2016.09/17(Sat)

Op.353 シューベルト:歌曲集「冬の旅」全曲 by プライ&エンゲル

前回、マイスキー&オヴォラのチェロ版で「冬の旅」より
『幻』と『辻音楽師』を聴き歌曲集「冬の旅」全曲を聴いてみました。
シューベルトの三大歌曲集では苦手な「冬の旅」ですので
脱線しつつも初めてじっくり、噛みしめつつ耳を傾けています。

ディースカウの歌う「冬の旅」の7種の録音を聴いてみたいとの思いもあり
前回のディスカウ&ムーア(1962年録音)で聴いていました。
が、聴いている途中で・・・・どうも。
昔々、LP時代に全曲を聴き通すことができず「冬の旅」に対して苦手意識が
芽生えて以来、云十年でしょうか。
今回は何とか終曲まで聴いたものの・・・。

陽の目を見ることがなかったプライエンゲルで改めて聴いてみました。
冬の旅」が惹かれる歌曲集になりました。

                  シューベルト「:「冬の旅」D.911 全曲
                       プライエンゲル
                      プライ EMI録音集より


             353:シューベルト「冬の旅」プライ&エンゲル

                    ヘルマン・プライ(Br)
                    カール・エンゲル(P)
                    (録音:1961年 ベルリン)


             デッサウ、都市公園内のミュラーのモニュメント
                  352シューベルト ミュラー Denkmal im Dessauer Stadtpark
                Johann Ludwig Wilhelm Müller
                 (1794年10月7日 - 1827年10月1日)
             

この歌曲集について先日、綴ったことと重複しますが。
作曲は1827年。
初演は1828年1月10日に第1曲のみがウィーン楽友協会で歌われたそうです。
全曲の初演は不明とのこと。
出版はシューベルトの死後で、前半の第1部が1828年1月14日
後半の第2部が1828年12月30日に出版されたそうです。
尚、原譜は残っておらず第23曲の不完全な写しがウィーン楽友協会に
保存されているとのことです。

「美しき水車小屋の娘」の作曲の4年後、1827年に作曲。
この歌曲集は「水車小屋」のように明確な筋はないとのことです。
詩は「水車小屋」と同じくヴィルヘルム・ミュラー
24遍全部に2回に分けて作曲されたそうです。

前半(第1曲-12曲)の作曲は1827年2月。
前半はミュラーが定期刊行物に発表した詩で詩の順序に従い
作曲されたとのことです。
後半(第13曲-24曲)は同年10月に作曲。
詩集の形にまとめられたもので詩の順序は大幅に入れ替えられているとのこと。
シューベルトはすでに作曲したものを除いた残りの詩にその順序のまま
作曲したそうです。

1823年、26歳頃からシューベルトの病状は次第に悪くなっていったそうです。
その頃にシューベルトは日記に次のように記しているとのこと。
 「他人の本当の苦痛を察することは誰にもできない。
 ・・・私の苦しみによって書かれた作品は、人々を最も喜ばすかのように
  思われる」
日記にそのように記した後に作曲された歌曲集「冬の旅」。

「冬の旅」の音楽の陰鬱さの原因として大木正興、大木正純氏は
次の点を挙げていられます。
シューベルトが病魔に打ちのめされた、ということも考えられるが
それ以上に大事なこととして当時の社会情勢を考慮されています。
当時、産業革命により人口は都市への集中が始まり
社会からの疎外、という意識が背景にあるそうです。
それは20歳代後半に熟してきたシューベルトにとって大きな重圧として感じられ
感受性も暗い方へと向かっていった、ということが考えられるとのことです。
シューベルト自身が「冬の旅」の主人公と似たような状態に放り出され
当時の社会の犠牲者だった、とも。


プライの歌唱で聴く「冬の旅」。
1961年の録音とのことですのでプライ、37歳頃の歌声でしょうか。
やっと、やっと長年の「冬の旅」苦手意識から解放されたように感じます。
以前にもプライの歌唱から感じたことですが
人に聴かせるために、また上手に歌おうとするのではなく
自分自身に語りかけるような歌唱のように思われます。
プライの歌唱の温かさ、素朴さ、飾り気のない朴訥さに惹かれます。
プライのその持ち味がこの歌曲集からも感じられるようです。
主人公の心情が身に沁みるように伝わってくるようです。
一曲一曲に込められた主人公の果てのない孤独感、寂寥感等の心情を
歌い紡いでいくプライ。
ただただ、詩と歌唱に聴き入るのみです。

全24曲中、特に印象に残った一曲が第15曲「からす」。
通作形式。ハ短調 2/4拍子。
この歌曲集の中では異色な曲のようにも感じられます。
ピアノ右手の単調な三連音はカラスの羽ばたきを表しているのでしょうか。
愛らしく、またコミカルにも感じられます。
旋律を奏する左手からは抒情的な趣も感じられます。
詩の内容に相反してこの歌曲集ではホッとするような1曲。

最後の「辻音楽師」はこの曲集では最も印象に残ります。
通作形式。イ短調 3/4拍子。
「歌う」というよりも静かに語りかけるような
消え入るかのような呟き、囁きのようです。

プライの歌唱でこの歌曲集を聴くと
ミュラーの詩に根を張っている暗鬱さの中にも
シューベルト特有の抒情性が随所に感じられるようです。

前回はディースカウの歌う「冬の旅」の7種の録音を聴いてみたいと
思ったものですがプライで聴き意外な方向転換になったようです。
他の歌手でも聴いてみたい思いが募る歌曲集に変貌しました。
明日、ハンス・ホッターのバス・バリトンの「冬の旅」が届く予定ですので
楽しみです。
あれほど苦手だった「冬の旅」。
今更ながらに一つの演奏の重要さを感じています。

                  
関連記事

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : シューベルト 冬の旅 ミュラー プライ エンゲル

20:00  |  お気に入り(歌曲)  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●Re: シューベルトの歌曲は・・・

burleskeさま
コメントをありがとうございます。

「冬の旅」のディスクを多種お持ちなのですね。
プライの「冬の旅」を聴いてからはお気に入りになってしまい、ディースカウが陰に隠れてしまいました。
ディースカウでは最晩年の録音に関心があるのですが、コメントを拝読させていただき魅力は若い頃の録音の方があるようですね。

> ホッターも持っていますが、知的なディースカとは違う温かみがあって魅力的ですよ。

ホッターのディスクが届きました。
burleskeさまのコメントを拝読させていただき、ますます聴くのがのが楽しみになり早速耳を傾けてみました。
「温か味」・・・やはり良いですね。
ホッターのディスクを求めて良かったです。
今夜も、そして当分はホッターの「冬の旅」を聴きたいと思います。
今のところ「冬の旅」はプライとホッターがお気に入りかも知れません。

今まで、「冬の旅」では単独で『菩提樹』そして先日の『幻』などはブログに登場していまいしたが、全曲を通して聴くとこの曲集に筋はないというものの、単独で聴くよりも歌曲集としての魅力を感じるようになりました。
「冬の旅」も愛聴歌曲集になりそうです。

台風16号、そちらはかなり影響がありそうですね。
どうぞお気を付け下さいね。被害がないとよいですね。
lumino | 2016.09.19(月) 20:05 | URL | コメント編集

●シューベルトの歌曲は・・・

『冬の旅』では僕も最後の「辻音楽師」が印象に残っています。
プライは聴いたことありませんが、ディースカウはムーアとのDG盤とブレンデルとのフィリップス盤を持っています。DG盤の方が声に張りがあってディースカウの魅力をより伝えているように思えます。
ホッターも持っていますが、知的なディースカとは違う温かみがあって魅力的ですよ。

シューベルトの歌曲はなかなか自分から進んで聴いてみようとは思わないのですが、聴いてみると魅力的で引き込まれてしまいますよね。
burleske | 2016.09.18(日) 19:39 | URL | コメント編集

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Tracback

この記事のトラックバックURL

→http://adagio6.blog93.fc2.com/tb.php/625-9b6227a4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |