♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

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Op.188 江時久著:「本当は聞こえていたベートーヴェンの耳」

本のタイトル「本当は聞えていたベートーヴェンの耳」を読み ??? になりました。
単なる面白、可笑しいだけの興味本位の書籍なのか・・・それとも。
タイトルに惹かれて手にしてみました。
1999年初版発行ですから、すでに14年前に出版された本です。
読み終え、今迄ベートーヴェンに抱いていた人間像に少なからず変化が生じました。

ベートーヴェンに対し

  ああ、そうだったの!
  ああ、それでだったの!

妙に納得をすることが多くありました。
今迄は 当然であり当たり前で あったベートーヴェンについて
以前とは違う視点からベートーヴェンの人間像に触れることができた気がします。
好奇心で手にした本でしたが出合うことができて良かった、と思いました。


            江時久著:「本当は聞えていたベートーヴェンの耳」

           (Amazon)本当は聞こえていたベートーヴェンの耳
                   (NTT出版 1999年 初版発行)


著者、江時久氏は幼少時より聴覚障害に悩まされ
29歳(1931年生まれ)の時に手術にて左耳の聴力が回復したそうです。
自らの聴覚障害の苦悶葛藤などの体験から
健常者には測りがたいベートーヴェンの心を
時として代弁をしているかのように感じ取れる個所も多々ありました。

江時氏は あとがき に於いて
「最初はごく軽い物を書くつもりだった」と記述されていますが
次第に四苦八苦をしたり、放棄したくなった想いも抱いたとか。

読み始めた時には小説かと思いました。
登場する2人の人物。
新聞社のボン支局長五島勉とドイツに到着した佐貝耕一との会話から始まります。
2人の会話でベートーヴェンの話題では『伝記ノート』が取り上げられています。
佐貝は『伝記ノート』についてのヴェーゲラーの記述に対し
  
   「もし『伝記ノート』に嘘が書いてあったとしたら、
    ベートーヴェンの青春時代は間違いのまま信じられていることになるわけ
    なんだな」

と、著者は佐貝の言葉にてヴェーゲラーの記述についての信憑性に疑問を投げかけます。
著者はベートーヴェンの難聴がボンの少年時代に発症しているとの仮説を提示します。

ベートーヴェンのボン時代の資料としては1838年に上下2巻として出版された
ベートーヴェンのボン時代からの友人で医師のフランツ・ヴェーゲラーと
ベートーヴェンの弟子となり音楽家となったフェルディナント・リース共著の
『伝記ノート』しかないとのことです。
この書籍中で触れられているのも『伝記ノート』が最多です。



               (Wikiドイツ)Ferdinand Ries
                       Ferdinand Ries
                 (1784年11月28日-1838年1月13日)



               (Wikiドイツ)Franz Gerhard Wegeler
                    Franz Gerhard Wegeler
                  (1765年8月2日-1848年5月7日)


ヴェーゲラーと言えば医師でベートーヴェンの少年時代の友人とのことで
ベートーヴェンに関しての記述の信憑性を疑ったことはありませんでした。
その信憑性についての詳細な記述には開眼の思いがしました。


ベートーヴェンの難聴は
30歳の時、1801年6月29日にベートーヴェンはヴェーゲラー宛ての手紙で
難聴が27、8歳の時から始まったと書いていることにつき
江時氏はこの手紙自体はベートーヴェンが難聴の悩みを訴える目的で
ヴェーゲラーに宛てたのではなく
ヴェーゲラーからの手紙に対する返事だったと指摘をされています。
然しながらこの手紙の存在で27、8歳で難聴になったと一般的に思われているとも
江時氏は指摘されています。

著者の江時氏は一般に認識されている27,8歳より以前のボン時代に始まったと
推測をされています。

その根拠として
少年ベートーヴェンは1782年から85年、12歳から15歳までは
ボンで活発に作曲をし出版していたとのこと。
15歳頃から18歳までの間は作曲の空白期間だったそうです。
そこで江時氏はベートーヴェンの聴覚障害を「あぶみ骨」固着の伝音難聴ではないか
と仮定することによって
彼の耳がボンの少年時代から難聴だったかもしれないという憶測をしています。
この点についても江時氏の記述を読むと、納得せざるをえなくなります。

尚、著者はヴェーゲラーについても参考文献を駆使して
ベートーヴェンに対する記述やヴェーゲラーが真のベートーヴェンの親友であったのか
との疑問も投げかけています。
江時氏がその根拠として挙げる文章を読むことにより、これまた、納得してしまうのです。

本当は聞えていたベートーヴェンの耳・・・この本のタイトルそのものですが
本当にベートーヴェンの耳は聞えていたのだと思いました、少なくともピアノの音だけは。
文中より引用をさせていただきます。

「人の言葉は、まったく会話ができない状態になってしまって
 耳元で大きな声で言ってもらわないと通じなかった。
 でも『ピアノの音』は聞えていたのだ。
 骨導聴力はおそらく正常値の範囲にあったと思うのである。
 後期ピアノ・ソナタの息を呑むほどに自在な音の響きの中には
 神を味方にしたベートーヴェンの盛り上がるような劇的、
 詩的な気迫を感じることができる。
 断固として一点の不安もない。
 彼は『あぶみ骨』固着の病気によって独りぼっちになったけれど、
 その難聴の不思議な性格によって近くのピアノの音は聞こえていた。(割愛)
 『人の言葉』が消え去っても、『ピアノの音』は消え去らない」



著者自身への自問自答、仮説、推測、憶測 そして 読者への問いかけをしつつ
話が進んでゆきます。
読みつつ自分なりに考えさせられました。
聴覚障害に起因するベートーヴェンが抱いていた苦悶と葛藤など
一歩一歩、その心に近付くことができるような気がするようになりました。

著者のベートーヴェンに対する敬愛の念を文章の此処彼処から
汲み取ることもできるようです。
以前はベートーヴェンが負っていた心の孤独な悲哀感は想像しかできませんでした。
江時氏の文面を通し、まるで目に見えるかのように伝わってくるようです。

今まで出合ったベートーヴェンに関する書籍の中でも異色であり
末永く心に残る一冊になりそうです。
ベートーヴェンの作品を鑑賞するうえでも
この書籍の存在が大きなものになってきました。

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Comment

Re: ベートーヴェンは人生も興味深いですよね

burleskeさま、こんにちは。
コメントをありがとうございます。

「ハイリゲンシュタットの遺書」については4章からなる書籍のうち
1章分を費やして記述されていますし
「不滅の恋人」についてもかなりのページが割り当てられ
他の著作本よりも江時氏の視点では新鮮な考え方として伝わってきました。
ベートーヴェンについての『伝記ノート』に対しての著者の考え等に強く共鳴するものがありました。
この本について的確に書くことのできる裁量がない自分に歯がゆい思いもしています。
  • posted by lumino
  • URL
  • 2013.04/07 16:22分
  • [Edit]

ベートーヴェンは人生も興味深いですよね

映画「敬愛なるベートーヴェン」でも、ベートーヴェンの耳が全く聞こえなかったわけではなく、ある程度は聞こえていたという描写がありましたが、難聴がボンの少年時代からだったというのは面白い説ですね。
それでも病状が悪化したのは「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた1802年頃なんでしょうね。

ベートーヴェンでは「不滅の恋人」にまつわるエピソードも面白いですよね。
  • posted by burleske
  • URL
  • 2013.04/06 21:30分
  • [Edit]

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