FC2ブログ

2018.06/02(Sat)

Op.442 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第11番」 by ニコラーエワ

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」を続けている間にすでに6月になってしまいました。
今年も半分が過ぎようとしている時間の経過の速さ。
私の脳内カレンダーでは、現在はまだ2月か3月頃。
現実の時間は2-3倍の速さで進み驚き、慌てるばかりです。

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」
今回は第11番、作品22を。
タチアナ・ニコラーエワのピアノです。
初期のピアノ・ソナタでは最後の曲であり、当拙ブログで初期のソナタの中では唯一未登場かと思います。

ニコラーエワのBox を知ったのは、いつもお邪魔をさせていただいているブログです。
ベートーヴェンピアノ・ソナタ全集だけの再発売を待つつもりでいましたが
やはりニコラーエワの演奏を聴きたいとの想いは募るばかりの月日。
手元に届き、初めて耳にするニコラーエワのピアノ。
最初に聴いたのはお目当てのベートーヴェンピアノ・ソナタではなく
収録曲の中で最も耳に馴染みのあるバッハの「ゴルドベルク」。
今まで聴いてきた「ゴルドベルク」からは受けることがなかった感銘。
一音、一音がまるで噴水の滴が陽光を受け煌めいているような美しい音色。
惹き込まれるピアニズム。美しさを感じる「ゴルドベルク」。
求めて本当に良かったと思っています。
さて、お目当てだったベートーヴェン
今回の第11番から聴いてみました。
ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタの締め括りの第11番はニコラーエワで。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第11番
ニコラーエワ~The Art Of Tatiana Nikolayevaより

442ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第11番 ニコラーエワ The Art Of Tatiana Nikolayeva
(収録曲)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調 Op.22
ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調月光」 Op.27-2

タチアーナ・ニコラーエワ(P)
(録音:1984年1月 モスクワ音楽院大ホール ライヴ)


第1楽章:Allegro con brio 変ロ長調 4/4拍子
第2楽章:Adagio con molta espressione 変ホ長調 9/8拍子 
第3楽章:Minuetto 変ロ長調 3/47拍子
第4楽章:Rondo: Allegretto 変ロ長調 2/4拍子


作曲されたのは1799年から翌1800年に完成したそうです。
1800年の夏、ウンターデ―プリングで纏められたと推測されるとのこと。
このソナタは作品18の弦楽四重奏曲などと並行して書かれたそうです。
ベートーヴェン、29歳から30歳頃でしょうか。
このソナタ第11番は出版に際しベートーヴェン自身により「大ソナタ:Grande Sonate」と名付けられていたそうです。

ベートーヴェンはライプツィヒの出版業者ホフマイスター宛ての1800年12月25日付けの書簡で新作を列記し、その一番最後にこのソナタ第11番が記されていたそうです。
曲の出来栄えについてはベートーヴェン自身は満足をしていたそうで、同じくホフマイスター宛ての翌1801年1月15日付けの書簡で新作に各々値段を付けた折に「このソナタは素晴らしいものです」と書き加えていたとのことです。

出版は1802年3月、ホフマイスターにより行われたそうです。
献呈はヨハン・ゲオルグ・フォン・ブラウン伯爵に。
自筆譜は紛失したとのこと。


ニコラーエワで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第11番

躍動感のある第1主題の冒頭で始まる第1楽章。
第1主題は冒頭に明快な動機をもち、後半楽節は対照的な快いながれと冒頭動機によってできているとのこと。
克明に刻まれるリズムは鍵盤のダンスのような。
躍動的であり溌剌とした主題。
第2主題では柔和な雰囲気も。
コーダを置くことなく楽章は終わっているとのこと。
終始、生き生きとした躍動感に溢れたエネルギッシュな楽章でしょうか。

第2楽章について音楽評論家のパウル・ベッカーは「ロマン派のノクターン」を連想しているとのことです。
左手で奏される和音に乗り右手の歌うような旋律で始まる第2楽章。
穏やかな抒情性を湛えた旋律。
ロマンティックな趣でベートーヴェンの作品を聴いていることを忘れてしまいそう。
第2主題も同様の趣。
装飾的で華麗な雰囲気が漂う主題。 
寂寥感を帯びたような夢想的なピアノの歌のような楽章でしょうか。
夢見つつ、速度を緩め静かに閉じられる第2楽章。

軽やかなメヌエット主題で始まる第3楽章。
中間楽節では低音域が力強く現れ、再びメヌエット主題に。
親しみやすい主題。 
トリオになり力強く活気を帯びて。
左手は音を刻みつつ流れるように。
再びメヌエットに戻り奏され閉じられる第3楽章。

優しげで軽やかなロンド主題の調べで始まる第4楽章。
第2主題の幻想曲風な趣。
左手が奏するスタッカートが合図(?)のようになり
新しい主題の出現。
経過部以降は楽章の頂点が築かれるようなドラマティックな趣。
軽やかな内にも力が込められ迎える曲の終わり。


この第11番がベートーヴェンの初期のソナタの締め括りになる曲だそうです。
初期のソナタはいずれも翳りがなく、若々しい感情、生気に溢れているようです。
このソナタからもまた若いベートーヴェンの明るく、生き生きとしたエネルギッシュさを感じるようです。
曲が書き始められたのはベートーヴェンが郷里のボンからウィーンに移り住むようになってから約7年後でしょうか。
初期のピアノ・ソナタの一曲一曲に将来への希望に満ち溢れる青年ベートーヴェンの心を垣間見るようです。

初めて耳にするニコラーエワの演奏によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ。
第1楽章の生き生きとしたエネルギッシュな躍動感を奏するニコラーエワの右手と左手の生気溢れる対話。
明晰なピア二ズムに息を呑む想いがします。
他の楽章とは異質のような第2楽章の内省的、微妙な感情を織りなすニコラーエワのタッチは自身への語りかけのようにも。
第3楽章のメヌエット主題の優しい調べを滋味溢れるタッチで歌うニコラ―エワ。
第4楽章では特にロンド主題を奏するニコラーエワに第1楽章と同じように息呑んでしまいます。
このソナタに耳を傾けつつ、楽想とニコラーエワのピアニズムの虜に。
途中で曲を止めることのできない惹きつけるものを感じていました。
演奏から伝わる「熱気」はライヴ故のものでしょうか。
楽想を超えるような熱気のある第11番のように感じられます。

前置きと重複しますが、このBoxより最初に聴いた「ゴルドベルク」。
ニコラーエワが紡ぎ出す美しいピアノの音色に感嘆をしたほどです。
ベートーヴェンでもソナタ全集はライヴとのことですが、セッションと変わらない音色の美しさに感じ入ってしまいます

こちらのBoxに収録されているベートーヴェンのソナタ全曲は
9枚のディスクに後期作品以外は番号順に収録がされており
曲が探し易く、また聴き易く感じます。
ベートーヴェンの他にバッハの「平均律」の第1巻、第2巻、そして「フランス組曲」「イギリス組曲」「ゴルドベルク」等々、曲名を見ては喜々としています。
最初に聴いた「ゴルドベルク」は末永く印象に残る演奏になりそうです。
私にとっては苦手で、ほとんど聴くことのないショスターコヴィッチ。
5枚のディスクに収録されている「24の前奏曲とフーガ」はニコラーエワが初演をしたとのことですが・・・耳を傾ける日は来ないような予感も・・・。

ニコラーエワの演奏をするベートーヴェン、バッハをじっくり、ゆっくりと。
ニコラーエワに出合うことができ感謝です。


蛇足。いつものオバサンの井戸端会議。
ニコラーエワについて自分のメモとして。ショップ・サイトの記述を参照しつつ。

タチアーナ・ニコラーエワ(Tatyana Nikolayeva 1924年-1993年)
1924年5月4日、ロシア東部、ブリャンスクにて誕生。
母親からの手ほどきを受け、13歳でモスクワ音楽院ピアノ科に入学。
アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルに師事。
卒業後には同音楽院教授エフゲニー・ゴルブレフから作曲を学ぶ。
1950年 ライプツィヒでの第1回バッハ国際コンクールで優勝。
      世界各国で本格的な演奏活動を開始。
1955年 ソビィエト連邦国家賞受賞。
1959年からモスクワ音楽院で教鞭を執る
1965年 モスクワ音楽院教授に就任。後にロシア共和国功労芸術家の称号を授与される。
1993年 サン・フランシスコでのリサイタル中に脳動脈瘤破裂により収容先の病院にて死去。
     69歳。
                                  (以上です)

                
関連記事

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン ピアノ・ソナタ ニコラーエワ バッハ ゴルドベルク

21:25  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●Re: お早うございます

rudolfさま、こんばんは。
コメントをいつもありがとうございます。

第11番のアラウの新録音の演奏についてのrudolfさまの今日の記事を拝読してまいりました。
私もアラウ(他にギレリスでも)で聴きたいと思いつつ、まだニコラーエワの演奏しか聴いていないのです。

ベートーヴェンもバッハもニコラーエワの演奏がお気に入りになりました。
rudolfさまのブログがニコラーエワのBoxとの出合いになり、感謝です。

ショスターコヴィッチの「24の前奏曲とフーガ」。
ショスターコヴィッチの名前を目にしただけで、その作品にじっくり耳を傾けたこともないのに尻込みをしてしまう作曲家です。
先日、お寄せいただいたコメントでバッハの「平均律」の20世紀版、との旨を拝読し関心が湧いてきました。

>ニコラーエワのショスタコ、非常に聴きやすい曲です 

聴き易い曲、とのことで安心をしました。
御二方がお寄せ下さいましたコメントを拝読して聴いてみたい気持ちになってきました。
聴いてみますね。ありがとうございました(^^♪
lumino | 2018.06.07(木) 20:03 | URL | コメント編集

●お早うございます

luminoさま お早うございます

なかなか コメントできませんでした
11番がなかなか聴けませんでした
ニコラーエワの演奏 きっと数日間の連続演奏会で すべてのソナタを演奏したようですね
色々とありますが、その集中力は凄いものですね
今朝は アラウの新盤を聴いてみました、なかなか良かったですよ 

ニコラーエワのショスタコ、非常に聴きやすい曲です 
是非 一度聴いて見てくださいね… 私は結構 好きですよ
ニコラーエワの演奏しか聴いたことがありませんが…
(ミ`w´)彡━━┛~~ ' ぷっくぷく~~~
rudolf2006 | 2018.06.07(木) 09:48 | URL | コメント編集

●Re: 11番はギレリスで

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

ギレリスでお聴きになられたのですね。
まだ、ニコラーエワのピアノしか聴いていなくて・・・やはり、アラウ、ギレリスそしてソロモン(は11番を録音していませんよね)の演奏は聴きたいのです。
burleskeさまも第2楽章が印象的にお感じになられたようですね。

ニコラーエワのピアノではショスターコヴィッチの「24の前奏曲とフーガ」をお持ちなのですね。
こちらのBoxに収録されている「24の前奏曲とフーガ」も新旧2種のようです。
バッハの「平均律」の20世紀版風の作品だそうですね。
ショスターコヴィッチは苦手(食わず嫌い?)なのですが・・・バッハの「平均律」の20世紀版のような感じの作品、とコメントにお綴りくださり関心が湧いてきました。
苦手な作曲家との先入観を捨て聴いてみますね。
lumino | 2018.06.04(月) 20:02 | URL | コメント編集

●11番はギレリスで

11番のソナタは最近お気に入りのギレリスで聴いてみました。
第2楽章が印象的で、聴き応えがある作品ですね。

ニコラーエワのバッハとベートーヴェンは聴いたことがありませんが、ショスタコーヴィチの『24の前奏曲とフーガ』は新旧2種類の録音で持っていてます。
『24の前奏曲とフーガ』はバッハの平均律の20世紀版といった感じの作品なので、ニコラーエワのバッハが御気に召したのでしたら、聴いてみたら案外面白いかもしれませんよ。
burleske | 2018.06.03(日) 21:10 | URL | コメント編集

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Tracback

この記事のトラックバックURL

→http://adagio6.blog93.fc2.com/tb.php/819-943a5eac
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |