♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

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Op.337 シューベルト:「魔王」2種(歌曲;ヴァイオリンとヴィオラ版) by ディースカウ;バエーヴァ&バシュメット

毎年、5月を迎えると旅立たれたディースカウに想いを馳せてしまいます。
2012年5月18日。今年で4年目になるのでしょうか。
今、気が付いたのですが誕生は1925年5月28日。
偶然にも今日はディースカウの誕生日なのですね。

シューベルトの「魔王」を2種、聴いてみました。
最初にディースカウ&ムーア。
次にC.G.ヴォルフ編曲のヴァイオリンとヴィオラ版。
ヴァイオリンがアレーナ・バエーヴァ、ヴィオラはユーリ・バシュメットです。

     337シューベルト「魔王」Erlkönig Carl Gottlieb Peschel 1840 Goethe
         ゲーテ「魔王」の挿絵(モーリッツ・フォン・シュヴィント作)


作曲は1815年、シューベルト18歳の時だそうです。
詩はゲーテ。
ト短調 4/4拍子 速く。通作形式

        337シューベルト「魔王」
                    「魔王」の第3版 自筆譜 


シューベルトの友人シュパウンはシューベルトがゲーテの詩に付曲をする時の様子を次のように記述をしているそうです。
「1815年12月のある午後、その頃ヒンメルプフォルトグルントに父親と一緒に暮らしていたシューベルトを訪れたが、彼はゲーテの詩『魔王』を大声をあげて読んでいた。
彼は本を片手に何回か部屋の中を歩き回っていたが、そのうち、急に腰をおろして恐ろしい速度でこの曲を紙の上に書き記した。」

シューベルトは「魔王」を3回改稿し
6年後の1821年4月2日に第4版を 作品1 として出版したそうです。
出版が遅れた理由は伴奏の演奏が難しいとされた、と言われているとのこと。
歌手にとっても、ピアノ伴奏者にとっても演奏が極めて困難な曲だそうです。

             337シューベルト「魔王」魔王の像ドイツ、イェーナ
                  魔王の像 ドイツ イェーナ

「魔王」の話はデンマークの Elveskud と呼ばれる伝説に基づいているそうです。
ゲーテの詩の元になっているのはヨハン・ゴットフリート・ヘルダーが
1778年に出版した『歌の中の人々の声:Stimmen der Völker in Liedern』という
民謡を集めた本にこの伝説によって書かれたデンマークのバラードを
ドイツ語に翻訳した『ハンノキの王の娘:Erlkönigs Tochter』として収録されて
いるとのことです。
尚、ヘルダーの作品は結婚式を控えた男を魔王の娘が襲うという内容とのことです。

公開初演は1821年3月7日、ケルントナートーア劇場に於いて
シューベルトの友人、ヨハン・ミヒャエル・フォーグルの独唱により行われたそうです。
友人でウィーン宮廷オペラ支配人モーりッツ・フォン・ディートリヒシュタイン伯爵に献呈されたとのこと。


                 シューベルト:「魔王」 D.328d
                          by
                     D.F=ディースカウ
       

               シューベルト歌曲全集byディスカウ

                   D.F=ディースカウ(Br)  
                   ジェラルド・ムーア(P)  
                    (録音:1960年代)

一人の歌手が曲の登場人物、語り手、父親、その子供、魔王 の4人を
歌い分けるという難技を求められるこの曲であっても
ディースカウの歌唱を聴いていると難曲ということを忘れ去ってしまいます。
劇的な内容、切迫感、緊張の連続で・・・少々、苦手な歌曲でしたが
今回、じっくり耳を傾けているうちに惹かれる曲になりました。

曲の始まりのピアノの三連音から醸し出される不気味な雰囲気。
語りで始まる第1節。客観的に状況を描写するかのように歌うディスカウ。
第2節で子供の不安そうな様子を案じる父親の言葉。
父親に答える子供の不安を帯びた言葉。
子供の不安を払拭するかのように発せられる父親の言葉を
音程を低くし力強さを感じさせるように歌い上げるディースカウ。
第3節で登場する魔王は子供に優しく甘い誘惑の言葉を歌うディースカウの
歌唱はいつも聴き慣れた歌声で。
詩の内容とは裏腹にピアノの軽快な趣にホッとする気分にも。
第4節で話しかける魔王を父親に不安そうに訴える子供。
第5節でまた子供に優しく囁きかける魔王。
第6節目になり子供の声は不安が高じるかのように大きくなり
不安がる子供を安心させようとする父親の言葉の力強い響き。
第7節、魔王は殊更に優しく甘く話しかけるが子供の恐怖心は高まる一方。
第8節の語りは始めの第1節とは対照的に激情が込められているようです。
最後の一行 “In seinen Armen das Kind war tot” では
時が止まるかのように旋律も止まり曲の終わりに。
(歌を聴きつつ書いていたら音楽の実況中継?のようになてしまいました)

今まで、聴く機会の多かった「魔王」。
今回は何時になく、じっくり、じっくり、と耳を傾けてみました。
4人の登場人物を声色や言葉のニュアンスで感情豊かに表現し
各々の場面を実際に見ているような錯覚を起こしてしまうほどです。

常々、ディースカウの歌唱には表現力の豊さを感じていたものの
この曲を聴きこれ以上の歌唱で聴かせてくれる歌手が思い当たらないほどです。
ディースカウの歌唱ばかりに神経が行ってしまい
ムーアのピアノが疎かになってしまいました。
父親と子供の場面では緊張感溢れる伴奏が
第3節、第5節での魔王の登場ではリズミカルな伴奏になり印象的でした。


     シューベルト:「魔王」 ヴァイオリンとヴィオラ版(C.G.ヴォルフ編曲
                          by
                バシュメット&モスクワ・ソロイスツ

               337:魔王(ヴァイオリンとヴィオラ版)バシュメット&モスクワ・ソロイスツ
                       (収録曲)
                      シューベルト
           弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D.810『死と乙女』
                (弦楽合奏版 G.マーラー編曲
           魔王 D.328
                (ヴァイオリンとヴィオラ版 C.G.ヴォルフ編曲
           アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821
                (ヴィオラと弦楽合奏版 H.クルーク編曲

                  アレーナ・バエーヴァ(Vn)
                  ユーリ・バシュメット(Vla)
              (録音:2012年6月21-24日 モスクワ 
                         モスフィルム・スタジオ)

こちらのディスクは目下お気に入りになっている演奏ばかりです。
「魔王」はC.G.ヴォルフ編曲のヴァイオリンとヴィオラ版とのことです。
ヴァイオリンは子供、ヴィオラが父親でしょうか。
歌曲のように言葉がなくても曲に漂う緊迫感はひしひしと伝わってくるようです。
歌曲で聴くよりもこの編曲では旋律の美しさに気付かされます。
個人的な好みとしてはこちらの編曲の方が気に入ってます。
魔王が話す場面では殊更に美しい調べとして耳に響いてきます。
今までヴィオラにはあまり神経を向けていなかったのですが
この演奏を聴きヴィオラの音色にも惹かれるものを感じてきました。
また、ユーリ・バシュメットにも。

尚、こちらのディスクの1曲目に収録されている弦楽四重奏曲「死と乙女」の
マーラー編曲の弦楽合奏版には圧倒されるものを感じました。
このディスクを求めたお目当ては「アルペジョーネ・ソナタ」。
編曲者ハインリヒ・クルークはミュンヘン・フィルの首席チェロ奏者だそうです。
兼ねてからのお気に入りの「アルペジョーネ・ソナタ」ですが
ヴィオラと弦楽合奏用に編曲された演奏を聴き
哀愁の色彩が濃い「アルペジョーネ・ソナタ」のように感じました。
こちらの演奏もまたお気に入りになっています。
「魔王」から逸れてしまいました。

2種の「魔王」を聴き、どちらも素晴らしい「魔王」と感じ入っています。

     2016 317ライン イラスト

                  魔王:Erkönig D.328
                   (詩:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)

        こんな夜更けに闇と風の中、馬を走らせるのは誰か?
        それは子供を抱えた父親。
        彼はその子を腕に抱き、
        しっかりと抱えて、温かく包んでいる。  

        「息子よ、何故そんなに怖がって顔を隠すんだ?」
        「父さん、見えないの、魔王のいるのが?
         冠をかぶり、裾をなびかせている魔王の姿が?」
        「息子よ、あれは霧がたなびいているんだよ。」       

        「可愛らしい子よ、おいで、一緒に行こう!
        とても面白い遊びを一緒にしようじゃないか。
        たくさんのきれいな花が岸には咲いているし、
        わたしの母さんがたくさんの金色の服を持ってるよ。」

         「父さん、父さん、聞こえないの、
         魔王が僕にそっと話かけてきてるのが?」
         「落ち着いて、心配するんじゃないよ、息子よ
         枯れ葉が風にざわめいているだけだから。」

         「ねぇ、可愛い子、一緒に行かないかい?
        わたしの娘たちもおまえを待っていてくれている。
         娘たちはおまえを夜のダンスへよ連れて行き、
        揺らしたり踊ったり歌ったりしてくれる。」

        「父さん、父さん、あそこに見えないの、
         暗い所に魔王の娘たちがいるのが?」
        「息子よ、息子よ、良く見えているよ、
        古い柳の木が暗くてそう見えるんだ。」

        「おまえが大好きだ、その美しい姿にそそられる、
        そのつもりが無いのなら、力ずくで連れて行くぞ。」
        「父さん、父さん、魔王が僕をつかんだよ!
        魔王が僕にひどいことをしたんだよ!」

        父親はぞっとして、馬を急ぎ走らせる。
        うめく子供を腕に抱え、
        屋敷へやっとの思いでたどり着く。
        その腕の中で子供は息絶えていた。
                                       (訳:若林氏)

       (原詩引用)
       Wer reitet so spat durch Nacht und Wind?
       Es ist der Vater mit seinem Kind;
       Er hat den Knaben wohl in dem Arm,
       Er fast ihn sicher, er hält ihn warm.

       Mein Sohn, was bringst du so bang dein Gesicht?
       Siehst Vater, du den Erkönig nicht?
       Den Erlenkönig mit Kron und Schweif?
       Mein Sohn, es ist Nebelstreif.

       Du liebes Kind, komm, geh' mit mir!
       Gar schöne Spiele spiel ich mit dir;
       Manch' bunte Blumen sind an dem Strand,
       Meine Mutter hat manch' gülden Gewand.

       Mein Vater, mein Vater, und hörest du nicht,
       Was Erlenkönig mir leise verspricht?
       Sei ruhig, bleibe ruhig, mein Kind;、
       In dürren Blättern säuselt der Wind.

       Willst feiner Knabe, du mit gehn?
       Meine Töchter sollen dich warten schön;
       Meine Töchter führen den nächtlichen Reih'n.
       Und wiegen und tanzen und singen dich ein.

       Mein Vater, mein Vater, und siehst du nicht dort
       Erlkönigs Töchter am düstern Ort?
       Mein Sohn, mein Sohn, ich seh' es genau:
       Es scheinen die alten Weiden so grau.

       Ich liebe dich, mich reizt deine schöne Gestalt;
       Und bist du nicht willig, so brauch' ich Gewalt.
       Mein Vater, mein Vater, jetzt faßt er mich an!
       Erlkönig hat mir ein Leids getan!

       Dem Vater grauset's, er reitet geschwind,
       Er hält in Armen das ächzende Kind,
       Erreicht den Hof mit Müh' und Not;
       In seinen Armen das Kind war tot.


                  
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Comment

Re: 「魔王」の編曲版、面白そうですね

burleskeさま
コメントをありがとうございます。

「死と乙女」は原曲よりもマーラー編曲の弦楽合奏版の方がお気に入りになってしまいました。
「魔王」「アルペジョーネ・ソナタ」の編曲版、とても良いと感じました。
いつか機会がありましたら、是非・・・・。

>歌曲の「魔王」は有名すぎて、なんか改めて聴くのが気恥ずかしいような・・・
分かります、分かります、そうなのですよね。
ベートーヴェンの「運命」も、同じような気持ちを抱いてしまいます。
有名すぎる曲に対して感じてしまうこの気持ちは何なのでしょうね。
  • posted by lumino
  • URL
  • 2016.05/30 19:54分
  • [Edit]

「魔王」の編曲版、面白そうですね

マーラー編曲の「死と乙女」弦楽合奏版はウェルザー=メスト盤がお気に入りの演奏なのですが、「魔王」と「アルペジオーネ・ソナタ」の編曲版も面白そうですね。機会があれば聴いてみたいです。

歌曲の「魔王」は有名すぎて、なんか改めて聴くのが気恥ずかしいような・・・
でも、やっぱりディースカウで聴くと、聴き惚れてしまいますね。
  • posted by burleske
  • URL
  • 2016.05/29 19:34分
  • [Edit]

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特に音楽知識のないクラシック・ビギナーに等しいのですが、「ただ、ひたすらに」をモットーに鑑賞をしています。
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