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2017.12/23(Sat)

Op.419 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」 by ユストゥス・フランツ

ベートーヴェンピアノ・ソナタ、第8番から始まり今回で連続4回目。
ソナタがシリーズ化してきたようです。
今回は「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ 4」でしょうか。

前回は作品27の2つの作品「幻想風ソナタ」より、作品27-1第13番を聴きましたので
今回は作品27-2の第14番月光」を。
有名すぎる第14番
未知の演奏家で聴きたくなりユストゥス・フランツのピアノで聴いてみました。
私の大好きな廉価盤Box「ベートーヴェン 主要作品全集」からの一枚です。

       ベートーヴェンピアノ・ソナタ第14番月光
    ユストゥス・フランツベートーヴェン 主要作品全集より


       419 ベートーヴェン:.ピアノソナタ第14番 ベートーヴェン主要作品全集 ユストゥス・フランツ
                  (収録曲)
                ベートーヴェン

         ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
         ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光
         ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 Op.28「田園」
  
            (第13番 横山幸雄)
            (第14番 ユストゥス・フランツ
            (第15番 ゲルハルト・オピッツ)


         第1楽章:Adagio sostenuto 嬰ハ短調 2/2拍子
         第2楽章:Allegretto 変ニ長調 3/4拍子
         第3楽章:Presto agitato 嬰ハ短調 4/4拍子


作曲されたのは1801年。
作品27の2曲、第13番と第14番はベートーヴェン自身による命名は「幻想曲風ソナタ」とのことです。
2曲ともに1802年3月、ウィーンのカッピから出版され
第14番の自筆譜はボンのベートーヴェン・ハウスに保存されているとのことです。

第14番の「月光」という呼称は詩人レルシュターブがベートーヴェンの死後の1832年に
第1楽章を形容し次のように表現したことに由来するそうです。
「スイスのルツェルン湖の月光に揺らぐ小舟のよう」
尚、ベートーヴェンの弟子カール・ツェル二ーはレルシュターブより先に
「夜景、遥か彼方から魂の悲しげな声が聞える」と述べているとのことです。

出版のかなり後になり「月光」という俗称が一般的になったそうです。
曲は初めから人気があったとのことでベートーヴェン自身は不快に思っていたようです。
曲そのものが文学的空想を招く要素が強いことが人気を呼ぶ原因にもなっていたそうで
レルシュターブが形容した「月光」以外にもさまざまな独創的解釈が行われてきた、とのことです。

          419:ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番Titelblatt der Klaviersonate Nr. 14 aus dem Jahr 1802
            ソナタ第14番 1802年出版の表紙

曲の献呈は伯爵令嬢のジュリエッタ・グィチャルディに。
ベートーヴェンは初めグィチャルディには「ロンド」作品51-2を贈るつもりだったそうですが
これをリヒノフスキー伯爵令嬢のヘンリエッテに捧げることになり予定を変更して第14番の
このソナタをグィチャルディに回した、と伝えられているとのことです。


ユストゥス・フランツで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番

ゆったりとした遅いテンポで静かに始まる第1楽章。
今まで耳にしてきた演奏よりもフランツの演奏はかなり遅いテンポです。
淡々と奏される続ける左手の三連音。現れる第1主題。
内面を見つめるかのようなピアノ。
テンポの遅さがより一層、その印象を強めるようです。
まるで祈りでもあるかのように静かな調べ。
瞑想的な調べ。
その調べには心奥に悲哀を秘めたような雰囲気も感じます。 
この主題に続き少し明るさを感じさせる旋律。
第1主題で始まる中間部、左手で奏され続けた淡々とした三連音が
音域を高くし奏される部分は恰も「叫び」でもあるかのよう。
再び第1主題が戻り祈りの調べに。
コーダでは左手の三連音が低音で重々しく奏され静かに閉じられる第1楽章。

第2楽章をリストは「2つの深淵の間の一輪の花」と形容したそうです。
軽やかな主題で始まる第2楽章。
主題のレガートとスタッカートでのスタッカートが印象的。
中間では前楽章に漂う悲哀感を払拭するかのような平和な調べのように感じられます。
伸びやかなピアノ・タッチに惹かれているうちに次の楽章に。

激しい趣で始まる第3楽章。
第1主題の迸り出る情熱的な激しさ。
フランツのピアノでは激しさが抑制されているように感じられます。
優雅さをも感じさせるピアニズム。
激しい曲想に気迫を感じつつ耳を傾けていると現れる第2主題。
左手の震撼するようなリズムに乗せて奏される右手の旋律。
暗い重さが漂うような第2主題。
コーダは長く、アルペッジョが幻想的な趣を醸し出しているのが印象的。
ドラマティックに盛り上がり力強く迎える曲の終わり。


耳に馴染んでいるこの曲。
中学校時代でしたでしょうか、この曲も学校の音楽の時間に好むと好まざるとに関わらず
鑑賞をした想い出があります。
ツマラナイ曲・・・というのがその当時の感想。
以来、聞くことはあっても、じっくり耳を傾けたことは・・・なかったように思います。
今回、この曲の特に第1楽章に強く惹かれるものがありました。
人間、変われば変わるもの、と思う昨今です。

ユストゥス・フランツ、名前さえ知らず、演奏も初めて耳にする
私にとっては未知のピアニストの演奏。
聴く前から、興味津々、ハラハラドキドキ。

第1楽章の旋律が流れ始めた瞬間から「?」になる演奏。
「こんなに遅いテンポの曲だった?」・・・とにかく、遅いテンポです。
手元にあったケンプの演奏時間と比較してみました。
フランツ8:17/2:27/7:17
ケンプ 6:01/2:20/5:30
数字を見間違えたかと思いました。
第2楽章は7秒差とは思われないような遅さに感じます。
遅いテンポで奏されるこの曲。そしてフランツの虜になってしまいました。
フランツの紡ぎ出す調べ、演奏はベートーヴェン自身が作品27の2曲に命名した
「幻想風ソナタ」そのもののように感じられます。

第1楽章の荒々しい第1主題でのソフトな感じの打鍵にも好感を抱きます。
フランツの演奏で聴く第1楽章は祈りの音楽。葬送の音楽。
また悲哀感を伴った回顧の音楽のようにも感じられます。
第2楽章には優雅な気品すら漂っているかのようにも。
第3楽章の激しい曲想にも、柔和さを感じさせるピアニズム。
とは言え、曲想の激情、緊迫感、気迫が弱められることのない冷静なタッチ。
激情型の演奏を多く耳にするこの作品。
フランツの演奏はとても新鮮に感じられます。
異色な演奏・・・とは、言い過ぎでしょうか。

このBoxにはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲が数人のピアニストの演奏で収録されています。
フランツの演奏では 第8、14、23番の3曲が収録されていました。


いつもの蛇足です。
ユストゥス・フランツについて知りたくなり、Wikipedia を参照。
以下自分のメモとして。

Justus Franz 1944年5月18日、現ポーランド生まれだそうですので、現在73歳でしょうか。
ドイツの指揮者、ピアニスト及びテレビ司会者(クラシック音楽啓蒙番組)とのこと。
4歳でピアノ演奏を始める。
1967年にミュンヘン国際音楽コンクールに出場、国際的な活動の開始。
     ウィルヘルム・ケンプのマスタークラスでの学習はフランツの成長の歩みに
     最大の影響を与えた。
1970年、カラヤン指揮、ベルリン・フィルとの共演により世界の第一線に。
1975年、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルとの共演にてアメリカ合衆国デビュー。
1986年、ハンブルク高等音楽演劇学校の教授に就任。
     クラシック音楽啓蒙のためにシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭を創設。
1989年、ドイツ=ソビエト青少年フィルハーモニー管弦楽団の設立者として名を連ねる。
1995年、各国から新人演奏家を結集しフィルハーモニー・デア・ナツィオーネンを結成。

彼は古典派からロマン派までの音楽、特にモーツァルトの作品を専門にしている。
エッシェンバッハとは連弾曲や2台のピアノ用作品で共演、録音も残す。

ショップ・サイトでモーツァルト作品のエッシェンバッハとの共演(1960年)のディスクが数枚目に付きました。
食指が動きそうです。
                    
              
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タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第14番 幻想曲風ソナタ 月光 ユストゥス・フランツ ケンプ

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Comment

●Re: 「月光」は僕の好きな作品の一つです

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタでお気に入りの作品が数々あるのですね。
ソナタでは、まだまだ聴き込んでいない曲がほとんどの状態で、今のところ第30番と第8番がお気に入りです。
第14番は今まで、良いと感じる曲の一つでしたが、今回フランツのピアノで聴き今まで以上に好きになりました。
やはり心惹かれる良い曲ですね。
「ワルトシュタイン」「テンペスト」そして後期の第31,32番も心して聴いてみたいと思います。
いろいろなピアニストでベートーヴェンのソナタを聴き比べることに、初めて興味深い楽しみを感じるようになりました・・・今頃になって、ですが。

「第九を聴く会」は明日が最終日なのですね。
私にとってはburleskeさまの「第九を聴く会」の記事を拝読するのが、年末恒例の一つになっています。
毎年、いろいろな趣向を凝らされ、「今年はどのような?」と想像をしています。
記事を楽しみにさせていただきますね。
lumino | 2017.12.25(月) 20:37 | URL | コメント編集

●「月光」は僕の好きな作品の一つです

「月光」ソナタはベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でも僕の好きな作品の一つです。あと「ワルトシュタイン」と「テンペスト」、それに第30,31,32番の最後の三曲のソナタも好きでけっこう耳にします。
ベートーヴェンのソナタを違うピアニストで聴いていくというのは、なかなか面白いですね。
フランツのピアノは聴いたことありませんが、機会があれば一度耳にしてみたいです。

それから、恒例の「第九を聴く会」なのですが、今年は最終日が26日なので、例年より記事を書くのが晩くなっています。もう少しお待ちくださいね。
burleske | 2017.12.24(日) 21:13 | URL | コメント編集

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