2018.05/26(Sat)

Op.441 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第6番」 by ギレリス

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
初期のピアノ・ソナタ作品10の3つのソナタのうち
作品10-1、第5番は1昨年の10月にシュナーベルで
作品10-3、第7番は2カ月ほど前にソロモンの演奏で当拙ブログに登場をしていました。
今回は作品10-2、第6番をギレリスのピアノで聴いてみました。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第6番
ギレリスベートーヴェン ピアノ・ソナタ選集より

483:ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番「テンペスト」ギレリス~ベートーヴェン・ピアノソナタ集より
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調 Op.10-1
ピアノ・ソナタ第6番 ヘ長調O p.10-2
ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3

エミール・ギレリス(P)
(録音:第6番 1973年)


第1楽章:Allegro ヘ長調 2/4拍子 
第2楽章:Allegretto へ短調 3/4拍子
第3楽章:Presto ヘ長調 2/4拍子


作品10の3つのソナタについて以前の記事のコピーのようになりますが
いつものように自分の復習を兼ねて。

作品10の3つのソナタの作曲時期についての明確な年代は不明だそうです。
ノッテポームはソナタの主題のスケッチから判断をして1796年から98年夏までの間に
3曲が完成されたと推定をしているとのことです。
近年の研究では異説もあるとのこと。

作品10-1、第5番と作品10-2、第6番はベートーヴェンとしては初めての3楽章構成であり
作品10-3、第7番は4楽章構成に戻り大きな音楽になっているそうです。
各曲、内容的には
第5番、6番はきびきびとした楽想
第7番は劇的でロマンティックな曲とのこと。
ベートーヴェンがいろいろなソナタを古典的簡潔さと内容に充実を考え合わせながら既成の様式を抜け出して行こうとする姿勢が現れているそうです。

ソナタ第5番が第3楽章に相当する部分を省略した3楽章構成になっているのに対し
このソナタ第6番は第2楽章に相当する緩徐楽章が省略され3楽章構成になっているとのことです。
この曲のように独立した緩徐楽章のないソナタの形は、工夫をされ以降のピアノ・ソナタやチェロ・ソナタで素晴らしい傑作を生むことになったそうです。

作品10の3つのソナタはブラウン伯爵夫人アンナ・マルガレーテに献呈されているそうです。
夫人は夫のヨハン・ゲオルク・ブラウン伯爵ともども、若いベートーヴェンの熱心な支持者だったとのこと。
尚、ベートーヴェンは伯爵に弦楽三重奏曲(作品9の3曲)を献呈しているそうです。
伯爵夫人は1803年5月13日にウィーンで他界。
ベートーヴェンはその死を悼み歌曲集「ゲレルトによる6つの歌」を作曲し 伯爵に贈ったとのことです。

出版は1798年9月、ウィーンのエーダーにより行われたそうです。
自筆譜は紛失したとのこと。


ギレリスで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第6番

第1楽章。ソナタ形式。
跳躍をするような明朗で軽快な第1主題で始まる第1楽章。
第2主題は第1主題の延長のような趣。
続いて現れる新しい主題。
この主題の調べの美しさ。惹かれます。
この主題の変奏を経て現れる第1主題。
小結尾は穏やかに。
展開部での流麗な調べ。生き生き、溌剌とした雰囲気。
再現部を経て現れる第2主題。
この楽章はコーダを置いていないとのこと。
リズミカルで軽やかに、明るく、流麗な旋律が流れつつ
力を加えて閉じられる第1楽章。
楽章に流れる明るく軽妙な旋律の数々を耳に、「この曲はベートーヴェンの?」と感じてしまいました。

第2楽章は通常の緩徐楽章を省き、事実上のスケルツォ楽章になっているとのこと。
ユニゾンで奏される第1部の主題で始まる第2楽章。
低音域の響きに内省的な雰囲気が漂っているかのようです。
中間楽節で現れるスフォルツァンドは楽想のスパイスのよう。
このスフォルツァンドをギレリスは殊更に強いアクセント付けのタッチではなく(と感じられるます)、バランスの良い響き。
カノンで進む右手と左手が奏する主題に内省的なものを感じるようです。
第1部の終わりは和音を弾くようなタッチで終えてトリオに。
トリオでの柔和な調べの主題。
この主題のリピートでのスフォルツァンドは第1部とは違い強いアクセント付けをするギレリス。
緊張が走るような趣に。
第3部での第1部の再現で現れる多彩な変容。
力強いタッチで閉じられる第2楽章。

忙しげな趣の主題で始まる第3楽章。
活発で動的な趣の主題。
展開される主題は華麗な雰囲気に。
そして現れる第2主題。
この主題は第1主題を材料とし独立性はなく、また小結尾の役割を兼ねているとのこと。
跳躍感満点。
動的でエネルギッシュな旋律。
展開部、再現部も終始、休むことなく動き続ける音符たち。
この楽章も前楽章同様にコーダを置くことなく再現部がコーダを兼ねているとのこと。
華麗な趣のうちにクレッシェンドし力強く迎える曲の終わり。


第6番は初めて聴いたような・・・これまた記憶が定かではありません。
第1楽章には初めて耳を傾けたのにも関わらず、懐かしさのようなものを感じてしまいます。
始めは何気なく耳を傾けていた第2楽章。
改めて聴き込み魅力を感じる楽章になっていました。

この曲に耳を傾けつつ第2楽章の緩徐楽章はスケルツォに。
コーダを置かない第2、第3楽章。
曲の構成に戸惑いを感じつつ聴いていましたが第3楽章に至り、気が付けば曲に惹き込まれていました。

ギレリスのピアニズムにはこの曲でも魅了されるばかり。
第1楽章では明朗な軽快さの旋律を、強弱の微妙な変化を克明なタッチで奏される表情の豊かさ。
軽やかで愛らしさを感じさせるピアニズム。
第2楽章で関心を抱いたスフォルツァンドの扱い。
同じ楽章内でもスフォルツァンドのアクセントの強さの違いが楽想を豊かにしているかのよう。
また強いタッチの個所でも、単に力強いタッチで表現をするのではなく、キーを軽く弾くような切れの良いタッチ。
第3楽章の動的でエネルギッシュさを奏するタッチにはため息が出るほど。
動的、軽やか、淀みなく進むギレリスのピアニズムに魅了されるのみです。

ギレリスへの形容「鋼鉄のピアニスト」、と嘗て耳にしたイメージはこの曲でもまったく感じることはありませんでした。
一曲、一曲、ベートーヴェンのソナタを聴いているうちに
ギレリスのタッチの繊細な動き。キーを操る自在な運指。
特に第3楽章では息を呑むような想いに。
改めてギレリスのピアニズムに惹かれるばかりです。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴き続ける昨今。
私にとってのお気に入りの三大(?)ピアニストはアラウ、ソロモンそしてギレリスになったようです。

ベートーヴェン独特(具体的にどのような?と自問をしても答えられないのですが)のピアノ・ソナタの魅力は、既にこの第6番でも豊かに花開いているように感じられます。

                 
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タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ ギレリス

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Comment

●Re: ギレリス、良いですね

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

最近は同じことばかりを感じるようになって・・・ベートーヴェンのピアノ・ソナタの一曲一曲にじっくりと耳を傾けてみると、どの作品からも魅力を感じますね。
この第6番のソナタではburleskeさまも第3楽章が印象に残ったそうですね。

> ギレリスは確かに力強いタッチも魅力的ですが、叙情的な雰囲気も良いですよね。(晩年には表現にも変化、鋼鉄のタッチから)

「鋼鉄のタッチ」と言われていたギレリスは晩年になり表現に変化が表れてきたそうですね。
晩年の録音になるベートーヴェンのピアノ・ソナタの「優しさ」「滋味」を感じる演奏がとても気に入りました。
ソナタの一曲一曲をギレリスで聴くうちに、いつしかギレリスがお気に入りのピア二ストの一人になっていました。

グリーグの抒情小曲集をギレリスの演奏でお持ちなのですね。
ギレリスのグリーグ・・・新たな発見があるかも、ですね。
ギレリスが演奏をするグリーグは持っていませんので、手持ちのベートーヴェンのピアノ協奏曲で若い頃のギレリス、晩年のギレリスを聴き比べてみたくなりました。
lumino | 2018.05.28(月) 20:18 | URL | コメント編集

●ギレリス、良いですね

ピアノ・ソナタ第6番もあまり印象に残っていない作品でしたが、ギレリスで聴いてみると魅力的で良いですね。
僕も第3楽章が、ギレリスならではといった感じで印象に残りました。
ギレリスは確かに力強いタッチも魅力的ですが、叙情的な雰囲気も良いですよね。
ギレリスでは、グリーグの叙情小曲集の抜粋盤を持っているのですが、こちらにも改めてじっくりと耳を傾けてみたいと思います。
burleske | 2018.05.27(日) 21:29 | URL | コメント編集

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