2018.01/20(Sat)

Op.423 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第12番」 by ケンプ;コワセヴィッチ

今日もまた「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。

聴きたい目的の作品を聴いていて同じディスクに収録されている他の曲に耳を奪われてしまうことがあります。
そして日数が経過しても、旋律を覚えている訳でもないのに気になってしまう。
今日はそのような曲の中からベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番です。
ケンプのピアノを主として。コワセヴィッチの2種で。


ベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番
ヴィルヘルム・ケンプベートーヴェンピアノ・ソナタ全集より

418:ベートーヴェン ピアノソナタ第13番 ケンプ~ピアノ・ソナタ全集
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調op.26
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調op.27-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調op.27-2 「月光」
ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調op.28 「田園」
(録音:第12番 1964年11月)

スティーヴン・コワセヴィッチ~ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集&パがテル集より
(HMV)423ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第12番 ピアノ・ソナタ全集、バガテル集 スティーヴン・コワセヴィチ(9CD)
収録曲はケンプと同曲、曲順も同じ。
こちらには第12番に副題「葬送」が付けられています。
(録音:1999年)

第1楽章:Andante con variazioni 変イ長調 3/8拍子
第2楽章:Scherzo/Trio: Allegro molto 変イ長調 3/4拍子
第3楽章:Marcia funebre sulla morte d’un eroe 変イ短調 4/4拍子
第4楽章:Allegro変イ長調 2/4拍子


作曲されたのは1800年から1801年と推定されているそうです。
ベートーヴェンのスケッチブックを検討したノッテポームによると
1800年から各楽章を別々に書き、1801年に完成されたとのことです。

第1楽章の着想はすでに1795年から96年頃、スケッチにロ短調の調性で現れているそうです。
ノッテポームによると第4楽章はこのソナタを考えて作曲したものとは言えない、とのこと。
ソナタ全曲の形を整えることは1801年になって思い付いた、と推し量ることができるようです。

曲は4楽章構成でソナタ形式の楽章は一つもないそうです。
第1楽章には変奏曲を置き、第2楽章にはスケルツォ、そして第3楽章に「葬送行進曲」が置かれているとのことです。
これはベートーヴェンがまとめてソナタに組み立てるつもりがなかったことの表れのようです。
敢えて、ひとまとめにして異例なソナタを書き上げたことは、ベートーヴェンの積極的な創意の現れになっているようです。

1800年を境としてベートーヴェンのあらゆる作品に大胆な発想が現れてくるそうです。
ピアノ・ソナタのジャンルでは先ずこの曲に大胆な発想を認めることができるとのこと。

曲の献呈はカール・フォン・リヒノフスキー侯爵に。
自筆譜はベルリンの国立図書館に保存されているとのことです。


ケンプの演奏で聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番
コワセヴィッチは後述のまとめの方に)

第1楽章は主題と5つの変奏の構成になっているそうです。
主題は最初の8小節。
5つの変奏では小節数24小節、拍子は3/8拍子、テンポもすべて同じで音型変奏になるそうです。

柔和で優しい趣を湛えた主題で始まる第1楽章。
嘗て聴いたことがある主題ですが、曲番号と旋律が一致しなかった曲です。
素朴さや親和感を抱くこの主題は印象的で記憶に刻まれます。
第1変奏では主題の音型をレガート風に奏され夢見るような趣も。
第2変奏、左手の低音域に移った主題からは重々しく、心持厳しさを感じるよう。
第3変奏、変奏主題を奏する右手からは今までの柔和な雰囲気が消え、暗い翳りが。
第4変奏、左手がシンコペーションで主題の変奏を奏し、右手は伴奏に。
陽気な雰囲気でもあり、忙しげにも感じられる変奏。
第5変奏、主題の調べは波が戯れるかのように細やかに刻まれ、左手が奏する主題に右手はさざ波のような伴奏を。
5つの変奏のなかではこの変奏が多様に変容するよう。
コーダでも主題の変奏がゆっくり奏され静かに閉じられる第1楽章。

一転して前楽章とは対照的に明るい雰囲気のスケルツォ主題で始まる第2楽章。
中間部では音力が大きくなり力を増し情熱的な趣に。
そしてトリオでは明るく伸びやか。
再びスケルツォに戻り、明るい活力の内に終わる第2楽章。

第3楽章、速度記号の代わりに「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」との記述。
「ある英雄」を誰を指すのかは不明で抽象的な意味で使われているようです。
当時、フェルディナント・パエールの歌劇『アキレス』の中の「葬送行進曲」が人気を博していたそうです。
それにベートーヴェンが刺激され、この葬送行進曲を書いたという説も一般化したことがあったとのことですが、ノッテポームは『アキレス』のウィーン初演がベートーヴェンのこのソナタの作曲より後とのことを根拠に否定しているそうです。
また、その反対を主張する人もいるとのこと。
尚、ベートーヴェンが交響曲第3番第2楽章で葬送行進曲を書いたのは、このソナタの3年後になるそうです。

重々しく厳かな調べの主題。
厳かな葬送の調べで始まる第3楽章。
トリオでは前半、後半は各4小節で反復する短いものだそうです。     
強い打鍵のトレモロとスタッカートの和音が交互に現れ
ドラマティックな雰囲気が生み出されているようです。
トレモロとトスタッカートで奏されるのは葬送の太鼓と金管の響きを表したもの、といわれているとのこと。
コーダでは音力を落としつつ奏され静かに閉じられる第3楽章。

前楽章と対照的なロンド主題で始まる第4楽章。
細やかな動きのロンド主題から第2主題に。
第2主題の明朗なスタッカート。
第3主題もロンド主題のように細やかな動きで。
流動的な旋律の動きで進められる曲。
コーダでは右手が煌めくような旋律を奏し、静かに迎える曲の終わり。


第1楽章の柔和で優しい雰囲気。
第2楽章のスケルツォでの明朗な活力。
第3楽章の厳かな「暗」
第4楽章の流動性のある調べ。
この曲の異例な構成に初めは寄木細工を思い浮かべてしまいましたが
さにあらずで、変化に富む曲でしょうか。
印象に残るのは第1楽章と第3楽章。

ケンプのベートーヴェン、ソナタ全集より過日、作品27の2曲を聴くために取り出したこの一枚。
目的の2曲を挟んで、第1曲目がこの第12番。第4曲目に収録されているのが第15番。
目的の作品27の2曲とともに第12番、第15番も印象に残っていました。
殊に第12番は気になる曲になり、ケンプの他に、今回は関心を抱いていているピアニストの一人コワセヴィッチの演奏も聴いてみました。
コワセヴィッチの方はせめて第1楽章だけでも・・・と聴き始めたのですが、最後まで聴き入ってしまいました。

ケンプとコワセヴィッチ
対照的な演奏でしょうか。
ケンプの教科書的と言いうと表現は悪いかも知れませんが、堅固しっかりとした演奏。
真摯に楽譜に対峙するような印象を受けます。
この曲でコワセヴィッチの演奏を聴き、ケンプのピア二ズムに朴訥さを感じるようになりました。
味わいのある、じっくりと聴かせてくれる朴訥さのようなものを。
お気に入りのケンプにまた一つの魅力が増えたようです。

コワセヴィッチ(と、リチャード・グード)の演奏は、いつもお邪魔をさせていただいているブログを拝読して聴きたくなり昨年求めた全集です。
まだ全集を聴き終えていないのですが、コワセヴィッチで聴くソナタ第12番は
感情を豊かに織り込んだ表現のように感じられます。
第1楽章の各変奏から特にその表現力に耳を奪われるものがありました。
第1楽章に漂う瞑想的な趣に聴き入り
曲を聴き進むうちにドラマティックな趣も。
ダイナミック、横溢するエネルギーを感じる演奏のように想われます。
まだ全集の途中までしか聴いていないのですが、第32番の演奏を想像し興味が駆り立てられるようです。

コワセヴィッチを聴き、ケンプの演奏に新たな魅力を見い出し
ケンプの演奏を聴き、コワセヴィッチの魅力にも気付かされたような気がしています。

                
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第12番 ケンプ リヒノフスキー侯爵 コワセヴィッチ

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Comment

●Re: お早うございます

rudolfさま、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

本当にベートーヴェンのピアノ・ソナタは覚えきれません。
副題が付いていても・・・覚えられない曲もある有様です。
rudolfさまがお挙げになられていらっしゃる「月光」「アッパショナータ」も、「月光」の方はOK、「アパッショナータ」は数日前でしたら「?」でした。
この数日来、「アッパショナータ」を集中して聴いています。(次回の登場予定曲なので)
そのお陰でやっと曲名と旋律が一致している今です。が、また時間が経てば忘れてしまうかも、です。
昔から記憶容量は少ないことだけは確実ですが、来るべき時が来たか、とも・・・。

三大ピアノ・ソナタすら記憶に危うい状態なのですが、今回の第12番。
実際、聴いてみると「この曲だった」とか過去の記憶が甦ったり、ですね。

> ケンプフの演奏も聴いているかと思うのですが、まったく覚えていません

演奏もまた、記憶に残る演奏と残らない演奏がありますよね。
好印象を受けた演奏、その反対に拒絶したくなるような演奏、だけは記憶に残るのですが他は・・・やはり忘れてしまいます。
何か、物忘れ大会?になってしまいましたね(*^_^*)
lumino | 2018.01.26(金) 19:54 | URL | コメント編集

●お早うございます

luminoさま  お早うございます

32曲もあると どれがどれだったか…忘れてしまいますね
「月光」とか「アパッショナータ」とか ニックネームが付いているものは覚えていますね
そう考えると ニックネームは役に立っていますね
この曲も聴き出したら、あああ この曲かと分かりました
相当に聴いているかと思いますが、そんなものかもしれませんね

ケンプフの演奏も聴いているかと思うのですが、まったく覚えていません、爆

ミ(`w´彡)
rudolf2006 | 2018.01.26(金) 08:51 | URL | コメント編集

●Re: ベートーヴェンの第12番は・・・

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。


ピアノ・ソナタで曲番からは旋律が思い浮かばなくても、聴いてみるとburleskeさまが仰るように「聞き覚え」のある作品がありますよね。
私などは、ほとんど曲番と旋律が一致していなくて・・・副題が付いている有名な三大ピアノ・ソナタでさえも、の状態です。

コワセヴィッチの演奏はすでにお聴きになられていらっしゃったのですね。
私はやっといろいろなピアニストのディスクを求め・・・コワセヴィッチのピアノ・ソナタ演奏も「新しい出合い」の一つです。
表現力が豊かですよね。とにかくダイナミックな演奏には驚愕しています。

嘗て聴いた曲でも、時を経て改めて耳にすると・・・気付くことも多々ありますね。
時にはタイムスリップをして過去に聴いた作品を改めて聴いてみるのも音楽鑑賞の愉しみの一つでしょうか。
lumino | 2018.01.23(火) 19:32 | URL | コメント編集

●ベートーヴェンの第12番は・・・

ベートーヴェンの第12番、どんな曲だったっけ?と思って聴いてみたら、聞き覚えのある作品でした。
久しぶりにコワセヴィッチで聴いてみましたが、こんなに表現力豊かな演奏だったっけ?と認識を改めてしまいました。

いろんな演奏を聴いていると、昔なにげなく聴いていた演奏が、思いのほかよかったりするのに気付かされることってありますよね。
コワセヴィッチのベートーヴェン、他の作品も改めてじっくりと聴いてみたいと思います。
burleske | 2018.01.22(月) 20:46 | URL | コメント編集

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