♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

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Op.100 シューベルト:「プロメテウス」D674 by ディスカウ

シューベルト歌曲を聴き続ける日々の最大の楽しみは
一つ一つのシューベルトはどのような旋律を与えたのか?
ゲーテを読みまして関心をそそられました「プロメテウス」を聴いてみました。

「これがシューベルト歌曲?!」
と、思わず耳を疑ってしまいました。
作曲者名を知らずに聴きましたら・・・シューベルト歌曲とは思えないほどです。
他の作曲家の歌曲でしたら、すぐにCDの再生を停止したい位でした。

過日、取り上げました「ガニュメート」とは何とかけ離れた印象でしょうか。
ゲーテの若き日の「ガニュメート」と「プロメテウス」は
ゲーテの相反する二面を表しているとのことですが。
シューベルトの旋律もまた「ガニュメート」と「プロメテウス」では隔絶の感があります。
聴き込むうちに・・・徐々に心の中に。

話は全く変わりますが
東日本大震災後に坂本九の「上を向いて歩こう」の人気が再燃している。
との記事が目に留まりました。
CDシングルを急遽、制作し発売されるそうです。
テレビの報道で避難所生活をされている御方々が集まり「上を向いて歩こう」を
歌っていらしゃった御姿は今でも忘れられません。
  
  上を向いて歩こう
  涙がこぼれないように・・・
 
  幸せは 雲の上に
  幸せは 空の上に・・・

  悲しみは 星のかげに
  悲しみは 月のかげに

原発が更に「苦」に拍車をかけて故郷を離れざるを得ない御方々。
家族が離散をしてしまう御方々。
人間も家族である動物も離れ離れになる非情さ。
涙と苦しみと悔しさ。

多くの御方々が一番口にされる言葉「悔しい」。
  幸せは 雲の上に
  幸せは 空の上に
いつ、心に 真の幸せが戻るのでしょうか。

上を向いて歩こう」は私も昔から大好きな歌でした。
今も大好きな歌です。
ですが、昔 と 今 ではこの歌の内容が全く違う響きとして心に染み入ります。

シューベルト歌曲を聴く日々
真に自分の心に訴えかけてくれる力を持っているのは
九ちゃんの「上を向いて歩こう」・・・です。
ですが、この歌を今は歌えません。
気持ちに対して刺激が強すぎて。
シューベルトでしたら口ずさむことができます。
きっと、遠い彼方の「歌」であるから・・・遠い彼方の音楽であるから。
クラシック音楽全般に対しましての
それが今現在の自分の本音かも知れません。
遠い彼方の音楽でありながらもシューベルトの歌曲が一番身近な音楽として
心に寄り添ってくれるのもまた事実ですが。


さて、シューベルトの「プロメテウス」ですが
手元には1969年録音のディスカウ&ムーア(P)のディスクしかありません。
ディスカウだからこそ、この作品を歌いこなせた?とも感じられます。

作曲は1819年10月。ト短調4分の4拍子、通作形式とのことです。
力強いピアノの前奏に続いてレチタティーヴォ。
まるでドラマティックなオペラのアリアの開始を思わせます。
旋律付きの「朗誦」とでも表現したいくらいの「歌」です。
この作品に就きまして
「一篇の雄大な劇を形造っている」 との記述も見受けられます。

プロメテウス」を聴きつつ
ディスカウの独壇場、他の追従を許さないとの思いを抱きました。
他の歌手では聴いていませんので分からないのですが。

シューベルトの歌曲でこれ程、厳格で強固な意志を感じさせる「歌」が
他にあるのでしょうか?
全曲を聴いていませんので、これまた、分からないのですが。

シューベルト歌曲での異色作品のように感じられます。
この「歌」を通しましてシューベルトは「」と一体になり
者との境界がなくなりシューベルト自身が「」に変身をしたように思われます。

詩は、1774年秋のゲーテの作詩。
先日「ガニュメート」にて書きましたが
「ガニュメート」が宇宙や自然に自己を捧げきって溶け込もうとする没我的な気持ち
  に対し
プロメテウス」の方は神に逆らう巨人主義、とのこと。
前者は天を目指す人間の心の象徴として歌われるのに対し
後者は地上の主として、天上の主たる神と対立。

プロメテウスの詩で共感をするのは高橋健二氏訳の次の一節です。

  太陽の下、汝ら神々より
  哀れなるものを我は知らず。
  汝らは捧げものや
  祈りの息吹によって
  汝らの威厳を
  細々と養うに非ずや。
  幼な児や乞食のごとき
  はかなき望みを抱く痴者なくば、
  汝らは飢え果てしならん。

ギリシャ神話のプロメテウスを歌う激しい内容の詩とのことですが
こちらの詩を読みつつ
ギリシャ神話を離れ、キリスト教の「神」に思いを馳せてしまいました。
キリスト教の「神」の本質、真理を鋭く突いているように思えます。

聖書の記述に疑問を呈し、鋭く否定する次のゲーテの一節に真理を見る思いがします。

  汝を崇めよというか、何の故に?
  汝はかつて、重荷を負える者の
  苦痛を和らげしことありや?
  汝はかつて、悩める者の
  涙をしずめしことありや?


個人的には詩としては「ガニュメート」より「プロメテウス」に共感と魅力を覚えます。
旋律としては「ガニュメート」の方が感性に合いますが。


長大な詩ですがお気に入りの高橋健二氏の全訳を引用させていただきます。


   風と樹と空と

     プロメテウス “Prometheus"
     (詩・ヨハンヴォルフガング・フォン・ゲーテ

    汝の空を覆え、ゼウスよ、
    雲霧をもって。
    また アザミの頭をむしる
    少年の如くに、
    樫の木や山の頂に汝の力を振るえ!
    されど 我が大地に
    汝の触るるを許さず、
    汝の建てしに非ざる我が小屋、
    また 我がかまど、
    その火を、汝妬めども、
    みなこれ我がものぞ。

    太陽の下、汝ら神々より
    哀れなるものを我は知らず。
    汝らは捧げものや
    祈りの息吹によって
    汝らの威厳を
    細々と養うに非ずや。
    幼な児や乞食のごとき
    はかなき望みを抱く痴者なくば、
    汝らは飢え果てしならん。

    我、幼かりし頃、
    せんすべも知らずして、
    惑える眼差しを太陽に向けぬ。
    そこにこそ、我が嘆きを聞く
    耳やあらんかと、
    悩める者を憐れむ心や
    我が心にも似て、あらんかと。

    驕れる巨人族に対し、
    誰か我を助けしぞ?
    死と屈従とにより
    誰か我を救いしぞ?
    清く燃ゆる我が心よ、
    すべて汝自ら果たせる業ならずや?
    しかも、汝は若くお人良くも、
    欺かれつつ、救いの感謝を
    天上にて惰眠を貪る者に熱烈に述べしか。

    汝を崇めよというか。何の故に?
    汝はかつて、重荷を負えるものの
    苦痛を和らげしことありや?
    汝はかつて、悩める者の
    涙をしずめしことありや?
    我を男子に鍛えしものは、
    我が主にして汝の主なる
    全能の時と、久遠の運命ならずや?

    華やかなる夢の
    実のらざりしものあればとて、
    我が生を憎みて
    荒野に逃れよと、
    汝はさかしらに言うや?

    我はここに坐し、人間をつくる、
    我が姿に似せて、
    我に等しき一族をつくる。
    我に等しく苦しみ泣き
    楽しみ また 喜ぶ一族を
    また我に等しく
    汝を崇めざる一族を!


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Comment

Re: 「プロメテウス」と言えば

burleskeさま、こんばんは。
コメントをいつもありがとうございます。

スクリャービンの交響曲に「プロメテウス」の名前が付く作品があることを初めて知りました。
ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」は昔聴いたのですが記憶になく、
また聴き直してみたいと思います。

やはり、burleskeさまも「微妙に聴く曲が変わってきたような」とのこと。
私の方はかなり変わって来てしまいました。
ベートーヴェンに惹かれる要素・・・burleskeさまと同様でした。
過去形になってしまいましたが。
3・11以降、クラシック音楽の存在意義を考えることから卒業できない有様です。
かろうじて、声楽曲(シューベルト)と歌劇がクラシックに惹き止めてくれているような・・・です。
このような時こそ、ベートーヴェンなのですよね。
  • posted by lumino
  • URL
  • 2011.06/27 19:57分
  • [Edit]

「プロメテウス」と言えば

luminoさま、こんばんは。
「プロメテウス」と言えばスクリャービンの交響曲第5番かベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」を思い浮かべてしまうんですが、シューベルトの歌曲にもあるんですね。また聴いてみます。

やはり僕も震災以降微妙に聴く曲が変わってきたような・・・
ベートーヴェンを聴く機会が多くなったようです。
苦悩を乗り越えての勝利という図式に惹かれてしまいます。
なんか聴いていて元気を貰えますね。
  • posted by bulreske
  • URL
  • 2011.06/26 22:57分
  • [Edit]

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