2011.09/26(Mon)

Op.111 シューベルト:「愛すればこそ近くに思う」=「恋人の近くに」D.162 by ディスカウ;シュライアー

歌曲に耳を傾ける時
人それぞれに心の思いをに託して聴くことでしょう。
の内容に即しつつも、の内容とは少々懸け離れ
自分の思いを託したもう一つのが誕生することも。

シューベルト歌曲で「恋人の近くに」を久しぶりに聴いています。
旋律は気に入っていたのですが
が心の中に入らず、今迄取り上げることができなかった作品です。
この曲のタイトルですが
一般的に通用している「恋人の近くに」や「恋人のそばに」ではなく
最近、山口四郎氏の邦訳に依る「愛すればこそ近くに思う」に出合いました。
今は、にも深く惹かれるものを感じています。

原詩のタイトルの中の Geliebten 「最愛な」。
「最愛な」対象には百人百様でいろいろでしょう。
或る人には 家族 であり
また或る人には 友人 であり
そう、そしてこのタイトルの 恋人 であったり。
そして私自身はこの「歌」を聴きつつ一番大切な「家族」を思います。
家族は人間だけではなく命あるもの全ては家族になり得るとの思いを抱き
そのような「家族」を思いつつ耳を傾けております。

シューベルト歌曲への思いを綴ります時に
今迄しばしば登場しましたシュライアーの「ゲーテの詩によるシューベルト歌曲集」。
この歌曲集に収録されている16曲の中で最も耳を奪われた作品が
「愛すればこそ近くに思う」です。

  何と綺麗な歌・・・。

美しい と言うのとは、また一味違うものを感じます。
子供時代に目に映る花を「綺麗な花」とか「奇麗な色」と
単純に感動をしていた頃の童心がが甦るような 綺麗 な旋律。

初めはシュライアーの歌唱でこの曲に魅せられたのですが
シューベルト歌曲では欠かせないディスカウ
テノールとはまた違う、しっとりとした「美しさ」
優美な調べの中にも哀愁の響きを感じます。
現在の心境では、ディスカウの歌声が自分の心の声に応えてくれるようでお気に入りになりました。

いつものように解説書、虎の巻からです。

詩はゲーテ、1795年4月の創作。
当時人気のあった詩人F.ブルンの詩「わたしはあなたを思う」を
ツェルターが作曲したものを聴いたゲーテが触発をされ
作詩の動機となったとのことです。

ブルンの原詩は5節から成り「わたしはあなたを思う」の句で
各節すべてが始まっているそうですが
ゲーテは2節以下を

 「わたしはあなたを見る」
 「わたしはあなたの声を聞く」
 「わたしはあなたと共にある」

と、各節の句を変化させているとのことです。
この変化がブルンの詩よりも心情に強く訴えかけてくるものを感じます。
因みに、このゲーテ詩にはベートーヴェンの作曲もあるとのことです。
詩がお気に入りになりましたので機会がありましたら
ベートーヴェンの作曲でも聴いてみたいと思います。

シューベルトの付曲は1815年2月27日。
変ト長調 「ゆっくりと、厳かに優美に」の指定での有節形式とのことです。

「愛すればこそ近くに思う」・・・。
いろいろな想いが走馬灯のように心の中を去来する「歌」になりました。
天国と地上
どれ程、遠くかけ離れていようとも
どのような時にでも
愛する家族を思い、その姿を思い見て、声を聞くことができる
そして遥か遠く離れてしまっても心の中ではいつも一緒に。
この「歌」を聴きつつ・・・そのような思いを抱くこの頃です。

   風と樹と空と

       愛すればこそ近く思う:Nähe des Geliebten D162
        (詩:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ


   朝の太陽がほのぼのと 海から差し染めるとき
    わたしはあなたを思う
   月光がきらきらと 泉に映るとき
    わたしはあなたを思う

   遠い道にゆらゆらと 埃の立ちまようとき
    わたしはあなたを見る
   細々と続く岨道に 旅人の戦く夜更け
    わたしはあなたを見る

   水音もおぼろにひたひたと 潮ののぼるとき
    わたしはあなたの声を聞く
   ものすべて黙する林の 静寂を行くとき
    わたしはあなたの声に耳を傾ける

   たとえどのように遠く離れていようと
    わたしはあなたの傍にいる!
   太陽が沈んでゆく やがて星が輝くだろう
    ああ あなたがここにいらっしゃらないとは!

                (山口四郎氏訳)

    (原詩引用)

Ich denke dein, wenn mir der Sonne Schimmer
Vom Meere strahlt;
Ich denke dein, wenn sich des Mondes Flimmer
In Quellen malt.

Ich sehe dich, wenn auf dem fernen Wege
Der Staub sich hebt;
In tiefer Nacht, wenn auf dem schmalen Stege
Der Wandrer bebt.

Ich höre dich, wenn dort mit dumpfem Rauschen
Die Welle steigt.
Im stillen Hain da geh ich oft zu lauschen,
Wenn alles schweigt.

Ich bin bei dir, du seist auch noch so ferne.
Du bist mir nah!
Die Sonne sinkt, bald leuchten mir die Sterne.
O wärst du da!


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タグ : シューベルト 歌曲 ゲーテ ディスカウ シュライアー

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