2018.05/19(Sat)

Op.440 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第4番」 by アラウ(旧録音)

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
初期のピアノ・ソナタより作品2-2の第2番 そして 作品2-3の第3番と聴いてきました。
今回は第4番をアラウの1960年代の旧録音より。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第4番
アラウベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集(1960年代、旧録音)より

416ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第10番 アラウピアノ・ソナタ全集(1962~66)
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ:第3番 ハ長調 Op.2-3(録音:1964年4月)
ピアノ・ソナタ:第4番 変ホ長調 Op.7(録音:1964年4月)
ピアノ・ソナタ:第19番 ト短調 Op.49-1

クラウディオ・アラウ(P)


第1楽章:Allegro molto e brio 変ホ長調 6/8拍子
第2楽章:Largo con gran espressione ハ長調 3/4拍子
第3楽章:Allegro 変ホ長調 3/4拍子
第4楽章:Rondo:Poco allegretto e grazioso 変ホ長調 2/4拍子



作曲年代についてははっきり分かっていないそうでが、文献を総合し1796年から翌97年にかけて作曲されたという結論とのことです。
ベートーヴェンは26-7歳でしょうか。
このソナタ第4番では作品2よりも形が一層大きくなり、内容も力感を供えてきているそうです。
楽章構成は作品2と同じく4楽章構成とのこと。

献呈はケグレヴィッチ伯爵令嬢アンナ・ルイーズ・バルバラに。
ケグレヴィッチ伯爵はハンガリー出身だそうです。
令嬢バルバラは才能豊かなピアニストであり、当時ベートーヴェンの弟子だったそうです。
ベートーヴェンはこのソナタの他にピアノ協奏曲第1番、1802年に書かれた作品34の「6つの変奏曲」(ヘ長調)等の作品を彼女に捧げているとのこと。
このソナタは当時「Die Verliebte:愛する女」と呼ばれたそうですが、ベートーヴェンの恋愛とは無関係で、この形容は曲の優雅な気分が当時の人々にとっては相応しいものと思われた、と推測ができるようです。
バルバラは1801年2月にオデスカルキ侯爵と結婚し1813年に他界したそうです。

出版は1797年10月 ウィーンのアルタリア社から。
自筆譜は紛失したとのことです。


アラウで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番(旧録音より)

第1楽章:ソナタ形式
この楽章は若いベートーヴェンの大きな感情の振幅を表した雄大な音楽とのことです。
この第4番では劇的な生命感を吹き込もうとする意図が明瞭に現れてきているそうです。
しかし中期のようなはっきりとした効果を生むところまでは行っていないそうですが、曲の底に流れる熱いものを感じることができるとのこと。

第1主題の左手が刻む速いリズムが奏され始まる第1楽章。
この第1主題の動機、右手による調べには流麗な趣が。
弾力を感じさせる第2主題。
この主題がフォルティシモの力強い盛り上がりになり情熱的な高揚を感じるようです。
ピアニシモで静かに奏され始める新しい動機が印象的。
小結尾でのアルペッジョの美しさもまた印象的。
短い展開部では第1主題が展開され、そして第1主題第2主題を扱う再現部を経てコーダ に。
コーダでは第1主題と第2主題が現れ華々しい活力を感じさせつつ閉じられる第1楽章。

第2楽章:三部形式。
充実した響き、多様な色彩感、深い情緒を備えた楽章だそうです。
作品2の緩徐楽章よりも更に一層成熟したものになっているとのこと。

しっとりと静かな歩みの主題で始まる第2楽章。
物想うかのような内省的な雰囲気も織り込まれているよう。
中間部では左手のスタッカートに乗り現れる主題。
闊歩し前進するようなスタッカートの伴奏が印象的。
一貫して左手はスタッカートの伴奏、右手が刻む歯切れの良い旋律。
ピアニッシモで初めの主題が右手の高音で美しく奏される調べが印象的に耳に響きます。
第2部の重厚さ、重々しさ。
コーダでは中間部の主題と第1部の主題が現れ静かに消え入るように終わる第2楽章。

愛らしさを湛えた優しい調べの主題で始まる第3楽章。
第1部の愛らしく優しい主題。
柔和で平和な趣に溢れているような調べ。心に残る主題です。
トリオでは趣が変わり活発に。激しさも感じるようです。
トリオが終わり第1部の反復を経てカノン風の旋律で閉じられる第3楽章。

第4楽章:ロンド
優美なロンド主題で始まる第4楽章。
左手が力を感じさせる低音を切れ味良く奏し、短く音を刻む右手。
左手と右手の活発な応答。
現れる第2主題では活躍するトリルと低音域の動きの対照に耳を惹かれます。
第3の主題は漲る力を感じさせるよう。
コーダで現れるロンド主題。
盛り上がりを経て静かに平穏に迎える曲の終わり。


前回、作品2-3の第3番を聴き、音楽が一回り大きくなっているように感じました。
この第4番では、第3番よりも更に一層拡大された音楽として感じられます。
新しい作品の誕生とともに大きな成長を感じさせるベートーヴェンのピアノ・ソナタ。
そのような変化、変貌が初期のピアノ・ソナタに耳を傾ける時の「期待」「楽しみ」のようになってきました。
このソナタ第4番のダイナミズム、雄大さ。対する抒情性や愛らしさ。
耳を傾けつつ初期のピアノ・ソナタであることを忘れてしまうようです。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴く時、迷う折にはシュナーベルで聴き
他にはアラウとソロモンが鑑賞の主流となってきている昨今です。
今回は時間の制約にてアラウの旧録音のみを聴いてみました。
このソナタを聴き終え、新録音の方も聴きたいとの想い、他の演奏者でも聴きたくなってきました。

アラウのタッチ。
随所に煌めいているように感じられるピアニズムはいつものことでしょうか。
第1楽章では特に小結尾でのアルペッジョの美しさに耳を奪われておりました。
解説書の活字を通して想い描く曲よりも、アラウの演奏にはいつもの落ち着きがあり、過度な感情表現はなく、端正で穏やかな楽想になっているように感じられます。
アラウの演奏に魅力を感じる要素の一つを感じます。
第2楽章での主題を奏するアラウのピアノからは静かな楽想ながら一音一音のタッチから堅固な意思を感じさせるような強さ。
第3楽章では愛らしく優しい主題を愛でるかのように優しさの溢れたピアニズム。
第4楽章での勇壮さ、雄大な趣を感じさせるタッチ。
生き生きとしたアラウのタッチはこのソナタの溢れ出る楽想を感じさせるようです。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4作目、作品番号7 を与えられてた第4番のソナタ。
新たに生み出されるベートーヴェンのピアノ音楽への前進。
そして新たな光彩を放つ第4番。
楽想とともにアラウの演奏にも魅了されている今日です。

                
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ アラウ

20:36  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●Re: お早うございます

rudolfさま、
いつもコメントをありがとうございます。

毎回「ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」ですので執拗過ぎるかな、と思うときもありますが楽しみにしてくださって本当にありがとうございます。
ただ、登場するピアニストが一辺倒になってしまって・・・。
「シリーズ」を始めた頃にはいろいろな演奏者で聴いていたのですが、いつしかお気に入りのピア二ストばかりになってきました。
ruodlfさまのお陰で知ったソロモン、そして兼ねてからのお気に入りのアラウ。
このお二人が主流になってきた昨今です。

未聴のピアニストの演奏には関心を抱いてしまいます。
rudolfさまのブログで未聴のピアニストの記事を拝読させていただいては喜々としてしまいます。

アラウの第3,4番は同じディスクに収録されていて、本当に聴き易いですよね。
まだ新録音の方を聴いていなくて・・・。
アラウのBoxの話に逸れてしまいますが、先日rudolfさまがアラウのシューベルトのピアノ・ソナタも良い、とのコメントをお寄せくださった際に、早速Boxからシューベルトの初めて聴くソナタ第13番、18番を聴いてみました。
ベートーヴェンの「シリーズ」を中断してシューベルトを・・・と思ったほどでした。

> どうして 私がピアノを聴き続けているのかなと ふと考えました、ひょっとすると 音程の悪い演奏を聴かなくてもいいからかな…と ふと…
> 気が楽なのかもしれません

やはりrudolfさまはオーケストラの一員として楽器を演奏なさり、音程に関してはプロですものね。
貴ブログでも、しばしば音程についてのご感想をお綴りになられていらっしゃいますね。
私は音程に疎く、分からないのです。
ですから、どのような演奏を聴いても素晴らしく聴こえてしまうようで・・・。
今日の貴ブログで、指揮者でも音程の分からない人がいる、との主旨の一文に自分を省みてホッとしてみたり、指揮者にもそのような人がいることに驚いてみたり、でした。
私の場合、音程に対する自分の無知は音楽鑑賞にとっては或る種の「気楽さ」かも、ですね。
コメントに記されていたrudolfさまがピアノを聴き続けている理由としてお考えになられていることを拝読し、一人頷いています。
ピアノ音楽は演奏者の技術に関わらず万全に調律されたピアノなら音程は絶対ですものね。
気になるのはミス・タッチくらいでしょうか。
気分良く、愉しく音楽に耳を傾けたい!ですね(^^♪
lumino | 2018.05.21(月) 20:31 | URL | コメント編集

●Re: ピアノ・ソナタ第4番は・・・

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

第4番のソナタは私も馴染みがなく、と言うか今回聴いたのが初めてかも、です。
「ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」がなければ私自身、この第4番に耳を傾けることがなかったように思います。
聴いてみると・・・どのピアノ・ソナタも魅力があり惹かれるばかりですね。
burleskeさまもアラウの旧録音でお聴きくださったのですね。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタでは、何となく初期の作品が後回しになってしまいました。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲制覇。
「シリーズ」を開始した時には全曲は自分には無理、出来ないな、どと思っていました。
「シリーズ」を続けているうちに気が付いたらベートーヴェンのピアノ・ソナタの虜になってしまっていました。
全32曲・・・いつの間にか初期では3曲、後期では1曲が残っているようです。
全曲制覇を実現をしたいものです。
お寄せいただくコメント、励みになっていますm(__)m
lumino | 2018.05.21(月) 19:50 | URL | コメント編集

●お早うございます

luminoさま 
お早うございます

今週もよろしくお願いします
ベトベンの連続投稿 楽しみにしています
どのピアニストを取り上げられるかと…

アラウの 3番、4番 同じCDに収録されていて いいですよね
どちらも 甲乙つけがたい演奏だと…
どうして 私がピアノを聴き続けているのかなと ふと考えました、ひょっとすると 音程の悪い演奏を聴かなくてもいいからかな…と ふと…
気が楽なのかもしれません、爆

(ミ`w´)彡━━┛~~ ' ぷっくぷく~~~
rudolf2006 | 2018.05.21(月) 09:13 | URL | コメント編集

●ピアノ・ソナタ第4番は・・・

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番はあまり馴染みのない作品でしたが、改めて聴いてみると、魅力的な曲ですね。
僕もアラウで聴いてみましたが、他の演奏でも聴いてみたいと思います。

ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタなどは、何曲かまとめて聴く場合が多いので、一曲づつの印象が薄くなってしまいがちなのですが、こうして一曲だけ取り出して聴くと、作品の魅力に改めて気付かされますね。
luminoさまの記事につられて、ベートーヴェンのピアノ・ソナタを一曲づつ聴くのが楽しみになっています。
全曲制覇期待しています。
burleske | 2018.05.20(日) 21:16 | URL | コメント編集

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