♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

Entries

Op.159 .シューベルト:『菩提樹』D.911-5 by ディースカウ;プライ;シュライアー

シューベルトの三大歌曲集で一番最初に手にしたのは「白鳥の歌」でした。
次に「冬の旅」それから「美しき水車小屋の娘」。
昔々のこと。いずれもディースカウのLPでした。

一番お気に入りの歌曲集は「水車小屋の娘」です。
そして、一番苦手なのが「冬の旅」。
共にミュラーの連作詩でありながら「冬の旅」に漂う暗鬱さを敬遠をしてしまい
全曲を通して聴くことは少ないです。

例外的に第5曲目の『菩提樹』には一抹の救いのようなものがあるようで。
この曲の調べには優しい響きも感じます。
誰もが知る有名な曲で単独で歌われたりしている所以から
この曲を聴くことは多いですが。
また、確か中学時代の音楽の時間に習ったような記憶があり
思い出の曲の一つにもなっています。


         菩提樹の花を初めて見ました。

          菩提樹の花

         7月30日の誕生花で
         花言葉は 夫婦愛 だそうです。



「冬の旅」全曲についてになりますが
作曲は前半を1827年2月に
後半を10月にミュラーの詩、24篇すべてに作曲したそうです。
「美しき水車小屋の娘」から4年後に作曲された最後の歌曲集とのこと。


初演は1828年1月10日に第1曲『おやすみ』だけがウィーン楽友協会で歌われたそうです。
全曲の初演は不明とのこと。
出版はシューベルトの死後、前半が1828年1月14日
後半同年12月30日に、ウィーン、ハスリンガーから。

『菩提樹』は有節形式
ホ長調 3/4拍子 中庸の速さで の指定とのことです。

                  

                  ウィルヘルム・ミュラー
               Johann Ludwig Wilhelm Müller
               Johann Ludwig Wilhelm Müller
             (1794年10月7日ー1827年10月1日)

ミュラーはベルリン大学で言語学を学んだ詩人とのこと。
ギムナジウムの教師などをされていたそうです。
後期ロマン派の詩人の中では最も人気のあった人で
素朴で清新な叙情味が大衆に喜ばれた、とのことです。
ミュラーはこの年、1827年33歳で夭折し
その翌年にシューベルトが31歳で夭折。

シューベルトが死の床にあって熱に浮かされながら携わっていたのが
歌曲集「冬の旅」の校正だったそうです。
夭折した詩人と作曲家の魂が込められた歌曲集でしょうか。

「冬の旅」を覆っている陰鬱さについて
大木正興、大木正純氏の文章を引用させていただきます。

「シューベルトがすでに病魔に打ちのめされ、貧窮も並大抵のものではなかったこと
 に結びつけて考えるのも、ある程度までは正しいかも知れないが、
 いっそう大事なことは、20歳台の後半のようやく熟してきた人間に、
 当時の難しい社会がどんなに大きな重圧となって感じられ、感受性を暗い方へ
 暗い方へと導いていったか、ということであろう。
 つまりシューベルトもこの歌曲集の主人公とあまり遠くない状態に放り出された、
 当時の社会の犠牲者だったのである。」


シューベルトが親しい友人たちを集め出来上がった「冬の旅」を
聴いたシューベルトの友人であるシュパウンの回想の引用になります。

「彼に近しく、親しかったわれわれにとって、
 これらの作品が彼の心をどんなにか労し、
 どんな苦しみの中から生まれたものだったかを覚ることができた。
 あの朝、彼がどんなに顔を、瞳を輝かせて、普段と違った調子で話したかを
 見た者なら、 決してそれを忘れまい。
 私は思うのだが、シューーベルトの素晴らしい歌曲、特に「冬の旅」の作曲に
 要した激しい心労が その生命を縮めたのではないだろうか」



CDはいつも同じものばかりになってしまいますが。


           ディースカウ:グレートEMIレコーディングス
              ディスカウ:グレートEMI録音集

                 ディースカウ&ムーア
          
               (録音:1962年11月10日・17日)


「冬の旅」全曲が収録されています。
音の輪郭がはっきりしているようで、鋭さを感じる『菩提樹』でしょうか。
ピアノの音像もくっきりとして
ディースカウの発音もはっきり聴き取ることができます。
明るささえ感じられる歌唱として響きます。
第5節に入った途端に劇的な変化を見せるピアノとディースカウ。
静 と 動 のコントラストが強烈な印象を与えるようです。




             ディースカウ:シューベルト歌曲全集
              シューベルト歌曲全集byディスカウ

                 ディースカウ&ムーア

                  (録音:1971年)

前述の1962年の録音より9年後の録音で
大きな相違はないとの先入観でした。
いざ、聴いてみると とてもまろやかな『菩提樹』。
落ち着いた趣の歌になっているようです。
漂う静けさ、第5節に入っても1962年当時よりもかなり穏やかな表現のようです。
個人的にはこちらの『菩提樹』がお気に入りです。

ディースカウは「冬の旅」を何回録音をしたのか私には定かではないのですが
1955年録音のものもあるようですので
駆け出し当時の「冬の旅」を一度は聴いてみたいものと思い始めました。



              プライ:シューベルト「冬の旅」全曲

              プライ:シューベルト「冬の旅」

                  ヘルマン・プライ(Br)
                  カール・エンゲル(P)

                  (録音:1961年11月)


プライの歌唱を聴いていると心からホッとできるものを感じるようになりました。
大方の歌手が第5節では激情的な表現をしているようですが
プライは殊更に強調することなく他節ともバランスよく歌われ
心に染み入る『菩提樹』を聴かせてくれるようです。
囁きかけるような歌い方で温もりが伝わってきます。
『菩提樹』に限らず作為的なものは一切感じさせず、素直に素朴に。
自然に歌い紡ぐ感じがします。
そのような点が私にとってはプライの魅力として感じられます。

こちらの「冬の旅」全曲は驚くほどの廉価盤でした。
プライは「冬の旅」を3回録音しているようですが
1984年のビアンコー二のピアノでの3回目の録音は是非聴いてみたくなりました。
三大歌曲集ではビアンコーニとの「水車小屋」が一番のお気に入りになっていますので。
「冬の旅」も一番のお気に入りはプライになりました。


            シュライアー:シューベルト三大歌曲集
              シュライアー:シューベルト三大歌曲集 シフ


                 ペーター・シュライアー(T)
                 アンドラーシュ・シフ(P)

                  (録音:1991年9月)


かつて、三大歌曲集をディースカウと聴き比べをしたのがシュライアーでした。
お気に入りになっていたシュライアーの筈だったのですが。
今回、久し振りに『菩提樹』のみを聴いてみました。
以前、全曲を通して聴いた時には全く気付かなかったのですが
第5節では突如、「まるで別人?!かと感じられてしまいました。
この個所からは粗野な感じしか伝わらない歌唱のようで。
第5節以外は味わい深い歌唱ですし、残念です。


今回は以上の歌手の歌で『菩提樹』をじっくりと聴いてみて
「冬の旅」全曲を敬遠せずにいろいろと聴いてみたい思いを抱きました。
全曲でのお気に入りは、何といってもプライです。
プライ、ディースカウも録音年が違うものを聴いてみたくなりました。


いつもの蛇足になります。

前田昭雄著「シューベルト」中に「冬の旅」に関してディースカウの
「さすらいの芸術=芸術のさすらい」と題された一文が 掲載されていました。
長くなりますが引用させていただきます。

「シューベルトとの出会い。 私の場合―そう、はっきり覚えている。
 10歳の時、つまり1935年ピアノで弾いて自分で見つけた。
 弾いて、歌って。後ではだんだん歌う方になったけれども。
 シューベルトの何?やっぱり「冬の旅」!
 10歳の時から―いや、10歳だからこそ 「冬の旅」には強烈に惹かれた。
 明るいシューベルトは後から見つけた。
 すぐ思い出すのは『春の夢』と『辻音楽師』。
 こういうシューベルトは、先生にもらったり親にあてがわれた、
 などというものではなかった。
 10歳で自分で見つけて憧れた。「ライアーマン」に、結局自分の一生は
 導かれてきたのかもしれない。
 それからの人生は、「冬の旅」とは言えないにしても、
 いろいろな面で「さすらい」だった。
 芸術家の人生は、皆、さすらいだ。
 シューベルトのそれが一番そうだった!「さすらい」をテーマにした歌曲は
 沢山あるけれど、リューベック作詩のものが一番すごいと思う。
 死の影に直面しているから。
 歌が死と直面しているということ・・・。
 シューベルトでは最初の歌曲からして、そうだ。
 『弔いの幻想』「父親殺し」『「ハガールの涙』では、子供が母の胸に溺死する。(略)
 しかし、深層心理で考えすぎ宅はない。
 おそらくはもっと直観的な自分自身の早い死の予感だろう。
 そして自分の中にある、有り余るものの重圧ではないだろうか。
 あの凝集した「ドラマ」を生み出したのは、そういうところから湧き出る
 エネルギーではなかったか。
 死との直面は「危機」の芸術をも生み出したということ―然り、そして、否。
 近代人と同じ意味での「危機」は、シューベルトにはなかったと思う。
 その一生には危機の時期もなかったと思う。
 危機というなら一生の全部が危機だった。
 近代とは別の意味で。
 あの優しい、安らぎのトーンはどこから来るのだろう。
 それは危機を知らない。シューベルトの美そのものが、言うなら危機の現象だろう。
 自然は、暗い時は暗いが、明るい時は明るい。
 そして、暗くて明るいことも、明るくて暗いことも・・・と言えば、
 シューベルトのトーンのようだ。
 シューベルトはまったく自然だ。」


              わんぱぐさん:ライン、ブルーの鳥

            『菩提樹』~「冬の旅」第5曲 :Der Lindenbaum D.911-5
                  (詩:ウィルヘルム・ミュラー)


        市門の前の 泉の側
        そこに一本の菩提樹が立っている。
        僕はその木陰で見たものだった
        とてもたくさんの甘い夢を。

        僕はその皮に刻み込んだ
        とてもたくさんの愛の言葉を。
        嬉しい時も 悲しい時も
        僕はいつも その樹に惹かれていった。

        僕は今日も樹の側を通って
        真夜中に旅立たなければならなかった。
        その時 僕は真っ暗闇にもかかわらず
        目を閉じてみた。

        すると その枝たちがざわめいた
        まるで僕に呼びかけるように。
        「こっちに来なさい 友よ
        ここに あなたの安らぎがあります」

        冷たい風が僕の顔に向かって
        正面から吹いてきた。
        帽子が僕の頭から飛んで行っても
        僕は振り返りはしなかった。

        今 僕は何時間も
        あの場所から離れたはず。
        けれど僕にはずっと ざわめきが聞こえたままだ
        「あなたはここで安らぎを得られたのに!」

                            (訳:若林氏 引用)

       (原詩引用)

        Am Brunnen vor dem Tore,
        Da steht ein Lindenbaum,
        Ich träumt' in seinem Schatten
        So manchen süßen Traum.

        Ich schnitt in seine Rinde
        So manches liebe Wort;
        Es zog in Freud' und Leide
        Zu ihm mich immer fort.

        Ich mußt' auch heute wandern
        Vorbei in tiefer Nacht,
        Da hab' ich noch im Dunkeln
        Die Augen zugemacht.

        Und seine Zweige rauschten,
        Als riefen sie mir zu:
        Komm her zu mir, Geselle,
        Hier findst du deine Ruh'.

        Die kalten Winde bliesen
        Mir grad' ins Angesicht,
        Der Hut flog mir vom Kopfe,
        Ich wendete mich nicht.

        Nun bin ich manche Stunde
        Entfernt von jenem Ort,
        Und immer hör' ich's rauschen:
        Du fändest Ruhe dort!


                 にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
関連記事

Comment

Re: ディースカウの《冬の旅》は良いですね

burleskeさま、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

コメントを拝読させていただきブレンデルとの1985年録音盤にとても関心を抱きました。
私はの方は「冬の旅」全曲は、録音年を調べもしないで求めてしまい
1962年録音ばかりが・・・LPからCDに至るまで。
『菩提樹』に関しては嘗てburleskeさまのコメントで知って求めましたシューベルト歌曲全集にて、1971年の録音を聴くことができました。
1971年、1979年、1985年の各録音のご感想を拝読し、年を重ねるごとに趣が違ってくるのですね。
プライとディースカウ、この御二方での年代別の録音を聴いてみたく思っています。
  • posted by lumino
  • URL
  • 2012.09/09 19:32分
  • [Edit]

ディースカウの《冬の旅》は良いですね

luminoさま、こんにちは。
ディースカウのシューベルトの歌曲は、なぜか《冬の旅》だけ3種類持っています。
「菩提樹」を聴き比べてみました。
まずはブレンデル盤。
これは僕がシューベルトの歌曲で最初に購入したディスクです。
1985年の録音で、全盛期ほどの声の張りや潤いはありませんが、語りかけるようなちょっと枯れた味わいが良いですね。
71年録音のムーア盤は声の張りと艶が魅力的。
79年録音のバレンボイム盤はブレンデル盤よりは表情豊かですが、ムーア盤よりも力が抜けて自然体なように感じられます。
バレンボイムのピアノもディースカウに負けないくらい雄弁に語りかけてきます。
声の魅力ではムーア盤、表現力でバレンボイム盤、味わい深さでブレンデル盤といったところでしょうか。
改めて聴いてみると、同じディースカウでも年代によって表現が変わっていて面白いですね。
若い頃の録音も聴いてみたくなりました。
  • posted by burleske
  • URL
  • 2012.09/09 14:13分
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメント投稿不可です。

左サイドMenu

プロフィール

lumino

Author:lumino
音楽が日々の活力源になっています。
特に音楽知識のないクラシック・ビギナーに等しいのですが、「ただ、ひたすらに」をモットーに鑑賞をしています。
日々の生活に無くてはならないのが音楽と本です。
また2羽の小桜インコの兄弟は大切な家族です。

最新記事

lumino

右サイドメニュー

♪ こんにちは ♪

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブログ内検索