2018.02/10(Sat)

Op.426:ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第21番≪ワルトシュタイン≫」 by ソロモン

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
ベートーヴェンのソナタの初期、中期、後期を一貫して聴くことなく
行きつ戻りつをしています。
今日はベートーヴェンのピアノ・ソナタ中期に属する第21番「ワルトシュタイン」を聴いてみました。
ピアノは前回同様、ソロモンです。
最近、求めるディスクはソロモンばかりになっています。
ソロモンばかり、とは言え取り扱いされているディスクが少なく残念至極なのですが。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第21番ワルトシュタイン
ソロモン~EMIレコーディングスより

426 ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第21番「ワルトシュタイン」ソロモンEMIレコーディングス(7CD
(収録曲)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」(1951年録音)
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」1952年録音)
ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」(1952年録音)
ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a「告別」(1952年録音)


第1楽章:Allegro con brio ハ長調 4/4拍子 ハ長調
第2楽章:(導入部)Introduzione. Adagio molto ヘ長調 6/8拍子
    (主部)Rondo:Allegretto moderato – Prestissimoハ長調2/4拍子



作曲されたのは1803年から。翌1804年夏に完成されたそうです。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズが連続していますので
内容も重複する点が多くなりますが、いつもの自分の復習を兼ねて。

この時期のベートーヴェンには素晴らしい飛躍があり、作曲された作品にはヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」、交響曲題3番、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」、歌劇では「フィデリオ」などの大作品がひしめいているとのことです。

ベートーヴェンは独自の様式を築き上げ初期とは完全に決別をしたそうです。
この曲では今までの作品に見られなかった壮麗な演奏技巧を盛り大きな演奏効果を創り出したとのこと。

曲の構成は2楽章とのことですが、第2楽章の導入部を一つの楽章として扱い3楽章構成とされることもあるようです。
3楽章構成としているものが多いように感じますが。
ソロモンではブックレットの記載では2楽章構成になっていますので、その前提で綴っています。

楽章構成ですがベートーヴェンの初めの計画では3楽章構成になる予定だったそうです。
初めの計画では、第2楽章にロンド形式の「アンダンテ」 ヘ長調 を入れる筈だったとのことですが、全曲の傾向が冗長になるとの忠告を受けたそうです。
そのために現在、このソナタの第2楽章の初めに置かれている 「アダージョ・モルト」 の導入部が新たに付けられたとのことです。
省略された 「アンダンテ」 は1805年に独立した小曲として出版され、1807年にブライトコプフから出版された時には「アンダンテ・ファボリ」の名称が与えられたそうです。
尚、第2楽章の冒頭に置かれている「アダージョ・モルト」の導入部が他の部分とは異なった時期に書かれたことは、確実な資料によることがセイヤーらにより指摘されているとのことです。

初版は1805年にウィーンの美術工芸社から「大ソナタ」のタイトルを付けて出版されたそうです。
自筆譜はチューリッヒのボドマー・コレクションに保存。

献呈はワルトシュタイン伯爵に。
426 ベートーヴェン.ピアノ.ソナタ第21番 ワルトシュタイン伯爵 Graf Ferdinand Ernst Joseph Gabriel von Waldstein
Graf Ferdinand Ernst Joseph Gabriel von Waldstein und Wartenberg
(1762年3月24日-1823年5月26日)

自分のメモとして以下、長くなりますが。
ベートーヴェンは1788年1月にブロイニング家でウィーン出身のフェルディナント・ワルトシュタイン伯爵と知り合ったそうです。
当時、ベートーヴェンは18歳頃でしょうか。
尚、前年の夏、7月17日にベートーヴェンの母マリア・マグダレーナが死去したとのこと。
ワルトシュタイン伯爵は非常に音楽が好きでベートーヴェンの才能を深く愛し、ベートーヴェンの成長に大きな役割を果たしたそうです。
経済的援助も大きかったそうですが、それ以上に教養ある年長者として精神面に資するところが大きかった、ようです。

1792年にハイドンがボンを訪問し、ベートーヴェンの弟子入りを快諾したのが7月だったそうです。
そして11月2日にベートーヴェンはウィーンに向けボンを発ち、11月10日ウィーンに到着。
ベートーヴェンはハイドンに作曲を師事したとのこと。
尚、その翌12月18日に父ヨーハンの死去。
ベートーヴェンがウィーンへ発つ折りにワルトシュタイン伯爵は1792年10月、記念帳に書き込んだそうです。
「親愛なるベートーヴェンへ!」で始まり「あなたの親友ワルトシュタイン」で終わる伯爵の一筆。
「モーツァルトの精神をハイドンから受け取りなさい」との一文があるそうです。
当時、ベートーヴェン22歳。
ベートーヴェンの未来を祝福したのもワルトシュタイン伯爵だったそうです。

426ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第21番ワルトシュタイン 伯爵からベートーヴェンの記念帳に(1792年ベートーヴェン、ウィーンへ旅立ちに寄せて)
(1792年10月、記念帳に綴られたワルトシュタイン伯爵の言葉)

ドイツ語は解りませんが記念帳への伯爵の言葉、ベートーヴェンに寄せる伯爵の想いに感銘を受けつつ、このソナタに耳を傾けていました。


ソロモンで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」

左手で小刻み奏される和音で闊達な趣で始まる第1楽章。
第1主題が現れ高音域で光り輝くように。
フォルテッィシモで高揚する雰囲気、ドラマティックな第1主題。
次に現れる第2主題の穏やかさ。
漂う抒情的で味わい深い雰囲気。
この曲の中での安息を想わせるような調べでしょうか。
新しい楽想の出現で右手は早いパッセージを奏し続け
恰も降り注ぐ光のよう。
再び華麗な雰囲が戻り、劇的な力強さも。
展開部では右手で光り輝くように奏される第1主題の展開。
活気に溢れ、現れる第2主題の変容からは長閑な雰囲気が。
再び第1主題が力強く奏され再現部に。
固唾を呑むような展開部でもソロモンのピアニズムはあくまで爽やかに響くのが印象的。
コーダは長いようです。
現れる第1主題。次に第2主題。
再び現れる第1主題の左手の強く弾むような打鍵。
右手は第1主題の変容を劇的に醸し出しているようにも。
第2主題の穏やかな調べ静けさを挟み、闊達に力強く閉じられる第1楽章。

第2楽章の導入部は28小節の短いものだそうです。
寂しげな深い心情が込められた導入部に対してのエルターラインの言葉。
「天使の微笑みが俄かに雲に覆われたよう」

導入部の途切れ途切れに、たどたどしく奏される主題でで始まる第2楽章。
左手と右手のポツリポツリとした語り合い。
左手の伴奏に右手は歌うように。
静かで、寂しげな雰囲気。素朴な美しさとして心に染み入るようです。
導入部を経て主部に入り現れるロンド主題。
抒情的な趣のこのロンド主題の旋律はベートーヴェンの生地であるボン地方の民謡から取られたとの説もあるそうです。
平和な佇まいを見せる調べ。
親しみを感じる旋律。
この平穏な趣から経過部では激しく高揚するように現れるロンド主題の冒頭。
華々しく、力強い趣からは前進をする勇士の姿を連想してしまいます。
コーダではロンド主題の華麗な変容のように。
音力が次第に強くなりつつ長いトリルに。
華麗に燦然とした輝きを放しつつ迎える曲の終わり。


ソロモンのピアノの明るい軽やかさ。
混濁することのない清明さを感じる音色。
優しさと明るさ。そして滑るような軽妙さ。
第1楽章のドラマティックさを感じさせる第1主題でも、打鍵はあくまでも自然体に感じられます。
第2楽章の導入部では瞑想的な雰囲気すら感じます。
心の琴線に触れるソロモンのピアニズムで最も印象的なのが、この導入部です。

ソロモンの演奏でベートーヴェンのソナタ以外の作品を聴いても
五月晴れの空気の中をそっと通り過ぎて行くような、そよ風を連想してしまいます。
そのピアニズムもまた、そよ風のように清明に感じられます。

久し振りに聴いた「ワルトシュタイン・ソナタ」。
嘗て聴いた時には活発な曲、との印象しか残っていませんでした。
第2楽章は記憶から抜け落ちていました。
今回、聴いてみて第2楽章が心に残ります。
導入部とロンド主題に惹かれている自分がいました。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でお気に入りのソナタの仲間入りをしたようです。

                
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2018.02/03(Sat)

Op.425 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第7番」 by ソロモン

ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」。
今回は初期のピアノ・ソナタ作品10の3曲から作品10-3、第7番を。
ピアノは前回、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」を聴き心に残ったソロモンです。

過日、いつもお邪魔をさせていただいているブログを訪問させていただきソロモンの名前を目にしました。
以来、聴いてみたいと思っていたピアニストの一人になりました。
初めて入手したソロモンのディスクからです。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ第7番 作品10-3
ソロモンベートーヴェン ピアノ・ソナタ集より

425ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第7番 ソロモン:ソナタ集2  Sonatas 7, 8, 13, & 14
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3
ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 「悲愴」Op.13
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.21-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 「月光」Op.27-2

ソロモン・カットナー(P)
(録音:1950年代 第7番ステレオ、他はモノラル)

第1楽章:Presto ニ長調 2/2拍子
第2楽章:Largo e mesto ニ短調 6/8拍子
第3楽章:Menuetto/Trio: Allegro ニ長調 3/4拍子
第4楽章:Rondo: Allegro ニ長調 4/4拍子


作品10のソナタでは一昨年の秋頃に作品10-2、第5番が当拙ブログにシュナーベルのピアノで登場していました。
当時、書いたことと重複しますがいつもの自分の復習を兼ねて。

作品10の3曲については自筆譜が紛失し作曲時期は不明だそうです。
ノッテポームはベートーヴェンのソナタのスケッチから判断し
1796年から98年の夏までの間に3つのソナタが完成したと推定しているとのことです。
ベートーヴェン、26歳から28歳頃に書かれた作品でしょうか。

作品10が作曲された前後のベートーヴェンの年譜。メモとして。
●1795年、25歳。ブルク劇場の慈善音楽会(3月29日-31日)でピアノ協奏曲第2番で公開デヴュー。
8月30日頃、ハイドンの前で作品2の3つのピアノ・ソナタを演奏。
12月18日、ハイドン主催の音楽会でピアノ協奏曲第1番を演奏。
年末。ベートーヴェンはリヒノフスキー侯と共に第1回プラハ旅行。
●翌1796年、26歳。2月に第2回プラハ旅行。
プラハからはベートーヴェン単独でドレスデン、ライプツィヒ、ベルリンに足を延ばし約半年にわたる大旅行。
3つのピアノ・ソナタ作品2の出版。
●1798年、27歳。名ヴァイオリニスト、クロイツェルと知り合う。
第3回プラハ旅行。


さて、作品10の3曲のソナタのなかでこのソナタは一般的に最も優れた作品とされているそうです。
各ソナタの特徴は
作品10-1、第5番 と 作品10-2、第6番 の2曲はベートーヴェンとしては初めての3楽章構成で、この作品10-3、第7番は4楽章構成に戻り、音楽も拡大されたものになっているそうです。

作品10の3曲は1798年9月、ウィーンのエーダーにより出版。

作品10の3曲、献呈はブラウン伯爵夫人アンナ・マルガレーテに。
尚、伯爵夫人にはこの3つののソナタの他にベートーヴェンは数曲を贈ったそうです。
ヨハン・ゲオルグ伯爵と1796年に結婚をした夫人は夫とともに若いベートーヴェンの熱心な支持者だったそうです。
ベートーヴェンは伯爵に作品9の3曲の弦楽三重奏曲を「私の最も優秀な作品を、私の芸術の最高の愛護者に捧げる」と記し献呈をしているとのことです。
1803年5月13日にウィーンで他界をした夫人の死を悼み、同年ベートーヴェンは歌曲「ゲレルトによる6つの歌」作品48 を作曲して伯爵に贈ったとそうです。
歌曲「ゲレルトによる6つの歌」では第4曲の『自然における神の栄光』だけはLP時代にプライの歌で聴き馴染んでいましたが他5曲にはじっくり耳を傾けたことがありませんでした。
この機会に聴いてみたく思います。


ソロモンのピアノで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第7番

活発なユニゾンで奏される第1主題で始まる第1楽章。
この主題は第1楽章中の至るところに現れ重要な役割を果たしているとのこと。
続く経過句では華麗な雰囲気が漂い。
冒頭の第1主題のユニゾンの動機が高域で奏され可憐な雰囲気も漂っているようにも。
経過部を終え、新しく顔を見せる美しい調べ。
そして第2主題が現れ軽快な趣に。
展開部では第1主題が弱音から強音に力強さを伴っての展開。
ソロモンの打鍵が印象的。軽妙に弾むピアノ。
再現部を経てコーダでは力強くも華麗に閉じられる第1楽章。
終始、留まることなく闊歩をするように進む明朗で活発な楽章でしょうか。

第2楽章はベートーヴェンの作品の中では最も深刻な表情をもった音楽だそうです。
ベートーヴェンが Largo をピアノ・ソナタの独立した楽章に用いたのはこのソナタが最後とのこと。
ベッカーは次にように述べているそうです。
「ラルゴは最も良い精分を搾取されて、結局ベートーヴェンにより棄てられた」

前楽章の軽妙さとは打って変わり、物憂げに奏され始まる第2楽章。
一音一音にソロモンは深い想いを込めるかのようにゆっくりと奏される第1主題。
重く物悲しい雰囲気に包まれた主題。
哀愁、悲痛さも感じられる主題。です
第2主題になり美しい調べに覚醒するような。
ゆっくりと静かに奏されるこの美しい旋律。
美しく、哀愁も漂うような調べ。ソロモンの端正なピアニズム。
展開部になり重々しい主題。
ここでも美しさが漂う旋律。
再現部を経てコーダに。
第1主題が低音域に重々しく奏され、高音域は細やかに静かに。
左手は休止を。右手の動きが止まるかのように途切れ途切れに。
再び左手も現れ元の姿に。
右手がアルペッジョ風に速い動きを見せ、左手は重々しく。
弱々しい呟きのようにポツリポツリと呟くピアノ。
そっと静かに消え入るように閉じられる第2楽章。

柔らかく穏やかに奏され始まる第3楽章。
このメヌエット主題の柔和な優しさに前楽章の重々しさが解消され寛ぎを感じるようです。
中間で顔を見せるカノン風な旋律。
そしてトリルで奏される主題の愛らしさ。
ウットリ聴き入っているとトリオに。
強い印象を受けるトリオです。
右手の軽やかで愛らしい動きに、左手の深く打ち込むような打鍵。
右手と左手の応答がとても印象的。
メヌエットの穏やかで愛らしい調べのうちに閉じられる第3楽章。

第4楽章は作品10の他の2曲と異なり、以前の4楽章構成に戻り
またこの終楽章もソナタ形式ではなくロンド形式に戻っているとのこと。

ロンド主題で始まる第4楽章。
耳慣れたロンドとは異なり戸惑い、模索をしているような雰囲気のロンド主題。
第2主題は流麗で生き生きとした趣で。
この主題が力強く奏された後にロンド主題の展開に入るとのこと。
ロンド主題は変奏されつつ曲は進みコーダに。
流麗さを感じさせ明快に迎える曲の終わり。


この第7番のソナタは初めて聴くように思います。
ソロモンの演奏で特に印象に残るのは先ず第1楽章の展開部。
一音一音に力が込められ、強弱の明晰さ、右手と左手の動きの鮮明さ、音の切れの良さ。
明るく活発な楽章がより活き活きと感じられるようです。
お気に入りの第2楽章は第1主題、第2主題ともに聴き入ってしまうばかり。
第2主題の美しい調べを奏する端正なピアニズム。
このソナタの中で楽想とともに最も印象に残ったのは第3楽章のトリオでしょうか。
右手で奏される軽やかさ、愛らしさに対し、左手が深く打ち込む打鍵。
この対比、右手と左手の応答がとても新鮮なものとして心に残ります。

このソナタを聴きつつソロモンの演奏から
磨き上げられた透明ガラスを通し外の景色を眺めるかのように
音が明晰に響いてくるように感じます。
個性的な演奏というよりオーソドックスな演奏の類に入るかも知れません。
ですが、ソロモンが紡ぎ出す一音一音にキラリと輝くものを感じています。

ソロモンはベートーヴェンのソナタ全集を完成させることができなかったとのことですが
残されたソナタの一曲でも多くを聴いてみたく思っています。

ショップ・サイトの記載によると
ソロモンは1951年からベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音に取り組んだそうです。
1956年夏に脳梗塞により左手の第4、第5指が不自由になったことに気付いたとのこと。
ソナタ第31番の終楽章で指が滑り、一部が欠落し修正されないままだったそうです。
ソロモンはの脳梗塞により引退。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は未完に終わった、とのことです。
1988年2月2日に87歳で逝去されたそうですので昨日が命日だったのですね。

               
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19:58  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2018.01/27(Sat)

Op.424 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第23番≪熱情≫」 by バックハウス;ポリーニ

執拗に続いている「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。
今回は第23番熱情」です。
バックハウスを主として、ポリーニ、他で聴いてみました。


ベトーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番熱情
バックハウスベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より

424:ベートーヴェン:ピアノ.ソナタ第23番 バックハウスピアノ・ソナタ全集(新盤)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情]
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79「かっこう」
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調 Op..81a「告別」
(録音:1969年 ジェノヴァ ヴィクトリア・ホール)


ポリーニベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より
424:ベートーヴェン: ピアノ.ソナタ第23番 ポリーニ ピアノ・ソナタ全集(8CD)
(収録曲)
ピアノ・ソナタ第21番ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調 Op.54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情
ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 Op.78
ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79
(録音:2002年6月 ミュンヘン ヘラクレス・ザール)


第1楽章:Allegro assai へ短調 12/8拍子
第2楽章:Andante con moto 変ニ長調 2/4拍子
第3楽章:Allegro ma non troppo – Presto へ短調 2/4拍子


作曲されたのは1804年から1805年のようです。
ベートーヴェン、34~5歳頃でしょうか。
ベートーヴェン中期の大傑作の一つとのこと。
この同じ時期に交響曲第5番に着手していたそうです。
曲の完成については多々の説があり確定はできないそうですが
第1楽章、第2楽章及び第3楽章の冒頭の部分のスケッチは歌劇「フィデリオ」のスケッチ帳の中に現れていることから、曲の着想は1804年と考えられるそうです。
「フィデリオ」が1806年に完成した頃に、このソナタ第23番も完成されたと推測されるようです。
1805年4月18日にベートーヴェンは曲の完成を見越した書簡を出版元に送っているとのこと。

曲の出版は約2年後の1807年2月に ソナタ 第54番 としてウィーンの美術工芸社より。
この時、表紙に記された ピアノ・ソナタ第54番作品57 についての根拠は不明とのことです。

副題の「熱情」はハンブルクの出版元でピアノ連弾用の編曲版の出版時に名付け、通称として今日まで続いているそうです。
自筆譜はパリ音楽院に保存。

献呈はフランツ・フォン・ブルンスヴィック伯爵に。

424:ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番Graf Franz Brunsvik de Korompa
Graf Franz Brunsvik de Korompa
(1877年9月25日-1849年10月23日)

伯爵は音楽好きであり、特にチェロの演奏は優れていたそうです。
また、ベートーヴェンの音楽に心から傾倒をしていたとのことです。
伯爵とその令嬢でテレーゼ(1777-1861年)とヨゼフィーネ(1779-1821年)。
この伯爵一家は1799年以来、ベートーヴェンとの付き合いが深く、各人がベートーヴェンの生涯に大きな意味を持っていたとのこと。

このソナタのエピソードとして。
ラズモフスキー公の司書ビゴ―と1804年に結婚をしたの妻のマリーは優秀なピアニストだったそうです。
彼女はハイドン、サリエリ、ベートーヴェンと交流があり、後年メンデルスゾーンにピアノを教えたとのことです。
ベートーヴェンが1806年の秋、リヒノフスキー侯爵邸からウィーンに帰る途中で雨でずぶ濡れになり、所持していたこのソナタ第23番の草稿も濡れてしまったそうです。
帰宅したベートーヴェンが雨に濡れた楽譜をマリーに見せたところ、彼女はその音楽に引き込まれ、初見で完全に弾きベートーヴェンは大いに喜んだそうです。
その自筆譜は楽譜の出版後にマリーに贈られたとのことです。


バックハウスで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情

威厳のある旋律とトリルで奏される旋律で始まる第1楽章。
この第1主題に漂うの簡潔さと緊張感。
主題を経て渾身の力強さを込めた打鍵の和音。
第2主題になり激情の波も静まり漂う穏やかさ。
光明を感じさせるような第2主題。
展開部では滾る熾烈さ。
バックハウスの打鍵からは気迫を感じます。
右手及び左手にドラマティックに奏される主題。
荒々しい闘争感も漂っているかのよう。
現れる第2主題にホッとするような。
アルペッジョを経て再現部に。
コーダでが奏される2つの主題の後に激しい力を感じさせ
束の間の落ち着きを経て再び音力が強くなり増大する激情感。
音力を落として弱くなり閉じられる第1楽章。

第2楽章は主題と3つの変奏から構成されているそうです。
ゆっくりと静かに奏し始められる第2楽章。
簡素な主題。
この主題からは思索をするかのような印象を受けるます。
第1変奏では主題を奏する右手。シンコペーションで相槌を打つような左手が印象的。
第2変奏は旋律は細かく奏され右手の主題は小川の流れのようにも。
左手は素直な伴奏を。
美しさを感じさせる変奏です。
第3変奏では前変奏よりも更に細やかな動きに。
主題に漂う愛らしい趣。
変奏を終え元のテンポで主題を回想。
一瞬の短いアルペッジョを境にそのまま第3楽章に。

第2楽章から突入する第3楽章。
音力が上がり激しく強いキーの連打で始まる第3楽章。
続く第1主題に旋律は感じられず音が単に動き回るかのような雰囲気。
高揚する力強さ。
第2主題も第1主題同様に機械的な趣で。
展開部で現れる第1主題。
次に速度を速め音力を上げ激しく高揚し新しい楽想の出現。
第1主題の展開になり力が弱まり再現部に。
コーダでは展開部で現れた新しい楽想が力強く奏され
第1主題は迸るような展開で。
全エネルギ―を注ぎ込むように奏され渾身の力で迎える曲の終わり。


この曲の熾烈さ、壮絶さにただただ圧倒されています。
始めバックハウスで聴き、次にポリーニで聴いてみました。
2人の演奏を聴き、他の演奏にも興味が湧き手元にあるディスクをほぼ動員。
この数日来、取り敢えず10名のピアニストの演奏で第23番ばかりを聴いてました。
欲張り過ぎ・・・また肝心なシュナーベルを忘れてしまいましたが。

印象に残る演奏はやはりお気に入りのピアニストや好印象を受けたピアニストです。
今回のバックハウス、そして他にはアラウでありケンプ。
過日、ソナタ第14番で強い印象を受けたユストゥス・フランツ。
そしてソロモン。
上記とは対照的な演奏として感じられたポリーニ
中庸のピアニストの演奏は印象としてあまり残るものがないようです。

最初に聴いたバックハウスとポリーニ
バックハウスは嘗ても書きましたが個人的な想い出の深いピアニストです。
昔々のLP時代に初めてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(分売で毎月、求めたもの)を手にしたのがバックハウスでした。
全曲をじっくり聴くことなく・・・気が付けばCD時代に移行をしてしまっていました。
昨年、取り寄せ注文にてショップに依頼をしていたセットで、入荷を諦めかけていたところに入荷通知があり、届いたこともあり喜びも一塩の気分で聴き始めたバックハウスです。
一方のポリーニは特別に関心のあるピアニストではなかったのですが、ベートーヴェンのソナタ全集を約40年の年月をかけて録音した、とのことで関心を抱き聴きたくなった(単なる好奇心?)セットです。
このお二人の演奏、対照的、極端に対照的と感じています。

バックハウスはベートーヴェンからツェル二ー、リストの直系の弟子とのこと。
先ず、バックハウスのセットを手にして一番最初に聴いたのがこの第23番です。
一音一音は地をしっかり踏みしめるような打鍵。
剛健でもあり、言葉の悪い表現ですがゴツゴツとした無骨さ。
それが私にとってはバックハウスの魅力かも知れません。
第1、第3楽章の激しさを感情的ではなく、あくまで力強いキー・タッチが好印象として残ります。
第2楽章は、他の大方のピアニストが美しさを前面に表現する傾向を感じますが、バックハウスの演奏からは一つの音を吟味しつつ、力強い思索的な感じを受けます。
バックハウスのピアニズムは私にとっては魅力があります。

バックハウスとは対照的、極端に対照的に感じたポリーニ。
昨年末よりスティーブン・コワセヴィッチとリチャード・グードの全集と並行をして聴いていたのがポリーニです。
こちらの3人の全集もまだ聴き終えてはいないのですが。
コワセヴィッチ、グードも聴いていてハッとするものを感じる瞬間があります。
数曲を聴いてきてポリーニには、それが感じられないのです。
「どうして?」と湧き上がった疑問。
では、第23番はどうなのか?・・・と言う訳で聴いてみました。

流線的、淀みなく流れる川のようなポリーニのピアニズム。
スムーズなタッチで曲が流れ、旋律線が克明に浮かび上がらないようにも感じたりしています。
1曲、1曲を聴き進み、どの曲においても気が付くと曲が終了。
流れ去ってしまうような音楽。
偉ぶった酷評になってしまっているとしたら反省を。
この第23番の第2楽章ではポリーニが紡ぎ出す美しい楽想。
この楽章の主題を奏するポリーニには魅力を感じます。

それにしても対照的な二人のピア二スト。
バックハウスの演奏が楷書体であるなら
ポリーニは草書体のようにも感じています。

今回、第23番を通してソロモンにも目覚めたようです。


蛇足。いつものオバサンの井戸端会議。メモとして。

ベートーヴェンは1803年にエラール製のピアノを贈呈されたそうです
1803年から1816年頃に作曲されたベートーヴェンのピアノ作品は音域が拡大されたエラール製のピアノ(F₁~c⁴、68鍵)を使用していたとのこと。
ソナタ第21番「ワルトシュタイン」では音域の広さが反映されているそうです。
第23番「熱情」の終楽章において、このピアノの最高音である c⁴ が多用されているとのことです。                                 
                
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2018.01/20(Sat)

Op.423 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第12番」 by ケンプ;コワセヴィッチ

今日もまた「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。

聴きたい目的の作品を聴いていて同じディスクに収録されている他の曲に耳を奪われてしまうことがあります。
そして日数が経過しても、旋律を覚えている訳でもないのに気になってしまう。
今日はそのような曲の中からベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番です。
ケンプのピアノを主として。コワセヴィッチの2種で。


ベートーヴェンピアノ・ソナタ第12番
ヴィルヘルム・ケンプベートーヴェンピアノ・ソナタ全集より

418:ベートーヴェン ピアノソナタ第13番 ケンプ~ピアノ・ソナタ全集
(収録曲)
ベートーヴェン

ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調op.26
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調op.27-1
ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調op.27-2 「月光」
ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調op.28 「田園」
(録音:第12番 1964年11月)

スティーヴン・コワセヴィッチ~ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集&パがテル集より
(HMV)423ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第12番 ピアノ・ソナタ全集、バガテル集 スティーヴン・コワセヴィチ(9CD)
収録曲はケンプと同曲、曲順も同じ。
こちらには第12番に副題「葬送」が付けられています。
(録音:1999年)

第1楽章:Andante con variazioni 変イ長調 3/8拍子
第2楽章:Scherzo/Trio: Allegro molto 変イ長調 3/4拍子
第3楽章:Marcia funebre sulla morte d’un eroe 変イ短調 4/4拍子
第4楽章:Allegro変イ長調 2/4拍子


作曲されたのは1800年から1801年と推定されているそうです。
ベートーヴェンのスケッチブックを検討したノッテポームによると
1800年から各楽章を別々に書き、1801年に完成されたとのことです。

第1楽章の着想はすでに1795年から96年頃、スケッチにロ短調の調性で現れているそうです。
ノッテポームによると第4楽章はこのソナタを考えて作曲したものとは言えない、とのこと。
ソナタ全曲の形を整えることは1801年になって思い付いた、と推し量ることができるようです。

曲は4楽章構成でソナタ形式の楽章は一つもないそうです。
第1楽章には変奏曲を置き、第2楽章にはスケルツォ、そして第3楽章に「葬送行進曲」が置かれているとのことです。
これはベートーヴェンがまとめてソナタに組み立てるつもりがなかったことの表れのようです。
敢えて、ひとまとめにして異例なソナタを書き上げたことは、ベートーヴェンの積極的な創意の現れになっているようです。

1800年を境としてベートーヴェンのあらゆる作品に大胆な発想が現れてくるそうです。
ピアノ・ソナタのジャンルでは先ずこの曲に大胆な発想を認めることができるとのこと。

曲の献呈はカール・フォン・リヒノフスキー侯爵に。
自筆譜はベルリンの国立図書館に保存されているとのことです。


ケンプの演奏で聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番
コワセヴィッチは後述のまとめの方に)

第1楽章は主題と5つの変奏の構成になっているそうです。
主題は最初の8小節。
5つの変奏では小節数24小節、拍子は3/8拍子、テンポもすべて同じで音型変奏になるそうです。

柔和で優しい趣を湛えた主題で始まる第1楽章。
嘗て聴いたことがある主題ですが、曲番号と旋律が一致しなかった曲です。
素朴さや親和感を抱くこの主題は印象的で記憶に刻まれます。
第1変奏では主題の音型をレガート風に奏され夢見るような趣も。
第2変奏、左手の低音域に移った主題からは重々しく、心持厳しさを感じるよう。
第3変奏、変奏主題を奏する右手からは今までの柔和な雰囲気が消え、暗い翳りが。
第4変奏、左手がシンコペーションで主題の変奏を奏し、右手は伴奏に。
陽気な雰囲気でもあり、忙しげにも感じられる変奏。
第5変奏、主題の調べは波が戯れるかのように細やかに刻まれ、左手が奏する主題に右手はさざ波のような伴奏を。
5つの変奏のなかではこの変奏が多様に変容するよう。
コーダでも主題の変奏がゆっくり奏され静かに閉じられる第1楽章。

一転して前楽章とは対照的に明るい雰囲気のスケルツォ主題で始まる第2楽章。
中間部では音力が大きくなり力を増し情熱的な趣に。
そしてトリオでは明るく伸びやか。
再びスケルツォに戻り、明るい活力の内に終わる第2楽章。

第3楽章、速度記号の代わりに「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」との記述。
「ある英雄」を誰を指すのかは不明で抽象的な意味で使われているようです。
当時、フェルディナント・パエールの歌劇『アキレス』の中の「葬送行進曲」が人気を博していたそうです。
それにベートーヴェンが刺激され、この葬送行進曲を書いたという説も一般化したことがあったとのことですが、ノッテポームは『アキレス』のウィーン初演がベートーヴェンのこのソナタの作曲より後とのことを根拠に否定しているそうです。
また、その反対を主張する人もいるとのこと。
尚、ベートーヴェンが交響曲第3番第2楽章で葬送行進曲を書いたのは、このソナタの3年後になるそうです。

重々しく厳かな調べの主題。
厳かな葬送の調べで始まる第3楽章。
トリオでは前半、後半は各4小節で反復する短いものだそうです。     
強い打鍵のトレモロとスタッカートの和音が交互に現れ
ドラマティックな雰囲気が生み出されているようです。
トレモロとトスタッカートで奏されるのは葬送の太鼓と金管の響きを表したもの、といわれているとのこと。
コーダでは音力を落としつつ奏され静かに閉じられる第3楽章。

前楽章と対照的なロンド主題で始まる第4楽章。
細やかな動きのロンド主題から第2主題に。
第2主題の明朗なスタッカート。
第3主題もロンド主題のように細やかな動きで。
流動的な旋律の動きで進められる曲。
コーダでは右手が煌めくような旋律を奏し、静かに迎える曲の終わり。


第1楽章の柔和で優しい雰囲気。
第2楽章のスケルツォでの明朗な活力。
第3楽章の厳かな「暗」
第4楽章の流動性のある調べ。
この曲の異例な構成に初めは寄木細工を思い浮かべてしまいましたが
さにあらずで、変化に富む曲でしょうか。
印象に残るのは第1楽章と第3楽章。

ケンプのベートーヴェン、ソナタ全集より過日、作品27の2曲を聴くために取り出したこの一枚。
目的の2曲を挟んで、第1曲目がこの第12番。第4曲目に収録されているのが第15番。
目的の作品27の2曲とともに第12番、第15番も印象に残っていました。
殊に第12番は気になる曲になり、ケンプの他に、今回は関心を抱いていているピアニストの一人コワセヴィッチの演奏も聴いてみました。
コワセヴィッチの方はせめて第1楽章だけでも・・・と聴き始めたのですが、最後まで聴き入ってしまいました。

ケンプとコワセヴィッチ
対照的な演奏でしょうか。
ケンプの教科書的と言いうと表現は悪いかも知れませんが、堅固しっかりとした演奏。
真摯に楽譜に対峙するような印象を受けます。
この曲でコワセヴィッチの演奏を聴き、ケンプのピア二ズムに朴訥さを感じるようになりました。
味わいのある、じっくりと聴かせてくれる朴訥さのようなものを。
お気に入りのケンプにまた一つの魅力が増えたようです。

コワセヴィッチ(と、リチャード・グード)の演奏は、いつもお邪魔をさせていただいているブログを拝読して聴きたくなり昨年求めた全集です。
まだ全集を聴き終えていないのですが、コワセヴィッチで聴くソナタ第12番は
感情を豊かに織り込んだ表現のように感じられます。
第1楽章の各変奏から特にその表現力に耳を奪われるものがありました。
第1楽章に漂う瞑想的な趣に聴き入り
曲を聴き進むうちにドラマティックな趣も。
ダイナミック、横溢するエネルギーを感じる演奏のように想われます。
まだ全集の途中までしか聴いていないのですが、第32番の演奏を想像し興味が駆り立てられるようです。

コワセヴィッチを聴き、ケンプの演奏に新たな魅力を見い出し
ケンプの演奏を聴き、コワセヴィッチの魅力にも気付かされたような気がしています。

                
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2018.01/13(Sat)

Op.422 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番「告別」 by ゼルキン

昨年の続きで「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ」です。
今回は第26番告別」を。
1809年にナポレオンがウィーン侵攻のため疎開をしたルドルフ大公が、翌年帰還するまでを各楽章に副題を付け作曲されたソナタだそうです。

前回と同じ、ゼルキン・コンプリート・コロンビア・アルバム・コレクションからの一枚です。

ベートーヴェンピアノ・ソナタ題26番「告別
ルドルフ・ゼルキン~コンプリート・コロンビア・アルバム・コレクションより

(421)シューベルト.万霊節の連祷 ルドルフ・ゼルキン コンプリート・コロンビア・アルバム・コレクション
(収録曲)

ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2「月光」(1951年録音)
ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調Op.81a「告別」(1951年録音)
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op.57「熱情」 (1947年録音)

ルドルフ・ゼルキン(P)


第1楽章:「告別」 “Das Lebewohl” Adagio 2/4拍子 - Allegro 2/2拍子 変ホ長調
第2楽章:「不在」 “Die Abwesenheit” Andante espressivo 2/4拍子 ハ短調 
第3楽章:「再会」 “Das Wiedersehen”  Vivacissimamente 変ホ長調 6/8拍子 


作曲されたのは1809年から。1810年初めに完成したそうです。
ベートーヴェンは39歳頃でしょうか。
ベートーヴェンが作曲した32曲のピアノ・ソナタの中で自身で標題を付けたのは
第8番の「悲愴」と、この第26番の「告別」の2曲だけとのことです。
このソナタの各楽章には次の副題が付けられているそうです。
第1楽章「告別」、第2楽章「不在」、第3楽章「再会」。
尚、第3楽章はスケッチの段階で ”Die Ankunft”「到着」になっていたそうです。
第3楽章には「敬愛するルドルフ大公殿下帰還 1810年1月30日」と書き込まれているそうです。

自筆譜は第1楽章がウィーンの楽友協会に保存され、ほかは紛失したとのこと。

このソナタを献呈され、またベートーヴェンとも縁の深いルドルフ大公について
長くなりますが自分のメモとして。

(wikiドイツ)リンク♪422ピアノ.ソナタ題26番 ルドルフ大公(Lithographie, 1823)
Rudolph Johann Joseph Rainer von Österreich
(1788年1月8日-1831年7月24日)

ルドルフ大公は1788年にオーストリア皇帝レオポルド2世の末子としてフィレンツェで生まれたそうです。
フランツ1世(1804年から1835年までオーストリア皇帝となり、最後の神聖ローマ帝国皇帝)はルドルフ大公の兄とのこと。
大公とベートーヴェンの交友は1804年頃から始まったそうです。
大公はベートーヴェンからピアノと作曲を学んだとのことです。
作曲を学ぶ大公の指導のためにベートーヴェンは音楽理論の手書きの指導書を残しているそうです。
その指導書はオーケストラ曲の作曲の初歩に至るまで各種の古典的な理論書から抜き出した内容を織り込んで書かれたものとのこと。
大公は室内楽を中心に幾つかの作品を残しているそうです。
大公の音楽の理解力はアマチュアの域を遥かに超えるものだったようです。
高い読譜力を持ち、初見演奏能力は卓抜なものであったと言われているとのこと。
ベートーヴェンが大公に献呈した自身のピアノ・ソナタ第29番は当時、難解とされたそうです。
この至高のソナタを大公に献呈したということは、ベートーヴェンは自身の芸術を理解してくれる人物としてルドルフ大公を見ていた証になるとのことです。
このように大公はベートーヴェンに対し深い理解と尊敬の気持ちを持っていたそうでです。
1808年にベートーヴェンにロブコヴィッツ侯爵、キンスキー侯爵とともに年金を与えるようになった音頭取りは大公だったようです。
最後まで年金の約束を守ったのは大公とのこと。
1819年に大公は枢機卿になり、同年にオルミッツの大司教に就任した後、皇帝レオポルド2世として即位。
尚、大公がオルミッツの大司教に就任する際に、就任式のためにベートーヴェンが書いた「ミサ・ソレムニス」は式典までに作曲が間に合わなかったとのことです。
ルドルフ大公はベートーヴェンの死から4年後にウィーンの南の温泉地バーデンに於いて逝去。

ベートーヴェンとルドルフ大公の交友、絆の強さを今回、ソナタ第29番を通し初めて知り、感銘を受けるものがありました。


ルドルフ・ゼルキンのピアノで聴く、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ題26番「告別」


第1楽章にベートーヴェンは 「告別」Das Lebewohl と書き、原稿にはさらに「1809年5月4日、ウィーンにて、尊敬するルドルフ大公殿下のご出発に当たって」と書き込まれているそうです。
1809年4月9日、オーストリアはナポレオンが率いるフランス軍と戦闘に陥る。
フランス軍は5月12日までにウィーンに侵攻。神聖ローマ帝国フランツ2世の弟で皇族のルドルフ大公は5月4日にウィーンを離れたそうです。
尚、第1楽章の最初の3つの音符には Lebewohl の言葉が付けられているそうです。
この Lebewohlの動機は第1楽章の随所に現れるとのこと。
 
静かに寂寥感が漂う調べの序奏で始まる第1楽章。
静かに淡々と奏されるこの調べには悲哀感が強く漂っているかのようです。
主部に入り序奏とは打って変わって力強い第1主題に。
第1主題に漂う勢いのある力強さ、躍動は恰も別れの絶望的な予感を否定し吹き飛ばすかのようです。
その調べの中には明るさも。恰も愉しい想い出に浸っているかのような趣も感じます。
この主題にもLebewohlの動機が組み込まれているとのこと。
第2主題では旋律の流れは穏やかに。
第1、第2主題、展開部に入る部分にも Wiedersehen の動機が含まれているとのこと。
長いコーダではLebewohlの動機が左手と右手で親しげにしみじみとした対話をしているようです。
しみじみとした語り合いを打ち切るかのように強い打鍵で閉じられる第1楽章。

第2楽章は短く42小節だそうです。
ドイツ語で「緩やかに、表情を込めて」との指示が書かれているとのこと。

悲哀を湛えたような第1主題の調べで始まる第2楽章。
第2主題では希望を感じさせるような雰囲気が漂っているようにも。
再び第1主題が現れ悲哀、寂しさの趣に。
音量が上がり、胸騒ぎのように不安感が強くなるような感じを受けます。
オクターブで現れる第2主題を経て、静かにしみじみと奏される第1主題。
聴き入っていると突如力強い雰囲気の第3楽章に。

第3楽章の「再会」はドイツ語で「非常に生き生きとした速度で」との指示が書かれているそうです。
「敬愛するルドルフ大公殿下帰還 1810年1月30日」との書き込み。
1809年10月14日にオーストリアとナポレオンが率いるフランス軍との戦争の終結。
11月にフランス軍はウィーンから引き揚げ。
翌年10月30日にルドルフ大公はウィーンに戻ってきたそうです。

アルペッジョの華やかな雰囲気の旋律で始まる第3楽章。
現れる第1主題。
軽やかに回転をするかのような明朗な主題に再会の喜びが弾んでいるかのようです。
次第に力強く旋律は再会の喜びの極致を伝えるかのよう。
第2主題では左手と右手の対話。喜びの対話でしょうか。
展開部でも輝く喜び。
コーダで速度が遅くなり、再会の喜びを経て平穏な気分が漂うかのようにも。
テンポが元に戻り明るく、強い打鍵で迎える曲の終わり。
この強い打鍵は喜び叫ぶかのようにも感じられます。


第26番をじっくりと初めて耳を傾けたのはつい先頃、数か月前のことです。
お邪魔をしたブログでこの第26番の記事を拝読し・・・「第26番?どのような曲だった?」。
聴いたのが今回のゼルキンの演奏でした。
こちらのBoxには1951年の録音と1977年、カーネギ・ホールでのライヴ録音も収録されていると教えていただき、1977年の録音も聴いてみました。
1951年の録音の方はゼルキンは48歳頃でしょうか。
1977年の録音は70代半ばでしょうか。

初めてじっくりと曲に耳を傾けているうちに、このソナタに託したベートーヴェンの音符による日記を読んでいる心境になってきました。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタにもっともっと近付いてみたいとの想いを強くする契機になったゼルキンの第26番です。

ゼルキンのこの演奏で第2楽章は心に染み入る演奏。
昔、聴いた記憶が甦った第1楽章も懐かしく。
第3楽章に聴き至り、この曲の良さ、素晴らしさに気付くことがなかった長い年月。
ゼルキンはこの音符で綴られたベートーヴェンの心の日記を
暖かい温もりで語り聴かせてくれるようです。

                
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2018.01/06(Sat)

Op.421 シューベルト:「万霊節の連祷」D. 343 ラシャンスカ(S)&ゼルキン;フォイアマン;エルマン

  今年もどうぞよろしく お願いいたします

2018年のスタートはシューベルト歌曲の中で一番好きな「万霊節の連祷」です。
2011年1月以来7年目の再登場になります。
ヤコビの亡き人に捧げる祈りの詩。
詩の内容は新年に相応しくないかもしれませんね。

ゼルキンの「 コンプリート・コロムビア・アルバム・コレクション」より Disc44 に収録されているシューベルト歌曲が2018年、この拙ブログのスタートです。

シューベルト:「万霊節の連祷」D.343
ルドルフ・ゼルキン~コンプリート・コロムビア・アルバム・コレクションより


(421)シューベルト.万霊節の連祷 ルドルフ・ゼルキン コンプリート・コロンビア・アルバム・コレクション
              (収録曲)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58(トスカニーニ&NBC響 1944年)
シューベルト:「万霊節の連祷」D.343(編曲:Josepf Pasternack)
ヘンデル:アリオーソ 「エジプトのイスラエル人」~『ああ、感謝せん』

フルダ・ラシャンスカ(S)
ミッシャ・エルマン(Vn)
エマヌエル・フォイアマン(Vc)
ルドルフ・ゼルキン(P)
(録音:1939年1月14日 ニューヨーク)


再登場の曲ですので当時と重複しますが。
作曲されたのは1816年8月。シューベルトは19歳頃でしょうか。
ヨハン・ゲオルグ・ヤコビの詩 Litanei auf das Fest Allerseelen への付曲。

421シューベルト「万霊節の連祷」ヤーコビ
Johann Georg Jacobi
(1740年9月2日-1814年1月4日)

ヤコビは現デュッセルドルフ生まれのドイツの詩人でジャーナリスト、哲学者、弁護士他だそうです。

この年、1816年に作曲された歌曲は少なく、有名な曲はこの「万霊節の連祷」D.343、「馭者クロノスに」D.369 のようです。
万霊節はキリスト教で、すべての死者の魂のために祈りを捧げる日とのことです。
尚、カトリックの典礼歴では11月1日の「諸聖人の祝日」の翌日、11月2日が「死者の日」に当たるとのこと。
教会では「死者の日」のためにミサが執り行われる一方、この国ではハロウィンのお祭り騒ぎが盛んになっているようで・・・。
因みに、この日にドイツでは墓に花を飾るそうです。

曲は3節よりなる有節形式。
変ホ長調 4/4拍子 
「ゆっくりと、敬虔に」との指示。
本来、ヤコビの詩は9節だそうですが、シューベルトが取り上げ付曲をしたのは、第1節、3節、6節 とのことです。
初版は1831年4月21日にウィーンのA.ディアベッリから。


フルダ・ラシャンスカのソプラノで聴くシューベルトの「万霊節の連祷」D.343

こちらのゼルキンの Box 。
どのディスクにも関心を抱きましたが特別に関心を惹かれたのが2曲。
ベートーヴェンの「三重協奏曲」、そしてこのシューベルトの「万霊節の連祷」です。
今まで、この曲はピアノ伴奏のバリトン独唱 及び チェロとピアノに編曲された2種の演奏で親しんできました。
ソプラノ独唱、伴奏はピアノ、ヴァイオリン、チェロとのことで関心を抱きました。
肝心のゼルキンは3人の伴奏者の一人ですが。
このディスクに収録されているシューベルトとヘンデルはオマケ的な感じも受けますが・・・・私にとっては嬉しく、貴重なオマケ。

ソプラノのラシャンスカは初めて目にする名前です。
曲が流れ出た瞬間から全神経が耳に集中。
ヴァイオリンとチェロ、そしてピアノだけは微かな音量で厳かに奏し始められ
第1節を歌い始めるソプラノのラシャンスカ
厳かな伴奏にラシャンスカの深々とした響きのある声質。
奏し歌われる静かで厳かな調べ。美しい旋律。

この歌曲に出合って以来、ヤコビの詩とシューベルトの旋律には心に響くものがありました。
こちらのディスクではピアノと弦楽器での伴奏として編曲され、弦が加わることで敬虔で厳かな雰囲気が醸し出されているように感じられます。
ラシャンスカは一言一言、厳かに、敬虔に、そしてしみじみと歌い上げ胸を打たれます。

ラシャンスカはシューベルト付曲の第2節までを歌っているようです。
各節の1行目から4行目までは静かに厳かに歌われ
各節、5行目の歌詞で、「旅立った魂よ」と呼びかける部分は他の行よりも強調して歌われ
最後、6行目の「すべての魂よ、安らかに」との部分では、 魂へ畏敬の念を込めるかのように、優しく語りかけるかのような歌唱。

厳かな静けさを湛えたラシャンスカと3人の伴奏。
今まで耳にしてきた数種の「万霊節の連祷」。
こちらの演奏では厳かな趣が深く胸を打ち最も心に残るようです。

録音は1939年とのことですが鑑賞上、支障はなく
逆に、この曲には 古い音 がピッタリしているような気もします。

Box の主役はゼルキンなのにソプラノが主役になってしまいました。
とにかく、想像以上に素晴らしい「万霊節の連祷」に出合うことができました。

以下に、長くなりますが全訳を引用させていただきます。
自分の心の祈りとして、歩むことができたら・・・・との願いを込めて。

ライン(421)

Litanei auf das Fest Allerseelen
詩:ヨハン・ゲオルク・ヤコビ

(シューベルト付曲の3節)
Ruhn in Frieden alle Seelen,
die vollbracht ein banges Quälen,
die vollendet süßen Traum,
lebenssatt, geboren kaum,
aus der Welt hinüberschieden:
alle Seelen ruhn in Frieden!

Liebevoller Mädchen Seelen,
deren Tränen nicht zu zählen,
die ein falscher Freund verließ,
und die blinde Welt verstieß:
alle, die von hinnen schieden,
alle Seelen ruhn in Frieden!

Und die nie der Sonne lachten,
untern Mond auf Dornen wachten,
Gott, im reinen Himmelslicht,
einst zu sehn von Angesicht:
alle, die von hinnen schieden,
alle Seelen ruhn in Frieden

(原詩全訳)
安らかに眠ってください すべての魂よ
不安に苦しみ抜いた魂よ
甘い夢を見終えた魂よ
生きる事に倦んだ魂よ
生まれるや否やこの世から旅立った魂よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

ここで古き友人を探し求めている魂は
幾度となく涙を流しながら、決して逃げ出す事はない。
友人たちの誠実な手の前では
その重荷を忘れない者はいなかったのだから。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

愛 深き少女たちの魂よ
数え切れない涙を流した
不実な恋人に捨てられ
理解の無い世に追い立てられた少女たちよ
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください

また 若者も、彼のために 人目を忍んで
彼の花嫁が 朝早くに
-彼を愛が 墓に横たえてしまったために-
彼の墓から蝋燭を持って出てくる。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

すべての霊魂よ、まったく澄み切った心で
真の殉教者となり
聖地のために戦い
その責め苦を自慢しようとはしなかった霊魂よ。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

また 決して太陽に笑いかけず
月の下 茨の上で 目を覚ましていた者も
神と 清き天上の光の中で
いつか あいまみえるのです。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

また いつもバラの花園で
喜びの杯を手に待ちわびていた人々
だがかつて、苦難の時期には
自分の苦しみを味わった人々も。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

そしてまた どんな安らぎも知らずに
勇気と力で
半ば眠りこけた世界で
死体であふれた戦場へ送り出された人々も。
この世を去ってしまった あらゆる人々よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!

安らかに眠ってください すべての魂よ
不安に苦しみ抜いた魂よ
甘い夢を見終えた魂よ  
生きる事に倦んだ魂よ 
生まれるや否や この世から旅立った魂よ
すべての魂よ、安らかに眠ってください!
                   (若林氏訳を引用)

              
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2017.12/30(Sat)

Op.420  2017年 出合ったCDたちに ありがとう!

一年を振り返り昨年、最後の記事を読み返してみました。
例年、書き出しも同じようで・・・。

2017年、今年もいろいろなディスクたちに出合うことができました。
そして今年もまた、ブログ友達(勝手に思っている)のブログを拝読させていただいたり、お寄せいただいたコメントを通し、年毎に音楽の世界が拡がってきているように思います。
好きな作曲家、好きな作品ばかりを飽きることなく聴くことが多く、狭い音楽の世界の住人ですが、ブログの存在が音楽の世界を広めてくれています。

嘗て聴いた作品でも、「こんなに良い曲だったかしら?」と再認識をすることも多くなりました。
当拙ブログに綴った作品であっても、ふとした機会に聴いてみると、取り上げ綴った時よりも一層、曲が素晴らしく耳に伝わることもしばしばになりました。

今年、出合うことができたディスクたちで心に残ったものを、思いつくままに順不同で次に。

筆頭はハイフェッツの コンプリート・ステレオ・コレクション です。
415:ミクロス・ロージャ:ヴァイオリン協奏曲 ハイフェッツ

Box を求めると気に入っている作品ばかりを先に聴いてしまい「後は、またゆっくり」というのが毎度のパターンです。
その後は・・・時々、想い出したように Box を取り出して聴いたりすることが多く、Box の全てのディスクを聴くことは滅多にない有様。
例外がこのハイフェッツです。
私にとっては珍しく届いてから連日、次々とディスクを取り出しては聴いておりました。
このBox の収録曲で久し振りにシューベルトの大のお気に入りの「ヴァイオリンとピアノのための幻想曲」D.934 を耳にして、この曲に対する熱が再燃してきました。
こうなると、手持ちにないディスクの他の演奏家でも聴きたくなってしまいます。
ショップ・サイトでのディスク探し。
そして求め・・・数種のディスクを入手しては聴き入ってしまいます。
ハイフェッツの演奏を機にシューベルトの「幻想曲」D.934 をしばしば聴くこの頃。
やはりハイフェッツの「幻想曲」 が今の私のベスト盤のようです。
シューベルトの曲に話が逸れてしまいました)
収録されているディスクのほとんどの演奏がお気に入りになった Box です。

今年は昨年以上にベートーベンの作品とのお付き合いも多くありました。

ハンガリー四重奏団~ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集
389:ベートーヴェン弦楽四重奏曲第16番ハンガリー四重奏団(1953)全集

この数年来、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全集をいろいろ聴いてきました。
印象深い演奏、現在のお気に入りはハンガリー四重奏団の全集です。
昨年はズスケ四重奏団だったようです。
ズスケ四重奏団に今年、新たにハンガリー四重奏団が加わりました。

ベートーヴェンが続きます。

ケンプ~ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集
418:ベートーヴェン ピアノソナタ第13番 ケンプ~ピアノ・ソナタ全集

長年、苦手意識を抱いていたベートーヴェンのピアノ・ソナタが身近に感じられるようになった年でした。
昨年よりも、また一歩、身近に感じられるようになったようです。
大好きなベートーヴェン(シューベルトとブラームスも)でありながら最後まで苦手意識を払拭できなかったピアノ・ソナタ
昨年はアラウの全集がお気に入りになっていました。
とは言え、全曲を聴いた訳ではなく関心のある曲だけを聴いておりました。
最近は全集の一曲一曲に耳を傾けるようにもなってきました。
当拙ブログも気が付けば「ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴くシリーズ」(続行中です)になっておりました。
目下、ベートーヴェンのピアノ・ソナタに熱中状態です。
こうなると一目散になり突っ走ってしまう自分の性格。
いろいろなピアニストの演奏で聴きたい・・・ブログ友達がブログで記事になさっていらして気になっていた、コワセヴィッチとリチャード・グードの全集も届き耳を傾け始めたところです。
2つの全集を聴き終えるには、年を跨ぎまだまだ先になりそうな気配。
一応、現在のお気に入りの全集は昨年出合ったアラウ(1960年代録音)、そして今年出合ったケンプの全集です。

今年は珍しくモーツァルトのディスクも印象に残っています。
クラリネット協奏曲の虜になった年でした。

モーツァルトクラリネット協奏曲
        by
ライスター(Cl)、カラヤン&ベルリン・フィル
395:モーツァルト:クラリネット協奏曲 ライスター、カラヤン&ベルリン・フィル

この作品もまた「こんなに良い曲だった?」の口癖が出ました。
モーツァルトの作品で特に管楽器のための作品のディスクを主として求め
例年になく一気に耳を傾けた年でした。

駆け足で振り返った2017年。
まだまだ印象に残ったディスクがあり、ジャケットが脳裏にひしめいています。

今年も お世話になりました。
そして、ありがとうございました。
来る年もどうぞよろしくお願いいたします。

どうぞ 良いお年をお迎えくださいますように。

             
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19:23  |  一年のまとめ  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2017.12/23(Sat)

Op.419 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第14番≪月光≫」 by ユストゥス・フランツ

ベートーヴェンピアノ・ソナタ、第8番から始まり今回で連続4回目。
ソナタがシリーズ化してきたようです。
今回は「ベートーヴェンピアノ・ソナタを聴くシリーズ 4」でしょうか。

前回は作品27の2つの作品「幻想風ソナタ」より、作品27-1第13番を聴きましたので
今回は作品27-2の第14番月光」を。
有名すぎる第14番
未知の演奏家で聴きたくなりユストゥス・フランツのピアノで聴いてみました。
私の大好きな廉価盤Box「ベートーヴェン 主要作品全集」からの一枚です。

       ベートーヴェンピアノ・ソナタ第14番月光
    ユストゥス・フランツベートーヴェン 主要作品全集より


       419 ベートーヴェン:.ピアノソナタ第14番 ベートーヴェン主要作品全集 ユストゥス・フランツ
                  (収録曲)
                ベートーヴェン

         ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
         ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光
         ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 Op.28「田園」
  
            (第13番 横山幸雄)
            (第14番 ユストゥス・フランツ
            (第15番 ゲルハルト・オピッツ)


         第1楽章:Adagio sostenuto 嬰ハ短調 2/2拍子
         第2楽章:Allegretto 変ニ長調 3/4拍子
         第3楽章:Presto agitato 嬰ハ短調 4/4拍子


作曲されたのは1801年。
作品27の2曲、第13番と第14番はベートーヴェン自身による命名は「幻想曲風ソナタ」とのことです。
2曲ともに1802年3月、ウィーンのカッピから出版され
第14番の自筆譜はボンのベートーヴェン・ハウスに保存されているとのことです。

第14番の「月光」という呼称は詩人レルシュターブがベートーヴェンの死後の1832年に
第1楽章を形容し次のように表現したことに由来するそうです。
「スイスのルツェルン湖の月光に揺らぐ小舟のよう」
尚、ベートーヴェンの弟子カール・ツェル二ーはレルシュターブより先に
「夜景、遥か彼方から魂の悲しげな声が聞える」と述べているとのことです。

出版のかなり後になり「月光」という俗称が一般的になったそうです。
曲は初めから人気があったとのことでベートーヴェン自身は不快に思っていたようです。
曲そのものが文学的空想を招く要素が強いことが人気を呼ぶ原因にもなっていたそうで
レルシュターブが形容した「月光」以外にもさまざまな独創的解釈が行われてきた、とのことです。

          419:ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番Titelblatt der Klaviersonate Nr. 14 aus dem Jahr 1802
            ソナタ第14番 1802年出版の表紙

曲の献呈は伯爵令嬢のジュリエッタ・グィチャルディに。
ベートーヴェンは初めグィチャルディには「ロンド」作品51-2を贈るつもりだったそうですが
これをリヒノフスキー伯爵令嬢のヘンリエッテに捧げることになり予定を変更して第14番の
このソナタをグィチャルディに回した、と伝えられているとのことです。


ユストゥス・フランツで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番

ゆったりとした遅いテンポで静かに始まる第1楽章。
今まで耳にしてきた演奏よりもフランツの演奏はかなり遅いテンポです。
淡々と奏される続ける左手の三連音。現れる第1主題。
内面を見つめるかのようなピアノ。
テンポの遅さがより一層、その印象を強めるようです。
まるで祈りでもあるかのように静かな調べ。
瞑想的な調べ。
その調べには心奥に悲哀を秘めたような雰囲気も感じます。 
この主題に続き少し明るさを感じさせる旋律。
第1主題で始まる中間部、左手で奏され続けた淡々とした三連音が
音域を高くし奏される部分は恰も「叫び」でもあるかのよう。
再び第1主題が戻り祈りの調べに。
コーダでは左手の三連音が低音で重々しく奏され静かに閉じられる第1楽章。

第2楽章をリストは「2つの深淵の間の一輪の花」と形容したそうです。
軽やかな主題で始まる第2楽章。
主題のレガートとスタッカートでのスタッカートが印象的。
中間では前楽章に漂う悲哀感を払拭するかのような平和な調べのように感じられます。
伸びやかなピアノ・タッチに惹かれているうちに次の楽章に。

激しい趣で始まる第3楽章。
第1主題の迸り出る情熱的な激しさ。
フランツのピアノでは激しさが抑制されているように感じられます。
優雅さをも感じさせるピアニズム。
激しい曲想に気迫を感じつつ耳を傾けていると現れる第2主題。
左手の震撼するようなリズムに乗せて奏される右手の旋律。
暗い重さが漂うような第2主題。
コーダは長く、アルペッジョが幻想的な趣を醸し出しているのが印象的。
ドラマティックに盛り上がり力強く迎える曲の終わり。


耳に馴染んでいるこの曲。
中学校時代でしたでしょうか、この曲も学校の音楽の時間に好むと好まざるとに関わらず
鑑賞をした想い出があります。
ツマラナイ曲・・・というのがその当時の感想。
以来、聞くことはあっても、じっくり耳を傾けたことは・・・なかったように思います。
今回、この曲の特に第1楽章に強く惹かれるものがありました。
人間、変われば変わるもの、と思う昨今です。

ユストゥス・フランツ、名前さえ知らず、演奏も初めて耳にする
私にとっては未知のピアニストの演奏。
聴く前から、興味津々、ハラハラドキドキ。

第1楽章の旋律が流れ始めた瞬間から「?」になる演奏。
「こんなに遅いテンポの曲だった?」・・・とにかく、遅いテンポです。
手元にあったケンプの演奏時間と比較してみました。
フランツ8:17/2:27/7:17
ケンプ 6:01/2:20/5:30
数字を見間違えたかと思いました。
第2楽章は7秒差とは思われないような遅さに感じます。
遅いテンポで奏されるこの曲。そしてフランツの虜になってしまいました。
フランツの紡ぎ出す調べ、演奏はベートーヴェン自身が作品27の2曲に命名した
「幻想風ソナタ」そのもののように感じられます。

第1楽章の荒々しい第1主題でのソフトな感じの打鍵にも好感を抱きます。
フランツの演奏で聴く第1楽章は祈りの音楽。葬送の音楽。
また悲哀感を伴った回顧の音楽のようにも感じられます。
第2楽章には優雅な気品すら漂っているかのようにも。
第3楽章の激しい曲想にも、柔和さを感じさせるピアニズム。
とは言え、曲想の激情、緊迫感、気迫が弱められることのない冷静なタッチ。
激情型の演奏を多く耳にするこの作品。
フランツの演奏はとても新鮮に感じられます。
異色な演奏・・・とは、言い過ぎでしょうか。

このBoxにはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲が数人のピアニストの演奏で収録されています。
フランツの演奏では 第8、14、23番の3曲が収録されていました。


いつもの蛇足です。
ユストゥス・フランツについて知りたくなり、Wikipedia を参照。
以下自分のメモとして。

Justus Franz 1944年5月18日、現ポーランド生まれだそうですので、現在73歳でしょうか。
ドイツの指揮者、ピアニスト及びテレビ司会者(クラシック音楽啓蒙番組)とのこと。
4歳でピアノ演奏を始める。
1967年にミュンヘン国際音楽コンクールに出場、国際的な活動の開始。
     ウィルヘルム・ケンプのマスタークラスでの学習はフランツの成長の歩みに
     最大の影響を与えた。
1970年、カラヤン指揮、ベルリン・フィルとの共演により世界の第一線に。
1975年、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルとの共演にてアメリカ合衆国デビュー。
1986年、ハンブルク高等音楽演劇学校の教授に就任。
     クラシック音楽啓蒙のためにシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭を創設。
1989年、ドイツ=ソビエト青少年フィルハーモニー管弦楽団の設立者として名を連ねる。
1995年、各国から新人演奏家を結集しフィルハーモニー・デア・ナツィオーネンを結成。

彼は古典派からロマン派までの音楽、特にモーツァルトの作品を専門にしている。
エッシェンバッハとは連弾曲や2台のピアノ用作品で共演、録音も残す。

ショップ・サイトでモーツァルト作品のエッシェンバッハとの共演(1960年)のディスクが数枚目に付きました。
食指が動きそうです。
                    
              
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2017.12/16(Sat)

Op.418 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第13番」 by ケンプ

ベートーヴェンピアノ・ソナタの世界を散策しているうちに
ケンプの演奏を聴き、気が付けば、すっかり嵌り込んでいました。

           ベートーヴェンピアノ・ソナタ第13番          
         ケンプベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より


           418:ベートーヴェン ピアノソナタ第13番 ケンプ~ピアノ・ソナタ全集
                   (収録曲)
                 ベートーヴェン

          ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26
          ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
          ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
          ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 Op.「田園」

               ウィルヘルム・ケンプ(P)
                (録音:1964-1965年)

            第1楽章:Andante – Allegro
            第2楽章:Allegro molto e vivace
            第3楽章:Adagio con espressione
            第4楽章:Allegro vivace


作曲されたのは1800年から1801年にかけてだそうです。
自筆譜は紛失しているとのこと。
ベートーヴェンは30歳前後、交響曲や弦楽四重奏曲の最初の作品が書かれた頃であり、作曲家としての巨人的な歩みの大きな第1歩を踏み出す時期だったそうです。

作品27には2曲のピアノ・ソナタがあるそうです。
作品27-1がこの第13番。作品27-2が第14番の「月光」。
この2曲は「幻想曲風ソナタ:Sonata quasi una Fantasiea」と題されているとのことです。

この時期にはベートーヴェンはピアノ・ソナタを通して意欲的な試みを行っていたそうです。
典型的な一例になるのがこの作品27の2曲とのことです。

ソナタ第13番はベートーヴェンがピアノを教えたことがある、リヒテンシュタイン侯爵夫人ヨゼフィーネ・ゾフィに献呈されたそうです。

               (wikiドイツ)ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第13番 リヒテンシュタイン侯爵夫人
              Josephine Sophie von Lichtenstein
              (1848年2月23日ー1876年6月21日)

蛇足ですが、リヒテンシュタイン侯爵はワルトシュタイン伯爵の従兄弟にあたるそうです。


ケンプのピアノで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第13番

柔和な優しい旋律で始まる第1楽章の序奏。
主題の旋律を弾く右手を左手の伴奏が華やかさを添えているよう。
第2部の中間の楽節も柔和で美しい調べ。
主題の変奏の活気のある雰囲気。 
3部に入り曲想が活動的。躍動感のある動きを。
コーダに入り、静かな雰囲気が戻り静穏で柔和な調べが奏され
そのままアタッカで次の第2楽章に。

活気を帯びた右手と左手の強い打鍵で始まる第2楽章。
前楽章の静穏な趣とは打って変わり激しさを感じさせる主題。
中間部でのスタッカートの切れの良い打鍵とリズミカルな趣に覇気が感じられるようです。
第3部に入りレガートの右手、スタッカートの左手で始まる対照的な動き。
緊張感が漂っているようです。
短いコーダは力強く奏されて次の第3楽章にアタッカで。

第3楽章は序奏のアダージョを独立した一つの楽章と見なすこともあるそうです。
ブックレットの記載を見ると、ケンプはアダージョを独立した楽章として第3楽章、次のアレグロ部分を第4楽章として4楽章構成で演奏しているようです。

厳かに感じられる序奏で始まる第3楽章。
静寂を感じさせるような雰囲気の主題。
続く調べはピアノが歌う抒情歌のよう。
ピアノのカデンツァを経て、序奏部のアダージョから次のアレグロに。

一変する趣。 生き生きと溌剌と始まるアレグロの第4楽章。
このロンド主題の明朗さ軽やかさ。
鍵盤の上を飛び跳ねるかのような躍動感。
次いで第2主題での右手の活発な動き。
次第に熱を帯びたようなドラマティックさに。
激しい起伏のある旋律が続いた後に迎えるコーダ。
コーダで雰囲気が一転。
奏される第3楽章冒頭のアダージョの主題。
ピアノの静かな瞑想の調べ。
短いカデンツァを経て、突如プレストに。
駆け巡るようなピアノ。
迎える力強い曲の終わり。


ケンプのピアノを聴いたのは、またまた昔々のこと。
アナログ・レコードでベートーヴェンの「三大ピアノ・ソナタ」であったように記憶しています。
ケンプの演奏も云十年、耳を傾けることがなく過ぎ去った長い年月。
ソナタ全曲をいろいろな演奏で聴きたく求めた全集の一つです。
実はバックハウスと思って求め、届いて注文の間違いに気付いた次第。

さて、手元に届いたばかりのケンプの全集から、今回のこの一枚のディスクから聴き始めました。
収録されている第12、13,14,15番の4曲を聴き・・・第14番は勿論のこと、いずれの曲からも魅力が感じられます。
この4曲のうちで一番印象深く感じたのは第12番かもしれません。
どの曲から登場してもらうか迷った末に、今回は第13番になりましたが。

作品27の2曲のうち作品27-2の第14番「月光」の影に隠れ
忘れられた(?)ような存在の作品27-1の第13番。
嘗てこの曲をきたことがあるのか、これまた記憶は定かではありません。
が、第3楽章のアダージョの冒頭の調べに「いつか、どこかで聴いたような」懐かしさと親しみを感じます。
心に残り、また染み入り、この曲の中でお気に入りの旋律です。
第1楽章の序奏そして美しい中間部も印象的です。

音の余韻をほとんど残さず、ドライに感じられるケンプの音色。
音の輪郭が明瞭に感じられるようです。
旋律線も克明で爽快なピアニズム。
自己と対話をしつつ冷静に楽想を紡ぎ出しているように感じられます。

ケンプの演奏を聴きつつ、想い出していたのは
CD時代になり云十年前に初めて求めたベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集はアルフレート・Bでした。
その全集は機会がある毎に取り出して聴いては、即、CDラックに。
一番多く手にして聴いた全集でしたがベートーヴェンのピアノ・ソナタに一度も親しみを感じることがありませんでした。
自分の感性に合わないピアニストだったのでしょうか。
もし、今でも他のピアニストの演奏を聴くことなく、アルフレート・B の演奏を聴いていたとしたら・・・。
ケンプとの出会いは一つの大きな転換点になったようです。

               
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20:21  |  ベートーヴェン  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2017.12/09(Sat)

Op.417 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第8番≪悲愴≫」 by バレンボイム

ベートーヴェンピアノ・ソナタで最初に気に入ったのが第8番。大昔のことです。
今でも、この8番はベートーヴェンのソナタでは5本の指、いえ、3本の指に入るお気に入りです。
今日は昔懐かしい第8番を。
ピアノはバレンボイム。第1回目、1960年第録音の全集からです。

         ベートーヴェンピアノ・ソナタ第8番「悲愴
       バレンボイムベートーヴェン ピアノ・ソナタ全集より


         417 :ベートーヴェン ピアノ.ソナタ第8番 全集 バレンボイム
                 (収録曲)
                ベートーヴェン

           ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 Op.13
           ピアノ・ソナタ第14番嬰「月光」 Op.27-2
           ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 Op.57

             ダニエル・バレンボイム(P)
       (録音:1966-1969年 アビー・ロード・スタジオ)

        第1楽章:(序奏)Grave 4/4拍子 ハ短調
             (主部)Allegro di molto e con brio
        第2楽章:Adagio cantabile 2/4拍子 変イ長調
        第3楽章:Rondo, Allegro 2/2拍子 ハ短調


作曲年代については正確には分からないそうですが、1798年前後に完成されたものと推定されているとのことです。
ベートーヴェン、28歳から29歳頃にかけてでしょうか。
ノッテポームによると第3楽章は初めはピアノのために考案されたものではなく、ピアノとヴァイオリンのために考えたらしい、とのことです。
このソナタのスケッチは弦楽三重奏曲作品8-1と3 のスケッチに交じっているそうです。

曲が書かれた当時、1798年頃からベートーヴェンの創作活動は次第に活発になってきたそうです。
ソナタ「悲愴」はベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタの頂点を成す傑作で、劇的な美しい楽想のために広く知られている作品とのこと。
演奏技術も比較的難しくなく演奏される機会が多いそうです。

1799年に出版された時、初版の表紙に “Grande sonate pathetique” と記されていたそうです。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中で自身により標題が付けられたのはこの曲が初めてであり、他には作品81a 、第26番の「告別」があるだけとのこと。

悲愴」という言葉が当時のベートーヴェンにとってどのような意味があったのかということについて、ヴァイオリニストとしてベルリン・フィルにデビューをしたドイツの音楽評論家、指揮者として1920年代半ばまで活動をしたパウル・ベッカー(1882-1937年)は次のように述べているそうです。
「これまでソナタに分散的に現れていたベートーヴェン特有の感情がはっきり意識的に結晶させられたと見てよいであろう」


この作品を作曲した当時のぺートーヴェンの年譜を自分のメモとして。
1798年(28歳):ヴァイオリニスト、クロイツェルと知り合う。
         第3回目のプラハ旅行。
1799年(29歳)5月:ブルンスヴィック伯爵令嬢のテレーゼとヨゼフィーネがウィーンに滞在し
          ピアノを教える。
        2つのピアノ・ソナタ作品14-1と14-2 及び ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」出版
1800年(30歳)4月2日:ベートーヴェン自ら主催する初めての音楽会。
            ピアノ協奏曲第1番、七重奏曲、交響曲第1番他を演奏指揮。
        ジュリエッタ・グィチャルディ、カール・チェルニーがピアノの弟子になる。


曲の献呈はリヒノフスキー侯爵に。

           417 ピアノ・ソナタ第8番 リヒノフスキー侯爵
    Fürst Karl Alois Johann Nepomuk Vinzenz Leonhard Lichnowsky
            (1761年6月21日-1814年4月15日)

リヒノフスキー侯爵の名前は今までもしばしば目にしていますが、自分のメモ、まとめとして以下に。
神聖ローマ皇帝の宮廷において侍従として仕えた貴族、大地主。
侯爵と同時代のベートーヴェンの才能を愛し、1794年にはベートーヴェンを自宅に住まわせたとのこと。
侯爵の好意、支援により、ボンからウィーンに出てきた若いベートーヴェンの生活は楽になったそうです。
尚、ベートーヴェンがリヒノフスキー侯爵に献呈した作品のまとめ。
「3つのピアノ三重奏曲」作品1の3曲、「パイジェルロの歌劇の主題による9つの変奏曲」、ピアノ・ソナタ第8番、第12番、交響曲第2番。


バレンボイムで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴

第1楽章の序奏のグラーヴェにベートーヴェンが「悲愴」との標題を用いた主要な理由があると推測されるようです。
グラーヴェの最初の動機はチャイコフスキーの交響曲第6番に類似のものが現れているそうですが、まったく気が付きませんでした。
チャイコフスキーの第6番に改めて耳を傾けてみなくては・・・・。

グラーヴェの序奏で始まる第1楽章。
バレンボイムはこの序奏でテンポをかなり遅く弾いているのが印象に残ります。
「悲愴感」よりも内省的な趣を強く感じる演奏。
序奏を終え主部に。
情熱を湛え力強く奏される第1主題。
流動感のある第2主題。
次々と現れる耳に馴染みの旋律。
展開部では情熱的で躍動感溢れる曲想からゆったりと静かな趣に。
そして現れる序奏の旋律。
消え入るかのように奏されるグラーベの動機は静かな呟きのよう。
再現部を経て力強くドラマティックに閉じられる第1楽章。

静かに始まる第2楽章。
第1部の静かな美しい旋律。
トリオでは翳りを感じさせるような趣も。
静かな祈りを連想させるかのような調べ。
安堵感が漂うような短いコーダで静かに閉じられる第2楽章。

軽やかに流れるようなロンド主題で始まる第3楽章。
第2主題の明るさ。
再度登場するロンド主題を経て現れる第3主題。
心持ち穏やかな感じがする主題。
ドラマティックな経過部を経て現れるロンド主題。
次第に高揚する情熱的な雰囲気。
戻る静けさ。ロンド主題が静かに奏され、渾身の打鍵のように力強く迎える曲の終わり。


この曲に耳を傾けるのは久々振りのことです。
バレンボイムの演奏を聴き特に印象に残るのは第1楽章の序奏。
グラーヴェのかなり遅いテンポ(のように感じられます)で奏され、他の演奏者とは一線を画しているように思われます。
この曲の美しさは内省的な趣として感じられるようです。
「悲愴」感の中に身を置くのではなく、一歩退いて「悲愴」を見つめつつ(というのも変な表現ですが)音を紡ぎ出し、音楽を造形しているように感じます。

ゼルキンの演奏(1970年録音)も聴いてみました。
第2楽章の旋律を弾くゼルキンのピアノは「美しさ=寂寥なのだよ」と語りかけるかのように、耳に心に伝わってくるようです。
厳しさを感じさせつつも心に染み入るゼルキンの「悲愴」。

蛇足ですが。第2楽章の旋律を用いた声楽曲で初めて耳にしたのがLPで聴いたヘルマン・プライの歌声でした。
また、年月を経てカレーラスが歌う “I remember you” との出合い。
プライ、カレーラスで歌われる第2楽章の「歌」も気に入っています。
何年も聴いていなかった懐かしい「歌」。
今夜はこれから「歌」で聴いてみましょう。

               
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