♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

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Op.105 シューベルト:最初期のリート作品から 「ハガルの嘆き」D.5 ; 「乙女の嘆き」D.6

夏が何処かに行ってしまったような7月下旬でした。 
凌ぎやすい日々。
例年になく凌ぎやすい8月のスタートです。

連載中(?)のシューベルト歌曲は「ハガルの嘆き」D.5を。

シューベルトが初めて作曲をしたリート作品「ハガルの嘆き」につきまして
  
   現存するシューベルトの最初の歌曲
また
   シューベルトのリート創作の出発点を明らかにする上では、
   非常に重要な作品である。
   シューベルトが後年、ドイツ・リートの創始者
   と謳われるれる出発点となった最初期作品の一つでもある。

との解説書の記述を読みまして興味が湧き聴いてみることにしました。
それ以上に関心を抱きましたのは
シューベルトがコンヴィクト時代の14歳の時に作曲した作品であること。
初めて「ハガルの嘆き」を聴きまして
14歳の時の作品であるとは凡人の私には驚嘆の溜め息です。

この作品ですが
どうも、シューベルトの歌曲を聴いている気分には程遠いものが。
耳に親しんでいるシューベルトの旋律には懸け離れ過ぎて違和感ばかりを感じます。
有名な「魔王」も苦手なのですが、
バラードの類になりますと、たとえシューベルトの作品と言えども苦手です。
もし、「ハガルの嘆き」を初めに聴いていましたら
きっと現在のようにシューベルト・リートの虜になっていなかったのでは・・・
と、妙な確信を抱いた始末です。

はクレメンス・アウグスト・シュッキング、生没年は不明とのこと。
旧約聖書、創世記第16-21章の話を題材にしているとのこと。
ハガルはアブラハムの側女。
正妻のサライに子供がなく
アブラハムがハガルに生ませた子がイシュマエル。
サライとハガルのゴタゴタの末に荒野に追われるハガルと幼児イシュマエル。
荒野でのハガルの苦悩、情景をシュッキングがに詠ったそうです。
創世記のハガルの「物語」から、これほどまでに深い心理描写をに託した
シュッキングという人物にも興味を抱かずにはいられません。

作曲は1811年3月30日。
長大な、長大なバラードで演奏時間は16分19秒です。
劇的なアリアでも聴いているような気分にさせられます。

歌っているのはChristine Brewer
ピアノ伴奏はグレアム・ジョンソン
「シューベルト歌曲全集:60名の歌手」の第1枚目のCDです。

            Christine Brewer

初めて耳にするソプラノです。
重量級?の声質で、この作品の悲壮なドラマティックさ
ハガルの奈落の苦悩が、ひしひしと感じられるようです。
ただ、高音域になるに従い金属的な響きとして耳に伝わってしまいました。

彼女の歌で次作のシラーに付曲した「乙女の嘆き」D.6も聴いてみました。
シラーの戯曲『ヴァレンシュタイン』の挿入歌とのことです。
ヴァレンシュタインの娘テークが自分の暗い運命を予感して
夜中にギターを弾きながら歌う曲とのこと。
こちらも「ハガルの嘆き」同様に暗鬱な趣です。

シューベルトの最初期のリート作品には
  
   夜の暗さと死の匂いが濃厚

と指摘されるのは喜多尾道冬氏。

一連の最初期のリート(或いはバラード)作品の中で
特に1810年12月26日に作曲された「父親殺し」D.10に関連し
喜多尾氏はシューベルトの散文「わたしの夢」全文を紹介されています。
1822年、シューベルト25歳の時に書かれた散文だそうです。
母を亡くし埋葬するために父から勘当をされた家に戻った際に
再度、父との不和で家を出るシューベルトの心情が綴られています。

この散文の中には、シューベルトの音楽の本質をなす言葉が語られているそうです。
全文より一部引用を。
冒頭は 「わたしにはたくさんの兄弟がいた。
     わたしは誰にも深い愛をもって接していた。」
で始まります。

    「わたしはまた家を出て、遠くの地へと去った。
     わたしの愛を拒む人たちすべてに無限の愛を抱きながら。
     わたしはそれから長い年月の間歌を歌って過ごした。  
     わたしが愛を歌おうとすると
     それは悲しみになった。
     そこで悲しみを歌おうとすると
     それは愛になった。」

シューベルトの散文を読みますと
一言一句が心に沁み込み、シューベルトの心情へ思いを馳せているこの頃です。

ハガルの嘆き」を若林氏訳で以下、引用させていただきます。

   風と樹と空と

         ハガルの嘆き :Hagars Klage D.5
              (:クレメンス・アウグスト・シュッキング)

    この熱い砂の丘に
    わたしは座り 死にゆこうとしている
    わたしの子と向かい合っている!

    渇きで一滴の水を望み
    渇きながら死と戦い
    泣きながらうつろな目で
    この悩む母を見つめている!

    おまえは死ぬしかない 哀れな幼児よ
    ああ、一滴の涙も
    わたしの乾いた目は流さない。
    だからわたしはあなたをじっと見つめていられる!

    もちろん!ライオンの母親に会ったら
    それと戦うでしょう。
    その膿だけでも得るために戦うでしょう。

    この渇いた砂から
    ほんの一滴の水だけでも吸うことができたら!
    でもああ!おまえが死ぬのを見るしかない!

    命のか細い光が
    その青ざめた頬の上で薄くなり
    疲れた眼のなかで薄くなるやいなや
    おまえの胸は少しも上下しなくなる。

    この乳に来て吸い干しなさい!
    誰かがこの荒野を通って来たなら
    その人はわたしたちを砂に埋めて
    言うでしょう 「これは母と子だ」

    おまえに背を向け
    おまえが死ぬのを見ないようにしよう。
    絶望の目眩の中で
    神を責めないようにしよう!

    おまえから遠く離れ
    神の心を打つように嘆きの歌を歌おう。
    おまえが死との戦いの中で
    慰めの声を聴くように。

    ただ最後の嘆きの祈りだけでもと
    この乾いた唇を開いたら
    永久にそれを閉ざしましょう
    そしてすぐに来てください、おお 死よ!

    エホヴァよ!わたしたちに目を向けてください、
    エホヴァよ、この子を憐れんでください!
    湿った雲から
    わたしたちを潤す雨を降らしてください!

    この子はアブラハムの子ではないのですか?
    わたしがこの子を産んだ時
    アブラハムは喜びで涙を流しました。
    ですが今や 彼はこの子を呪っています!

    あなたの可愛い子孫を救ってください!
    この子の父が祝福を願った時
    あなたは言われました。
    「祝福がこの子の頭上にあるように」

    わたしがあなたに背いて罪を犯してしまったなら
    どうぞ!わたしに罰を与えてください。
    ですが、ああ、この子が何か、わたしと共に
    苦しまなければならない事をしたでしょうか?

    もしわたしがこの荒野でさまよっていた時に
    あなたのもとで死んでいたなら
    この子は生まれることなく
    わたしの胸の中にいたでしょう!

    ですが、優しい見知らぬ人が来て
    わたしにアブラハムのもとに戻り
    その人の家へ入るように命じましたが
    彼は今や冷酷にわたしたちを追い出したのです。

    あの見知らぬ人は御使いではなかったのですか?
    あの人は優しい顔でこう言ったのですから。
    「イシュマエルは地上で偉大な者となり
    その子孫は数多くに増えるだろう!」

    今やわたしたちは倒れ 渇いています。
    その死体は朽ちるでしょう
    まるで この呪わしい死体を
    大地も懐に守り隠さなかったかのように。

    天へ叫びなさい 哀れな子よ!
    その乾いた口を開きなさい!
    神よ、この子の主よ、この罪無き子の願いを
    退けないでください!


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Comment

Re: 「ハガルの嘆き」って長いでんなぁ

burleskeさま、こんばんは。
コメントをありがとうございます。

「ハガルの嘆き」は、やはり長いですよね。
演奏会で歌われることは少ないそうですが・・・頷いてしまいます。
ヤノヴィッツでのご鑑賞だそうで、歌手によって曲の趣がだいぶ変わりますよね。

「ハガルの嘆き」よりもまだ長い曲があるのですか?!
「潜水者」は24分ですか。
「弔いの幻想」「潜水者」・・・まだ聴いていませんので
共に聴いてみることにします。
シューベルトのイメージとは違うとのことで、覚悟?をして聴いてみますね。
  • posted by lumino
  • URL
  • 2011.08/03 19:49分
  • [Edit]

「ハガルの嘆き」って長いでんなぁ

luminoさま、こんばんは。
シューベルトの初期の歌曲は聴いたことなかったんですが、luminoさまの記事を拝読して早速「ハガルの嘆き」を聴いてみました。ヤノヴィッツ&ゲイジの演奏です。
なるほど、シューベルトらしくないですね。なんかモーツァルトのコンサート・アリアみたいな感じがします。なかなか面白いとは思ったんですが、演奏時間16分以上は長すぎでは?
と、思ったら「弔いの幻想」D7は19分、「潜水者」D77にいたっては24分近くと、更に長い作品があったんですね。
どちらもディースカウで聴いてみましたが、「潜水者」が劇的で面白かったです。
でも、シューベルトのイメージとはちょっと違いますかね。
  • posted by burleske
  • URL
  • 2011.08/02 22:23分
  • [Edit]

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