2017.09/30(Sat)

Op.407 シューベルト:「ピアノ・ソナタ第15番≪レリーク≫」 by アンドラーシュ・シフ

前回、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第29番のオーケストラ版を聴き
ふと、シューベルトピアノ・ソナタを聴いてみたくなりました。
ベートーヴェンにしてもシューベルトにしてもピアノ・ソナタは疎遠、苦手なジャンル。
聴いてみると・・・気が付けば耳をそばだてていました。
初めて「聴く」に等しい曲、シューベルトピアノ・ソナタ第15番。
3人の演奏を聴き代表になってもらったのはシフです。

           シューベルトピアノ・ソナタ第15番「レリーク
       シフシューベルトピアノ・ソナタ全集、即興曲集他より


             407:シューベルト;ピアノ・ソナタ第15番 ソナタ全集 シフ
                         (収録曲)
                       シューベルト

              ピアノ・ソナタ第15番ハ長調D.840「レリーク
              ピアノ・ソナタ第16番イ短調D.845
              ピアノ・ソナタ第8番嬰へ短調D.571
                (録音:1993年ウィーン・コンツェルトハウス)


                第1楽章:Moderato ハ長調 4/4拍子
                第2楽章;Andante ハ短調 6/8拍子

作曲されたのは1825年4月だそうです。
シューベルト28歳頃でしょうか。
1825年にシューベルトはピアノ・ソナタイ短調D.845の第16番を作曲しているそうです。
第16番の作曲に着手されたのは5月に入ってから、と推定されているようで
完成は5月31日以前だったとのこと。
第16番の直前の4月に、この第15番に着手していたそうです。
最初の2つの楽章は完成し、第3、第4楽章は未完のまま放置されたそうです。
第3楽章のトリオ部は完成しているそうですが、メヌエット部は僅かなところで
筆が断たれているとのことです。
第4楽章は272小節以降が空白とのこと。
軽快で愉しいエピソードに溢れた楽章だそうです。

作曲の途中で放棄された理由については解明されていないとのこと。
この第15番の直後に作曲された第16番の筆頭主題の楽想は
第15番と本質的に同じ発想から生まれているとのことです。
平野昭氏の推測では第15番が未完のまま放棄された理由として
「どちらか1曲を犠牲にするという芸術家としての衝動が働き第15番を犠牲として
第1、第2楽章の未完のまま放棄された」と。

ソナタ第15番の「レリーク」は「聖遺物」と言う意味で
この呼称は1861年に初版が刊行された際、出版社が最後の作品と誤認し
付けられた名称だそうです。
曲は部分的には1859年2月10日にシューマンが1834年にライプツィヒで創刊した
「音楽新時報」で第2楽章だけが楽譜で紹介されているとのことです。

今日、この第15番はヘンレ社のピアノ・ソナタ全集(全3巻)の第3巻「初期及び未完のソナタ集」にパウル・パトゥラ・スコダが補作完成した形で収録されているそうです。


シフのピアノで聴くシューベルトのピアノ・ソナタ第15番

第1楽章は318小節からなる大規模なソナタ形式だそうです。

オクターヴ・ユニゾンで始まる第1楽章。
色彩感豊かな雰囲気が漂っているようです。
第1主題の前半と後半の対比が印象的。
簡潔な第1主題の前半に対し
後半では力強いピアノの響きの重厚さ、そして動的なリズム。
第2主題になり柔和な趣に。
右手のソプラノと左手のバスの伴奏で美しい郷愁のような趣。
心惹かれる第2主題です。
この主題の調べに耳を傾けていると、いかにもシューベルトらしい特有な(言葉として表現ができないのですが)趣を感じます。
展開部を経て奏される調べは幻想的、夢想的な
ピアノの自由な独り言のよう。
終わりは力強く奏された後に弱音で閉じられる第1楽章。

第2楽章は121小節からなり、極めて自由な構成で既存の形式を当てはめることが
できないそうです。
平野昭氏によると強いて形式原理を考えると「展開部を省略し、第1主題により
コーダを作った緩徐ソナタ形式が下敷きになっていると思われる」とのことです。

優しげに静かに始まる第2楽章。
内省的な印象を受ける主題。
楽章内で幾度か顔を見せるこの主題、聴くうちに親しみを抱きます。
第1の主題が終わりオクターヴ・ユニゾンで音量を強めて始まる次の主題。 
左手のバスは力強い歩みを刻むかのように。
右手のソプラノは愛らしげな趣を。
この楽章も第1楽章同様にオクターヴ・ユニゾンが効果的な演出をしているように感じられます。
コーダでは冒頭主題が弱音、強音が鮮明に対比、演奏され閉じられる曲。


このソナタ第15番をじっくりと聴くのは初めてであり
初めて聴く、と言った方が適切かもしれません。
今回聴いたシフの全集も眠っていることが多いまま年月が過ぎてしまいました。
嘗て聴いた時には心に残るものがなく素通りをしてしまった曲。
今回、じっくりと聴いてみると其処彼処にシューベルト特有の魅力が
散りばめられているのを感じます。

多用されているオクターヴ・ユニゾンがこの曲に
精彩で愉しげな雰囲気を醸し出しているように感じたりしています。

今回、第15番を手持ちのディスクで3種だけ聴いてみました。
一番先に聴いたのが「巨匠」と呼ばれる一人の某ピアニストの演奏。
良さも悪さも感じることができず・・・・この曲に好印象を抱くことができませんでした。
次に聴いたゼルキンとシフの演奏。
ゼルキンは自ら愉しんで弾いているかのような印象を受け
「微笑むソナタ第15番」のように感じられたり・・・安堵感を抱くホッとする演奏でしょうか。
そしてシフからは生真面目に曲に取り組み、少々、堅苦しさを感じてしまう
「端正なソナタ第15番」との印象を受けました。
後者の2人のピアニスト、それぞれ惹かれるものを感じています。

手持ちのディスクは未完の第2楽章までの演奏ですので
機会があれば補筆完成された演奏も聴いてみたいものです。

                   
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : シューベルト ピアノ・ソナタ レリーク シフ

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