2018.05/12(Sat)

Op.439 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第3番」 by ソロモン

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
前回の作品2-2、第2番に続き、今回は作品2-3、第3番を聴いてみました。
演奏はソロモン
ソロモンの廉価盤Boxからです。

前置きが長いこのブログ。今日は殊更に長い前置きになりそうです。
今週に入りベートーヴェンの作品、と言うよりクラシック音楽にじっくりと耳を傾けることができたのは、やっと昨夜になってからでした。
ふとしたキッカケでイージー・リスニングばかりを聴いていた日々。
急にベートーヴェンを聴きたくなった昨夜。
そのような時には必ず弦楽四重奏曲。
ハンガリー四重奏団の演奏で第5番を聴き、続いて第6番。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴きつつ久々振りに感涙の心境に陥ってしまいました。
心底「やはりベートーヴェンは良いなぁ」と痛感をした昨夜。
ベートーヴェンの音楽に委ねるひと時の安心感、安堵感。
大げさな言い方ですが生き返ったようでした。
まったく別のジャンルの音楽に接し、改めてベートーヴェンの素晴らしさ
自分にとって絶対に切り離すことができない音楽は何なのかを痛感しました。
生きていることの素晴らしさを感じさせてくれるベートーヴェンの音楽、クラッシック音楽。
このような経験は初めて。
今までは、当たり前、当然のように聴いていたクラシック音楽。
今回は感慨深く、感無量の心持ちでベートーヴェンのピアノ・ソナタ第3番に耳を傾け始めました。
かなり長い前置きになってしまいましたが、自分の心の軌跡として。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第3番
ソロモンソロモン名演集より


439 ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第3番 ソロモン ソロモン名演集より
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ協奏曲第1番 Op.15(ハーバート・メンゲス&フィルハーモニアO.1956年録音)
ピアノ・ソナタ第3番 Op2-3(1951年録音)


第1楽章:Allegro con brio ハ長調 4/4拍子
第2楽章:Adagio ホ長調 2/4拍子
第3楽章:Scherzo Trio::Allegro ハ長調 3/4拍子
第4楽章:Allegro assai ハ長調 6/8拍子


作品2の3つのソナタについては前回のコピーになりますが再度。

作品2の3つのソナタが作曲されたのは1793年から1795年にかけてだそうです。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲の最初に位置する作品2。
ベートーヴェン、23歳から25歳にかけてでしょうか。
作品2の3曲が書かれる前年、1792年にベートーヴェンはハイドンに弟子入りを
するために11月10日にウィーンに到着したそうです。

作品2にはすでにベートーヴェンの個性が深く刻印され
当時のピアノ・ソナタの一般様式を踏み越えた音楽になっているそうです。
作品2の3曲は4つの楽章からなり形式的には定型通りのピアノ・ソナタとのことですが
音楽としてはそれぞれが性格的であり3曲はまったく異なった趣を持っているとのこと。
これらの曲は音楽が類型的な枠の中で書かれることが普通だった時代に於いては 常識を破っている、と言えるそうです。

3つのソナタの特徴、性格
第1番は作品2の3つのソナタの中では一番悲劇的な情緒
第2番、3つのソナタのうちでは最も晴れやかな明るい美しさ
第3番、規模が大きく、ピアノ技巧も華麗な曲
とのことです。
       (以上、前回の引用)

さて、今回の作品2-3、第3番は
作品2の中では一番規模が大きく、ピアノ技巧も華麗で、当時のベートーヴェンの意気揚々とした気概が映し出されているそうです。
これまでに蓄積されたきたベートーヴェンのピアノ音楽の技巧もこの第3番のソナタの中に盛られ尽くされているような作品とのこと。
大木正興氏によると
「このソナタ第3番は1795年頃のベートーヴェンの最も張りきった姿であり、音楽には前進的な気分が脈々と流れ続けており、それを遮るような暗い運命の声はどこにも聴かれない」とのことです。
聴いていても確かに前途のベートーヴェンを待つ運命の暗い影はまったく感じられません。
ベートーヴェンがこの後、辿ることになる年月、事象を想うと、この曲の明るさ、軽快さが痛さを伴い感じられてしまうことも。

ベートーヴェンの創作精神は対照的な2つのものを生む出すように働いていたそうです。
ピアノ・ソナタに於いては対照的な2つのものとして「悲愴」と「熱情」に対し「ワルトシュタイン」。
作品2-1の第1番のソナタが後の「悲愴」や「熱情」に通じるのに対し
このソナタ第3番は「ワルトシュタイン」の方向を示唆している
ということがしばしば指摘されているそうです。


ソロモンで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第3番

第1楽章、ソナタ形式。
溌剌とした躍動を感じさせる第1主題で始まる第1楽章。
前進あるのみ、という趣。力強い躍動で進む第1主題。
華やかな経過部を経て現れる新しい旋律。
盛り上がりを経て現れるもう一つの優美な趣の旋律。
経過部の後に現れるこれら新しい2つの旋律は前者がト短調
後者がト長調の優美な旋律とのこと。
後者の旋律は規則通りに言えば第2主題だそうですが、実質的には2つの旋律はともに並んで主題的なはっきりとした性格を持っているとのことです。
(脱線をしてしまいますが、この2つの旋律について。
1785年、ベートーヴェン15歳。宮廷オルガ二ストに就任した年にボンでベートーヴェンが作曲したピアノ四重奏曲ハ長調WoO.36。
WoO.36-1、2、3 の3曲があるようですが、ハ長調はWoO.36-3 のようです。
このピアノ四重奏曲の第1楽章からの転用とのことです。
ピアノ・ソナタへ短調作品2-1にも、ピアノ四重奏曲の第2楽章の主題を使用しているとのことです。)
第1楽章の続きです。
華麗な小結尾を経て展開部に。
展開部も華やかな趣のアルペッジョが奏され
展開される第1主題には凛とした雰囲気とともにユーモラスさも感じてしまいます。
再現部を経て迎えるコーダ。
このコーダは非常に長いものになっているそうです。
華麗なコーダ。
始めにアルペッジョが奏され、カデンツァもまた華麗に。
次に現れる第1主題を経てドラマティックに力強く。
ソロモンのピアノは一歩一歩を力強く踏みしめるかのように奏され強い意志のようなものを感じます。
力強く閉じられる第1楽章。

第2楽章、自由なロンド形式。
ゆったりと優しく柔和な調べのロンド主題で始まる第2楽章。
美しい歌を感じさせる主題。
この主題の旋律が耳に入った途端に惹き込まれてしまいます。
続く第2主題は左手と右手の親密な対話のよう。
左手が細やかに奏される中、現れる高音域の美しい調べ。
瞑想的な美しさを感じて聴き入っていると、フォルティシモで現れるロンド主題の冒頭動機。
そして現れる第2主題。
抒情的、詩情豊かな雰囲気が漂い魅了されます。
コーダも静かな調べ奏され閉じられる第2楽章。
詩情豊かな美しさと静かな佇まいの印象的な楽章でこのソナタの中ではもっとも心に残ります。

第3楽章、スケルツォ。
軽やかな主題で始まる第3楽章。
軽やかに闊歩するようなソロモンのピアノ。
時折、響く左手の低音域がスパイスのよう。
中間楽節では左手が奏する響きに右手の高音域が伸びやかな動きを。
トリオでは目まぐるしい動きに。
アルペッジョの3連音で忙しげでありつつも生き生きとした趣。
静かなコーダで消えるように閉じられる第3楽章。

第4楽章、ロンド形式。
小刻みな動きで上昇するようにそしてスタッカートを交え軽やかなロンド主題で始まる第4楽章。
行く手に微塵の暗雲も漂うことのない明朗で軽快なロンド主題。
前途洋々な明るさに彩られている主題のように感じます。
現れる第2主題の美しい調べ。
第3主題も軽やかな明るさ。
曲の終わり近くになりトリルを伴い奏されるロンド主題の華やかさ。
華麗さの中にも力強さを湛え迎える曲の終わり。


第3番のソナタは2年程前に聴いた筈ですが、すっかり忘れていた旋律。
今回、再び聴き以前とはまったく違った曲として感じられるようです。
「第3番、こんなに良い曲だった?」と、これまたいつものパターンに。

第1楽章冒頭から惹き込まれてしまいます。
初期の曲とは感じられない充実したソナタ(と、断言できるような知識はないのですが)。
耳を傾けていると充実感を抱きます。
第4楽章の緊密に織り込まれた旋律からは気迫すら感じられるようです。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴きソロモンがお気に入りのピアニストの一人になりましたが、この第3番の演奏を聴き
今まで気付くことがなかったソロモンの新たな魅力にも触れることができたようにも感じています。
ソロモンのピアニズムがこれ程華麗に感じられるのも初めてのような気もしています。

前回、そして今回と作品2のソナタを聴き続け
今日に至るまで後回しになってしまった初期のピアノ・ソナタに
「もっと早く耳を傾けたかった」との想いを抱きました。

前書きにも綴りましたが、今週に入りクラシック音楽とは隔絶状態に鳴っていた時間に感謝しています。
ベートーヴェンが、クラシック音楽が、ソロモン他の演奏家が
すべてが新しい「音楽」として感じられる今日です。

               
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タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ ソロモン

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Comment

●Re: 改めて考えると、ベートーヴェンって・・・

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

burleskeさまも、聴く音楽はクラシック一筋になっているのですね。
ポール・モーリアO.・・・懐かしいですね。お気に入りのオーケストラでした。
マントヴァー二O.は今でも好きなんですよ。
イージー・リスニングの演奏に耳を傾けつつ「良い曲、良い演奏」と感動しても、クラシック音楽が与えてくれる「感動」とはまったく異質のものなんですね・・・などと、いつもは考えもしないことを考えたりしていました。

ベートーヴェンのソナタ第3番はburleskeさまにはお馴染みの曲なのですね。
第1,2番から急成長をしたような恰幅、風格のある曲ですよね。
第3番はシュナーベルと今回のソロモンでしかまだ聴いていないのですが。
やはりソロモンの演奏は魅力がありますよね。

ソロモンが録音をしたベートーヴェンのピアノ・ソナタについては、以前burleskeさまがご教示くださいましたようにTESTAMENTに収録されているものを参考にしています。
第1番はburleskeさまはお持ちなのですね。
私の方は第1番だけがありません。先に求めたBoxの収録曲とのダブりのないようにディスクを求めているうちに第1番だけが抜け落ちてしまい未購入のままで・・・。
burleskeさまと同感で第2番の録音がないのが残念ですね。
lumino | 2018.05.14(月) 19:59 | URL | コメント編集

●改めて考えると、ベートーヴェンって・・・

イージー・リスニング、昔は僕もポール・モーリアなんかも聴いていましたが、いつしかクラシック以外の音楽を聴くことがほとんどなくなってしまいました。
ごくたまに映画音楽を聴くくらいです。
おかげで、モーツァルトやベートーヴェンが当たり前の音楽のように感じてしまうのですが、改めて考えると、やはりベートーヴェンなどのクラシック音楽って素晴らしいものなんですね。

ピアノ・ソナタ第3番は、初期の作品の中では比較的馴染みがあるのですが、ソロモンで聴くと魅力が増して聴こえるように感じられます。
ソロモンの第3番って、こんなに良かったんですね。
ソロモンは第1番も録音しているので、そちらも聴いてみようと思います。
でも、第2番は録音していないのが残念ですね。
burleske | 2018.05.13(日) 21:17 | URL | コメント編集

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