愛らしく、麗しいピアノの歌。
シューベルト特有の(?)、悲哀感は微塵も感じられず
透明で美しい音楽を紡ぎ出すケンプのピアニズム。
ただただ聴き入ってしまいました。

シューベルトのピアノ・ソナタでは第21番が一番のお気に入りなのですが
今回、シリーズとして今まで聴く機会がなかったソナタでお気に入りになる曲に
出合うことができるかと楽しみにしていました。
残念ながらソナタ第21番を超えるほど心を捉える曲に出合うことはできませんでしたが
一つ一つのソナタに耳を傾けつつ魅力を感じていました。

                

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タグ : シューベルト ピアノ・ソナタ ケンプ

19:53  |  シューベルト  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2018.08/11(Sat)

Op.452 シューベルト:「3つのピアノ曲」D.946 by ピリス

シューベルトのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」を変更して。
ピアノ・ソナタではまだ残っている作品があるようですがソナタの方は今回お休みを。
今日はピアノ曲ということで即興曲の部類に入る「3つのピアノ曲」D.946 を。

さて、「3つのピアノ曲」。
手元にあるディスクで目に付いたのがアラウとピリスです。
ピリスの演奏で聴いてみました。

シューベルト:「3つのピアノ曲」D.946~シューベルト・エディション第1巻より
マリア・ジョアン・ピリス


452:シューベル .3つのピアノ曲~シューベルト・エディション第1巻~交響曲、管弦楽、室内楽、ピアノ作品集(39CD)
(収録曲)
シューベルト

即興曲D.935
3つのピアノ曲D.946

マリア・ジョアン・ピリス(P)
(録音:1997年9月 リスボン)

第1番:Allegro assai-Andante 変ホ長調;ホ短調 2/4拍子
第2番:Allegretto 変ホ長調 6/8拍子
第3番:Allegro ハ長調 2/4拍子


作曲されたのは1828年5月。
シューベルトの死の半年前になるそうです。
原題のDrei klavierstucks は「3つの小品」または「3つの即興曲」と表記されるとのこと。

1828年、シューベルトにとって最期の年、創作意欲は高まり
新しい交響曲D.936A(スケッチ、未完)を始め、ミサ曲D.950、弦楽五重奏曲D.956、歌曲集では「白鳥の歌」などが書かれたそうです。
ピアノ作品では最後の3つのピアノ・ソナタD.958、959、960 などの傑作が誕生しているとのこと。

この作品はブラームスが関与していることを知り興味を抱き聴いてみたくなりました。
3つのピアノ曲」はシューベルト亡き後、長い間忘れ去られていたそうです。
この曲集の価値を認めたのがブラームスだったとのことです。
ブラームスは匿名で編集をし「3つのピアノ曲」とのタイトルを付け出版したそうです。
出版されたのはシューベルトの死から40年を経た1868年。
ブラームスがいなければ永遠に忘れ去られていた曲集になるのでしょうか。

シューベルトが前年の1827年に作曲した「4つの即興曲」D.899 と D.935 の2つの即興曲に続く3つ目の曲集として書かれたものと考えられているそうです。
尚、第1、2番と第3番は別の紙に書かれているとのことで
これらの曲が一つの曲集として作曲されたものか
或いはブラームスによりまとめられたものであるかは定かではないそうです。

この曲集で、シューベルトは冗長と考え割愛、削除しようとしている個所も
ブラームスは充実に出版しているそうです。
親しみ易い作品として演奏される機会は多いとのこと。


ピリスで聴くシューベルトの「3つのピアノ曲

第1番。3部形式。
本来はA-B-A-C-Aのロンド形式で書かれたそうです。
シューベルト自身により後に冗長になるとの理由で C A の部分が削除 されたとのこと。

左手の3連符の早い動きで始まる第1番。
情熱的な激しさも感じられるようです。
躍動的な趣を経て中間部に。
中間部でアンダンテになり穏やかな調べに。
右手の語らいに左手の重々しい響きがゆったりと寄り添うよう。
右手が奏する調べは情熱を秘めたようにも感じられ
自由に夢想するかのような調べ。
時折響く短いアルペッジョは一抹の美しいスパイスのよう。
無限に続くかのような夢想する旋律。
続く穏やかで美しい歌の調べ。
曲の中では最も惹かれる旋律です。
冒頭の主題が奏され静かに閉じられる第1番。

第2番。ロンド形式。
歌の調べのような抒情的なロンド主題で始まる第2番。
この主題はシューベルトが1823年に作曲した歌劇「フィエラブラス」の合唱より引用されているそうです。

主題の抒情的な歌。漂う優しさ、柔和な調べで始まる第2番。
主題の合間を縫い現れる激しさが漂う旋律。
そしてまた、ピアノが切実に語りかけるような旋律も。
最後に再び抒情的なロンド主題が現れ静かに終わる第2番。
私が文章にすると味も素っ気もなくなってしまいますが
この曲集での一番のお気に入りになりました。

第3番。3部形式。
勢いを感じさせる活発な趣の主題で始まる第3番。
生命力に溢れているような主題。
中間部ではゆったりとした速度に。
愛らしい響きで紡ぎ出される右手の旋律が印象的。
ホッとするコーヒー・タイムのような中間部。
惹かれてしまう旋律美。
主題が戻り活発に切れ味良く奏され情熱的な趣を湛えつつ閉じられる第3番。


特別に期待をして耳を傾けた訳でもない「3つのピアノ曲」。
ピリスの演奏も一昔以上、耳にすることがありませんでした。
期待をせずに(作曲家と演奏者に対し何とも失礼な言い方)聴いてみました。
「3つのピアノ曲」を聴きピリスに抱いていた印象が一変しました。
第1番の冒頭から抑制を効かせたタッチ。
お気に入りになった第2番のロンド主題の抒情性豊かな歌の調べを紡ぎ出すピリスのタッチにはただ魅了されるのみ。
第3番、中間部での繊細さ。
好感を抱く演奏で聴き入っておりました。

この曲集の3曲、各々が個性的な作品として感じられるようです。
ピリスは気になる存在のピアニストの一人になりました。
ピリスでシューベルトのピアノ・ソナタを聴きたくなりショップ・サイトへ 。
ソナタ第21番と第16番のカプリングの一枚が目に付きました。
あまりシューベルトの作品の録音がないのが少々残念ですが
第21番を聴くことができるのですから大満足です。

ブラームスの存在がなければ陽の目を見なかったこの「3つのピアノ曲」。
ブラームスに感謝の念を抱きつつ耳を傾けておりました。

                 

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20:04  |  シューベルト  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2018.08/04(Sat)

Op.451 シューベルト:「さすらい人幻想曲」(リスト編曲版:オーケストラ伴奏) カーゾン;ヘンリー・ウッド&クイーンズ・ホール管弦楽団

シューベルトのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
今回は 幻想曲ハ長調D.760「さすらい人」 をリスト編曲版で聴いてみました。
原曲は楽曲解説上、4楽章構成のソナタ、とのことですので
シューベルトのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」に入れましたが・・・・無理やり?

さすらい人幻想曲」は3年程前にルービンシュタインの演奏でブログに登場していました。
当時、リスト編曲のオーケストラ伴奏付きの演奏も面白い、とのコメントをお寄せいただきました。
早速、その当時ショップでディスクを探し聴いてみました。
同じ演奏ですが今回、改めて聴き、一層惹き込まれつつ耳を傾けていました。
演奏は前回と同じくカーゾンのデッカ録音全集からの一枚です。

シューベルト:「さすらい人幻想曲」リスト編曲版、オーケストラ伴奏
クリフォード・カーゾン~デッカ録音全集より


450シューベルト ピアノ.ソナタ第17番~クリフォード・カーゾン デッカ録音全集
(収録曲)
1)シューベルト:幻想曲ハ長調「さすらい人」(リスト編曲版)
  (カーゾン;ヘンリー・ウッド&クイーンズ・ホール管弦楽団)
  (録音:1937年4月 ロンドン、モノラル)
2)モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478
3)モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493
  (カーゾン&アマデウス四重奏団)


第1楽章:Allegro con fuoco ハ長調 4/4拍子
第2楽章:Adagio 嬰ハ短調 4/4拍子
第3楽章:Presto 変イ長調 3/4拍子
第4楽章:Allegro ハ長調 4/4拍子


原曲の「さすらい人幻想曲」を前提に、嘗て綴ったことと重複しますが
自分の復習を兼ねて。
作曲されたのは1822年11月。
歌曲「さすらい人」D.489 の6年後に書かれたとのことです。

さすらい人幻想曲」はシューベルトのピアノ作品の中で異彩を放っている作品とのことです。
あらゆる点で他のピアノ・ソナタとは異なった性格を持っているそうです。
後期のピアノ・ソナタよりも先立つこと3年前に作曲されたこの曲は
晩年の優れたソナタを超越するばかりでなく、シューマン、ショパン、リスト等の
ロマン派の盛期のピアノ曲さえ先取りしている、とのことです。

シューベルト自身により「幻想曲」と名付けられたこの作品。
形式に関しては研究者の多くが「4楽章ソナタ」であると指摘しているそうです。
全楽章が連続して書かれているが、調性及び速度表示の変換で4つの楽章が
明確に区分されているとのこと。
他のソナタと異なる点は全曲が強力な一つの素材によって統一されていることだそうです。
またソナタ形式を使用した第1部でも再現部を欠く変則的な形が取られているとのこと。
各楽章の主題を統一するという構成は一種の循環形式に基いているとも考えられるそうです。

平野昭氏の記述によると、曲の内容についてシューベルト研究家のハンス・ガルは次のような主旨の論を繰り広げているそうです。
「即興的な曲を書く人は、その動機を偶然的啓示として使用し、その自体を超越し、主題とは遠隔的に関連するだけの無限の領域へと自由に入り込む。(略)
この曲は自作リート<さすらい人>D.493 の旋律を基にした自由な即興を古典的実践方法を踏襲しながら、フンメル的ヴィルトゥオジティを追及した特異な曲である」。
引用をしたものの、自分で理解できているのかどうか?の有様ですが。

平野昭氏は以上、ガルが指摘するように
「<さすらい人幻想曲>は即興的性格も非常に強く、既存の『幻想曲』として素直に捉えるのが最も自然であろう」と述べるとともに
「楽曲解説上は4楽章構成のソナタとして扱うことも一つの方法ではあろう」、と記されています。

以下、あくまで「さすらい人幻想曲」原曲
初演はシューベルトの死後、1832年 ボクレットのピアノでウィーン・ムジークフェライン・ザールに於いて。
献呈はエマニュエル・フォン・リーベンブルクに。
彼の援助により作曲後3ヶ月ほどで出版をされ
またアマチュアながらもフンメルに師事した名ピアニストだったとのこと。


カーゾン、ウッド&クイーンズ・ホール管弦楽団で聴く
シューベルト「さすらい幻想曲」のリスト編曲版

オーケストラが奏するダクチュル音型の第1主題で始まる第1楽章。
ピアノ独奏で聴くよりも柔らかい印象を受けるようです。
ピアノが現れオーケストラと同じ旋律を。
第2主題になり抒情性の漂うピアノが奏する調べからオーケストラに移り重厚な趣も。
展開部は119小節の長大なものだそうで主に第1主題が用いられるとのこと。
第1主題を奏するピアノとオーケストラは正にピアノ協奏曲。
再現部は置いていないとのこと。
静かに閉じられそのまま第2楽章に。

第2楽章は5つの変奏曲から構成されている変奏曲形式になっているとのこと。
この主題が歌曲「さすらい人」の第2節の旋律からの引用だそうです。
蛇足ですが、歌曲「さすらい人」の主人公が理想の国を求めて歌う第2節の詩を以下に。
  「陽はここでは僕にはやけに冷たく
  花は枯れて、世の中は古びてしまった
  そして話される言葉は虚しく響く
  僕は何処に行ってもよそ者なんだ 」

ピアノ独奏で静かに深い寂寥感が込められた主題で始まる第2楽章。
静かに奏されるピアノの調べ。
絶望的な悲愴感が漂っているかのよう。
続いての第1変奏では右手が奏する主題。悲愴感が軽くなったようにも。
第2変奏ではピアノとオーケストラの激しさを伴う掛合いのような雰囲気。
(第3変奏を抜かしてしまったようで)
ピアノとオーケストラで奏される第4変奏。
細かく音を刻むピアノ。対照的なオーケストラ。
力強く激流のような趣を醸し出すピアノとオーケストラ。
最後の第5変奏になり再び戻る静けさ。
細やかに音を刻むピアノ。
オーケストラが奏する寂寥の調べが心に染み入るよう。
静かにゆっくりと終わる楽章。

第3楽章は表示はされていないが、スケルツォ楽章と考えられ、トリオに相当する部分も置かれているとのこと。

生き生きとしたオーケストラに始まり、すぐ続くピアノで始まる第3楽章。
第1楽章の主題の動機が耳に届き、ホッとした気分にも。
明るさが漂い、ピアノが細かく刻む調べとオーケストラの華やかさも。
印象に残るピアノの愛らしい調べと響き。
冒頭の主題になり愛らしく軽やかに奏され半休止からそのまま第4楽章に。

第4楽章は第1楽章全体を呈示部と見れば、この第4楽章は展開的コーダとも言える そうです。
第1楽章と密接に関連し、華麗なカデンツァ風の終曲とのこと。

印象的な愛らしいピアノの調べと響きで始まる第4楽章。
前楽章との区切りを感じさせず、気が付と第4楽章に。
木管を伴奏にしてピアノの華麗な調べが耳に届きます。
オーケストラとピアノの応答に。
雄大さを感じさせるピアノ。
オーケストラとの応答はドラマティックな趣。
ピアノ独奏で奏力強く奏されるダクチュル音型。
暫し続くこの音型を経て躍動的なピアノとオーケストラが奏する高揚感。
ピアノのアルペッジョは華麗に。
ピアノとオーケストラで華やかに力強く迎える曲の終わり。


耳を傾けていると楽章を忘れてしまいます。
ブックレット他にもこの曲は4楽章構成として各楽章の速度等が記載されていますが。
前述に重複しますが平野昭氏が記しているように
楽曲解説上は4楽章構成のソナタとして扱うことも一つの方法とのことですが
即興的性格も非常に強く、既存の『幻想曲』として素直に捉えるのが最も自然、と。
今回、この編曲版をじっくり聴き、その想いを強く抱きました。

原曲のピアノ独奏での演奏とリスト編曲版を聴きリスト編も大きな魅力。
原曲よりも気に入ってしまうほど。

このリスト編曲版を「ピアノ協奏曲」としている記述も目に付きましたが
聴いていると「オーケストラ伴奏付きのピアノ・ソナタ」の方が正確かも。

録音は1937年とのことで流石に音質は良いとは言えないかも知れませんが
リスト編曲版は音質への不満(?)を忘れさせるものがあるようです。
とは言え、やはり録音の良い演奏も聴いてみたいというのが本音。

原曲のピアノ独奏よりもリスト編は生き生きと豊かな情感を感じさせるようです。
リスト編曲ではベートーヴェンの交響曲やワーグナーの「マイスタジンガー」もお気に入りになっていますが、この作品を聴きリストの編曲にまたまた魅力を抱くようになりました。

演奏に耳を傾けつつカーゾンのピアノにはあまり集中することができなかった、というのが正直なところ。

心に残るのはやはりピアノ独奏の原曲と同じ第2楽章。
ピアノとオーケストラで奏される第2楽章はより一層、表情が豊かに感じられるようです。

もしも、シューベルトがピアノ協奏曲を作曲していたら・・・。
どのような協奏曲になったのだろうか・・・と思いを巡らせつつ。

                

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21:29  |  シューベルト  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

2018.07/28(Sat)

Op.450 シューベルト:「ピアノ・ソナタ第17番」 by カーゾン

シューベルトピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
今日はピアノ・ソナタ第17番を。
クリフォード・カーゾンのピアノで聴いてみました。

シューベルトピアノ・ソナタ第17番 D.850
クリフォード・カーゾン~デッカ録音全集より

450シューベルト ピアノ.ソナタ第17番~クリフォード・カーゾン デッカ録音全集
(収録曲)
シューベルト

4つの即興曲 D.935 
ピアノ・ソナタ第17番 ニ長調 D.850,

クリフォード・カーゾン(P)
(録音:第17番 1963年6月 ステレオ)

第1楽章:Allegro vivace ニ長調 4/4拍子
第2楽章:Con moto イ長調 3/4拍子
第3楽章:Scherzo Allegro vivace ニ長調 3/4拍子
第4楽章:Allegro moderato ニ長調 4/4拍子


1825年8月に作曲されたそうです。
1823年2月にソナタ第14番D.784 が作曲された後
2年を経た1825年には3曲のピアノ・ソナタ
第15番ハ長調D.840
第16番イ短調D.845
そしてこのソナタ第17番ニ長調D.850
以上が作曲されたそうです。

これらの作品はシューベルトの芸術家としての目覚めを示す本格的な作品で
個性も十分に発揮されているとのことです。
シューベルトが悩み続けていたベートーヴェン的な動機操作から離れ
独自の展開技法を身につけ始めているそうです。
このソナタは第18番、19番、20番、21番と連なる大作に入るとのこと。

この年の4月、5月に続けて2曲のソナタ第15,16番を書き上げた後に
シューベルトは約4ヶ月の旅に出かけているそうです。
ソナタ第17番は旅先のオーストリアのグムデンとガスタインで書かれた交響曲第8(9)番、「大ハ長調交響曲」の完成直後に作曲されたとのことです。

曲の献呈はシューベルトの友人でピアニストのカルル・マリア・フォン・ボクレット(1801-1881)に。
ボクレットはアン・デア・ウィーン劇場のヴァイオリニストから後に優れたピアニストになり、友人シューベルトのピアノ曲の普及に大きな貢献をしたそうです。
尚、1825年以降作曲されたシューベルとのピアノ入りの室内楽曲の全ては技巧的になっているそうですが、ボクレットを想定し書かれたことが技巧的になっている理由とのこと。

初版は1826年4月8日にウィーンのM.アルタリア社から出版。
自筆譜はウィーンの国立図書館所蔵とのことです。


カーゾンで聴くシューベルトのピアノ・ソナタ第17番

重厚に響く和音の一打鍵に続き軽快なリズムで弾むような第1主題で始まる第1楽章。
この主題の左手が奏する和音の連打と右手の3連符の組み合わせは呈示部構成上の重要な素材となっているとのことです。
聴き覚えのあるような親しみを感じる主題旋律。
初めて聴く曲の筈なのに耳に馴染みのあるリズムと旋律。
第2主題も軽快。
弱音で奏される右手は流麗。愛らしい響きが印象的。
楽章の一貫した軽快さ。
コーダでは速度を上げつつ右手が奏する旋律の煌びやかな趣。
第1主題が現れ力強く閉じられる第1楽章。

抒情的な美しい調べの主題で始まる第2楽章。
静かに歌われるピアノの歌は心に染み入るような調べ。
ウットリと聴き入っていると静かな歌から生気を湛えた雰囲気に。
そして高揚感。情熱を感じさせる表情に。
ピアノの重厚な和音の響きは楽想を増長するようにも。
コーダで冒頭の調べが愛らしく静かに奏され、消え入るように閉じられる第2楽章。、
優しいピアノの歌、詩に心惹かれる楽章でお気に入りに。

躍動的な主題で始まる第3楽章。
3連符の軽やかさと付点リズムで奏されるスケルツォ主題。
躍動的な活発さ満点。
トリオはト長調の完全な和声的書法とのこと。
快い響き。響きの美しさの虜に。
軽やかで躍動的+愛らしさ。
コーダが28小節加えれれているとのことです。
愛らしさの漂う静かな調べで閉じられる第3楽章。
口ずさみたくなるようなリズミカルな楽章。

第4楽章は古典的なロンド楽章とのこと。
この楽章は「前第3楽章の充実にも関わらず、安直な終楽章を書いてしまっている」との記述が目に入ります。
幸いにも難解な事は分からない自分ですが。

左手の弾むような伴奏、右手の軽やかで愛らしい調べのロンド主題で始まる第4楽章。
右手の愛らしさが印象的。
左手と右手が無垢、無邪気に愉しく対話をしているかのような主題に好印象を。
ロンド主題が奏され静かに迎える曲の終わり。
愉しい雰囲気に溢れた愛らしい楽章。


愛らしい、の一言の曲。
今まで聴いていたシューベルトのピアノ・ソナタでは最も愛らしさを感じます。

カーゾンの演奏も肩ひじを張ることがなく聴いていて好感を抱きます。
第1楽章での流麗なタッチ。
軽快なリズムは一糸乱れることなく一貫性のあるタッチ。
お気に入りになった第2楽章で静かに歌われるピアノの「歌」。
カーゾンが奏し出す歌は心に染み入るようです。
内に語りかけるような繊細で気品が漂うピアノの「詩」を感じるようです。
弱音でのタッチの愛らしさ、響きの愛らしさも印象に残ります。
ベートーヴェンのソナタ第29番に匹敵する大作のソナタとのことですが
長大さを感じることなく耳を傾けておりました。

シュナーベルを師とするカーゾンは録音嫌いだったとか。
まだ、カーゾンの演奏でベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いたことがなく
聴いてみたくなりました。

                

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タグ : シューベルト ピアノ・ソナタ クリフォード・カーゾン

20:49  |  シューベルト  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2018.07/21(Sat)

Op.449 シューベルト:「ピアノ・ソナタ第16番」 by パウル・バドゥラ=スコダ

シューベルトピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
いつも今回は何番に?
誰の演奏に?
選ぶ基準はなく、気が向くままに聴いております。
今回は第16番を。
偶然にも、前回第14番、前々回の第4番に続きシューベルトが好んでいたという調性のイ短調。
パウル・バドゥラ=スコダのピアノで聴いてみました。

シューベルト:ピアノソナタ第16番 
パウル・バドゥラ=スコダシューベルト ピアノ・ソナタ全集より
 
シューベルト:ピアノソナタ第16番 パウル・バドゥラ=スコダ~シューベルト ピアノ・ソナタ全集 
(収録曲)
シューベルト

ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 D.840(録音:1968年)
ピアノ・ソナタ第16番 イ短調 D.845(録音:1971年)

パウル・バドゥラ=スコダ(P)


第1楽章:Moderato イ短調 2/2拍子
第2楽章:Andante con mosso ハ長調 3/8拍子
第3楽章:Scherzo:Allegro vivace-Trio:Un poco più lento イ短調 3/4拍子
第4楽章:Rondo:Allegro vivace イ短調 2/4拍子



作曲されたのは1825年5月頃。シューベルト28歳頃でしょうか。
シューベルトはこの時期までに少なくとも14曲以上のソナタを作曲していたそうです。
舞曲以外のピアノ作品で出版されていたのは「さすらい人幻想曲」が唯一のものであり、作曲された14曲以上のソナタは未出版だったとのことです。
そのような状況の中で、このソナタ第16番が作曲後間もない半年ほどのうちに出版されたことはシューベルトにとっては画期的な事だったそうです。

4楽章構成の本格的なソナタ。
第2楽章はシューベルトの全ソナタ作品の中で唯一の変奏楽章になっているそうです。
第3楽章はメヌエットではなくスケルツォに。
第4楽章は完全なロンド形式に。
このような諸特性から、このソナタはシューベルトのソナタ創作に一つの転換期をもたらしているとのことです。
この曲は直前に書かれた未完のソナタ第15番ハ長調「レリーク」D.840 を試作としているそうです。
また、ベートーヴェンのパトロン、弟子であったルドルフ大公(ルドルフ・ヨハネス・ヨーゼフ・ライナー・フォン・エスターライヒ)に献呈されことがシューベルトの自信を窺わせる作品とのこと。
尚、このソナタ以前の作品の3楽章構成からこのソナタ以降、シューベルトは一貫して4楽章構成で作曲をしたそうです。

初演の正確な年月は不明だそうですが、シューベルト書簡集には
シュタイアに演奏旅行をした時、両親宛て書簡に次のような記述があるそうです。

「新しいソナタの変奏曲は熱狂的に迎えられました。僕はどうにか上手く弾くことができましたし、僕の手の下で鍵盤が歌を歌っていくように思えた、と称賛してくれる人もいました」

この手紙の「変奏曲を持ったソナタ」ということから、このソナタ第16番、と推定されるとのことです。
手紙の日付けは1825年8月25日。
初演は1825年8月25日以前に演奏されたと推定されるようです。

初版は翌1826年にウィーンのベンナウアー社から
「グランド・ソナタ第1番」とのタイトルが付けられ出版されたそうです。
自筆譜は紛失とのこと。


スコダで聴くシューベルトのピアノ・ソナタ第16番D.845

ピアノが弾みを付けて歌うような旋律で始まる第1楽章。
この第1主題の前半のピアノの明朗な歌。
続く主題後半は力強く情熱的な趣。
経過句での強弱の対比によりますます躍動的に。
この経過句は第2主題の準備も兼ねているとのこと。
リズミカルで華やかさが漂う第2主題。
展開部では主題が動機操作ではなく即興風に奏されるよう。
シューベルトらしい美しさが束の間姿を見せる展開部。
再現部で主題はカノンで始まり、第2主題はイ長調で戻るとのこと。
コーダは第1主題の音型で左手のリズミカルな伴奏に右手も力強いタッチで。
両手から生み出される旋律は高揚するかのように。
力強く閉じられる第1楽章。

第2楽章は主題と5つの変奏で構成されているとのこと。
思索をするような和音の調べで始まる第2楽章。
この主題の思索をするような和音からは素朴、朴訥な印象を受けるようです。
第1変奏は左手の低音域の細やかな伴奏と右手との対話のような変奏。
主題と同じような思索するような雰囲気で両手の対話も思索的。
第2変奏では前変奏の16分音符の細やかさが32分音符になっているとのことで
さらに細やかに奏される左手の伴奏に右手は軽やかに奏され
華やかな雰囲気の変奏。明るく華麗な変奏。
恰もダンスをするかのような楽しげな雰囲気も感じられるよう。
第3変奏はミノーレ部とのことでハ短調に。室内楽的4声部の書法とのこと。
声部が拡大され情熱的な高揚感に溢れる変奏。
第4変奏では左手が奏する躍動感のあるリズム。
右手の32分音符の素早い動き。
活発な変奏。
最後の第5変奏は第3変奏と同じく4声部の和声書法とのこと。
変容する和声。動的で溌剌な変奏。
次第に速度を落とし閉じられる第2楽章。

第3楽章。このスケルツォ楽章の主題自体は特にスケルツォ的ではなく
3拍子の中で第3拍に現れるアクセントやバス声部の動きや
強弱のコントラストでスケルツォらしさを表しているとのこと。

躍動的、リズミカルに始まる第3楽章。
ピアノは弾むかのように。   
トリオでは速度を落として歌われる調べに素朴な趣が。
左手と右手の仲睦まじさを感じる。
穏やかな雰囲気。豊かさを感じる歌。
スケルツォにダ・カーポして躍動感が戻り
次第に音量を上げて力強く生き生きと閉じられる第3楽章。

第4楽章は明快なロンド形式で549小節の長大な終楽章とのこと。
シューベルトは以後、終楽章構成で悩み続けたそうで、その問題がこの曲辺りから現れているそうです。
新しい主題が現れる度に、その場で展開され各部分で構成されているとのこと。

軽やかに始まる第4楽章。
流麗な趣の主題。
突如、音量が上がり現れる次の新しい主題。
覇気を感じさせる旋律。
ダクチュル音型を連用し曲に変化付けをしているとのこと。
この音型により全体的に軽快、躍動感に溢れた楽章でしょうか。
休む間もなく走り続けるマラソン走者を連想してしまいます。
素早い動きのまま渾身の力を込めた打鍵で迎える曲の終わり。


この全集は昨年秋頃、第15番「レリーク」を聴いた折に未完の第3楽章まででしたので全曲を聴きたいと願っていました。
お寄せいただいたコメントによりパウル・バドゥラ=スコダが補筆した全曲版の存在を知り求めた全集。
ショップの紹介記事によると、この全集はスコダの90歳を記念し、1970年にRCAから発売されたシューベルトのピアノ・ソナタ全集で昨年2017年に初CD化され発売されたそうです。
こちらの全集には第16番は今回聴いた1971年録音と1968年録音の2種が収録されていました。

このソナタを聴き終え、思わず出でしまう溜め息。
曲が終了し受けた感動の賜物(?)のような感嘆の溜め息。
シューベルトのピアノ・ソナタで曲が終了し溜め息が出るのはこのソナタ(第21番は例外)が初めてかも。
シューベルトのピアノ・ソナタの世界を堪能させてくれる曲の一つのように感じます。

昨年の秋以来聴くスコダのピアノ。
当時はどのような印象を受けたのか忘れてしまったような・・・・。
一音一音の造形の明晰さが楽想をクッキリと浮かび上がらせるように感じます。
第2楽章での第4変奏で特に感じたのはスコダの生み出す音に混濁がなく、輝きすら感じるようです。
切れ味の良い、鋭いくらいのタッチ。
強弱の明瞭さ。
生き生きと伝わる楽想。
曲が「生き物」のように感じられるようです。

今まで馴染むことができなかったシューベルトの展開部の書法。
動機操作の展開部に慣れ親しんできた耳には新鮮味もありますが戸惑うことが多くありました。
このソナタを聴き、展開部におけるシューベルトの書法にも耳慣れてきたようにも思っています。

シューベルトのピアノ・ソナタに新たな魅力を感じるのは
楽想故でしょうか、それともスコダの演奏故でしょうか。
この全集を求めて1年近くも眠らせてしまっていた月日。
このソナタを聴き、1年前よりも一層、スコダのピアニズムに目覚めたような気がしています。
スコダの演奏でシューベルトのピアノ・ソナタを聴き込みたい気持ちになってきました。
と、言いつつ、またもやCDラックに眠らせてしまうことに?

                  

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : シューベルト ピアノ・ソナタ スコダ

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