2018.01/27(Sat)

Op.424 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第23番≪熱情≫」 by バックハウス;ポリーニ

執拗に続いている「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。
今回は第23番熱情」です。
バックハウスを主として、ポリーニ、他で聴いてみました。


ベトーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番熱情
バックハウスベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より

424:ベートーヴェン:ピアノ.ソナタ第23番 バックハウスピアノ・ソナタ全集(新盤)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情]
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79「かっこう」
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 Op..81a「告別」
(録音:1969年 ジェノヴァ ヴィクトリア・ホール)


ポリーニベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より
424:ベートーヴェン: ピアノ.ソナタ第23番 ポリーニ ピアノ・ソナタ全集(8CD)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79
(録音:2002年6月 ミュンヘン ヘラクレス・ザール)


第1楽章:Allegro assai へ短調 12/8拍子
第2楽章:Andante con moto 変ニ長調 2/4拍子
第3楽章:Allegro ma non troppo – Presto へ短調 2/4拍子


作曲されたのは1804年から1805年のようです。
ベートーヴェン、34~5歳頃でしょうか。
ベートーヴェン中期の大傑作の一つとのこと。
この同じ時期に交響曲第5番に着手していたそうです。
曲の完成については多々の説があり確定はできないそうですが
第1楽章、第2楽章及び第3楽章の冒頭の部分のスケッチは歌劇「フィデリオ」のスケッチ帳の中に現れていることから、曲の着想は1804年と考えられるそうです。
「フィデリオ」が1806年に完成した頃に、このソナタ第23番も完成されたと推測されるようです。
1805年4月18日にベートーヴェンは曲の完成を見越した書簡を出版元に送っているとのこと。

曲の出版は約2年後の1807年2月に ソナタ 第54番 としてウィーンの美術工芸社より。
この時、表紙に記された ピアノ・ソナタ第54番作品57 についての根拠は不明とのことです。

副題の「熱情」はハンブルクの出版元でピアノ連弾用の編曲版の出版時に名付け、通称として今日まで続いているそうです。
自筆譜はパリ音楽院に保存。

献呈はフランツ・フォン・ブルンスヴィック伯爵に。

424:ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番Graf Franz Brunsvik de Korompa
Graf Franz Brunsvik de Korompa
(1877年9月25日-1849年10月23日)

伯爵は音楽好きであり、特にチェロの演奏は優れていたそうです。
また、ベートーヴェンの音楽に心から傾倒をしていたとのことです。
伯爵とその令嬢でテレーゼ(1777-1861年)とヨゼフィーネ(1779-1821年)。
この伯爵一家は1799年以来、ベートーヴェンとの付き合いが深く、各人がベートーヴェンの生涯に大きな意味を持っていたとのこと。

このソナタのエピソードとして。
ラズモフスキー公の司書ビゴ―と1804年に結婚をしたの妻のマリーは優秀なピアニストだったそうです。
彼女はハイドン、サリエリ、ベートーヴェンと交流があり、後年メンデルスゾーンにピアノを教えたとのことです。
ベートーヴェンが1806年の秋、リヒノフスキー侯爵邸からウィーンに帰る途中で雨でずぶ濡れになり、所持していたこのソナタ第23番の草稿も濡れてしまったそうです。
帰宅したベートーヴェンが雨に濡れた楽譜をマリーに見せたところ、彼女はその音楽に引き込まれ、初見で完全に弾きベートーヴェンは大いに喜んだそうです。
その自筆譜は楽譜の出版後にマリーに贈られたとのことです。


バックハウスで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情

威厳のある旋律とトリルで奏される旋律で始まる第1楽章。
この第1主題に漂うの簡潔さと緊張感。
主題を経て渾身の力強さを込めた打鍵の和音。
第2主題になり激情の波も静まり漂う穏やかさ。
光明を感じさせるような第2主題。
展開部では滾る熾烈さ。
バックハウスの打鍵からは気迫を感じます。
右手及び左手にドラマティックに奏される主題。
荒々しい闘争感も漂っているかのよう。
現れる第2主題にホッとするような。
アルペッジョを経て再現部に。
コーダでが奏される2つの主題の後に激しい力を感じさせ
束の間の落ち着きを経て再び音力が強くなり増大する激情感。
音力を落として弱くなり閉じられる第1楽章。

第2楽章は主題と3つの変奏から構成されているそうです。
ゆっくりと静かに奏し始められる第2楽章。
簡素な主題。
この主題からは思索をするかのような印象を受けるます。
第1変奏では主題を奏する右手。シンコペーションで相槌を打つような左手が印象的。
第2変奏は旋律は細かく奏され右手の主題は小川の流れのようにも。
左手は素直な伴奏を。
美しさを感じさせる変奏です。
第3変奏では前変奏よりも更に細やかな動きに。
主題に漂う愛らしい趣。
変奏を終え元のテンポで主題を回想。
一瞬の短いアルペッジョを境にそのまま第3楽章に。

第2楽章から突入する第3楽章。
音力が上がり激しく強いキーの連打で始まる第3楽章。
続く第1主題に旋律は感じられず音が単に動き回るかのような雰囲気。
高揚する力強さ。
第2主題も第1主題同様に機械的な趣で。
展開部で現れる第1主題。
次に速度を速め音力を上げ激しく高揚し新しい楽想の出現。
第1主題の展開になり力が弱まり再現部に。
コーダでは展開部で現れた新しい楽想が力強く奏され
第1主題は迸るような展開で。
全エネルギ―を注ぎ込むように奏され渾身の力で迎える曲の終わり。


この曲の熾烈さ、壮絶さにただただ圧倒されています。
始めバックハウスで聴き、次にポリーニで聴いてみました。
2人の演奏を聴き、他の演奏にも興味が湧き手元にあるディスクをほぼ動員。
この数日来、取り敢えず10名のピアニストの演奏で第23番ばかりを聴いてました。
欲張り過ぎ・・・また肝心なシュナーベルを忘れてしまいましたが。

印象に残る演奏はやはりお気に入りのピアニストや好印象を受けたピアニストです。
今回のバックハウス、そして他にはアラウでありケンプ。
過日、ソナタ第14番で強い印象を受けたユストゥス・フランツ。
そしてソロモン。
上記とは対照的な演奏として感じられたポリーニ
中庸のピアニストの演奏は印象としてあまり残るものがないようです。

最初に聴いたバックハウスとポリーニ
バックハウスは嘗ても書きましたが個人的な想い出の深いピアニストです。
昔々のLP時代に初めてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(分売で毎月、求めたもの)を手にしたのがバックハウスでした。
全曲をじっくり聴くことなく・・・気が付けばCD時代に移行をしてしまっていました。
昨年、取り寄せ注文にてショップに依頼をしていたセットで、入荷を諦めかけていたところに入荷通知があり、届いたこともあり喜びも一塩の気分で聴き始めたバックハウスです。
一方のポリーニは特別に関心のあるピアニストではなかったのですが、ベートーヴェンのソナタ全集を約40年の年月をかけて録音した、とのことで関心を抱き聴きたくなった(単なる好奇心?)セットです。
このお二人の演奏、対照的、極端に対照的と感じています。

バックハウスはベートーヴェンからツェル二ー、リストの直系の弟子とのこと。
先ず、バックハウスのセットを手にして一番最初に聴いたのがこの第23番です。
一音一音は地をしっかり踏みしめるような打鍵。
剛健でもあり、言葉の悪い表現ですがゴツゴツとした無骨さ。
それが私にとってはバックハウスの魅力かも知れません。
第1、第3楽章の激しさを感情的ではなく、あくまで力強いキー・タッチが好印象として残ります。
第2楽章は、他の大方のピアニストが美しさを前面に表現する傾向を感じますが、バックハウスの演奏からは一つの音を吟味しつつ、力強い思索的な感じを受けます。
バックハウスのピアニズムは私にとっては魅力があります。

バックハウスとは対照的、極端に対照的に感じたポリーニ。
昨年末よりスティーブン・コワセヴィッチとリチャード・グードの全集と並行をして聴いていたのがポリーニです。
こちらの3人の全集もまだ聴き終えてはいないのですが。
コワセヴィッチ、グードも聴いていてハッとするものを感じる瞬間があります。
数曲を聴いてきてポリーニには、それが感じられないのです。
「どうして?」と湧き上がった疑問。
では、第23番はどうなのか?・・・と言う訳で聴いてみました。

流線的、淀みなく流れる川のようなポリーニのピアニズム。
スムーズなタッチで曲が流れ、旋律線が克明に浮かび上がらないようにも感じたりしています。
1曲、1曲を聴き進み、どの曲においても気が付くと曲が終了。
流れ去ってしまうような音楽。
偉ぶった酷評になってしまっているとしたら反省を。
この第23番の第2楽章ではポリーニが紡ぎ出す美しい楽想。
この楽章の主題を奏するポリーニには魅力を感じます。

それにしても対照的な二人のピア二スト。
バックハウスの演奏が楷書体であるなら
ポリーニは草書体のようにも感じています。

今回、第23番を通してソロモンにも目覚めたようです。


蛇足。いつものオバサンの井戸端会議。メモとして。

ベートーヴェンは1803年にエラール製のピアノを贈呈されたそうです
1803年から1816年頃に作曲されたベートーヴェンのピアノ作品は音域が拡大されたエラール製のピアノ(F₁~c⁴、68鍵)を使用していたとのこと。
ソナタ第21番「ワルトシュタイン」では音域の広さが反映されているそうです。
第23番「熱情」の終楽章において、このピアノの最高音である c⁴ が多用されているとのことです。                                 
                
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タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第23番 熱情 バックハウス ポリーニ ブルンスビック伯爵

21:30  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(6)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●Re: お早うございます

rudolfさま、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

第23番まで辿り着いたものの、初期、中期、後期と飛び飛びになってしまって・・・。

> バックハウスは廉価盤が出ていないので、まだ聴いていません
> ポリーニのCDは持っているんですが、後期と初期以外はあまり聴いていません、やはり安くなると 有り難みがなくなるのかもしれませんね

バックハウス・・・私の廉価盤好きがrudolfさまに感染!?
すっかりベートーヴェンのピアノ・ソナタに嵌り込んでしまったようで、最近求めるディスクはベートーヴェンのピアノ・ソナタばかりという有様になってしまいました。
ポリーニは全集を手にした時には「さあ、全曲を聴く!」と意気込んでいたのですが、どうも次第に・・・今は聴き比べの対象として聴くことが主になってきました。

> LP時代はゼルキン師の「ハンマークラヴィア」、ソロモンのLPくらいしか持っていなかったので、それはそれは繰り返し聴いたものですが

レコード盤が擦り切れるほどよく聴いた・・・と言うことを耳にしますが、rudolfさまのゼルキンとソロモンのLPも擦り切れるほど、お聴きになられたのでしょうね。
一枚のレコードを擦り切れるまで愛聴して・・・愛着も深くなり・・・それもまた懐かしく、良き時代ですよね。

第29番のrudolfさまの記事のときだったでしょうか、「ソロモンも良いですよ」とのことで聴きたくなり、やっとソロモンのディスク(第29番はまだ、なのですが)を求めることがきました。
ベートーヴェン以外の曲も聴いてみたくなり、Membran(ベートーヴェンのソナタは第3、8、23、32番が収録されている私の大好きな超廉価盤です)とソナタ集(第7、8、13、14番)を入手してみました。
ソナタ集を聴き、惹かれ始めています。
ソロモンは全集を完成することなく逝去されてしまわれたのですね。
ソロモンの演奏でベートーヴェンのソナタを一曲でも多く聴きたく思い始め、ショップ・サイトを往復している最中です。
聴きたいディスクはほぼ入手可能な現在ですが、云十年後(生きていれば)にはLP時代に比べ、想い出も懐かしさもまったく軽いものになっているかも知れませんね。
lumino | 2018.01.30(火) 20:32 | URL | コメント編集

●Re: バックハウスとポリーニは・・・

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

バックハウスとポリーニでお聴きくださったのですね。
対照的ですよね、驚くほどに。
演奏の好みは各人各様ですよね。

第23番で手持ちのディスクを思いつく限り取り出してみたのですが、シュナーベルを忘れ、アシュケナージも忘れ、リヒテルも聴きたいと思いつつ忘れ・・・でした。
リヒテルでは聴いてみたいと思いますし、こちらもこれから聴いてみますね。
lumino | 2018.01.30(火) 19:54 | URL | コメント編集

●お早うございます

luminoさま お早うございます

「熱情」まで来ましたね
バックハウスは廉価盤が出ていないので、まだ聴いていません
ポリーニのCDは持っているんですが、後期と初期以外はあまり聴いていません、やはり安くなると 有り難みがなくなるのかもしれませんね
LP時代はゼルキン師の「ハンマークラヴィア」、ソロモンのLPくらいしか持っていなかったので、それはそれは繰り返し聴いたものですが…爆

ミ(`w´彡)
rudolf2006 | 2018.01.30(火) 09:26 | URL | コメント編集

●バックハウスとポリーニは・・・

改めてバックハウスとポリーニのベートーヴェンを聴いてみましたが、確かに対照的ですね。
バックハウスの無骨で味わい深く、いかにもベートーヴェンといった感じの演奏もよいですが、僕はポリーニの洗練された美しい響きの演奏も好きです。
熱情ソナタでは他にギレリスとリヒテルも聴き応えのある演奏だと思いますよ。
burleske | 2018.01.29(月) 21:58 | URL | コメント編集

●Re: 熱情は熱くなる

龍さま、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

コメントを拝読させていただき、アシュケナージのディスクを聴いていませんでした。
早速、聴いてみます。
バックハウスとポリーニの演奏をYou Tube でお聴きになられたのですね。
ご感想を拝読して龍さまも同じ印象を受けられたようで安堵しました。

> 三者三様で、誰の演奏が良いかとは言い切れませんね。

同感です。いろいろな演奏を聴いて各人各様の良さを感じますね。
ただ、私の場合、絶対に受け入れられないピアニストは2人存在しますが。

この第23番もお好きな作品だそうですね。
ベートーヴェンのソナタは苦手だったのですが、最近では耳にする曲のどれもが魅力的に感じてくるようになりました。

> ベートーヴェンはやはりピアノソナタと室内楽が素晴らしいです。交響曲は聴かなくなってしまいました。

室内楽では弦楽四重奏曲がとても気に入っています。
室内楽作品でも未聴の曲があると思いますので、少しづつでも聴いてゆきたいと思っています。
lumino | 2018.01.28(日) 20:47 | URL | コメント編集

●熱情は熱くなる

 こんにちは

 熱情をCDでアシュケナージ、YouTubeでバックハウスとポリーニを聴きました。
スマートな演奏のアシュケナージ。感想にありますバックハウスの「ゴツゴツとした無骨さ」そのとおりゴッツさを感じました。「淀みなく流れる川のようなポリーニのピアニズム」言い当てていると思いました。
三者三様で、誰の演奏が良いかとは言い切れませんね。
この作品自体が好きですし熱くなりますので。
アシュケナージは、ショパンでハマッテしまいファンとなりましたからベートーヴェンも違和感はありませんし、綺麗に仕上げていると....一推しですね。
ベートーヴェンはやはりピアノソナタと室内楽が素晴らしいです。交響曲は聴かなくなってしまいました。

龍 | 2018.01.28(日) 14:18 | URL | コメント編集

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