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2018.10/06(Sat)

Op.460 ベートーヴェン:「創作主題による6つの変奏曲」作品34 by アラウ

ベートーヴェン変奏曲を聴くシリーズ」
今回もピアノ用変奏曲で「創作主題による6つの変奏曲」作品34 。
前回の作品76「創作主題(トルコ行進曲)による6つの変奏曲」として親しまれている作品と同時に出版された曲だそうです。
ベートーヴェンのピアノ用変奏曲は20曲を超えるとのことを知り驚きにも近い感情です。
このブログに登場するのは変奏曲のうちの一握りに過ぎないことが残念にも思えてきました。

さて、今回はアラウで聴いてみました。
今まで聴いてきた変奏曲の中では一番のお気に入りになった曲。

ベートーヴェン創作主題による6つの変奏曲
アラウ~フィリップス録音全集より


(HMV)445シューベルト ピアノソナタ第19番 アラウ フィリップス録音全集
(収録曲)
ベートーヴェン

エロイカ変奏曲Op.35
創作主題による32の変奏曲
創作主題による6つの変奏曲Op.34
ロンド ト長調Op.51
(録音:1968年 ベルリン)


この「創作主題による6つの変奏曲」作品34 は
1802年、「エロイカ変奏曲」と同じ時期に作曲されたそうです。
また「エロイカ変奏曲」作品35 とともに、初めて作品番号を付け出版されたとのことです。

当時の変奏曲の多くは聴衆にとり馴染みのある既存の旋律を基にしていた作品が多かったそうです。
が、こちらの曲も前回同様にベートーヴェン自身のオリジナルの主題。
出版に際しベートーヴェンは「まったく新しい手法」を用いた作品である、と伝えたそうです。
この曲は初期から中期への移行期に書かれ、この頃に確立されたベートーヴェン的音楽語法を集約させ、音楽的表現のパターンを明らかにしているそうです。
ベートーヴェンの変奏技法を知る上で、また作品全般の音楽像の意味、在り方を考える上で貴重な示唆を与えてくれる作品とのこと。

ベートーヴェンのピアノ用変奏曲は WoO を含み20曲を数えるそうです。
変奏曲の皮切りになったのは1782年に書かれた「ドレスラーの行進曲による9つの変奏曲」とのこと。
ベートーヴェンの数多くのピアノ変奏曲のほとんどは初期に創作されているそうです。
20曲を数える変奏曲のうち17曲までが1803年以前に書かれているとのことです。
1780年が1曲。1790年が11曲。1800年から1803年にかけてが5曲。
この数字から次のようなことが推測されるそうです。
ベートーヴェンのボン時代からウィーン時代初期にかけ身に付けていった、ベートーヴェンの創作の基礎に置かれているものはバロックから前期古典派及び古典派の音楽。
ベートーヴェン的音楽語法は、これらの様式を基底に置き、それを吸収しながら自己の語法へと変容させることにより確立されていったとのこと。
1790年がその変容期で、この時期に変奏曲を集中的に作曲していることから
ベートーヴェンの音楽語法は特に変奏曲の分野において確立されていったといえるそうです。

献呈はオデスカルキ侯爵夫人バルバラ に。
出版は1803年4月にライプツィヒのブライトコプフ&ヘルテル社から初版の刊行。
自筆譜はボン、ベートーヴェン・ハウスに保存。


アラウで聴くベートーヴェンの「創作主題による6つの変奏曲
いつものメモを兼ねつつ。

主題:Adagio ヘ長調 2/4拍子(22小節)
アダージョ「カンタービレ」との指定。
この指定は単なる発想用語に留まらず、ベートーヴェン晩年の様式的特徴の一つで「歌に満たされて」「よく歌いながら奏すること」という意味を含んでいるとのこと。

ゆったりと美しい旋律の主題。
アラウは指定そのものの、優しく柔和なピアノの歌を聴かせてくれる。
心和む正にピアノの歌。

各変奏について
第1変奏から第6変奏まで3度転調を重ね最後に主調へ再帰しているそうです。
変奏曲では一般に調の移動がされず、長調曲の場合、途中で短調に一時的に移調をし色を添えるのが普通とのことです。
この作品のように調的連関形式による変奏曲は異色とのこと。
この曲の6つの変奏曲の特徴として調性が3度づつ下行しているそうです。
各変奏の調性の変化とともに、拍子や速度も変化し、異なる性格変奏であり
和声が安定した装飾変奏でもあるとのことです。

第1変奏:Adagio ニ長調
右手が優雅な旋律を。
しばしば使用されるトリルが美麗な趣を。
2部形式とのことで中間ではスキップを踏むような活動的な雰囲気。
再び優雅な旋律に。
冒頭の旋律よりも終始トリルで奏され華やか。
華麗だが味わいのある美麗さを紡ぎ出すアラウのピアズムに釘付けに。

第2変奏:Allegro ma non troppo 変ロ長調
前変奏とは趣が一転。
左手の低く力強い闊歩するような打鍵で始まり
右手が加わり活発な雰囲気に。
流麗さと活発さが交互に現れているよう。
主題とは完全に切り離されたような「音楽」のよう。

第3変奏:Allegretto ト長調
前変奏で姿を消していた主題が面影を現すこの第3変奏。
右手と左手の素直な対話のように。
簡潔な旋律。楷書のようにクッキリとした輪郭を感じさせる変奏。

第4変奏:Tempo di Menuetto 変ホ長調
この第4変奏と第5変奏は性格的対照による変奏になっているとのこと。

左手の低音の短い伴奏に始まり即、奏され始める右手。
左手の重厚に響く伴奏に乗り戯れるかのような趣を見せる右手。
愛らしい佇まいの変奏。
初期(?に限らず)のピアノ・ソナタのメヌエット楽章を彷彿とさせる風情に満ちているように感じられる。

第5変奏(8.00):Marcia: Allegretto ハ短調ーハ長調
ハ短調の「葬送行進曲」とのこと。

重々しく奏される左手の低音で始まる第5変奏。
すぐにテンポが速くなり、加わる右手。
左手からは「葬送行進曲」が奏され次第に活発な雰囲気に。
一貫して左手の葬送行進曲風の伴奏が印象的。
楽想は葬送行進曲だが受ける印象は華やかなもの。

第6変奏:Allegretto - Coda: Adagio molto(14.30)ヘ長調
第1変奏とこの第6変奏のコーダのアダージョは同一の変奏技法によるとのこと。
主題旋律の各構成音を保持しながら、構成音の各々を巡り動くように音楽の流れが進展。
この手法も晩年のソナタの変奏楽章でその真価を発揮。
この変奏曲で晩年の様式を特徴づける「浮遊する音楽」を響かせているとのこと。

軽やかに弾む雰囲気ではじまり
右手のトリルのみが奏された後に面影を現す主題。
右手のトリルを伴奏に左手が奏するゆったりと落ち着いた「歌」の調べ。
静かに旋律を奏する右手から左手に移り静かに和音を刻み閉じられる曲。



ベートーヴェンのピアノ用の変奏曲を聴いてきた日々。
この変奏曲は今まで聴いてきた変奏曲とはかなり趣を異にしているように感じられます。
今まで軽やかで耳に快い変奏曲に出合ってきたが
この変奏曲にはピアノ・ソナタの風情を感じさせられるようです。
また変奏曲の中でこの変奏曲の主題の美しい旋律に出合ったのは初めて。

タイトルと作品番号を見て惹かれる要素をまったく感じなかったこの変奏曲。
もしかしたら、単に聞き流していた曲かも・・・と言うより、内心ではスルーをするつもりも。
ところが、さすがベートーヴェン。
云十年前にベートーヴェンの三重協奏曲の虜になってしまった日以来
ベートーヴェンの音楽は決して期待を裏切らない、とまで想い込み今日に至り。
この変奏曲を聴き、その想いが今も健在であることの確認に。

今までベートーヴェンの変奏曲を聴いては「魅力」との言葉を使っていました。
この曲は魅力だけに留まらないものを感じます。
ベートーヴェンの変奏曲で一番のお気に入りは?と尋ねられたら即答。
この「創作主題による6つの変奏曲」作品34。

アラウの演奏で聴き・・・言うことなし、です。
但し、この曲の録音も少ないのでしょうか。
手元のディスクを探したのですが今の処、残念ながらアラウの演奏しか見当たらないようです。

                 
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

タグ : ベートーヴェン 変奏曲 アラウ 創作主題による6つの変奏曲

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Comment

●Re: 作品34、素敵な作品ですね

burleskeさま
いつもコメントをありがとうございます。

作品34の「創作主題による6つの変奏曲」を、やはりアラウでお聴きくださったのですね。
このような素敵な作品とは露とも想わずに耳を傾け・・・すっかり虜になってしまいました。
burleskeさまもお気に入りになられたそうで、良かったです。

手持ちのディスクでリヒテル、ケンプの録音を探してみたのですが見当たらずで、残念です。
探している時には見つからず、ふとした機会に見つかることもあるので・・・期待をしつつ、です。
ケンプは聴いてみたいです。
ギレリスはやはり録音をしていないみたいなのですね。
ベートーヴェンの変奏曲全集(オムニバスとしてでも)などが発売されたら良いのに、と思うようになってきました。
lumino | 2018.10.08(月) 19:55 | URL | コメント編集

●作品34、素敵な作品ですね

僕もアラウで「創作主題による6つの変奏曲」、聴いてみました。
確かに、比較的短い作品ながらもベートーヴェンのソナタを聴いたときのような充実感があって、良いですね。
僕も気に入りました。

他に手持ちのディスクにリヒテルとケンプがあったので聴いてみました。
どちらも素敵な演奏でしたが、ケンプの方が作品のイメージに合っているように感じられて、アラウと共に僕のお気に入りになりました。
ギレリスが録音していないみたいなのが残念ですね。
burleske | 2018.10.07(日) 19:33 | URL | コメント編集

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