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2017.01/07(Sat)

OP.369  シューベルト:エレンの歌Ⅲ「アヴェ・マリア」 by ボ二ー&パーソンズ

新しい年もすでに1週間が過ぎようとしています。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします

2017年のスタートはシューベルトの歌曲で。
ボ二ーの歌で「エレンの歌Ⅲ:アヴェ・マリア」です。


           シューベルトエレンの歌Ⅲ「アヴェマリア」 D.839
                     ボ二ー&パーソンズ

             369:シューベルト:歌曲集 ボ二ー&パーソンズ

                     バーバラ・ボニー(S)
                     ジェフリー・パーソンズ(P)
            (録音:1994年4月 テルデック・スタジオ、ベルリン)
 
 
作曲されたのは1825年4月。
シューベルティアーデが盛んに催されていた頃だそうです。
シューベルトは28歳歳頃でしょうか。

曲は 3節の有節歌曲  変ロ長調  4/4拍子 
テンポは「非常にゆっくりと」と記されているそうです。
ウォルター・スコットの叙事詩「湖上の美人」に付曲。

              369スコット像エディンバラ
       エディンバラ、プリンス・ストリート・ガーデンのスコットの記念碑                  
                Sir Walter Scott, 1st Baronet
              ( 1771年8月15日 - 1832年9月21日)
         

湖上の美人」はイギリスの歴史小説家ウォルター・スコット作の叙事詩だそうです。
湖上の美人」はスコットランドのカトリーン湖を背景に
エレンを中心とした恋と武勇の話で全6篇からなっているとのこと。
独訳はアーダム・シュトルク。
このシュトルク訳にシューベルトは付曲をしたそうです。
この叙事詩の7つの詩にシューベルトは付曲をしているそうです。
エレンの歌Ⅲ アヴェ・マリア」はそのだ6番目の曲とのことです。

シュトルク訳では原詩の形式が各4行8詩節の民謡詩節に
変えられているそうです。
初版は1826年4月5日にウィーンのアルタリア社から出版され
この初版では英語の歌詩も添えられたとのことです。

この叙事詩のヒロインがエレン・ダグラス。
城主である王の仇討から逃れるためにエレンと父親はスコットランド高地の
コブリンの洞窟近くに身を隠している。
父娘は王に追放されてから、ハイランドの族長ロデリックに匿われてきた。
切羽詰まった逆境の中でエレンは湖畔の岩上で聖母像に額ずき
父の罪が許されるようにマリアの加護を求め祈りがこの曲だそうです。

因みに
エレンの歌Ⅰ」は第1篇31節で
狩りをして道に迷い疲れた兵士を休ませるためにエレンが歌う子守歌だそうです。
エレンの歌Ⅱ」は第1篇32節。「エレンの歌Ⅰ」と詩の内容に大差はないとのこと。

作曲された当時も「アヴェ・マリア」は多くの人々に感銘を与え
シューベルト自身が好んで歌って聴かせたそうです。

余談ですが。
湖上の美人」は1819年にロッシーニがオペラ・セリアとして作曲しているそうです。
台本はアンドレア・レオーネ・トットラで
原曲名はLa donna del lago とのことです。


ボ二ーの歌で聴く「アヴェ・マリア」。

ピアノ伴奏はハープを模しているそうです。
旋律もさることながら、ボ二ーの歌唱そのものが祈りとなり
耳に、心に染み入ります。
言葉に託された微妙な心が真摯に歌われているようにも感じます。
反復句の “Ave Mria ! ” という呼びかけは
各節の初めでは微妙に変化しているのが印象的です。
“Ave Mria ! ” との呼びかけの一つ一つが
繊細に歌い分けられているように感じます。

真摯な祈り、時には緊張感をともなう祈り。
第2節次の2行が印象的です。
 “Du lächelst, Rosendufte wehen
  In dieser dumpfen Felsenkluft”
微かに声量を落として優しく囁くように歌われ
辛苦の中で希望を垣間見る想いがするようです。
言葉を必要としないボ二ーの歌唱。
語ろうとすればするほど
祈りそのものの歌に言葉、文字は必要のないことを感じるのみです。

「エレンの歌Ⅰ」「エレンの歌Ⅱ」はまだ聴く機会がないのですが
聴いてみたく思います。

      ライン 

               エレンの歌Ⅲ:Ellens GesangⅢ D839

         (訳詞)
         アヴェ・マリア!優しき乙女よ、
         一人の娘の願いを聞いてください、
         この堅く険しい巌からも
         きっとたしの祈りはあなたへと届くでしょう。
         それでわたしたちは安心して朝まで眠っていられるのです 。
         世の人々がどんなに冷たくても。
         おお 乙女よ、この娘の不安を見て
         おお 母よ、願う子の声を聞いてください!
         アヴェ・マリア!

         アヴェ・マリア!汚れ無き方よ!
         わたしたちがこの巌で眠る時、
         あなたの護りがわたしたちを包んでくれ
         硬い巌も柔らかく感じられるのです。
          あなたが微笑めば、バラの香りが匂い立ちます
         この湿った岩間にも。
         おお 母よ、子の願いを聞いてください、
         おお 乙女よ、一人の娘が呼びかけています!
         アヴェ・マリア!

         アヴェ・マリア!清き女性よ、
         地の、空の悪魔たちを
          あなたの眼の慈しみで追い払い、
         わたしたちの側に住み着けないようにしてください。
         わたしたちはじっとこの運命に従います。
         あなたの神聖な慰めがもたらされるのですから。
         この娘にやさしく身をかがめてください、
         父の為に祈るこの子に。
         アヴェ・マリア!
                                   (若林氏訳)

         Ave Maria! Jungfrau mild,
         Erhöre einer Jungfrau Flehen,
         Aus diesem Felsen starr und wild
         Soll mein Gebet zu dir hin wehen.
         Wir schlafen sicher bis zum Morgen,
         Ob Menschen noch so grausam sind.
         O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,
         O Mutter, hör ein bittend Kind!
         Ave Maria!

         Ave Maria! Unbefleckt!
         Wenn wir auf diesen Fels hinsinken
         Zum Schlaf, und uns dein Schutz bedeckt
         Wird weich der harte Fels uns dünken.
         Du lächelst, Rosendufte wehen
         In dieser dumpfen Felsenkluft,
         O Mutter, höre Kindes Flehen,
         O Jungfrau, eine Jungfrau ruft!
         Ave Maria!

         Ave Maria! Reine Magd!
         Der Erde und der Luft Dämonen,
         Von deines Auges Huld verjagt,
         Sie können hier nicht bei uns wohnen,
         Wir woll'n uns still dem Schicksal beugen,
         Da uns dein heil'ger Trost anweht;
         Der Jungfrau wolle hold dich neigen,
         Dem Kind, das für den Vater fleht
         Ave Maria!


いつもの蛇足です。おばさんの井戸端会議。
シューベルトが付曲をした7曲をメモとして。(Wikipediaドイツ語よりそのままコピー)

1.Ellens Gesang I D 837 „Raste Krieger, Krieg ist aus“/„Soldier rest! the warfare o’er“
2.Ellens Gesang II D 838 „Jäger, ruhe von der Jagd“/„Huntsman, rest! thy chase is done“
3.Bootgesang D 835 „Triumph, er naht“/„Hail to the chief“, Männerquartett (TTBB)
4.Coronach (Totengesang der Frauen und Mädchen) D 836 „Er ist uns geschieden“/„He is gone to the mountain“, Chorlied (SSA)
5.Normans Gesang D 846 „Die Nacht bricht bald herein“
6.Ellens Gesang III (Hymne an die Jungfrau) D 839 „Ave Maria! Jungfrau mild!“/„Ave Maria! maiden mild!“, Lied für Frauenstimme
7.Lied des gefangenen Jägers D 843 „Mein Roß so müd“/„My hawk is tired“

この7曲はシューベルトの歌曲集『湖上の美人』(Liederzyklus vom Fräulein vom See)とされているようです。
この歌曲集の存在を初めて知りました。
できることなら聴いてみたく思い、探してみたのですが見当たりません。
発売されているものなのでしょうか。
ご教示をいただけると助かります。

                

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2016.09/17(Sat)

Op.353 シューベルト:歌曲集「冬の旅」全曲 by プライ&エンゲル

前回、マイスキー&オヴォラのチェロ版で「冬の旅」より
『幻』と『辻音楽師』を聴き歌曲集「冬の旅」全曲を聴いてみました。
シューベルトの三大歌曲集では苦手な「冬の旅」ですので
脱線しつつも初めてじっくり、噛みしめつつ耳を傾けています。

ディースカウの歌う「冬の旅」の7種の録音を聴いてみたいとの思いもあり
前回のディスカウ&ムーア(1962年録音)で聴いていました。
が、聴いている途中で・・・・どうも。
昔々、LP時代に全曲を聴き通すことができず「冬の旅」に対して苦手意識が
芽生えて以来、云十年でしょうか。
今回は何とか終曲まで聴いたものの・・・。

陽の目を見ることがなかったプライエンゲルで改めて聴いてみました。
冬の旅」が惹かれる歌曲集になりました。

                  シューベルト「:「冬の旅」D.911 全曲
                       プライエンゲル
                      プライ EMI録音集より


             353:シューベルト「冬の旅」プライ&エンゲル

                    ヘルマン・プライ(Br)
                    カール・エンゲル(P)
                    (録音:1961年 ベルリン)


             デッサウ、都市公園内のミュラーのモニュメント
                  352シューベルト ミュラー Denkmal im Dessauer Stadtpark
                Johann Ludwig Wilhelm Müller
                 (1794年10月7日 - 1827年10月1日)
             

この歌曲集について先日、綴ったことと重複しますが。
作曲は1827年。
初演は1828年1月10日に第1曲のみがウィーン楽友協会で歌われたそうです。
全曲の初演は不明とのこと。
出版はシューベルトの死後で、前半の第1部が1828年1月14日
後半の第2部が1828年12月30日に出版されたそうです。
尚、原譜は残っておらず第23曲の不完全な写しがウィーン楽友協会に
保存されているとのことです。

「美しき水車小屋の娘」の作曲の4年後、1827年に作曲。
この歌曲集は「水車小屋」のように明確な筋はないとのことです。
詩は「水車小屋」と同じくヴィルヘルム・ミュラー
24遍全部に2回に分けて作曲されたそうです。

前半(第1曲-12曲)の作曲は1827年2月。
前半はミュラーが定期刊行物に発表した詩で詩の順序に従い
作曲されたとのことです。
後半(第13曲-24曲)は同年10月に作曲。
詩集の形にまとめられたもので詩の順序は大幅に入れ替えられているとのこと。
シューベルトはすでに作曲したものを除いた残りの詩にその順序のまま
作曲したそうです。

1823年、26歳頃からシューベルトの病状は次第に悪くなっていったそうです。
その頃にシューベルトは日記に次のように記しているとのこと。
 「他人の本当の苦痛を察することは誰にもできない。
 ・・・私の苦しみによって書かれた作品は、人々を最も喜ばすかのように
  思われる」
日記にそのように記した後に作曲された歌曲集「冬の旅」。

「冬の旅」の音楽の陰鬱さの原因として大木正興、大木正純氏は
次の点を挙げていられます。
シューベルトが病魔に打ちのめされた、ということも考えられるが
それ以上に大事なこととして当時の社会情勢を考慮されています。
当時、産業革命により人口は都市への集中が始まり
社会からの疎外、という意識が背景にあるそうです。
それは20歳代後半に熟してきたシューベルトにとって大きな重圧として感じられ
感受性も暗い方へと向かっていった、ということが考えられるとのことです。
シューベルト自身が「冬の旅」の主人公と似たような状態に放り出され
当時の社会の犠牲者だった、とも。


プライの歌唱で聴く「冬の旅」。
1961年の録音とのことですのでプライ、37歳頃の歌声でしょうか。
やっと、やっと長年の「冬の旅」苦手意識から解放されたように感じます。
以前にもプライの歌唱から感じたことですが
人に聴かせるために、また上手に歌おうとするのではなく
自分自身に語りかけるような歌唱のように思われます。
プライの歌唱の温かさ、素朴さ、飾り気のない朴訥さに惹かれます。
プライのその持ち味がこの歌曲集からも感じられるようです。
主人公の心情が身に沁みるように伝わってくるようです。
一曲一曲に込められた主人公の果てのない孤独感、寂寥感等の心情を
歌い紡いでいくプライ。
ただただ、詩と歌唱に聴き入るのみです。

全24曲中、特に印象に残った一曲が第15曲「からす」。
通作形式。ハ短調 2/4拍子。
この歌曲集の中では異色な曲のようにも感じられます。
ピアノ右手の単調な三連音はカラスの羽ばたきを表しているのでしょうか。
愛らしく、またコミカルにも感じられます。
旋律を奏する左手からは抒情的な趣も感じられます。
詩の内容に相反してこの歌曲集ではホッとするような1曲。

最後の「辻音楽師」はこの曲集では最も印象に残ります。
通作形式。イ短調 3/4拍子。
「歌う」というよりも静かに語りかけるような
消え入るかのような呟き、囁きのようです。

プライの歌唱でこの歌曲集を聴くと
ミュラーの詩に根を張っている暗鬱さの中にも
シューベルト特有の抒情性が随所に感じられるようです。

前回はディースカウの歌う「冬の旅」の7種の録音を聴いてみたいと
思ったものですがプライで聴き意外な方向転換になったようです。
他の歌手でも聴いてみたい思いが募る歌曲集に変貌しました。
明日、ハンス・ホッターのバス・バリトンの「冬の旅」が届く予定ですので
楽しみです。
あれほど苦手だった「冬の旅」。
今更ながらに一つの演奏の重要さを感じています。

                  

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タグ : シューベルト 冬の旅 ミュラー プライ エンゲル

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2016.09/10(Sat)

Op.352 シューベルト:歌曲集「冬の旅」より『幻』 by マイスキー&オヴォラ(チェロ版);ディースカウ&ムーア

久し振りにシューベルト歌曲です。
歌曲集「冬の旅」より第19曲目の『』。
シューベルトの三大歌曲集の中であまり聴くことがない「冬の旅」。

』に惹かれる契機となったのはつい先日、マイスキーの演奏を聴いてから
です。
久し振りに寄ったCDショップ店頭で一枚のディスクが目に付きました。
「セレナーデ~シューベルト名曲集」。
マイスキーのチェロ、ダリア・オヴォラのピアノです。
「アルペジョーネ・ソナタ」他に歌曲から14曲が収録されています。
「万霊節の連祷」と「音楽に寄せて」が収録されており
マイスキーのチェロで聴いてみたく求めたディスクです。
このディスクとの出合いのお陰で疎遠だった「冬の旅」が親しみを感じる
歌曲集になりつつあります。

                  セレナーデ~シューベルト名曲集
              ミッシャ・マイスキー(Vla)&ダリア・オヴォラ(P)


                 352セレナーデ~シューベルト名曲集 マイスキー
                         (収録曲)

                 アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821
                 知りたがる男 D795の6
                 ミニョンの歌 D877の4
                  D911の19
                 辻音楽師 D911の24
                 夜と夢 D827
                 海辺にて D957の12
                 音楽に寄せて D547
                 ます D550
                 セレナーデ D957の4
                 孤独な男 D800
                 水車職人と小川 D795の19
                 野ばら D257
                 万霊節の連祷 D343
                 君こそは憩い D.776

                  ミッシャ・マイスキー(Vla)
                  ダリア・オヴォラ(P)
                    (録音:1996年1月)


マイスキーのチェロで奏される『』は心に染み入ります。
次の収録曲、「冬の旅」の最後の第24曲『辻音楽師』。
この曲も同様で、他の曲も耳を奪われるばかりです。

マイスキーのチェロの調べから微細なニュアンスが伝わってくるようです。
チェロが 本当に歌を歌っているような演奏 に感じます。
人声で歌われているかのようにブレスさえも感じられます。
心の琴線に触れるマイスキーの演奏に飽きることなく毎日、聴き入っています。
こちらのディスクは既に廃盤になっているようで。
店頭で出合うことができて幸いでした。

マイスキーで『』を聴き
歌曲集「冬の旅」(全曲)を聴きたくなりラックで眠り続けていたディスクを
取り出してみました。
1962年録音のディースカウムーアです。

              シューベルト:歌曲集「冬の旅」(全曲)
                   ディースカウムーア


                352:シューベルト:「冬の旅」から「幻」ディースカウ&ムーア

            ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
            ジェラルド・ムーア(P)
                   (録音:1962年 ステレオ)


手持ちのディスクはかなり以前にEMI グランドマスター・シリーズとして
発売されていたものです。
この画像は手持ちのディスクとは違いますが同じ音源のようですので
貼り付けてみました。
ディースカウにとって「冬の旅」の初めてのステレオ録音になるそうです。
このディスクも廃盤になっているようです。

「冬の旅」が作曲されたのは1827年。
シューベルトが亡くなる前年だそうです。
ヴィルヘルム・ミュラーの連作詩「冬の旅」への付曲で全24曲。
「冬の旅」はシューベルトの歌曲集としては「水車小屋の娘」の4年後に
作曲された2番目の歌曲集であり、シューベルト自身が意図した歌曲集では
最後のものになるとのことです。

初演は1828年1月10日。第1曲のみがウィーン楽友協会で歌われたそうです。
全曲の初演は不明とのこと。
作詩のミュラーは作曲された年、1827年9月30日に33歳で夭折。
その翌年にシューベルトはミュラーよりも若くして世を去ったとのことです。

「冬の旅」より第19曲『幻』D.911-19
通作形式 イ長調 6/8拍子 やや速く。

ディースカウで聴く『幻』。
ディースカウ30歳代後半の録音になるそうです。
詩の内容は、現実に絶望をし幻影に惹かれ、孤独はますます深まる
とのことです。
聴く回数を重ねる毎に印象に変化が生じてきました。
1回目に聴いた時にはピアノ伴奏もディースカウの歌声も詩の内容を
忘れさせてしまうような明るさを感じてしまいました。
次に耳を傾けると、曲の開始の踊るような一筋の光を表すピアノは
変わることなく軽やかなステップを踏むかのようなリズム。
一方、ディースカウの声音からは翳りを感じるように。
第1節から4節までは明るい感じの声音で。
第5節から7節からは悲愴な趣を感じさせるように。
第8節から10節では自分の心に語りかけるような憧れのような雰囲気を感じます。
聴く毎に味わいが深まる曲に思われます。

今回は連作歌曲の中の『幻』だけを聴きましたが
改めて「冬の旅」全曲をじっくりと味わいつつ聴き直してみたく思います。
ディースカウは「冬の旅」を得意としていたそうで7回程録音をしているとのこと。
できることなら録音年別に聴いてみたいものです。

      2016 317ライン イラスト

                 Täuschung:「幻」 D.911-19
                     (詩:ミュラー)

            光が一つ 僕の前を親しげに躍って行き、
            僕はそれをあちこちと追いかけ回る。
            僕はすすんでその後を追いかけて、
            それが旅人を惑わすものだと考えつく。
            ああ、僕のような惨めなものは
            こんな鮮やかな誘惑には身を任せてしまうものだ。
            それは氷と夜と恐怖の向こう側に、
            明るく、暖かい家を旅人に見せてくれる
            そしてその中の一つの愛しい魂を―。
            ただ 幻覚だけが僕の得られるものなんだ!
                                          (訳:若林氏)

            (原詩引用)
            Ein Licht tanzt freundlich vor mir her;
            Ich folg' ihm nach die Kreuz und Quer.
            Ich folg' ihm gern und seh's ihm an,
            Das es verlockt den Wandersmann.
            Ach, wer wie ich so elend ist,
            Gibt gern sich hin der bunten List,
            Die hinter Eis und Nacht und Graus
            Ihm weist ein helles, warmes Haus
            Und eine liebe Seele drin -
            Nur Täuschung ist für mich Gewinn!

                  

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2016.06/11(Sat)

Op.339 シューベルト:歌曲「死と乙女」D.531 by ディースカウ&ムーア;スゼー&ボールドウィン

前回、シューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」の編曲版を聴き
歌曲の「死と乙女」に耳を傾けてみました。
シューベルト歌曲は大好きなのですが、苦手な歌曲の中の一つが「死と乙女」。

ディースカウ&ムーア と 最近のお気に入り、ジェラール・スゼー
このお二人の歌で聴いてみました。


             D.F=ディースカウシューベルト歌曲全集より
               シューベルト歌曲全集byディスカウ

                      D.F=ディースカウ(Br)  
                      ジェラルド・ムーア(P)  
                      (録音:1966-68年頃)


        ジェラール・スゼー~Schubert: Favourite Liederより
               330「水車小屋」Schubert: Favourite Lieder

                    ジェラール・スゼー(Br)
                    ダルトン・ボールドウィン(P)
                     (録音:1961-67年頃)


作曲されたのは1812年2月、シューベルト20歳の時だそうです。
詩はマティアス・クラウディウス
クラウディウスはドイツの抒情詩人、新聞記者とのことです。

              338シューベルト「死と乙女」弦楽合奏版Matthias Claudius
                     Matthias Claudius
               (1740年8月15日-1815年1月21日)

シューベルトはクラウディウスの詩のうち約10編に付曲をしているそうです。
死と乙女」の他に知られているのは「ナイチンゲールに寄す」とのこと。

詩は短く、病床の少女と死との対話で書かれているそうです。
通作形式。二短調、2/2拍子 「中庸の速さで」 の指定。

尚、Wkipedia によると
ドイツでは昔から、死は眠りの兄弟である、と言われているそうです。
この曲でも「死」は一つの永遠の安息として描かれているとのことです。

この曲の「死」についての概念は演奏者により異なるようで・・・。
従来はフョードル・シャリアピンに代表されるように「死」を恐るべき死神と捉え
死神の語る言葉は誘惑、脅かしである、とする解釈が一般的だったそうです。
それに対してジェラルド・ムーアなどは最後の美しいコラールは
脅かしではなく、真の安息であると主張しているとのことです。
前回の弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」にも綴ったリストの言葉を思い出します。
第2楽章結びの美しいコラールを聴いたリストは
 「実際、まさにこのようにして乙女は天へ昇っていくのだ」
と讃嘆したとのこと。


2人のバリトンで聴いた「死と乙女」
1925年に生まれ87歳で逝去されたディースカウ
1918年生まれで86歳で逝去されたスゼー
演奏時間は ディースカウ 2分30秒 : スゼー 3分19秒
録音は共に1960年代。
ディースカウは46-8歳頃の録音でしょうか。
一方のスゼーもまた43-49歳頃の録音のようです。

先ずはディースカウが歌う「死と乙女」です。
ピアノの前奏を聴き弦楽四重奏曲の「死と乙女」が脳裏に甦り
懐かしい気持ちに。

始まりの乙女の歌詞、第1節では乙女の悲痛な叫びを想わせるように歌われ
第2節からは死神に対する哀願のような歌唱で。
各節で微妙に変化をする乙女の心理描写が
ディースカウの歌唱では端的に表現されているように感じられます。
死神が乙女に語る4つの節においては
柔和に優しく語りかけるように歌い上げるディースカウ。
死神のイメージである不気味さなどをまったく感じさせない歌い方。
ディースカウのこの歌唱を聴き 死が永遠の安息 ということが
伝わってくるようです。

次に聴いたスゼー&ボールドウィンです。
デイースカウ&ムーアとは対照的に速度をかなり遅く設定し
曲の印象も違うものを感じるようです。
ピアノの前奏から遅いテンポです。
乙女の各4節の歌詞を歌うスゼーからは
死神に対する恐怖に覆い尽くされた乙女の気持ちが伝わるようです。
死神の歌詞では第1節からゆっくりとした不気味な死神の語りかけ。
一貫して死神の不気味な暗さが漂っているように感じられます。
乙女の恐怖心と死神の不気味な雰囲気に緊張を感じてしまうようです。

ディースカウの歌で聴き「死と乙女」に嘗てなく共鳴する点も感じられました。
嘗ては聴き流してしまう曲でしたが
今回、初めてじっくりと耳を傾けつつ曲の味わいを噛みしめることができたように
思います。

     2016 317ライン イラスト

            死と乙女:Der Tod und das Mädchen D.531
                (詩:マティアス・クラウディウス

            (乙女)
              「あっちへ行って!ああ、あっちへ行って!
              来ないで、無法な骸骨の姿をした死神!
              わたしはまだ若いの行ってください、心ある方!
              どうか わたしに触らないで」

            (死)
              「その手をお出し、美しくか弱い娘よ、
              わたしはお前の友、責めに来た訳ではない。
              しっかり落ち着いて!わたしは乱暴はしない、
              わたしの腕の中で穏やかにお眠り」
                         (訳:若林氏 引用)

            (原詩引用)

              Das Mädchen:
              "Vorüber! ach, vorüber!
              Geh, wilder Knochenmann!
              Ich bin noch jung, geh, Lieber!
              Und rühre mich nicht an."

              Der Tod:
              "Gib deine Hand, du söhon und zart Gebild’
              Bin Freund und komme nicht zu strafen.
              Sei gutes Muts! Ich bin nicht wild,
              Sollst sanft in meinen Armen schlafen."

                   

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : シューベルト 歌曲 死と乙女 ディースカウ スゼー クラウディウス

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2016.01/09(Sat)

Op.317 シューベルト:「春に」D.882 by シュワルツコップ&E.フィッシャー

松の内も過ぎ、今年もまた一年が駆け足で過ぎ去ってしまいそうな気配です。
遅くなりましたが
今年もどうぞよろしくお願いいたします

新年のスタートは今年もまたシューベルト歌曲で。
シューベルト歌曲の中で5本の指に入る大好きな「春に」D.882 です。
既にこの曲は2011年にディースカウの歌で一度、登場していました。
今回はシュワルツコップ&E.フィッシャーで聴いてみました。

              シューベルト歌曲集~シュワルツコップ

              317シュワルツコップ:シューベルト歌曲集

                        (収録曲)

                   1 楽に寄す D.547
                  2 春に D.882
                  3 悲しみ D.772
                  4 ガニュメート D.544
                  5 緑野の歌 D.917
                   6 糸を紡ぐグレートヒェン D.118
                  7 恋人のそばに D.             
                  8 若い尼僧 D.828
                  9 シルヴィアに D.891
                 10 水の上で歌う D.774
                 11 夜のすみれ D.752
                 12 ミューズの子 D.764

                エリザベート・シュワルツコップ(S)
                エドウィン・フィッシャー(P)
             (録音:1952年10月4-7日 アビー・ロード )


5年前のこの曲の記事と重複する点もありますが。
曲が書かれたのは1826年3月。


              317:シューベルト「春に」 エルンスト・シュルツェ
               Ernst Conrad Friedrich Schulze
              (1789年3月22日-1817年6月29日)

詩はドイツの詩人エルンスト・シュルツェ。
3節から成る詩に変奏曲風に付曲されたものだそうです。
ディスクの解説によると
シュルツェは花が香り、鳥は歌い、泉湧く春の丘で失われた恋の想い出を
嘆きよりは寧ろ懐かしさを込めて回顧している、とのことです。

シュワルツコップの歌声との初めての出会いはLP時代に遡ります。
声を聴いたこともないシュワルツコップの「シューベルト歌曲集」のタイトルに惹かれて求めたように記憶しています。
LPを求めたものの数回位しか聴かず・・・あまり関心を抱くことなく過ぎてしまいました。
あれから云十年。
改めてCDを手にしシュワルツコップの歌うリートにこれほどじっくりと耳を傾けたのは初めてのことです。
また、シュワルツコップの歌うリートの素晴らしさに初めて感じ入るものがありました。

繰り返し聴きつつ、聴く毎に新しい発見があるように感じています。
シュワルツコップの歌唱に耳を傾けつつ
発音の明瞭さ、表現力の豊かさの中にも抑制のある節度、言葉を慈しむかのように歌われる一曲一曲。
それらの一つ一つがディースカウと共通しているように思われました。

シュワルツコップは言葉のニュアンスを理解せずに歌うことを嫌い
自身も外国語の歌唱には慎重だったそうです。
そのようなシュワルツコップに好感を抱きました。
最近聴いた某ソプラノ歌手とは対照的なようで。
因みにシュワルツコップはディースカウを「神のような存在」としていたそうです。

録音は1952年とのことですのでシュワルツコップは37歳頃でしょうか。
一曲目に収録されている「音楽に寄す」が耳に届いた時に
ソプラノではなくアルトのように感じられてしまいました。
シュワルツコップは最初はコントラルトとして出発しソプラノに転向したそうですが
この曲を聴いているとコントラルトの面影を強く感じます。
ソプラノに転向しオペラでは当初コロラトゥーラの役だったそうですが
後にリリックの役に変わったとのことです。
曲に戻り、厳かな趣が漂う素晴らしい「音楽に寄す」に出合うことができたように
思います。

次の2曲目が今日の主役、「春に」。
フィッシャーの奏でるピアノが春の喜びの足音を連想してしまいます。
簡潔で親しみやすい旋律です。
シュワルツコップは明るいリズムに乗りながらもじっくりと聴かせてくれる歌唱。
心情が伝わってくるようです。
ピアノ伴奏も印象に残るものがありました。
詩の第1節から2節にかけてのピアノだけのパートと第2節全体に
ピアノの煌めくような響き。
水面に太陽が反射するような明るい煌めきを感じさせるピアノが印象的です。
最後の “Den ganzen Sommer lang. ” が繰り返されて歌われ
ピアノとともに消え入るように静かに終わるこの歌。
シュワルツコップ&フィッシャーの「春に」、とても気に入りました。

続いて3曲目の「悲しみ」も語りかけるような歌唱で心情が
ひしひしと伝わってくるようです。
4曲目の「ガニュメート」。お気に入りの歌曲です。抒情性と抑制の効いたドラマティックな歌唱に好感を抱きました。
5曲目の「緑野の歌」。春の喜びを素朴にじっくりと歌い込まれているようです。
他「恋人のそばに」「シルヴィア」「水の上で歌う」「夜のすみれ」「ミューズの子」など
嘗てこの拙いブログに登場した曲を耳にすると懐かしさが込み上げてくるようです。

収録曲、最後の「ミューズの子」。
明るく軽やかに、そして愉しく歌われ聴いていても愉しい気分になります。
抒情的な曲が主で選曲も素晴らしく思います。
ディースカウとともにシュワルツコップの歌うシューベルトも
心に染み入るものがあります。
2016年、座右のディスクの第1号になりました。

     2016 317ライン イラスト

                Im Frühling :「春に」D.882
                      (詩:エルンスト・シュルツェ)


           わたしは丘の斜面にひっそりと腰をおろす
           空は雲もなく澄み渡って
           そよ風が緑の谷で戯れている、
           その谷で わたしは早春の日差し浴びて
           かつてはあんなにも幸福だったものだ。
           わたしはあの人に寄り添って歩いた、
           あんなにぴったりと、あんなに睦まじく
           そして暗い岩間の泉の深い底に
           美しく澄んだ青空を眺め、
           その空の中のあの人を眺めた。

           見るがいい、すでに蕾や花の中から
           煌びやかな春が姿を現しているのを!
           わたしにとってはどの花も同じというわけじゃない
           わたしが最も好んで摘むのは、あの人が
           昔摘んだ枝に咲いている花だ!
           なぜなら 咲く花も緑の野も、
           みんなあの時のままなのだから。
           陽の光の明るさが減ったとはわたしには思えない、
           泉に浮かぶ青空の映像が
           よそよそしくなったとはわたしには思えない。

           移ろうのは、ただ、人の心、
           喜びと諍いとが場所を変える
           愛の幸せは遠く消えてしまった、
           愛だけが今も残っている、
           愛と、そしてああ、悩みだけが!
           おお、あそこの草原の斜面にいる
           一羽の小鳥がわたしであったなら
           わたしはいつまでもこの丘の枝に止まって
           あの人の想い出を甘く歌っていたい、
           長い夏の日が終わる時まで。
                                   (訳引用:西野茂雄)


             (原詩引用)
           Still sitz' ich an des Hügels hang,
           Der Himmel ist so klar,
           Das Lüftchen spielt in grünen Tal,
           Wo ich beim ersten Frühlingsstrahl
           Enst, ach, so Glücklich war,
           Wo ich an ihrer Seite ging
           So traulich und so nah'.
           Und tief im dunkeln Felsenquell
           Den schönen Himmel blau und hell,
           Und sie im Himmel sah.

           Sieh', wie der bunte Frühling schon
           Aus Knosp' und Blüte blickt!
           Nicht alle Blüten sind mir gleich,
           Am liebsten pflückt' ich von dem Zweig,
           Von welchem sie gepflückt.
           Denn alles ist wie damals noch,
           Die Blumen, das Gefild,
           Die Sonne scheint nicht minder hell,
           Nicht minder freundlich schwimmtim Quell
           Das blaue Himmelsbild.

           Es wandeln nur sich Will' und Wahn,
           Es wechseln Lust und Streit,
           Vorüber flieht der Liebe Glück,
           Und nur die Liebe bleibt zurück,
           Die Lieb' und ach, das Leid!
           O wär ich doch ein Vöglein nur
           Dort an dem Wiesenhang,
           Dann blieb' ich auf den Zweigen hier,
           Und säng' ein süßes Lied von ihr
           Den ganzen Sommer lang.


                       

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : シューベルト 歌曲 春に シュワルツコップ フィッシャー ディースカウ

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