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2018.03/31(Sat)

Op433 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第28番」 by ギレリス

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」
今回は中期のソナタから後期のソナタに飛びます。
後期作品の始めの曲、第28番を。
有名な第29番が Grosse Sonate fur das Hammmereklavier と呼ばれるのに対し
第28番は Kleine Sonate für das Hammerklavier と呼ばれるようです。
ギレリスの演奏を主として聴いてみました。 

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第28番
ギレリスベートーヴェン ピアノ・ソナタ選集より


483:ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番「テンペスト」ギレリス~ベートーヴェン・ピアノソナタ集より
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101
ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 Op.106「ハンマークラヴィーア」

エミール・ギレリス(P)
(選集録音:1972ー1985年)


第1楽章:Allegretto, ma non troppo(Etwas lebhaft und mit der innigsten Empfindung)
      イ長調8/6拍子
第2楽章:Vivace alla Marcia(Lebhaft. Marschmäßig)
      ヘ長調4/4拍子
第3楽章:Adagio, ma non troppo, con affetto(Langsam und sehnsuchtsvoll)
      イ短調2/4拍子
第4楽章:Allegro(Geschwind, doch nicht zu sehr, und mit Entschlossenheit)

尚、曲の楽章構成については統一されていないようですが。
第3楽章の序奏と主部の部分を一つの楽章とした3楽章構成と
第3楽章の序奏の後の主部アレグロの部分を第4楽章として扱い4楽章構成になっているものの2つがあるようです。
ここでは一応、ギレリスのディスクが4楽章構成になっていましたので準拠して4楽章構成として綴りました。
実際に数種の演奏を聴き、4楽章構成で録音されたものが聴き易く思いました。         


作品に着手されたのは1815年。
第1楽章のスケッチは今日、明らかになっていないため着手よりもだいぶ以前に楽想が蓄積されていたのではないかとも考えられているそうです。
翌1816年の夏に大部分が書かれ秋に完成されたとのことです。
完成は自筆譜によると1816年11月と記されてるそうです。
後期様式に最初に作曲されたソナタとのこと。

1815年以降のベートーヴェンは新しい創作力でチェロ・ソナタ2曲を書き
翌1816年4月には歌曲集「遥かな恋人に」
そしてピアノ・ソナタではこの第28番が続いて作曲されたそうです。

この時期、後期に相当する時期には音楽の質、内容、外観のすべてが前の時期とは変わり、深い心情が限りなく細やかなニュアンスを持ち、広大な拡がりを感じさせつつ現れてきたとのことです。
中期の作品の人間的な力と闘いの様相の激しさ。
そのような激しささえ包括する豊かな深味のある世界がベートーヴェンの内面に開けてきたそうです。
作品の表現の手法もいろいろに拡張され、きめ細やかになり、形式は自由になってきたとのこと。

出版は1817年2月にウィーン、シュタイアーより。
自筆譜はスイスのルイス・コッホ・コレクションに保存されているとのこと。

献呈はエルトマン男爵夫人ドロテアに。

(bingリンク)433ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第28番Baroness Dorothea von Ertmann
Dorothea von Ertmann
( 1781年5月3日-1849年3月16日)

ドロテアは当時一流のピアニストだったそうです。
また1803年からベートーヴェンの弟子だったとのこと。
その演奏はたいへん美しいものであったそうでシンドラー、メンデルスゾーンも賛辞を贈ったそうです。
ベートーヴェンは彼女を敬愛していたとのことで、殉教をした音楽の聖女チェチーリアに因み、「ドロテア・チェチーリア」と呼んでいたそうです。
181年2月23日付けドロテア宛ての書簡にベートーヴェンはこのソナタ第28番を彼女に捧げるにあたり次のように記しているそうです。
「兼々、あなたに差し上げようと思っていたもので、あなたの芸術的天分とあなたの人柄に対する敬愛の表明になるでしょう」
一説によると、当時愛児を失い悲しみに暮れていたドロテアにベートーヴェンがこのソナタを演奏して聴かせたとのことです。


ギレリスで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第28番

第1楽章:速度記号とともに「幾分速く、そして非常に深い感情をもって」と記されているそうです。
美しい調べの第1主題で始まる第1楽章。
ゆったりと優しく柔和な雰囲気の主題。
第2主題も第1主題と同じような趣。
第2主題では感情の起伏が豊かに表現されているようにも感じられます。
展開部そして再現部も冒頭からの楽想が一つの流れゆく旋律のようです。
再現部の終わの部分のフォルティシモはこの楽章で唯一現れるそうです。
このフォルティシモが一回奏され温和で夢見るような調べのコーダに。
静かに閉じられる第1楽章。

第2楽章:速度記号とともに「生き生きと行進曲風に」 の記。
一般的な行進曲という意味ではなく、弾むリズムに乗った幻想曲のような楽章だそうです。

軽快に弾むリズムで始まる第2楽章。
飛び跳ねるかのようなギレリスのタッチ。
幼い子供が嬉しさ、喜びを飛び跳ねて身体で表現しているような雰囲気を感じます。
高音域の弾みと左手の応答からは愉しげな雰囲気も。
耳を傾けつつ、つい口ずさんでみたい気分に。
中間部では静かな趣で始まり、暫し続くカノン。
トリルが奏され現れる主題の行進曲風なリズムで弾む躍動感に。
第3部を経て活発に弾みつつに閉じられる第2楽章。

第3楽章:「ゆっくりと、そして憧れに満ちて」との記。
第3楽章は終始弱音ペダルを使用して演奏されるとのことです。 

ゆったりと静かに奏し始められる第3楽章。
寂寥感が強く漂う調べ。
ギレリスの優しいタッチからは寂寥感が殊更、胸に響くようです。
左手に応えるかのような右手はポツリポツリと物想うような朴訥な呟きを。
その響きの美しさ。
カデンツァに入り奏される第1楽章の主題。
このカデンツァは第1楽章のテンポAllegretto, ma non troppo イ長調6/8拍子で回想されるとのこと。
トリルで奏されそのまま第4楽章に。

第4楽章:「 速く、しかし速すぎないように、そして断固として」
一転する趣。
速度が上がり切れ味鋭く凛とした趣の第1主題で始まる第4楽章。
活気のある雰囲気。
現れる第2主題は優しい雰囲気で。
再び現れる第1主題の活発さ。
展開部では第1主題によるフーガ主題の出現。
弱音を挟みつつも力強く奏されるフーガ。
このフーガに耳を傾けていると感動的な想いに。
再現部を経て迎えるコーダ。
コーダではピアニッシモで奏される愛らしい調べに和みを感じるようです。
活力が漲る力強い和音の連打。
固い意志力、気迫を感じさせつつ迎える曲の終わり。


この曲も「第28番」ということを意識してじっくりと耳を傾けるのは初めてかも知れません。
最も惹かれるのは第3楽章。
ギレリスはこのソナタでも優しく温和な打鍵。
ただただ、耳を奪われます。
第1楽章での夢見るような想いが込められた優しいタッチ。
次のキーに移る時、瞬間的に音との間の空気が感じられ印象に残るピアニズム。
第3楽章では楽想の美しさとともに
ギレリスが紡ぎ出す調べに思わずホロりと。
深く心に刻まれる第3楽章です。

端正に奏される一音一音。音の輪郭の克明さ。
不純物のない清明な音色の美しさ。
優しさ、愛らしさ。柔和、温和。
繊細な表現。
奥深さを湛えた抒情性。
ギレリスの演奏を聴いていると、ソロモンの演奏と重なるものを感じてしまいます。

第28番は幸いにもソロモンの録音が残っていましたので聴くことができました。
お気に入りになった第3楽章ではソロモンの演奏から寂寥感とともに打ちひしがれるような表情も伝わってくるようです。
録音の影響かとも思いますが、ギレリスよりも仄暗さを感じる音色。
微かに渋い趣もまた魅力の一つに。

今回はこのソナタをシュナーベルに始まり、ギレリス、アラウ、ソロモン、グード、コワセヴィッチと聴き進んできました。
この中で異例(?)に感じたのはコワセヴィッチ。
抒情性を排し、剛健さが印象として残りました。
一つ一つの演奏が魅力を感じさせるようです。
特にギレリス、ソロモンは ともに心に残る第28番になりました。

               
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第28番 ギレリス ソロモン

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Comment

●Re: ギレリス、良いですね

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

ギレリスのピアノ・ソナタ第28番、burleskeさまもやはり「良さ」を感じる演奏なのですね。
過去にお聴きになられたそうですが、時を経て改めて聴いてみると当時とは違った印象を受けることがありますよね。
印象に残っていなかった演奏が、時を経て聴き「良さ」を感じると嬉しくなってしまいます。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタではburleskeさまの最近のお気に入りがイ―ヴ・ナットとのことを先日もコメントにお書きくださいましたね。
気になって聴いてみたくなり注文をしました。明日届くようです。
ギレリスとはタイプが違う演奏だそうですね。
初めて手にするイーヴ・ナットのディスク。明日が楽しみです(^^♪
lumino | 2018.04.02(月) 20:00 | URL | コメント編集

●ギレリス、良いですね

ギレリスの第28番、改めてじっくりと聴いてみましたが、明快で美しい響きが印象的な、こんなに良い演奏だったのですね。
昔聴いたときは、そんなに印象に残っていなかったのですが、ギレリスのベートーヴェンは聴き応えがありますね。
最近の僕のお気に入りのイーヴ・ナットの演奏とはかなりタイプが違いますが、ギレリスのベートーヴェン、他の作品も改めてじっくりと聴いてみたいと思います。
burleske | 2018.04.01(日) 21:53 | URL | コメント編集

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