♪クラシック音楽 さんぽみち♪〜第1楽章:CD&MUSIC BIRD

クラシック・ビギナーのCD及びCS-PCM放送のミュージック・バードを主とした音楽便りです。 敬愛する作曲家はベートーヴェン。 古典派〜ロマン派を中心に聴いています。 時には日常の雑感も。また、時には家族のコザクラインコの話も。ゆっくり、のんびりと。

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Op.378 ブラームス:「ピアノ三重奏曲第3番」 by ボザール・トリオ

ベートーヴェンのピアノ三重奏曲に惹かれている昨今。
ふと、ブラームスのピアノ三重奏曲を聴いてみたくなりました。
初めて聴く第3番。
演奏はボザール・トリオです。


               ブラームス:ピアノ三重奏曲第3番
             ボザール・トリオ フィリプス録音全集より

               
          378;ブラームス:ピアノ三重奏曲第3番 ボザール・トリオ
                       (収録曲)
            ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 Op.8
                    ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 Op.101

                      ボザール・トリオ
                   メヘナム・プレスラー(P)
                   イシドア・コーエン(Vn)
                   バーナード・グリーンハウス(Vc)
                      (録音:1986年)


           第1楽章:Allegro energico ハ短調 3/4拍子
           第2楽章:Presto non assai ハ短調 2/2拍子
           第3楽章:Andante grazioso ハ長調 3/4、2/4拍子の混合
           第4楽章:Allegro molto ハ短調 6/8拍子


この曲はブラームスが1886年5月から秋までスイスのトゥーン湖畔に
滞在していた際に作曲されたそうです。
この年、ブラームス53歳頃でしょうか。
因みに11月には弟のフリッツが逝去とのこと。

当時のブラームスの備忘録によるとこの滞在中に歌曲、合唱曲や
「チェロ・ソナタ第2番」、「ヴァイオリン・ソナタ第2番」とともに
ピアノ三重奏曲が完成されたそうです。

ブラームスは1886年からの3年間、毎夏をスイスの雄大な風景に囲まれた
トゥーン湖の畔のホーフシュテッテンで避暑をしたそうです。
トゥーンの滞在中には多くの室内楽作品が作曲されたとのことです。
トゥーン滞在中にブラームスは週末ごとにベルンの親友ヴィットマン宅に行き
室内楽のアンサンブルを楽しむことが常だったそうです。
ブラームスは室内楽にかなり魅力を感じていたとのこと。
トゥーンでの最初の避暑を過ごした1886年に作曲されたピアノ三重奏曲第3番。
この年はブラームスにとっては悲しみも悩みもない愉しい幸福な時期だったそうです。
生涯のうちで最も精力的に創作活動を続けることができた年でもあったとのことです。

私的初演は曲の完成後、間もなく親友のヴィットマン宅で行われたそうです。
公開初演は1886年12月30日にブダペストにおいて
イェーネ・フバイのヴァイオリン、ダーヴィト・ポッパーのチェロ
そしてブラームス自身のピアノで行われたそうです。


ボザール・トリオで聴くブラームス、ピアノ三重奏曲第3番

激しく力強い第1主題で始まる第1楽章。
ピアノは渾身の力を感じさせるような打鍵。
弦の力強さ。
そのうちにピアノと弦楽器で刻まれる切れの良いリズム。
闊歩するような趣のリズムが印象に残ります。
第2主題になり弦が奏する穏やかな歌のような調べ。
寄り添うように伴奏をするピアノ。
調べには流麗さも。
静かに奏された後に力強い和音で閉じられる楽章。

第2楽章はスケルツォに相当するとのことです。
ピアノと弦楽器とが急いたように奏され始まる第1部。
リズミカルな感じの中にも仄暗さを感じさせるピアノ。
第2部でピアノに郷愁を感じさせるかのような趣も。
中間で弦が奏する茶目っ気を感じさせるユーモア。
あたかも照れ隠しのような意外性を感じるユーモアです。
静かに閉じられる第2楽章。

第3楽章の拍子は3/4拍子と2/4拍子が混合したものになっているとのことです。
ヴァイオリンがチェロを伴奏に穏やかに奏されて始まる第3楽章。
柔和な調べ。
調べは弦楽器たちからピアノへと移り繰り返され。
再び現れる旋律はヴァイオリンを主奏にチェロの伴奏で穏やかに。
繰り返すピアノはトリルで装飾的に花を添えているよう。
柔和に語り合うピアノと弦楽器たち。
雰囲気に少し明るさが現れ語り合うピアノと弦楽器たち。
再現部は回想にように感じられるものがあります。
静かに奏され曲の終わりかと思っていると
強音で和音が出され凛とした趣で第3楽章の終わりに。
第1楽章と同じような楽章の終わり方に決意のような意志力を感じます。

ヴァイオリンは軽快に、ピアノは活発に奏されて始まる第4楽章。
力強さ、激情が混沌とした雰囲気のようにも感じられるこの第1主題。
ピアノのアルペッジョに乗り奏される弦楽器。
第2主題ではピアノは柔和に。
スタッカートで始まる展開部では活気が感じられます。
ピアノと弦楽器が奏する情熱的な世界を経て
明るく始まるコーダ。
弦楽器たちは歌を歌うかのように伸び伸び。
冒頭、第1主題の激しさがピアノと弦楽器で奏され
渾身の力強さを感じさせつつ締めくくられる曲。


力強く雄大な趣を感じる曲。
3つの楽器だけにも拘らず大きなスケールを感じてしまいます。
旋律に支配をされグイグイと引き込まれ
旋律の進行に捕らわれているうちに曲が終わってしまいました。
ブラームスの曲を聴いているとつい季節に例えたくなってしまいます。
この曲は真夏、灼熱の夏を連想してしまいます。
しみじみ・・・とは無縁の世界がこの曲に拡がっているように感じられます。

ボザール・トリオの演奏を耳にすると常にプレスラーのピアノに
耳を奪われてしまいます。
ピアノが主人公なのですからピアノの存在が大きいのは
当然と言えば当然なのですが。
この曲でもプレスラーのピアノに自然に惹き込まれてしまいます。
此処で聴かせてくれる活き活きとしたピアニズム。
強音での力強さには渾身の力を感じます。
エネルギッシュな打鍵。
アルペッジョが活躍する第4楽章でのプレスラーのピアノもまた印象的。
ボザール・トリオの演奏は情熱的な雰囲気に満ち華麗さをも感じさせるようです。

プレスラーは1955年に結成されたボザール・トリオの結成者で
プレスラーただ一人が交替することなくトリオを支えてきたそうです。
今のところメンバーではヴァイオリンのコーエン、チェロのグリーンハウスとの
トリオの演奏が気に入っています。

                  
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Op.377 ボロディン:「弦楽四重奏曲第2番」 by エマーソン弦楽四重奏団

いつの頃からか、耳を傾ける音楽は気に入った作曲家の作品や
気に入った曲ばかりを聴くようになっています。

過日、お寄せいただいたコメントにボロディンの弦楽四重奏曲第2番の曲名を
拝見してすっかり聴くことのなかったボロディンの作品を聴いてみました。
第3楽章の「夜奏曲」は遥か昔の愛聴曲の一つであったことを思い出しました。
前回のチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」と同じように
昔々の愛聴曲でありながら久しく耳を傾けることのなかった曲です。

ボロディンは馴染むことができない作曲家の一人。
弦楽四重奏曲第2番はディスクを入手したときに聴いただけだったようです。
ロシア国民楽派の作曲家は昔も今も大の苦手で・・・。
云十年振りに今回は全楽章にじっくり耳を傾けてみました。

エマーソン弦楽四重奏団のディスクです。
かなり以前に求めた DGの SUPER BEST 101 です。
現在発売されているCDジャケットとは微妙ににデザインが違いますが
一応ジャケット画像を以下に。

                 ボロディン:弦楽四重奏曲第2番
                   エマーソン弦楽四重奏団

            377:ボロディン:.弦楽四重奏曲第2番 エマーソン弦楽四重奏団
                        (収録曲)

       ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 Op.96 「アメリカ」
       チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 Op.11
       ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調

                  エマーソン弦楽四重奏団
                (録音:1984年 ニューヨーク)


           第1楽章 :Allegro moderato ニ長調 /2拍子
           第2楽章:Scherzo―Allegro ヘ長調 3/4拍子
           第3楽章:Notturno―Andante イ長調 3/4拍子
           第4楽章:Finale―Andante - Vivace ニ長調 2/4拍子


作曲されたのは1881年6月の下旬に数週間で完成したそうです。
余計なことながら、CDジャケットの解説によると作曲に着手したのは
1874年冬、全曲完成は1879年8月と記述されていますが・・・これは第1番の方の
作曲時期では?

ロシア国民楽派の作曲家のうちで室内楽の傑作と呼べる作品を遺したのは
ボロディンだけだったそうです。
彼らは絶対音楽として室内楽に対し国民主義の理念からは相容れないもの
として冷淡であったとのことです。
ロシア国民楽派、<五人組>の中でただ一人、ボロディンは少年時代から
チェロの演奏に親しんだこともあり友人たちと合奏をして楽しむための
室内楽を多く作曲したそうです。
ボロディンが1862年に<五人組>に加わりその指導者のバラキレフの
指導を受け始める以前のものは習作の域を出ないものだったそうです。
また、内容的にもメンデルスゾーンやシューマンの模倣に過ぎなかったとのこと。

ボロディンは医科大学の科学者、教授として多忙な日々を送り
わずかな余暇を作曲に当てていたそうで
ボロディン自身は自らを「日曜日の作曲家」と呼んでいたそうです。

初演は1882年1月26日、ぺテルブルクに於いて
弦楽四重奏曲第1番と同様にロシア国民協会四重奏団によって
行われたそうです。
尚、この初演から5年後の1887年2月27日(ユリウス暦)に
ボロディンは急死をしたそうです。53歳。
曲の献呈はボロディン夫人のエカテリーナ・ボロディンに。


チェロの歌で始まる第1楽章。
第1楽章のこの冒頭の第1主題。惹きつけられる旋律です。
チェロから第1ヴァイオリンへと歌は移り。
柔和で抒情的な趣が感じられる第1主題は心に刻まれます。
第2主題になり第1主題と似たような趣でピッツィカートを伴奏に
奏される第1ヴァイオリン。
田園の長閑さを想起してしまうような穏やかさも感じます。
ゆっくり閉じられる楽章。
優しく美しい第1ヴァイオリンが主唱する歌の楽章でしょうか。
チェロの伸びやかな歌と響きも心に残る楽章です。

第2楽章は2つの似通った楽想の交替で成っている楽章だそうです。
軽快な旋律で始まる第2楽章。
1つは伸びやかな流れのような楽想でホッとする感じがします。
2つ目の楽想は軽妙で活発さを感じるようです。
この2つの楽想が交互に奏され活発な印象を受けます。
楽章の終わりは忙しげに奏され速いピッツィカートで閉じられる第2楽章。
活発さを感じさせる楽章でしょうか。

ヴァイオリンとヴィオラの調べで始まる第3楽章。
例の有名な旋律。
第2ヴァイオリンがヴィオラを伴奏に奏する静かに美しい調べの主楽想。
ヴァイオリンの歌が続き、次に歌い出すチェロ。
第1ヴァイオリンが静かに弱音で奏する調べ。
この主楽想も忘れ難い調べです。
高揚した雰囲気の副楽想。
主奏をする楽器が変わりつつ
伴奏楽器にも変化があり主奏と伴奏に色彩が漂うよう。
静かに終わる第3楽章。
一度、耳にすると忘れられない印象を受ける第3楽章。

ゆっくりとした序奏で始まる第4楽章。
序奏が終わり忙しげに奏される序奏の要素。
緊張感を湛えたチェロが奏する持続音のようなパートを境に
躍動駅な雰囲気に。
再び現れる序奏の要素。
華々しく奏されて閉じられる曲。


エマーソン弦楽四重奏団で聴くボロディンの弦楽四重奏曲第2番。
全楽章にじっくり耳を傾けるのは初めてです。

第1楽章の穏やかさ、歌
第2楽章での活発さ
第3楽章での美しい抒情性
第4楽章は第1、2楽章の面影はまったく感じられず即物的に感じられてしまいました。
奇数楽章は「静」、偶数楽章は「動」のようにも感じます。

エマーソン弦楽四重奏団は緻密な構築さを感じさせる演奏でしょうか。
「情」よりも「知」を感じさせる演奏のように感じます。

お気に入りの第3楽章を聴きたく思い
手持ちのディスクからイタリア四重奏団の演奏も聴いてみました。
情感の豊かさを感じさせられるようです。
ホッとした気分で耳を傾けていました。

あと一枚のディスク。こちらも昔、求めたディスクです。
「アンダンテ・カンタービレ~ロシアへの誘い」と題された小品集。
ボロディン四重奏団の演奏です。
残念ながらボロディンの第2番は第3楽章のみが収録されていました。
ボロディン四重奏団の全楽章の演奏に関心が湧いてきました。

                  
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Op.376 チャイコフスキー:「弦楽四重奏曲第1番」 by モスクワ弦楽四重奏団

チャイコフスキー弦楽四重奏曲
久し振りを通り越し、一昔振リも通り越し
長い間、聴くことがありませんでした。

先日、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」を聴き
チャイコフスキーの音楽の旋律美に魅了されてしまいました。
第2楽章が「アンダンテ・カンタービレ」として有名なチャイコフスキー
弦楽四重奏曲第1番を思い出しました。

チャイコフスキー弦楽四重奏曲のディスク。
CDラックで眠り続けすっかり忘れかけていた一枚を取り出してみました。
昔々、チェロに編曲された第2楽章の「アンダンテ・カンタービレ」が好きで
しばしば聴いていましたが第1番全曲を聴きたく求めたディスク。
聴き直してみました。
う~ん、ちょっと・・・やっぱり。

手元にある他のディスクを聴いてみました。
チャイコフスキー・エディションからモスクワ弦楽四重奏団の演奏です。
まったく期待していなかったのですが、好感度100%の演奏。
すっかり気に入ってしまいました。


                チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番
                    モスクワ弦楽四重奏団
                 チャイコフスキー・エディションより


             357:チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 モスクワSQ(チャイコフスキー・エディション)
                         (収録曲)

           チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 Op.11
                      弦楽四重奏曲第3番 ホ短調 Op.30 
                          
                     モスクワ弦楽四重奏団
               (モスクワ・ヴィルトゥオーソのソリストたち)
                     Alexandre Detisov(Vn)
                     Alexandre Gelfat(Vn)
                     Igor Suliga(Vla)
                     Alexandre Osokine(Vc)
              (録音:1994年3月17-29日 モスクワ音楽院)


           第1楽章:Moderato e semplice ニ長調 9/8拍子
           第2楽章:Andante cantabile 変ロ長調2 /4拍子
           第3楽章:Scherzo  
                 Allegro non tanto e con fuoco ニ短調 3/8拍子
           第4楽章:Finale  Allegro giusto ニ長調 4/4拍子



作曲されたのは1871年2月、短期間で書き上げられた曲だそうです。
チャイコフスキーはニコライ・ルビンシュテインの勧めで自作演奏会を企画し
管弦楽作品ホールを満たす程の集客はできないと考えたチャイコフスキーは
小ホール向けの室内楽を新たに作ることにし、この曲が作られたとのこと。
曲の評価としてはロシア民謡の旋律を用いた第2楽章、「アンダンテ・カンタービレ」により親しまれ曲全体が優れているという訳ではない、とのことですが。

チャイコフスキーの弦楽四重奏曲で今日残っているのは3曲だそうです。
3曲のうちで最も知られているのが第1番とのこと。
1874年作曲の第2番 および 1876年作曲の第3番は
演奏される機会は少ないそうです。
第3番も聴いてみたのですが個人的には気に入りました。
寄り道になりますが、自分のメモとして。
弦楽四重奏曲第3番はチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1、2番の初演を
担当したヴァイオリニストのフェルディナント・ラウプが1875年3月に死去。
その訃報に際しチャイコフスキーは深い哀悼の念を込め弦楽四重奏曲第3番を
1876年1月、作曲に着手し2月末に完成。
ラウプの霊に捧げたとのこと。

さて話を戻し、1876年12月にモスクワに来た文豪トルストイに敬意を表し
ニコライ・ルビンシュテインは特別の演奏会を催したそうです。
この演奏会での有名なエピソードがあるそうです。
第2楽章の「アンダンテ・カンタービレ」も演奏され
チャイコフスキーの隣にいたトルストイが曲を聴きながら涙を流し始めた、そうです。
この演奏会より10年程を経た1886年7月1日のチャイコフスキーの日記には
 「あの時程、喜びと感動をもって作曲家としての誇りを抱いたことは
 恐らく私の人生に二度とないだろう」
と記されているとのことです。

初演は1871年3月28日にモスクワの貴族会館の小ホールで行われたそうです。
演奏はロシア音楽協会四重奏団のメンバー、F.G.ラウブ、I.P.ブリャニシニコフ
L.F.ミンクス、V.F.フィッツェンハーゲンとのことです。
尚、この時に作家のツルゲーネフも聴きに来ていたそうです。

曲の献呈は生物学者でありロマン主義文学に造詣が深く
またチャイコフスキーにさまざまな影響を与えた友人の
セルゲイ・アレキサンドロヴィッチ・ラチンスキーに。


モスクワ弦楽四重奏団で聴くチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番

ゆったりと奏される第1ヴァイオリンの旋律で始まる第1楽章。
この第1主題に漂う清らかで素朴な雰囲気には即、魅了されます。
お気に入りの主題です。
第2主題になり歌う第1ヴァイオリン。
音色が心なしか第1主題よりも明るいようにも。
第1ヴァイオリンを引き立てる他の楽器たち。
高揚感のうちに展開部に。
再び現れる第1主題の美しい素朴な調べを耳にしてホッとします。
コーダでは華麗な歌を奏しつつ速度を上げて華々しい雰囲気の内に
終わる第1楽章。
第1ヴァイオリンの独壇場のような楽章。
また「流れ」と躍動的なリズムが融合した楽章でしょうか。

耳に馴染みの旋律「アンダンテ・カンタービレ」で始まる第2楽章。
この楽章は2つの要素で構成されているそうです。
ヴァイオリンの歌う主題の優しくしみじみと心に染み入る調べ。
ロシア民謡の旋律が用いられているこの主題。
チャイコフスキーが1869年の夏、ウクライナのカメンカの妹の家に滞在していた際
ぺーチカを作る職人が歌うロシア民謡を聞いた、と言われているそうです。
歌詞は次のようなものだそうです。
「ワーニャは長椅子に座って、コップにラム酒を満たす・・・エカチェリーナのことを想う」
素朴で抒情的な美しい旋律。
第2の要素ではチェロのピッツィカートを伴奏に奏されるヴァイオリン。
再び始めの主題、第1の要素が現れ第2の要素と交互に奏され
落ち着いた雰囲気で次第にゆっくりと。
コーダで始めの主題が静かに消え去るように奏され閉じられる第2楽章。

躍動的な旋律で始まる第3楽章。
活発に奏されるヴァイオリン、ヴィオラそしてチェロ。
中間部では楽器たちは力強く。
トリオではチェロの動きがに面白さが。  
コーダで始めの主題が現れ活発に終わる第3楽章。
活発で元気溌剌の楽章でしょうか。

第1ヴァイオリンが奏する明朗でリズム感のある旋律で始まる第4楽章。
この第1主題は親しみやすい旋律で愉しげな雰囲気。第
1ヴァイオリンが明るく奏する主題を追いかけるヴィオラ。
2つの楽器は活気な雰囲気を織りなしているよう。
第2主題では躍動的に奏される4つの楽器たち。
弾む躍動感。
展開部と再現部での第1主題も印象的な趣。
チェロの活躍にも耳を奪われます。
幾度も耳にするうちに第1主題に魅了されるようになりました。 
休止の後に速度を上げて一気呵成に奏されて閉じられる曲。


昔々、聴いた時よりも何倍も「良い曲だなぁ」と心の中で独り言。
今回、聴いてみて第2楽章は相変わらずのお気に入りですが
第1楽章の第1主題と第4楽章の第1主題にも多いに魅了されました。
特に第4楽章の第1主題は幾度も聴くうちに
懐かしさのようなものさえ感じてしまいます。
今回、聴き直し第4楽章がこの曲での一番のお気に入りの楽章になったような。
曲を聴き終え初めて耳にするような新鮮さを感じています。

モスクワ弦楽四重奏団には期待と言う文字を抱いていなかったのですが
今まで聴いてきた演奏の中では好感を抱きました。
温もりを感じさせる演奏。優しく柔らかな演奏。
情感も豊かに漂い耳を傾けていてホッとする演奏です。
心に染み入る演奏です。
未だ嘗てこの曲の愛聴盤と言えるものはなかったのですが
モスクワ弦楽四重奏団のディスクが愛聴盤、第1号になりそうです。

今回初めて知ったモスクワ弦楽四重奏団。
かなり興味が湧いてきました。
チャイコフスキー・エディションに彼らの演奏で3曲の弦楽四重奏曲が
収録されており喜ばしい限りです。

チャイコフスキーの弦楽四重奏曲も耳を傾けてみると良いものですね。

                  
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Op.375 ベートーヴェン:「ピアノ三重奏曲第5番『幽霊』」 by ケンプ、シェリング&フルニエ

先月、ベートーヴェンピアノ三重奏曲第6番をアシュケナージ、パールマン&
ハレルで聴いた際にお寄せいただいたコメントにて
ケンプシェリングフルニエの名前を拝見して是非、聴いてみたくなりました。
チェリストではフルニエは気になる存在の一人。
フルニエ・エディションにベートーヴェンのピアノ三重曲全曲が
収録されていましたので・・・やっと入手することができました。

時折、少しづつ、ベートーヴェンピアノ三重奏曲を聴いているうちに
ベートーヴェンの作品の中でもお気に入りのジャンルになってきたようです。

ピアノ三重奏曲全曲を手にして最初に聴くのがお気に入りの第7番「大公」。
第7番、6番と聴き進み今回は第5番「幽霊」を。
第5番はこの曲も聴いたことがあるのか、記憶に定かではないのですが。
ケンプシェリングフルニエの演奏で。

              ベートーヴェンピアノ三重奏曲第5番「幽霊」
                    ケンプシェリングフルニエ
       P.フルニエ・エディション~DG 、デッカ、フィリップス録音全集より

           375:ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 フルニエ・エディションより
                          (収録曲)

        べートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 Op.70-1 「幽霊」
                  ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 Op.97 「大公」

                    ヴィルヘルム・ケンプ(P)
                    ヘンリク・シェリング(Vn)
                    ピエール・フルニエ(Vc)
                     (録音:1970年4月)

                第1楽章:Allegro vivace e con brio
                第2楽章:Largo assai ed espressivo
                第3楽章:Presto


過日のベートーヴェン、ピアノ三重奏曲6番の記事と重複しますが。

このピアノ三重奏曲第5番作品70-1 が作曲されたのは第6番作品70-2 と
同じ1808年だそうです。
作品70の2曲で比較的多く演奏されるのはこの第5番作品70-1 の方だそうです。
「幽霊」との呼称の由来はいろいろあるようですが
手持ちの解説によると、この曲の特色となっている第2楽章で醸し出される沈鬱で
神秘的な雰囲気から与えられた呼称とも言われているとのことです。
命名者は不詳とのこと。

   375:ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第5番 
           (ピアノ三重奏曲第5番の自筆譜 Wikiediaより)

初演は作品70-1 と同じく
1808年12月末、クリスマス前後にウィーンのエルデーディ伯爵邸に於いて
行われたそうです。
ピアノはベートーヴェン自身、他の演奏者については不明とのことです。

ピアノ三重奏曲第6番 作品70-2 と同じくエルデーディ伯爵夫人に献呈された
そうです。


ケンプシェリング&フルニエで聴くベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番

第1楽章はピアノ、ヴァイオリン、チェロが奏する第1主題での始まり。
活発に溌剌と力強く奏される第1主題。
すぐに穏やかな調べを奏するチェロ。
歌のようで親しみを感じるチェロの旋律です。
この旋律を歌い継ぐヴァイオリンそしてピアノ。
第2主題ではピアノが主役となり美し旋律を。
展開部での第1主題の変容にはワクワクしてしまいます。
活発に切れ味も鋭く奏される3つの楽器たち。
コーダでも現れる第1主題。
3つの楽器たちは自由に飛翔するかのように奏され
盛り上がり活発に閉じられる第1楽章。

第2楽章は前楽章から一転した雰囲気に。
音量を下げ、弱く奏されるヴァイオリンとチェロ。
そしてピアノもゆっくりと奏される第1主題での始まり。
瞑想的、幻想的な題1主題。
現れる第2主題も第1主題と同じような雰囲気で。
力強さが現れるのも束の間。
再現部では再び戻る静けさ。
ピアノは低音域で規則的なトレモロのように奏されるのが印象的。
ピアノを伴奏に交互に奏されるヴァイオリンとチェロ。
コーダでピアノは下降をするように。
ピアノ、ヴァイオリン、チェロは弱々しく
ピッチカートが3回奏され閉じられる第2楽章。

ピアノの序奏で始まる第3楽章。
明るく軽やかな序奏。
続く第1主題では踊るような明朗さで奏するヴァイオリンとチェロ。
繰り返すピアノ。
第2主題では穏やかな旋律に。
華麗な趣で奏され高揚するピアノ、ヴァイオリン、チェロ。
活き活きとした雰囲気。
闊達に奏される3つの楽器たち。
コーダでのピアノの華々しさ
音力を上げ3つの楽器たちは闊達に奏され閉じられる曲。

この曲も好印象を受けます。
第1楽章の溌剌とした明るさ 
第2楽章の瞑想的な雰囲気 
第3楽章の活き活きとした闊達さ
曲の中では雰囲気を異にする第2楽章もまた聴いていると惹かれます。

フルニエがお目当てでしたが
聴いているうちにやはり曲の主人公のピアノに耳を惹かれてしまいました。
ケンプのピアノは今までも聴いてきたものの・・・
この演奏では目が覚めるようなものを感じる気がします。

ヴァイオリンのシェリング、チェロのフルニエそしてケンプの演奏に漂う風格
とでも言うのでしょうか。
まだ、5,6,7番の3曲しか聴いていませんが
じっくりと耳を傾けたくなる味わい深い演奏のような気がしています。

いろいろな演奏者で聴くベートーヴェンのピアノ三重奏曲に嵌りかけて
きたようです。

                  
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Op.374 チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」 by パールマン;アシュケナージ&ハレル

過日、パールマンのワーナー録音全集の Box より
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の記事にお寄せいただいたコメントを拝読し
チャイコフスキーピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」を聴いてみました。
この曲は嘗て他の演奏で聴いたことがありましたが
記憶に残っているのは第1楽章の第1主題の旋律だけで・・・。
聴いていて掴みにくい曲、とのイメージを抱いていました。
以来、数年を経て耳を傾けこの曲との出合いに喜びを感じています。
演奏はまた、パールマンのワーナー録音全集より
アシュケナージパールマンそしてハレルです。

         チャイコフスキーピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」
                 アシュケナージパールマンハレル
                  パールマン、ワーナー録音全集より

              (HMV)374 チャイコフスキー ピアノ三重奏曲『偉大な芸術家の思い出』 パールマン、アシュケナージ、ハレル
                          (収録曲)

     チャイコフスキーピアノ三重奏曲イ短調 Op.50 「偉大な芸術家の思い出に」
 
                 ウラディーミル・アシュケナージ(P)
                 イツァーク・パールマン(Vn)
                 リン・ハレル(Vc)
                      (録音:1980年)


作曲されたのは1882年、チャイコフスキー42歳の時だそうです。
前年の1881年3月23日にパリで急死をしたチャイコフスキーの先輩であり
恩人のような存在であるニコライ・ルビンシュテインの死を悼み書かれた曲とのこと。
ルビンシュテインの死に伴いモスクワ音楽院の初代校長であった
ルビンシュテインの後任とされたチャイコフスキーは辞退をし
同年の11月にローマに旅立だったそうです。
ローマ滞在中にルビンシュテインの死を悼み、その霊に捧げるために
このピアノ三重奏の作曲に着手をしたとのことです。

曲は2楽章構成だそうですが、第2楽章が2つの部分に分かれているので
3楽章構成とみることもできるとのこと。

楽譜には「ある偉大な芸術家を記念して」と記されているそうですが
偉大な芸術家とはニコライ・ルビンシュテインを指しているとのことです。

              374:チャイコフスキー:「偉大な芸術家の思い出に」ルビンシュテイン
               Nikolai Grigorjewitsch Rubinstein
               (1835年6月2日 - 1881年3月23日)

ルビンシュテインはモスクワ音楽院の初代院長で
チャイコフスキーは無名時代からニコライの世話になり
そのお陰で世に出ることができたそうです。
ピアノ協奏曲第1番の作曲をめぐり2人の間には一時不和になった時期も
あったそうですがニコライに対するチャイコフスキーの畏敬の念は
変わることはなかったそうです。

初演は曲が完成した年、1882年ルビンシュテインの一周忌に
非公開で行われたそうです。
ピアノはセルゲイ・タニェエフ、ヴァイオリンはグルジマリーそしてチェロは
ドイツのチェリストでモスクワ管弦楽団のコンサート・マスターであり
モスクワ音楽院の教授を務めたフィッツェンハーゲンの演奏だったそうです。



悲劇的楽章と名付けられている第1楽章は
静かに流れるようなピアノを伴奏にチェロが奏する第1主題の旋律での始まり。
悲痛、沈痛な調べの第1主題。
第2主題になり抒情的に奏される穏やかさ、静けさ。
この主題に漂う調べの優しい美しさは
亡きルビンシュテインへの慰霊の調べのように感じられます。
さて、主題はチェロからヴァイオリンに受け継がれ。
ヴァイオリンとチェロが二重唱のように歌う主題。心に染み入ります。
今まで伴奏に徹していたピアノが奏し始める主題。
力強いピアノ。
アシュケナージのピアノは悲痛な想いを吹き飛ばすかのよう。
ピアノが奏する明るい力強さを感じさせる旋律。
加わるヴァイオリンとチェロ。
次第に情熱的な雰囲気に。
いつしか活発に奏される3つつの楽器たち。
チェロは素早いピッツィカートで、ヴァイオリンは軽快な歌を
そしてピアノは力強く。
3つの楽器たちは躍動するような趣に。
再び戻る静けさ。
静かに閉じられる第1楽章。

第2楽章は
「主題と変奏」、「変奏フィナーレとコーダ」の2つの部分から構成されているそうです。
ピアノが奏する主題で始まる第2楽章。
ルビンシュテインはロシアの民謡の歌や踊りが好きだったそうです。
チャイコフスキーがルビンシュテインやモスクワ音楽院教授たちと
郊外に出かけた折りにルビンシュテインの望みで農夫たちが演じた踊りや
歌から考えついたもの、と言われているそうです。
ルビンシュテインの死を悼む曲とは感じられないくらいに明るさを感じる主題。
歌謡風で親しみやすく軽やかさも感じる旋律。
主題に続く11の変奏も変化に富み耳を奪われるようです。
印象い深いのは第6と第7変奏でしょうか。

「変奏フィナーレとコーダ」になり力強く活発なピアノの旋律での始まり。
繰り返すヴァイオリンの明るさ。
躍動的に奏される3つの楽器たち。
第1楽章の第1主題が現れピアノとヴァイオリン、チェロが壮大な趣で。
楽器たちの掛け合いの活発さはエネルギッシュ。
重々しく響き渡るピアノ。
第1主題を奏するヴァイオリンから明るさは消え暗澹とした趣に。
耳を引くピアノのアルぺッジョの美しさ。
再び静けさが戻り第1主題を歌うヴァイオリンそしてチェロ。
ピアノで静かに迎える曲の終わり。


チャイコフスキーは室内楽を得意としていなかったそうで
また性格の違う3つの楽器を組み合わせたピアノ三重奏という形式は
嫌悪感をすら抱かせるものだったとか。
専門家ではない私にはそのようなことは微塵も感じられません。
今更ながら、とにかく素晴らしい三重奏曲。

1980年の録音とのことですので
アシュケナージ43歳、パールマン35歳、ハレルが36歳頃の演奏でしょうか。
こちらの3人による「偉大な芸術家の思い出に」は
悲痛さを殊更濃厚に強調する演奏ではなく
哀悼の意とともに回想する明るい気分を感じられるようです。
死を悼み悲痛な想いを込めて作曲した曲とは感じられないような明るさに
初めは戸惑いも感じてしまいました。
感情移入よりも明るく爽やかな心情で故人を回想をしているような演奏でしょうか。

アシュケナージのピアノの力強い、エネルギーを感じさせるピアノ・タッチが
印象的です。
主人公のピアノを支えるパールマンとハレルの控え目な演奏。
この曲自体の主人公がピアニストでもあるルビンシュテインであることを想うと
アシュケナージのピアノに耳を傾けつつルビンシュテインの化身のような
存在に感じられてしまいます。

志鳥栄八郎氏はこの曲を一言で、次のように記述されています。
 「ニコライとチャイコフスキーとの麗しい友情の記念碑」

                 
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Op.373スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」 by スメタナ四重奏団

偶然、耳に入ってきた旋律。
スメタナの弦楽四重奏曲第1番から第4楽章だったようです。
スメタナがお目当てで求めたディスクは嘗て一度もない有様。
「わが祖国」「モルダウ」など有名な曲があるにも拘らず
疎遠を通り越して無縁な作曲家だったように思います。

スメタナの弦楽四重奏曲第1番を是非、聴いてみたくなり
今更ながらにスメタナ四重奏団のディスクを入手してみました。
ディスクが届いてから毎日、耳を傾けている我が身の変わり様です。
スメタナの音で綴った弦楽四重奏曲第1番をスメタナ四重奏団で。

             スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」
                       スメタナ四重奏団


             (373)スメタナ.弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」スメタナ四重奏団

                          (収録曲)
           スメタナ:弦楽四重奏曲第1番 ホ短調 「わが生涯より」
                 弦楽四重奏曲第2番 ニ短調

                       スメタナ四重奏団
                    (録音:1976年2月12日-16日 プラハ)


          第1楽章:Allegro vivo appassionato ホ短調 4/4拍子
          第2楽章:Allegro moderato a la polka ヘ長調 2/4拍子
          第3楽章:Largo sostenuto 変ニ長調 6/8拍子
          第4楽章:Vivace ホ短調-ホ長調 2/4拍子


スメタナが遺した2曲の弦楽四重奏曲のうち第1番。
作曲の着手は1876年10月、同年暮れに完成したそうです。
曲の完成時には「わが生涯より」との副題は付けられていず
1879年3月25日の公開初演の際に付けられたとのことです。
自叙伝的な標題音楽とのこと。

この第1番についてスメタナは親友で著述家ヨゼフ・スルプ=デブルノフ
(1836-1904年)宛ての書簡の中で
「私の人生の思い出と、完全な失聴というカタストロフィーを描いた」
と述べているそうです。

スメタナの生涯についてまったく無知ですので
メモとしてCDの結城亨氏の解説からの引用を。
 「スメタナの生涯は実に波乱に富んだ一生であった。恋人カテルジナと結婚して幸福だったのも束の間、4人の娘のうち3人までもが次々病死したのに加え、愛妻も胸を病んで若死にしてしまった。
そして更にスメタナ自身も40歳頃から耳の病に冒されて次第に悪化、最後は精神異常を来して病院で60歳の生涯を閉じたのであった」

重複しますが手持ちの解説書からも引用を。

1849年、スメタナはカテジナ・コラジョヴァーと結婚。1859年に死別。
1874年7月、スメタナ54歳の時に失聴の微侯を自覚したそうです
8月には幻聴と強い耳鳴りに悩まされるようになり
秋が深まる頃には完全に失聴をしたとのことです。
名医たちの診察や治療を受けたそうですが効果はなく
スメタナの生涯における最も輝かしいページは終焉を迎えたそうです。
あらゆる公的な地位から引き下がり余生を作曲に送るしかなくなったとのこと。

1876年6月からスメタナは娘夫妻を頼りプラハの北東部にある村ヤブケニツェに
隠匿をして作曲に専念をしたそうです。
ヤブケニツェに於いて交響詩組曲「わが祖国」の完成
そしてプラハからヤブケニツェに転居をした4カ月後に誕生したのが
この弦楽四重奏曲第1番だそうです。

初演は1877年4月から6月にかけて(1879年3月26日の説も)
プラハのヨゼフ・スルプ=デブルノフの家で何回か試演をされていたそうです。
その時にはヴィオラをドヴォルザークが受け持ったとのこと。
公開初演は1879年3月29日、プラハの神学校の講堂で4名の奏者により
行われたそうです。
4名の奏者はスメタナが隠遁前に指揮者を務めてた国民劇場完成までの
仮劇場の管弦楽団の中心メンバーたちだったそうです。
この公開初演は成功を収めたとのこと。
公開初演は元来1877年2月のプラハ室内楽協会発足記念の演奏会で
初演される予定だったそうですがドイツ系の人々との反対があり
また、技術的に難しすぎて弾けない、様式的に問題がある、などの
言いがかりを付け外されたと推測されるそうです。

スメタナは友人のスルプ=デブルノフ宛ての書簡において
この作品の標題について詳しい説明を書いているそうです。
各楽章の冒頭にメモとして書簡に記されたスメタナの説明を引用。


第1楽章
「私の青年時代の強い芸術愛好、ロマンティックな雰囲気、自分ではよく分からない何かへの言い表し難い憧れ、それに、将来の不幸の知らせをも描いている」
 
ヴァイオリンが小刻みで弱く奏されるなか
ヴィオラが奏する第1主題の動機で始まる第1楽章。
第1主題の不安、緊張感。劇的な趣も漂っているよう。
第2主題では第1ヴァイオリンが奏する抒情性漂う調べ。
この主題の穏やかな旋律は第1主題の緊張感を解すかのようです。
印象に残る調べ。
ヴァイオリンの力度が強くなり情熱的な雰囲気に。
展開部で現れる第1主題からは激しい感情の高まりが感じらるよう。
この楽章の内省的で多様な心の在り様、時には激しく、時には寂しげな趣が
パノラマのように展開する楽章でしょうか。


第2楽章
「ポルカ風の楽章で、私の心に楽しかった青年の日々を甦らせる。その頃私はダンス音楽を作曲し、至るところで熱烈なダンス狂として知られていた。」

第1楽章の趣からは一転して4つの楽器たちが明朗に奏し始める第2楽章。
何とも愉しげな雰囲気。
ポルカのリズムで軽快で明朗に楽器たちも愉しげに奏されているよう。
第2ヴァオリンが現れ引き延ばすように奏され独特な雰囲気が。
この第2ヴァイオリンのパートには「トロンバ風のソロ」と記され
ポスト・ホルンのファンファーレのような響きが求められているそうです。
このパートはスメタナの旅行好き表しているとのことです。
そして明朗なトリオに。
主題の回想をするコーダを経て閉じられる第2楽章。


第3楽章
「このクァルテットを弾かれた方々のご意見では、演奏不可能という楽章であるが、のちに私の忠実な妻となった少女との初恋の幸福な思い出を私によみがえらせてくれる」。

威厳を感じさせるく暗いチェロの調べで始まる第3楽章。
静かで寂寥感を湛えた調べは美しくもあり、悲しげでもあり心に沁みる。
一時、4つの楽器が揃って奏され激しさも。
静かに閉じられる第3楽章
回顧するような趣で心に残る楽章。
スメタナにとっては「幸福な想い出」とのことですが・・・。
悲しみのベールに包まれた旋律として耳に響きます。


第4楽章
「民族的な要素を音楽で扱う未知を見いだし、せっかく仕事が軌道に乗り出して喜んでいたところへ、失聴になるというカタストロフィーが襲いかかってきて、挫折させられるまでを描く。それと、悲惨な先の見通しや、一抹の回復への希望も描いている。だが、それにしても、それまでの私の先行きが楽しみだった経歴を思い出すと、やる方ない無念さが胸に込み上げてくる」

軽快でリズミカル、溌剌と始まる第4楽章。
この第1主題の明るさ、活発さ。
第2主題では第1ヴァイオリンが主奏する旋律の何と愉しげな雰囲気。
この曲の中で最も愉しさを感じさせる旋律。
楽器たちも愉しげに弾む心で歌っているよう。
展開部では活き活きとした主題の変容。
再現部での愉しげな雰囲気が終わる頃に
速度を上げた後、奏されるトレモロ。
第1ヴァイオリンから金属的な高い音が出され
これは失聴の始まりを告げる突き刺すような耳鳴りの音、とのこと。
激変する音楽。
コーダでは暗澹とした雰囲気を経て現れる穏やかさ。
静かに消え入るように奏され、無音の中でチェロが弱いピッツィカートを3回奏し
迎える曲の終わり。


曲を聴き終え追悼番組でも観終えたような後味です。
曲の終わりのチェロのピッツィカートからは心臓の鼓動を連想し
鼓動が止まるように曲も終わりを迎えるように感じます。

第2番は第1番の姉妹作とのことですので
第2番にもじっくりと耳を傾けてみたいと思います。

スメタナ四重奏団の4者対等な演奏。
スメタナの息吹が伝わってくるようであり
スメタナの生涯を観ているような想いも抱きます。
目下、繰り返し聴いていたくなる一曲、演奏です。

                  
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Op.372 ベートーヴェン:「ピアノ・ソナタ第16番」 by アシュケナージ

前回、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第6番を聴き
アシュケナージのピアノを聴きつつベートーヴェンピアノ・ソナタ
アシュケナージの演奏で聴いてみたくなりました。
中期以前のピアノ・ソナタを聴いてみたくなり第16番を聴いてみることに。
たぶん初めて耳にする曲ではないかと・・・。
曲が流れ始めた瞬間、明るさに惹かれてしまいました。

                  ベートーヴェンピアノ・ソナタ第16番
          アシュケナージベートーヴェンピアノ・ソナタ全集より


                 372(345) ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第16番 全集 アシュケナージ
                          (収録曲)

           ベートーヴェンピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2
                     ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 Op.28
                     ピアノ・ソナタ第16番 ト長調 Op.31-1

                  ウラディミール・アシュケナージ(P)
                      (録音:1977年 ロンドン)


              第1楽章:Allegro vivace ト長調 2/4拍子
              第2楽章:Adagio grazioso ハ長調 9/8拍子
              第3楽章:Rondo, Allegretto ト長調 2/2拍子


第16番 作品31-1。
作品31は3曲のソナタでなっているそうです。
 作品31-1 ト長調 第16番
 作品31-2 ニ短調 第17番≪テンペスト≫
 作品31-3 変ホ長調 第18番
これらの3曲のソナタは1801年から翌1802年にかけ並行して
書かれたそうです。
1802年の初めには完成、或いは大体の作曲は完了していたとのこと。
最初に出版をされたのは第16番、17番。
1803年4月にチューリッヒの出版社、ハンス・ゲオルグ・ネーゲリにより
彼の編集する「クラヴサン奏者演奏曲集」として出版されたそうです。
第18番は1804年5月或いは6月にピアノ・ソナタ第8番≪悲愴≫との組み合わせで
出版されたとのことです。
1804年にジムロック社から作品31の3曲がまとめて出版されたそうです。
自筆譜は紛失しているとのこと。
尚、この作品31には献呈者がいないそうです。


アシュケナージで聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタ第16番。

弱音のピアノで軽やかに始まる第1楽章。
この第1主題は軽快な動機と付点リズムの動機からなっているそうです。
軽快さに付点リズムが溌剌とした雰囲気を加味しているような第1主題。
耳と心を釘付けにされる第1主題の晴れやかさ。
第2主題では弾むようなピアノ。
耳を傾けているうちにアシュケナージの指が鍵盤の上で
軽やかに舞っているような連想を。
この第2主題の軽快に弾む明朗さと親しみやすい旋律がとても印象的。
展開部では第1主題が主役でしょうか。
強音と弱音が交互に現れる第1主題。
経過部での華麗なピアノの旋律も印象に残ります。
コーダは独特な感じで、第1主題が度重なる休止を挟み奏されつつ
柔和な雰囲気で終わる第1楽章。

第2楽章は古くから南ヨーロッパの情緒を多くの人に連想させたそうです。
ピアノのトリルで始まる第2楽章。
この楽章は三部形式とのことで第1部では右手が奏する旋律の歌の優しさ。
歌は左手に移り変わることのない歌の甘美な趣。
夢見るかのような穏やかで優しい調べに聴き入ってしまいます。
中間部に入りスタッカートで奏されるゆったりとした旋律。
右手と左手が奏する鍵盤の対話からは無邪気な雰囲気も感じられるよう。
第3部ではスタッカートがあたかも通奏低音のように奏されつつ耳に届く旋律も
また歌を聴いているようです。
静かにゆっくりと閉じられる楽章。

優しく歌いだされるロンド主題で始まる第3楽章。
優しい歌から明るく活発な雰囲気に。
ロンド主題に似た趣の第2主題では盛り上がりも。
再びロンド主題に。
展開部では音楽が拡張されるような趣を感じます。
コーダでは変化するテンポの「動」と「静」。
左手の重々しく迫力のあるトリルを経て速いテンポで力強く
そして華々しく迎える曲の終わり。


たまたま聴いてみたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第16番。
微塵の屈託も感じさせない明るい第1楽章。
第2主題はとても心に残り曲が終了してもこの主題が
脳裏の中で木霊をしているようです。
第2楽章ではトリルとスタッカートの多用さで動的な趣が印象的。
明るく活気を感じさせる第3楽章。
軽快で明るく、元気溌剌とした雰囲気が曲全体に感じられ
肩の凝らないソナタでしょうか。
あまりにも明るい曲で物足りなく感じる・・・という
贅沢な気持ちも微かに抱きつつも
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの新たな一面に触れることができたように思います。

アシュケナージ、40歳頃の若い日の演奏になるのでしょうか。
ピアノの音色の美しさ、力まない軽やかなタッチにも惹かれます。
アシュケナージに抱いているイメージに
この曲はに合っているような気もしていますが。

                  
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Op.371 ベートーヴェン:「ピアノ三重奏曲第6番」 by アシュケナージ、パールマン&ハレル

昨年末に出合ったパールマンのワーナーとユニヴァーサルの2種のBoxは
手にする機会が最も多いものになっています。
昨年に続いて今年もまた耳を傾けている日々です。

ワーナーのBoxにはアシュケナージパールマン&ハレルの演奏で
ベートーヴェンピアノ三重奏曲全集が収録されているとの
コメントをいただいておりました。
ベートーヴェンの室内楽では1ピアノ三重奏曲も気に入っていますので
喜々として耳を傾けています。

ピアノ三重奏曲では一番のお気に入りの「大公」を聴く機会が多く
今回は第6番を聴いてみました。
第6番を聴いた記憶が定かではなかったのですが
聴いているうちに過去に聴いた記憶が甦り懐かしくもありました。

              371:ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第6番 パールマン・ワーナーBox
                        (収録曲)
  
       ベートーヴェンピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 Op.70-1「幽霊」
                 ピアノ三重奏曲第10番 変ホ長調 Op.44
                 ピアノ三重奏曲第6番 変ホ長調 Op70-2

                ウラディミール・アシュケナージ(P)
                イツァーク・パールマン(Vn)
                リン・ハレル(Vc)
                  (録音:1979年6月-1984年4月)


    第1楽章:Poco sostenuto- Allegro, ma non troppo ハ短調 4/4拍子
    第2楽章:Allegretto ハ長調 2/4拍子
    第3楽章:Allegretto, ma non troppo 変イ長調 3/4拍子
    第4楽章:Finale. Allegro変ホ長調 2/4拍子


ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の作品70は
2つのピアノ三重奏曲で成っているそうです。
作品70-1 第5番「幽霊」
作品70-2 第6番
作曲されたのはともに1808年とのことです。
この時期はベートーヴェンの創作が頂点に達していたそうです。
この同じ年1808年には交響曲第5番、第6番の完成
翌、1801年にはピアノ協奏曲第5番「皇帝」の作曲など。

この時期のベートーヴェンは作曲の主力をピアノ曲や交響曲に注ぎ
室内楽は比較的少ないそうですが、これらのすべての作品は
室内楽史上においては最も重要な価値を持つ作品とのことです。
しかし、作品70の2曲は演奏されることの少ない作品だそうです。

この2曲の作品は初めピアノ・ソナタとして計画されていたことが
ブライトコプフ&ヘルテル社宛てのベートーヴェンの手紙により
明らかにされているそうです。
2曲は初めは1曲として計画されたという説が有力とのことです。

さて、この第6番について大木正興、正純両氏は以下のように
評価をされている記述がありました。
「全曲は一貫して陽気な明るい気分が支配的だが、ベートーヴェン特有の迫力ある盛り上がりに乏しく、全体としてのまとまりも冗漫で緊縮性を欠き、高く評価されず、演奏される機会も少ない」
とのことです。
残念な評価ですが、専門家ではない私にとっては好感を抱くことができる曲であり
第5番「幽霊」、第7番「大公」ととともにお気に入りの曲。

初演は1808年12月末、クリスマス前後にウィーンのエルデーディ伯爵邸に
於いて行われたそうです。
ピアノはベートーヴェン自身、他の演奏者については不明とのこと。

献呈は前回のチェロ・ソナタ第5番同様に
エルデーディ伯爵夫人、アンナ・マリーに。

アシュケナージパールマン&ハレルで聴くベートーヴェンの
ピアノ三重奏曲第6番。

弦楽器が奏する仄暗さを感じさせる序奏で始まる第1楽章。
弦楽器の仄暗く不気味な趣にすぐに加わるピアノの華やかさ。
長い序奏で2分近くはあるようです。
序奏が終わり、やっと主部に。
チェロが奏し始める第1主題の軽快な明るさ。
溌剌とした雰囲気で時には3つの楽器たちがワルツでも踊るかのように。
第2主題では穏やかな美しさに。
屈託なく楽しげに語り合う楽器たち。
コーダでは速度を落とし静かに閉じられる第1楽章。
この楽章でチェロで奏し始める第1主題のフレーズが記憶を呼び覚まします。
気に入っていた主題。久しく耳にすることがなく忘れていたフレーズ。
懐かしさ。口ずさみたくなる調べ。明朗な旋律なのに郷愁も感じる現在です。

第2楽章は二重変奏曲の形式になっているそうです。
ピアノの瞬発的な打鍵がユーモアを感じさせるように始まる第2楽章。
第1主題の愛らしさ。
無邪気でお茶目な雰囲気も。
スフォルツァンドで鋭角的に奏される第2主題では力強さも。
対等に奏され応答する3つの楽器たちの会話には
ついつい耳を奪われてしまいます。
力強く終わる第2楽章。

ヴァイオリンが穏やかに和みを感じさせるように奏され始まる第3楽章。
ヴァイオリンが歌う第1主題。
簡潔で親しみを感じる反面、郷愁を感じさせる調べが印象的。
第2主題でのピアノと弦の応答には微かに激しさが。
静かに閉じられる第2楽章。
和みの楽章でしょうか。ゆったりとした趣に耳を奪われてしまいます。

活気を感じさせるピアノの導入で始まる第4楽章。
前楽章でウットリと聴き惚れていた気分が覚めます。
第1主題での活気と動的に奏される弦楽器
そしてピアノは流麗に。
活き活きと華々しい雰囲気。
雄弁に語り合う楽器たち。時には激しい会話は激論をしているかのようにも。
活き活き、溌剌とした旋律で曲が進み
コーダの終わりに音量を上げ力強い激しさの内に閉じられる曲。


ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」と第7番「大公」に挟まれた第6番。
大公」の第2第楽章と第4楽章の溌剌とした明朗さが
この第6番では一貫して感じられ聴いていて爽快な気分になります。
久しく聴くことがなかったこの曲が第5番、第7番とともにお気に入りにりました。

曲が終了。もしもリサイタルだったら大きな拍手をしたいと思う演奏です。
ピアノ三重奏曲とは言え3つの楽器は対等に活躍し
室内楽の域を越えたスケール感も感じられるようです。

第4楽章では息をつめて聴き入ってしまいました。
楽理にはまったく疎い私はこの第6番にも第5第7番同様の魅力を感じます。
「演奏させれる機会が少ない・・・」ということが考えられないくらい。

パールマンの伸びやかなヴァイオリン。
アシュケナージのピアノに時折、燦然と輝くような音色にハッとしたり
特に第1楽章でのハレルのチェロ活躍には聴いていて心も躍るようです。
三者三様の素晴らしい掛合い。

久しく聴く機会がなく忘れてしまっていた第6番。
今回出合うことができ、このBox とお寄せいただいたコメントに感謝です。

                  
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Op.370 ベートーヴェン:「チェロ・ソナタ第5番」 by カザルス&ホルショフスキー

嘗てベートーヴェンチェロ・ソナタの第1番、2番を
カザルス&ホルショフスキー(1939年録音)の演奏で聴き
いつか第3番以降も聴きたい・・・と望みつつ
やっと「いつか」が訪れました。
気が付けば5年も経ってしまいました。
今回はベートーヴェンチェロ・ソナタ第5番を。

               ベートーヴェンチェロ・ソナタ第5番
                  カザルス&ホルショフスキー
         パブロ・カザルス・エディション 第2集《プラド音楽祭》より


          (HMV)370ベートーヴェン.チェロソナタ第5番カザルス.エディション第2集
                         (収録曲)

         
          J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV.1009
          ベートーヴェン::チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 Op.102-2
          ベートーヴェン:『仕立て屋カカドゥ』の主題による
                       変奏曲とロンド Op.121a 19:50

                 パブロ・カザルス(Vc))
                 ミエチスラフ・ホルショフスキ(P)
          (録音:チェロ・ソナタ第5番 1953年6月)     

          第1楽章:Allegro con brio ニ長調 4/4拍子
          第2楽章:Adagio con molto sentimento ニ短調 2/4拍子
          第3楽章:Allegro ニ長調 3/4拍子


ベートーヴェンのチェロ・ソナタ作品102は2つのソナタでできているそうです。
第4番 作品102-1
第5番 作品102-2
2曲とも作曲されたのは1815年とのこと。
作品102の2つの曲の完成はベートーヴェンの記録に依ると
第4番が1815年7月末ごろ、第5番が8月初旬になっているとのことです。
ベートーヴェンの最後のチェロ作品になるそうです。

作品102の2曲のチェロ・ソナタが作曲された1815年は
ウィーン会議が開催された年だったそうです。
会議は9カ月に及んだとのこと。
この会議による社会のお祭り騒ぎやベートーヴェン自身の身体不調などで
ベートーヴェンの作曲の筆は進まなかったそうです。

             370:ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第5番(作品102の2曲)Joseph Linke
                     Joseph Linke
               (1783年6月8日-1837年3月26日)

この2曲はイグナーツ・シュパンツィヒが第1ヴァイオリンを担当する
ラズモフスキー家の弦楽四重奏団のチェロ奏者ヨーゼフ・リンケのために
書かれたとのことです。
ラズモフスキー伯爵が1808年にウィーンにいたリンケを自邸の管弦楽団の
奏者として迎え入れたそうです。
同時にシュパンツィヒとリンケを中心に弦楽四重奏団を組織させたとのこと。
リンケは優れたチェロ奏者であり作曲もしたそうです。
彼は1814年にズモフスキー家が火災で全焼し四重奏団が解散するまで
四重奏団の一員として残っていたとのことです。

曲の献呈はエルデーディ伯爵夫人に。
伯爵夫人はベートーヴェンの音楽の良き理解者であり相談相手でもあったそうです。
ラズモフスキー家の弦楽四重奏団の技量を高く評価し
楽員とも親しく付き合っていたとのことです。
伯爵夫人はルドルフ大公、キンスキー侯爵そしてロブコヴィッツ侯爵の3人が
設定したベートーヴェンの年金問題についても尽力をしたとのことです。

ベートーヴェンはリンケのため、及びこの年の5月に息子を亡くし
ピアノが達者な伯爵夫人を慰め、感謝をする意味で
2曲のチェロ・ソナタを作曲するに至ったそうです。


上行するようにピアノが奏し活気を感じさせる第1主題で始まる第1楽章。
続くチェロも軽快に始まり、すぐに荘重な調べに。
ピアノとチェロの力強い応答を経て第2主題に。
跳ねるかのような愛らしさも感じる第2主題。
この主題の歌のような調べは心に残ります。
ピアノとチェロは伸び伸びと生き生きと会話を弾ませているよう。
コーダでピアノがクレッシェンドしてゆく様は華々しくまた力強さを感じます。
この盛り上がりのなか閉じられる第1楽章。

前楽章から一転してチェロとピアノが静かに暗い旋律を奏して始まる第2楽章。
第1部で主題に漂うチェロの調べの深い寂寥感。
チェロに寄り添うホルショフスキーのピアノからは
優しく慈しむような感じも受けます。
ふと気付くと旋律に漂う暗鬱さは長閑な趣に。
第2部になり穏やかに語るチェロ。
チェロとピアノの調べには明るさが感じられるように。
優美な雰囲気も醸し出されているよう。
第3部になり再び第1部のような暗さが戻り。
沈み込むチェロとピアノの調べ。
チェロが深く長い呼吸をするかのように奏され
ピアノも断片的な想いを語るかのよう。
耳を傾けていると心が静まるような気がする楽章です。
曲の中ではお気に入りの楽章に。

チェロ、次にピアノが音階風に奏され始まる第3楽章。
2つの楽器が奏するフーガ主題からは躍動的な雰囲気が。
活発に「動」を感じさせるチェロとピアノ。
チェロの奏する新たな主題の登場で
奏される2つの楽器からは壮大な趣を感じます。
鋭い切れとともに力強く迎える曲の終わり。


厳格さを感じさせるような第5番。
この曲の中では第1楽章の第2主題が歌を感じさせ趣で心に残ります。
第2楽章ではカザルスの凛とした趣で奏されるチェロを
優しく包み込むようなホルショフスキーのピアノが印象的です。
第3楽章のフーガでは一糸乱れないカザルスとホルショフスキー
聴いていて緊張感を抱きつつも耳を奪われてしまいます。

昨年、出合った書籍で感銘を受けた一冊に
アルバート・E・カーン著「パブロ・カザルス 喜びと悲しみ」があります。
この書の中でホルショフスキーについてのカザルスの一文を通し
ホルショフスキーに関心を抱き始めました。
プラド音楽祭の演奏を聴いてみたい、との想いが募ってきた折りに
こちらの カザルス・エディション第2集を知り求めてみました。
昨年来、少しづつディスクを聴いているお気に入りのBox の一つです。
この Box に収録されているカザルス&ホルショフスキーの演奏他に
これからもじっくりと耳を傾けてゆきたいと思うこの頃です。

                
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OP.369  シューベルト:エレンの歌Ⅲ「アヴェ・マリア」 by ボ二ー&パーソンズ

新しい年もすでに1週間が過ぎようとしています。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします

2017年のスタートはシューベルトの歌曲で。
ボ二ーの歌で「エレンの歌Ⅲ:アヴェ・マリア」です。


           シューベルトエレンの歌Ⅲ「アヴェマリア」 D.839
                     ボ二ー&パーソンズ

             369:シューベルト:歌曲集 ボ二ー&パーソンズ

                     バーバラ・ボニー(S)
                     ジェフリー・パーソンズ(P)
            (録音:1994年4月 テルデック・スタジオ、ベルリン)
 
 
作曲されたのは1825年4月。
シューベルティアーデが盛んに催されていた頃だそうです。
シューベルトは28歳歳頃でしょうか。

曲は 3節の有節歌曲  変ロ長調  4/4拍子 
テンポは「非常にゆっくりと」と記されているそうです。
ウォルター・スコットの叙事詩「湖上の美人」に付曲。

              369スコット像エディンバラ
       エディンバラ、プリンス・ストリート・ガーデンのスコットの記念碑                  
                Sir Walter Scott, 1st Baronet
              ( 1771年8月15日 - 1832年9月21日)
         

湖上の美人」はイギリスの歴史小説家ウォルター・スコット作の叙事詩だそうです。
湖上の美人」はスコットランドのカトリーン湖を背景に
エレンを中心とした恋と武勇の話で全6篇からなっているとのこと。
独訳はアーダム・シュトルク。
このシュトルク訳にシューベルトは付曲をしたそうです。
この叙事詩の7つの詩にシューベルトは付曲をしているそうです。
エレンの歌Ⅲ アヴェ・マリア」はそのだ6番目の曲とのことです。

シュトルク訳では原詩の形式が各4行8詩節の民謡詩節に
変えられているそうです。
初版は1826年4月5日にウィーンのアルタリア社から出版され
この初版では英語の歌詩も添えられたとのことです。

この叙事詩のヒロインがエレン・ダグラス。
城主である王の仇討から逃れるためにエレンと父親はスコットランド高地の
コブリンの洞窟近くに身を隠している。
父娘は王に追放されてから、ハイランドの族長ロデリックに匿われてきた。
切羽詰まった逆境の中でエレンは湖畔の岩上で聖母像に額ずき
父の罪が許されるようにマリアの加護を求め祈りがこの曲だそうです。

因みに
エレンの歌Ⅰ」は第1篇31節で
狩りをして道に迷い疲れた兵士を休ませるためにエレンが歌う子守歌だそうです。
エレンの歌Ⅱ」は第1篇32節。「エレンの歌Ⅰ」と詩の内容に大差はないとのこと。

作曲された当時も「アヴェ・マリア」は多くの人々に感銘を与え
シューベルト自身が好んで歌って聴かせたそうです。

余談ですが。
湖上の美人」は1819年にロッシーニがオペラ・セリアとして作曲しているそうです。
台本はアンドレア・レオーネ・トットラで
原曲名はLa donna del lago とのことです。


ボ二ーの歌で聴く「アヴェ・マリア」。

ピアノ伴奏はハープを模しているそうです。
旋律もさることながら、ボ二ーの歌唱そのものが祈りとなり
耳に、心に染み入ります。
言葉に託された微妙な心が真摯に歌われているようにも感じます。
反復句の “Ave Mria ! ” という呼びかけは
各節の初めでは微妙に変化しているのが印象的です。
“Ave Mria ! ” との呼びかけの一つ一つが
繊細に歌い分けられているように感じます。

真摯な祈り、時には緊張感をともなう祈り。
第2節次の2行が印象的です。
 “Du lächelst, Rosendufte wehen
  In dieser dumpfen Felsenkluft”
微かに声量を落として優しく囁くように歌われ
辛苦の中で希望を垣間見る想いがするようです。
言葉を必要としないボ二ーの歌唱。
語ろうとすればするほど
祈りそのものの歌に言葉、文字は必要のないことを感じるのみです。

「エレンの歌Ⅰ」「エレンの歌Ⅱ」はまだ聴く機会がないのですが
聴いてみたく思います。

      ライン 

               エレンの歌Ⅲ:Ellens GesangⅢ D839

         (訳詞)
         アヴェ・マリア!優しき乙女よ、
         一人の娘の願いを聞いてください、
         この堅く険しい巌からも
         きっとたしの祈りはあなたへと届くでしょう。
         それでわたしたちは安心して朝まで眠っていられるのです 。
         世の人々がどんなに冷たくても。
         おお 乙女よ、この娘の不安を見て
         おお 母よ、願う子の声を聞いてください!
         アヴェ・マリア!

         アヴェ・マリア!汚れ無き方よ!
         わたしたちがこの巌で眠る時、
         あなたの護りがわたしたちを包んでくれ
         硬い巌も柔らかく感じられるのです。
          あなたが微笑めば、バラの香りが匂い立ちます
         この湿った岩間にも。
         おお 母よ、子の願いを聞いてください、
         おお 乙女よ、一人の娘が呼びかけています!
         アヴェ・マリア!

         アヴェ・マリア!清き女性よ、
         地の、空の悪魔たちを
          あなたの眼の慈しみで追い払い、
         わたしたちの側に住み着けないようにしてください。
         わたしたちはじっとこの運命に従います。
         あなたの神聖な慰めがもたらされるのですから。
         この娘にやさしく身をかがめてください、
         父の為に祈るこの子に。
         アヴェ・マリア!
                                   (若林氏訳)

         Ave Maria! Jungfrau mild,
         Erhöre einer Jungfrau Flehen,
         Aus diesem Felsen starr und wild
         Soll mein Gebet zu dir hin wehen.
         Wir schlafen sicher bis zum Morgen,
         Ob Menschen noch so grausam sind.
         O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,
         O Mutter, hör ein bittend Kind!
         Ave Maria!

         Ave Maria! Unbefleckt!
         Wenn wir auf diesen Fels hinsinken
         Zum Schlaf, und uns dein Schutz bedeckt
         Wird weich der harte Fels uns dünken.
         Du lächelst, Rosendufte wehen
         In dieser dumpfen Felsenkluft,
         O Mutter, höre Kindes Flehen,
         O Jungfrau, eine Jungfrau ruft!
         Ave Maria!

         Ave Maria! Reine Magd!
         Der Erde und der Luft Dämonen,
         Von deines Auges Huld verjagt,
         Sie können hier nicht bei uns wohnen,
         Wir woll'n uns still dem Schicksal beugen,
         Da uns dein heil'ger Trost anweht;
         Der Jungfrau wolle hold dich neigen,
         Dem Kind, das für den Vater fleht
         Ave Maria!


いつもの蛇足です。おばさんの井戸端会議。
シューベルトが付曲をした7曲をメモとして。(Wikipediaドイツ語よりそのままコピー)

1.Ellens Gesang I D 837 „Raste Krieger, Krieg ist aus“/„Soldier rest! the warfare o’er“
2.Ellens Gesang II D 838 „Jäger, ruhe von der Jagd“/„Huntsman, rest! thy chase is done“
3.Bootgesang D 835 „Triumph, er naht“/„Hail to the chief“, Männerquartett (TTBB)
4.Coronach (Totengesang der Frauen und Mädchen) D 836 „Er ist uns geschieden“/„He is gone to the mountain“, Chorlied (SSA)
5.Normans Gesang D 846 „Die Nacht bricht bald herein“
6.Ellens Gesang III (Hymne an die Jungfrau) D 839 „Ave Maria! Jungfrau mild!“/„Ave Maria! maiden mild!“, Lied für Frauenstimme
7.Lied des gefangenen Jägers D 843 „Mein Roß so müd“/„My hawk is tired“

この7曲はシューベルトの歌曲集『湖上の美人』(Liederzyklus vom Fräulein vom See)とされているようです。
この歌曲集の存在を初めて知りました。
できることなら聴いてみたく思い、探してみたのですが見当たりません。
発売されているものなのでしょうか。
ご教示をいただけると助かります。

                
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特に音楽知識のないクラシック・ビギナーに等しいのですが、「ただ、ひたすらに」をモットーに鑑賞をしています。
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